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Policy(提言・報告書)  環境、エネルギー 経団連生物多様性宣言・行動指針

2009年3月17日制定
2018年10月16日改定
2023年12月12日改定
一般社団法人 日本経済団体連合会
経団連自然保護協議会

前文

経団連は、地球サミット(国連環境開発会議)が開催された1992年に、『経団連地球環境憲章』(1991年)の考えを実践する組織として、経団連自然保護基金と経団連自然保護協議会を創設し、以降、様々な生物多様性保全活動を展開してきている。

これまで環境と経済の両立を目指し、(1)経団連自然保護基金を通じたアジア・太平洋を中心とした途上国の自然保護プロジェクトの支援や企業とNGO等の交流、(2)企業が生物多様性分野に取り組みやすい環境づくりを目指した政策提言、(3)シンポジウムやセミナーを通じた啓発・情報発信、(4)国際的な環境NGOや国際機関との交流を通じた経済界の取り組み発信に取り組んできた。

こうした中、2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(CBD・COP15)において、愛知目標に代わる新たな世界目標として、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)が採択され、これを踏まえた国内政策として、生物多様性国家戦略2023-2030が決定された。GBFにおいても、国家戦略においても、企業に着目した記述が盛り込まれており、昆明・モントリオール生物多様性枠組が目指す2050年ビジョン「自然と共生する世界」、2030年に自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるネイチャーポジティブ(自然の保全・再興)の実現に向け、経済界がさらなる役割を果たすことが求められている。

加えて、新型コロナウイルス感染症や近年の異常気象は、自然と人間活動・経済社会との関係の見直しを迫っており、サステイナブルな経済社会の実現は大きな課題である。その実現にあたって企業は、グリーントランスフォーメーション(カーボンニュートラル)、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブ(自然の保全・再興)を一体的に捉え、脱炭素化、資源循環、生物多様性等の保全・再興などの幅広い環境活動を事業活動の中に取り込んだサステナビリティ経営を推進する必要がある。

新たな世界目標GBFの採択をはじめとする以上のような国内外の大きな流れを踏まえ、経団連・経団連自然保護協議会は、2009年の制定、2018年の改定の趣旨に沿いつつ、「経団連生物多様性宣言・行動指針」を改定する。

経団連・経団連自然保護協議会は、本「宣言・行動指針」の普及・実践を通じ、自然共生社会、サステイナブルな経済社会の実現に取り組むとともに、GBF、SDGsといった世界目標や、30by30を含むわが国の国家戦略の達成に貢献していく。

経団連生物多様性宣言・行動指針
~2030年ネイチャーポジティブに向けて~

1. ビジョン
自然と共生する社会の実現

生物多様性・生態系を含む自然資本の持続可能性に留意し、自然と調和のとれた営為を行うことを通じ、人と自然が共生する社会を目指す。

2. 企業の役割
生物多様性・生態系を含む自然資本の保全・再興に貢献する財・サービスの提供や技術の研究開発およびサプライチェーン全体での取組み

自然と共生する社会の実現に向けた企業の役割として、国内外の生物多様性・生態系を含む自然資本への負の影響を徐々に低減し、正の影響を増やすことに貢献する財・サービスの提供および研究開発を行う。また、グループ企業はもとより、サプライチェーン全体を通じて、生物多様性・生態系を含む自然資本の保全・再興に取り組む。

3. 必要な視点
グローバル・ローカル両方の視点を持ち、カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーと統合的に捉え、地域や事業活動の特性に応じた多様な手法を用いてネイチャーポジティブ(自然の保全・再興)に取り組む。

私たちは生物多様性・生態系を含む自然資本の保全・再興は、グローバルな課題であると同時に、ローカルな課題でもあることを認識する。また、ネイチャーポジティブ(自然の保全・再興)に取り組むにあたっては、カーボンニュートラルおよびサーキュラーエコノミーを統合的に捉え、相互の関係性を捉える。加えてNbS(Nature based Solutions:自然を基盤とした解決策)も含む多様な手法を活用する。

4. 行動指針

「企業の役割」を果たすために以下9つの項目に取り組む。

  1. (1) 【事業活動と生物多様性等の関係の把握・管理】
    グローバルなサプライチェーンを含む自らの事業活動全体において、生物多様性・生態系を含む自然資本への依存・影響およびリスクと機会の把握・管理を行う。

  2. (2) 【カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーとの統合的な取組み】
    グローバルなサプライチェーンやライフサイクル全体を視野に入れ、温室効果ガス排出削減や資源の有効利用・廃棄物等の適正処理といった課題について、様々な手法を用いて生物多様性・生態系を含む自然資本の保全・再興と統合的に取り組む。

  3. (3) 【地域の特性を踏まえた取組み】
    生物多様性・生態系を含む自然資本のあり方や、地域振興や防災・減災といった社会課題への対応のあり方は、地域によって大きく異なっており、事業活動とこれらとの関わり方も様々である。陸域・淡水域・海域といった性質や劣化の度合いなどの地域の特性や事業活動の特徴を踏まえつつ、固有の自然資本の活用などNbS(Nature based Solutions:自然を基礎とした解決策)も含む多様な手法により取り組む。

  4. (4) 【情報開示をはじめステークホルダーとの適時適切なコミュニケーションの実施】
    生物多様性・生態系を含む自然資本の保全・再興の取組みに関する情報開示を積極的に行い、消費者・顧客や投資家、地域住民をはじめ、幅広いステークホルダーに対する情報提供や対話に適時適切に取り組む。

  5. (5) 【経営トップによるガバナンス構築・リーダーシップ発揮】
    経営トップをはじめとする経営層は、サステナビリティ経営の浸透や堅固な企業組織・体制の整備に取り組むとともに、理念・ビジョンを明確にし、リーダーシップを発揮する。

  6. (6) 【遺伝資源の公正かつ衡平な利用】
    遺伝資源の利用と利益の配分にあたっては、「名古屋議定書」に基づく国内措置(ABS指針)に従うとともに、遺伝資源を取得する際には、提供国が定める法令を遵守する。

  7. (7) 【生物多様性等の損失緩和措置のあり方】
    生物多様性・生態系を含む自然資本の保全・再興に関する取組みは、事業活動の現場での活動が基本である。地域のステークホルダーと対話しつつ、まず現場にて、生物多様性等における損失の回避・最小化、機能の回復・復元を行う。そのうえで、生物多様性の評価に基づく取引や代償(オフセット)手段を利用せざるを得ない場合には、その実効性を見極める。

  8. (8) 【社会貢献活動】
    自らの事業活動と、生物多様性・生態系を含む自然資本の保全・再興との関係が見出しにくい場合でも、NGOや地域社会・住民、従業員をはじめとするさまざまなステークホルダーと、資金提供も含む連携・協働などを通じて、社会貢献活動として取り組む。

  9. (9) 【啓発活動】
    学校・研究機関やNGO、国・地方公共団体等とも連携し、消費者や地域住民、従業員への啓発活動を実施し、生物多様性・生態系を含む自然資本の保全・再興に向けた意識を広く社会全体に普及する。

経団連生物多様性宣言・行動指針ストラクチャー

経団連生物多様性宣言・行動指針ストラクチャー

(図表のクリックでPDF版表示)

以上

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