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Policy(提言・報告書)  産業政策、行革、運輸流通、農業 2024年度規制改革要望

2024年9月17
一般社団法人 日本経済団体連合会

Ⅰ. 基本的考え方

日本経済は継続的な賃金引き上げのモメンタムや投資の拡大等に支えられ、成長への着実な歩みを進めている。

この流れを加速し、成長と分配の好循環を実現するためには、経済社会の変革を促し、デジタルトランスフォーメーション(DX)や新たな成長分野の競争力の強化等に官民連携で取り組んでいくことが必要である。加えて、急速な技術進歩や経済社会の変化に適切に対応せず、新技術や新規ビジネスの実装を阻害し得る規制や制度を不断に見直していくことも欠かせない。とりわけ顕在化する人手不足への対応は待ったなしの課題となっている。

また、日本企業の国際競争力の観点から、諸外国の規制・制度の内容や強度を踏まえて、国内の規制・制度のあり方を検討することも必要である。

そこで、経団連は会員企業・団体からの提案を踏まえて、2024年度の規制改革要望を次の柱に沿い取りまとめた。

第1の柱は、「デジタル」である。人手不足が顕在化する中、デジタル技術を活用した自動化や生産性向上に資する規制・制度改革、また、新技術の実装につながる規制・制度の構築が必要である。

第2の柱は、「環境」である。環境分野におけるサステナビリティの確保に向けて、サーキュラーエコノミー(CE)の促進に資する規制・制度改革を求めている。

第3の柱は、「人の活躍」である。経済社会の支え手は人であり、多様な人材の活躍に資する制度の構築が求められる中、外国人材の活躍促進や、デジタル技術を活用した専任要件の緩和、職業紹介事業者の業務効率化等に資する改革を要望した。

第4の柱は、「新産業の成長」である。今後の日本経済を牽引する産業の育成が求められる中、ヘルスケア・バイオやモビリティ分野を中心に、企業が創意工夫を活かせる環境を整備するための規制・制度改革を要望している。

政府には、本提言も踏まえて、規制改革推進会議を中心に、引き続き規制・制度改革に全力で取り組むように求める。なお、改革を着実に進めるにあたっては、規制改革実施計画に基づき検討の期限を明確に切って結論を出すことが重要である。

国をあげてさらなる規制・制度改革を推進するため、政治の強いリーダーシップを期待する。

Ⅱ. 更新・再提出する規制改革要望

No. 1. 非対面取引における本人確認の円滑化
<要望内容・要望理由>

古物を取り扱うオンラインプラットフォームやキャッシュレス決済は、今や日常に密接したサービスとなり、市場規模も年々拡大している#1

古物営業法及び犯罪収益移転防止法においては、こうした経済活動を安全に行う目的で本人確認義務を実施している。一方、利用者にとっては、同一事業者やグループ企業が提供するサービスで共通のID・パスワードを利用しているにもかかわらず、都度本人確認を求められており、利便性を著しく損なっている。

そこで、事業者が犯罪収益移転防止法に基づいて非対面取引における本人確認を実施済みであり、かつ当該情報が古物営業法の要件を満たす場合、同一事業者やグループ企業内で本人確認情報に齟齬がないことの確認をもって、再度の本人確認に代替することを認めるべきである。

犯罪収益移転防止法において認められる身元確認書類は、公的機関により発行され、かつ被証明者のみに交付されるものに限定されており、古物営業法よりも厳格に運用されている。犯罪対策閣僚会議が取りまとめた「国民を詐欺から守るための総合対策」(令和6年6月18日)においても、非対面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化するなど、本人確認の厳格化が定められた。犯罪収益移転防止法に基づく本人確認情報を利用することで、より安全かつ確実な本人確認を実施することが可能となる。

また、本人確認情報に齟齬がないか、都度確認を行うことによって、古物営業法が求める古物の買受け等の相手方の真偽を都度確認しつつ、利用者の利便性向上を両立することが可能となる。

本要望が実現した場合、裨益する利用者は最大約3,400万人に上り、本要望によりリユースの活用が10%程度進むと仮定した場合、約1,000億円の経済効果が見込まれる。

<根拠法令等>
  • 古物営業法第15条第1項、第21条の2
  • 古物営業法施行規則第15条第3項
  • 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第6条第1項
No. 2. 育児・介護の両立支援等に資する深夜労働の割増賃金規制の見直し
<要望内容・要望理由>

在宅勤務の普及により、日中に育児・介護等のために中抜けをするなど柔軟な働き方が定着してきている。そうした中、育児・介護が落ち着いた夜間も含め、業務に集中できる就労時間帯を主体的に決めたいという在宅勤務者のニーズがある。企業側としても、個人の自律的で柔軟な働き方を後押しする観点から、上記のような個々人のニーズに応じた働き方を認めていきたいと考えるところ、現行法では、深夜労働規制が適用されており、深夜残業を認めにくい状況にある。

そこで、真に自発的な本人の同意があり、かつ労働者の自律的・主体的な働き方が認められるフレックスタイム制や裁量労働制の適用者等で、在宅勤務を実施し労働時間終了後通勤を要せず即時に休息ができる場合には、本人の希望に応じ、深夜労働を行った労働者に対する健康診断又は産業医による面接指導などの健康管理措置を行うことを前提として、以下のいずれかを認めるべきである。

  1. ①各月の深夜労働の回数制限を設けたうえで、深夜労働に対する割増賃金規制を適用しない(ただし、深夜の勤務時間をあわせて1日の労働時間が8時間を超えた場合は、通常どおりの深夜割増賃金を払うこととする)

  2. ②現行法で厚生労働大臣が必要と認める場合はその定める地域又は期間について深夜割増賃金規制の対象時間を午後11時から午前6時までとすることが認められているところ、就業規則等により割増賃金規制の対象時間を数時間後ろ倒しする

これにより、労働者の健康に十分配慮しつつ、育児・介護等との両立をはじめとする、個々人の就労ニーズにあわせた柔軟な働き方が広がると期待される。

なお、2023年度の「規制改革・行政改革ホットライン」回答で厚生労働省は「深夜労働に対する割増賃金規制は、労働強度に対する補償であり、かつ、健康確保のための長時間労働抑制効果も一定あると考えられる」としているが、本要望は、自律的・主体的な働き方が可能である労働者が自発的に同意した場合に限定しており、そのため、会社が労働強度の高い仕事を指示しているという厚生労働省の指摘はあたらない。また、例えば深夜労働に入る前の時間を含め1日8時間を超えた場合は深夜割増賃金を支払うこと、適切な健康管理措置の実施を前提としていることから、長時間労働になるとの指摘もあたらない。当然、全面的な深夜割増賃金規制廃止を求めたり、健康確保を蔑ろにしたりする主旨では全くない。厚生労働省には、労働者のニーズを的確にとらえたうえで、柔軟な検討を求める。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第37条第4項

Ⅲ. 2024年度規制改革要望【新規】

1. デジタル

No. 3. 完全無人店舗における酒類販売時のデジタル技術活用に係る要件明確化
<要望内容・要望理由>

人手不足の小売業において省人化や無人店舗のニーズが高まる中、有人店舗内セルフレジでの年齢確認に関しては、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会が策定した「デジタル技術を活用した酒類・たばこ年齢確認ガイドライン」(2023年1月)において、必要とされる年齢確認手法とその保証レベルについて一定の基準が示された。そのため、有人店舗内の非対面の販売は可能となってきている。

また、酒類自動販売機については、国税庁として、酒類販売管理者の氏名、連絡先の所在地、電話番号の表示及び、運転免許証やIDカードにより購入者の年齢を確認できる機能を備えた改良型機であること等を条件に酒類の販売を認めている。

一方で、完全無人店舗における酒類の販売条件については明文化されていない。デジタル技術を利用した完全無人店舗での販売が可能か非公式に国税庁に確認したところ、酒類販売管理者制度が無人店舗の存在を想定していないので判断できない旨の回答があった。

そこで、「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達」及び「酒類販売管理者制度に関するQ&A」(国税庁)において、確実な年齢確認を実施できる完全無人店舗においても酒類の販売が可能であることを明示するよう求める。そのうえで、年齢確認の際に用いるべきデジタル技術の要件を明確化すべきである。

デジタル庁は2023年9月より、ライブイベントにおける酒類等提供時の年齢確認にマイナンバーカードを活用する実証実験を開始した。一例としてマイナンバーカードの公的個人認証サービスと生体認証の組み合わせなど、デジタル技術を用いて身元確認と当人認証を適切に行うことで、完全無人店舗であっても、未成年による飲酒の防止等、酒類の適正な販売管理の確保は可能である。

これにより、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針2024)が示した「業績改善にもつながるデジタル化や省力化投資の取組を支援する」という方針のもと、デジタル化、自動化・省力化を推進することができる。

<根拠法令等>
  • 酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達
  • 酒類販売管理者制度に関するQ&A
No. 4. 社債権者集会のバーチャルオンリー開催の容認
<要望内容・要望理由>

社債発行会社の業績や財務状況が悪化し、社債の償還や利払い、財務上の特約の履行などが懸念される場合、社債発行会社等が社債権者集会を開催し、社債権者の多数決により支払の猶予や特約事項の変更等を行うことがある。この手続は、社債権者の円滑な意思決定を可能とし、社債権者保護に資するものである。したがって、必要なときに、社債権者集会を機動的かつ効率的に開催できるようにすることが望ましい。

2021年の産業競争力強化法改正により、株主総会については、一定の要件を満たす場合にバーチャルオンリー開催が認められている。一方、社債権者集会については、現行の会社法ではバーチャルオンリー開催が認められていない。

社債権者集会は緊急事に際して開催されるものであるため、機動的かつ効率的な開催を可能とする制度設計は株主総会以上に必要と考えられる。社債権者の保護を強化する制度を整備することは、社債市場の活性化を通じて社債投資家の裾野を広げ、ひいては会社による資金調達手段の多様化にもつながると期待される。

さらに、社債権者集会の決議は株主総会の決議と異なり、裁判所の認可を受けて初めて効力が生じる。すなわち、社債権者集会の開催方法等が適切であったか否かは、裁判所が事後に判断することを踏まえ、社債権者集会の開催方法については、株主総会よりも柔軟な対応が認められてもよいと考えられる。

そこで、社債権者集会についてもバーチャルオンリー開催を可能とすべきである。

<根拠法令等>
  • 会社法第719条
  • 産業競争力強化法第66条
No. 5. 資金決済法における前払式支払手段の適用除外の見直し
<要望内容・要望理由>

資金決済法は、前払式支払手段の利用者を保護するため、その発行者に対して登録、資産保全、社内体制整備等の義務を課している。ただし、「その利用者のために商行為となる取引においてのみ使用することとされている前払式支払手段」については、利用者保護の必要がないため、適用除外とされている。

一方、医師、弁護士、公益法人等の取引は、商行為に該当しないことがある。例えば、医療法人が広告事業者からポイントを購入し、そのポイントを消費して広告サービスを利用する行為は、一般的に商行為に該当しない。そのため、それらに対して発行される可能性がある前払式支払手段は、当該適用除外を受けることができない。したがって、当該前払式支払手段の発行者には、未使用残高の2分の1以上の額の資産保全など、利用者保護のための措置が求められる。

しかし、医師、弁護士、公益法人等も、株式会社等と同様に、同種の取引を継続して行っているため、消費者と同様の保護は必要ない。これらの職業や団体は、専門的な知識や一定程度の運営能力を持ち、利用者保護の観点からも過度な規制は不要である。

そこで、医師、弁護士、公益法人等に対して発行する前払式支払手段についても、資金決済法における前払式支払手段の規定の適用除外とすべきである。

要望が実現することで、医師、弁護士、公益法人等へのキャッシュレス決済手段の提供が容易になり、その利用が拡大すると期待される。

<根拠法令等>
  • 商法第501条、第502条、第503条
  • 資金決済法第4条第7号
No. 6. 空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの普及に向けた制度整備
<要望内容・要望理由>

電波の送受信により無線での電力伝送を可能とする空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムは、電波法上の「無線設備」として位置付けられることから、設置にあたって総務大臣の免許を受ける必要があり、同システム普及の障壁となっている。

そこで、空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムについて、無線LAN等の「小電力データ通信システム」と同様に、技術基準への適合等を前提として電波法上の「無線設備」の対象外とする、あるいは、一般消費者向け等の規格を別途定めたうえで免許を不要とすべきである。

空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの普及によって、充電ケーブルの接続や電池の交換を行うことなく給電が可能となることから、利便性の向上とともに、IoTひいてはIoEのさらなる普及・発展を通じたSociety 5.0の実現に寄与することが期待される。

<根拠法令等>
  • 電波法第2条、第4条
No. 7. 技適未取得機器を用いた実験等の特例制度の届出制撤廃*
<要望内容・要望理由>

電波法の下、特定無線設備が電波法令の技術基準に適合していることを証明する日本独自の制度として技術基準適合証明(技適)があるが、特例制度に基づく届出によって、180日以内の技適未取得機器の実験等が可能とされている。

しかし、180日以内に実験等を終えられるケースは少なく、また、同一目的での届出は認められていない。例えば、ある企業では全届出の7~8割は180日以内に完了せず、特に量産開発の一環としての実験等を180日以内で完了することは困難である。

180日を超過した場合は電波暗室等の適切な場所を確保して実験等を行うか、技適を取得することになるが、レンタル可能な電波暗室の数は限られており、移動工数も発生するため、実験スケジュールの長期化やコストの増加につながっている。

日本ではこのような規制が存在するのに対し、欧州(EU加盟国:CE)、米国(FCC)等の諸外国においては、実験等を目的とした場合には許可制・届出制を採っていない。

そこで、①電波に関する外国の認証(FCC ID、CEマーク等)を取得済みの場合、または、②無線従事者が電波法の技術基準に適合することを確認している場合、については、特例制度の届出を不要とすることを要望する。

無線機器の利用のさらなる拡大が見込まれる中、要望の実現によって、研究開発における時間・費用の負担軽減#2、ひいては、全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、社会課題の解決につながるSociety 5.0 for SDGsの実現に資することが期待される。

<根拠法令>
  • 電波法第4条の2第2項、第3項
  • 電波法施行規則第6条の3第2項
No. 8. 防災センター設置義務基準の明確化
<要望内容・要望理由>

消防法施行規則第12条第1項第8号において、一定規模以上の防火対象物に防災センター等を設置するよう義務付けられている。2018年度規制改革ホットラインの所管省庁の回答において、本規則は各棟に防災センターを設置するように義務付けているわけではないとされているが、一部の自治体では、一定規模以上の防火対象物ごとに防災センターを義務付ける条例を定めている。

このため、複数の防火対象物が集中的に整備されているエリアでは、防災センターや要員を棟ごとに確保する必要があり、ビル管理の人手が不足する中、DX等を活用した防災体制の効率化による人手不足の解消が喫緊の課題となっている。

そこで、同一エリア内の複数棟の防火対象物を一括監視する防災センターからの消防用設備等の遠隔監視や、発災時の防災センター要員の駆け付け体制を構築し、消防庁または自治体が認めた場合、複数の防火対象物を集中管理できる防災センターの設置を可能とする制度を消防法に位置づけるべきである。

これにより、一部自治体の条例の見直しが促され、防災センター要員や防災業務の効率化が進展することが期待される。

なお、当該制度における一元的に管理することが許容される防火対象物は、防災センター要員が駆け付け可能な一定の範囲に限定するものとし、充分な安全性が担保されていると消防庁あるいは自治体が認めた場合に限ることとし、基準の細目までは定めず、個別の防火対象物及び管理体制の実態に応じた柔軟な制度とすべきである。

<根拠法令等>
  • 消防法施行規則第12条第1項第8号
No. 9. 携帯電話の法人契約における本人確認の効率化
<要望内容・要望理由>

法人が携帯電話を契約する際、①契約者である法人、②当該法人の担当者である個人、の両方について本人確認が必要とされる。しかし、現状はオンライン取引が主流にもかかわらず本人確認手法がアナログかつ効率的でないため、円滑なビジネスを阻害している。

具体的には、追加申込時の本人確認の簡略化が法人には認められている一方、担当者個人には一切認められていない。また、非対面での本人確認における電磁的方法の利用に関しても、担当者個人はeKYC(オンライン上での本人確認)を利用できるにもかかわらず、法人には登記住所への転送不要郵便等の送達確認しか認められていない。このように、法人と担当者個人それぞれに認められる本人確認の手法が整合的でないため、実態面で手続き簡素化につながっていない。

今日の経済社会活動においてスマートフォンは不可欠なツールとなっており、約2万社の企業は毎月、回線の追加申し込みを行っていると推定される。加えて、年間で複数回追加申込を行う企業まで含めれば32万社に上ると推定される(実例を基に試算)。これらすべての契約において時間と手間を要する本人確認を行わなければならないことから、携帯電話事業者と顧客である法人の双方に過度な事務負担が生じ、ビジネスのスピードを低下させている。

そこで、追加申込時の担当者個人の本人確認についても、法人のそれと同様、過去の契約時における本人確認情報と照合する方法を認めるとともに、法人にもID・パスワード・ワンタイムパスワード等、顧客しか知り得ない情報を用いた電磁的方法による本人確認を認めるよう要望する。

これにより、正確で安全・安心な本人確認とともに、携帯電話事業者と顧客である法人双方の事務負担の軽減及びビジネスの円滑化の両立が可能となる。

なお、犯罪対策閣僚会議が取りまとめた「国民を詐欺から守るための総合対策」(令和6年6月18日)では、携帯電話契約時にマイナンバーカードを用いた本人確認の厳格化(非対面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化)が定められたが、現在の規定では公的書類の掲示を受けた携帯電話事業者が目視で確認している。法人に対しても電磁的な方法を認めることは、本人確認の実効性の担保に資するものである。

<根拠法令等>
  • 携帯電話不正利用防止法施行規則第3条、第4条、第19条第5項
No. 10. 届出電気通信事業者及び媒介等業務受託者の手続き簡素化
<要望内容・要望理由>

近年のIoT技術の向上に伴い、通信以外の機器を扱うメーカーもIoTサービスを拡充する中、保守設備業者によるIoT活用の遠隔監視・保守等のサービス提供と業務効率化のニーズが高まっている。

一方、電気通信事業法の下、通信機能を有するサービスの提供者(届出電気通信事業者)には、電気通信事業者としての届出や年1回の電気通信番号の使用に関する報告義務が課されている。また、通信機能を有するサービスを顧客に紹介する事業者(媒介等業務受託者)として販売代理店の届出を行わなければならないケースがある。

管理業務の効率化を目的にIoTを活用する場合、通信機器として別の管理が必要となり、修理・保守業務を生業としてきた業者にはハードルが高い。加えて、前記いずれの事業者に属するかの判断は、生業とする業務及び顧客との契約のあり方により確定するため、業者が営業活動を開始する際にいずれの届出を要するか明確でない。そのため、IoTサービスを拡充する機器メーカーが当該事項をサプライチェーン全体に周知徹底・管理することは極めて困難である。

そこで、通信事業を直接的に行わない事業者が個々に届出や定期報告を行うことは不要とするよう要望する。例えば、特定の機能のみのIoTサービスについては機器メーカーが代表して電気通信事業者としての届出を行ったり、電気通信番号の報告義務についてはメーカーが一括して定期報告を行ったりすることなどが考えられる。

これにより、サプライチェーン全体における手続きの軽減はもとより、IoTサービスへの事業参入障壁が低下し、社会全体のDX推進におけるより一層の加速が期待される。ちなみに2023年度の業務用空調機器設置台数80万6,200台のうち、約8割はメーカー直系事業者以外が設置したものであり、本要望の実現による負担軽減、コスト削減効果は大きい。

<根拠法令>
  • 電気通信事業法第16条第1項、第73条の2
  • 電気通信事業報告規則第4条の11、第8条
No. 11. 建設工事請負契約における署名又は記名押印規制の緩和
<要望内容・要望理由>

建設業請負契約は、一般的に契約金額が大きく、契約期間も長期にわたることから、契約締結後のトラブルを未然に防ぐために、署名又は記名押印規制が課されている。しかし、請負契約の中には、契約金額が少額かつ契約期間が長期にわたらない契約も存在する。こうした小規模契約を含め、全ての請負契約に対し、押印等の規制を設け続けることは、IT・通信環境の進展に伴う現在の働き方に則しておらず、建設業の生産性向上を妨げる要因となっている。

なお、建設業請負契約は一定の技術的基準をクリアすれば契約を電子化することも認められているが、当該技術的基準が不明確であること、電子署名にコストがかかること等の理由で、契約の電子化はまだ一般化していない。

そこで、契約金額が小さく、契約期間が長期間にわたらない建設業請負契約においては、署名又は記名押印を不要とするなどの緩和をすべきである。

これにより、契約当事者双方において、物理的に紙に印刷して署名押印する業務が少なくなることで、現代の働き方に則した契約業務となり、建設業界の生産性向上が期待できる。

<根拠法令等>
  • 建設業法第19条第1項、第2項
No. 12. 建設工事請負契約における電磁的措置の技術的基準に係るガイドライン改定
<要望内容・要望理由>

建設工事の請負契約を電磁的に行う場合には、「建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン」(以下、ガイドライン)を遵守することとなっている。

ガイドラインは通知から既に20年以上が経過しており、進歩の激しい情報通信技術や、ガイドラインの名称にある法令条項すら最新情勢に対応していない(ガイドラインを規定する条項は建設業法施行規則第13条の2第2項から、第13条の4第2項に改正されているが、ガイドラインの名称は古いままとなっている)。このため、事業者から見て制度が不透明であり、契約のデジタル化を阻害する要因の一つとなっている。事実、「グレーゾーン解消制度」においても、国土交通省が所管する公開案件58件中21件が、当該ガイドラインに係る照会となっている(2024年7月時点)。

そこで、当該ガイドラインを最新の情報通信技術や社会情勢を踏まえた内容に改定すべきである。その際、ブロックチェーン技術のような最新技術や、前述したグレーゾーン解消制度で一定要件のもと認められた立会人型電子署名(ガイドラインでは当事者型電子署名のみを認めているような記述となっている)についても反映すべきである。

これにより、建設業における契約のデジタル化が進み、テレワークの促進、契約コストの削減、取引データの蓄積を通じた生産性の向上、信用情報の可視化など、経済の高付加価値化を進めることができるようになる。

なお、経団連の2021年度規制改革要望において契約の電子化を進める要望を行ったところ、国土交通省からはガイドラインの改定について必要な検討をする旨の回答があったが、現時点で改定に向けた動きが確認できない。期限を区切って、早急にガイドラインを改定すべきである。

<根拠法令等>
  • 建設業法第19条第3項
  • 建設業法施行規則第13条の4第2項(2021年改正前は第13条の2第2項)
  • 平成13年3月30日 国土交通省建設業課「建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン」
No. 13. 建設リサイクル法の届出手続きの円滑化
<要望内容・要望理由>

コンクリートや木材等の「特定建設資材」を用いた工事の発注者や自主施工者は、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」に基づき、同法第10条に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない(対象建設工事の届出等)。

近年、当該届出をオンラインで完結することが可能となったことは、行政手続きの効率化及び事業者の事務負担軽減の観点から評価できる。

しかし、一部自治体では、①オンライン非対応のため書面提出が必須、②国の標準書式とは異なる自治体独自の書式での申請が必須、③委任状への押印が必須、といったローカルルールが未だ存在している。このため、事業者は工事場所が立地する自治体固有の届出方法を都度確認し、必要に応じて対応を調整せざるを得ない状況にある。

そこで、国は、「ローカルルール見直しに係る基本的考え方」に示された「全国的に共通の取扱いとすべき場合には、(中略)技術的助言のかたちで運用のガイドライン等を周知することや、法令改正をすること等の必要な措置を講ずる」に基づき、係るローカルルールを是正する技術的助言(例:国の標準書式に基づくオンラインでの届出を原則とする、押印不要を原則とする等)を、各自治体に発出すべきである。

これにより、行政の効率化及び事業者の事務負担の軽減につながり、建設工事に係る資源の再資源化への取り組みが一層促され、DXを通じたサーキュラーエコノミーの実現に寄与することが期待される。

<根拠法令等>
  • 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律第10条
  • 令和5年6月1日 規制改革推進会議「ローカルルール見直しに係る基本的考え方」
No. 14. 公的個人認証サービスの提供情報拡大
<要望内容・要望理由>

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2024年6月21日閣議決定)に示されている通り、マイナンバーカードは、一人一人に最適化された利便性の高い行政サービスの提供や、行政機関の事務処理の効率化を実現するために重要な基盤である。

こうした政府の姿勢を踏まえ、マイナンバーカードが有する本人確認機能の民間ビジネスにおける利用の普及を図るべく、公的個人認証サービス(インターネット上で本人確認手段を提供するサービス)が提供されている。当該サービスを活用し、署名用電子証明書に記録される住所、氏名、生年月日、性別を活用することによって、顧客の入力に係る負担やミスを軽減し、オンラインで本人確認を完結することが可能となる。

例えば証券関連業務においても、当該サービスを顧客の氏名や住所の変更手続きにおいて活用するニーズがある。一方、証券会社には、顧客のカナ情報を使用せざるを得ない書類や手続きも存在する(顧客のカナ情報を使用する書類・手続きの例:障害者等のマル優、特別マル優におけるみなし廃止通知書(カナ氏名、カナ住所)等)。これらの書類・手続きには氏名や住所のカナ情報も必要とされるため、現行4情報のみでは対応できず、顧客から改めてカナ情報を収集しなければならない。年間16万件にのぼる氏名や住所変更の届出を受けている証券会社もあり、公的個人認証サービスによる4情報に加え、カナ情報も活用できれば、手続きの迅速化ならびに事務コストの低減が大きく期待できる。

そこで、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を踏まえた真のデジタル社会を実現する観点からも、公的個人認証サービスによって提供される情報に住所のカナ情報を含めるよう要望する。

こうした提供情報の拡大によって、公的個人認証サービスの一層の活用につながり、利用事業者ならびに顧客双方の利便性向上に資することが期待される。

<根拠法令>
  • 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律
  • 平成27年9月 デジタル庁・総務省「公的個人認証サービス利用のための民間事業者向けガイドライン」5.本人同意に基づく最新の利用者情報(基本4情報)提供サービスの概要
No. 15. 金融機関におけるマイナンバーの利用範囲拡大
<要望内容・要望理由>

証券業界においては、年々相続の申出件数が増加しており(ある証券会社では2018年度:約5万件 → 2023年度:約6万件と増加)、今後も引き続き増加が見込まれている。また、被相続人が複数の口座を保有するケースも少なくないことから、証券会社・相続人双方に口座の特定等の負担が生じているのが現状である。さらに、NISA(少額投資非課税制度)口座と特定口座等、一人で複数の口座を保持する顧客が増加する中、金融機関は同一人物の特定(名寄せ業務)に苦慮している。

そこで、マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)によって限定されているマイナンバーの利用範囲を拡大することで、金融機関間での名寄せ利用を可能とするとともに、相続財産の管理証券会社や被相続人の口座有無を特定する仕組みを構築するよう要望する。

これにより、マイナンバーの利用拡大に加え、事業者と相続人等、国民全体の利便性向上に資することが期待される。

<根拠法令等>
  • デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第19条
No. 16. 行政機関等匿名加工情報の民間事業者等による利用促進
<要望内容・要望理由>

個人情報の適正かつ効果的な活用による新産業の創出、活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現という観点から、行政機関の保有する個人情報を加工して作成する行政機関等匿名加工情報を提供する仕組みが実装されている。

これにより、個人データの利活用を通じて、新規事業の創出や住民サービスの向上等、事業者による価値創造が期待される(想定される活用例:①学習コンテンツ利用状況や教員の指導計画を活用した新教材の開発、②介護関連情報を活用したケアプランの開発、③健診情報や医療関連情報を活用したヘルスケアサービスの開発等)。

個人情報保護法施行規則では、行政機関等匿名加工情報の提供の「提案の募集は、毎年度一回以上、当該募集の開始の日から三十日以上の期間を定めて」実施する旨定めているが、必要最低限の回数及び期間で提案募集を実施している省庁や地方公共団体が少なくない。

こうした中、事業者はデータ取得に要する所定の手数料と、匿名加工費用(1回あたり数十万~数百万円)を支払っているにもかかわらず、以下の課題に直面し、費用対効果が著しく損なわれているのが現状である。

  1. ①事業によってデータの取得・活用が必要な時期が異なるため、提案募集のタイミングによっては時機を逸する場合がある

  2. ②提案募集の時期が不明瞭なため、予算化等を含む事業計画の策定が困難

  3. ③1年に複数回更新されるデータであっても、年に1度の提案募集であれば、鮮度の高いデータを取得することが困難

また、都道府県及び指定都市以外の地方公共団体では、当該制度の適用について経過措置が講じられているが、とりわけ市民生活向上に資するサービス提供のために必要なデータは市町村が保有しており、早期の活用が求められる。

そこで、当該制度における提案募集について、例えば福岡市のように、回数や期間を撤廃し、定常的なものとすることを要望する。また、都道府県及び指定都市以外の地方公共団体における当該制度の適用を早期に実現するよう求める。

その際、提案書の審査基準等を個人情報保護委員会がより厳密に公表することによって、審査者(行政機関等)及び提案者(民間事業者等)双方の負担軽減のほか、制度活用の活性化にもつながることが期待される。

<根拠法令等>
  • 個人情報保護法第111条
  • 個人情報保護法施行規則第53条第1項
  • 個人情報保護法附則第7条
No. 17. 組織再編等における公告事項への法人番号の追加
<要望内容・要望理由>

株式会社等の法人が組織再編、減資、または倒産手続を行う時などにおいて、債権者保護等の観点から官報による公告が行われる。当該公告には、法人を特定する情報として法人の名称、住所、代表者氏名の3点が記載される。

しかし、これらの情報だけでは、法人を正確に特定できないことが多い。例えば、法人名称の変更やバーチャルオフィスの利用、清算会社の設立等により、同一社名や同一所在地の法人が多数存在することがある。その場合、現行の法人情報だけでは十分に特定できず、設立年月、法人の名称及び住所の変更履歴等を追加して確認しなければ、法人を判別して特定できない。

加えて、金融業界を中心に多くの取引先を有する事業者においては、法人の特定に要する作業が大きな負担となっている。特に、合併等の場合、1つの公告に複数の会社の法人情報が掲載されるため、すべての法人情報を収集し、法人を判別して特定する必要がある。

そこで、法人に関する公告のうち、官報による公告が法律上義務付けられているもの(組織再編公告、減資公告、倒産公告など)は、ひな型に法人番号の記入欄を設けるなど法人番号の記載を推進すべきである。

これにより、法人の照合が機械的に可能となり、情報の取得がより正確かつ確実になる。また、特定に係る作業負荷が軽減する効果も期待される。

なお、政府の官報電子化検討会議「官報電子化の基本的考え方(2023年10月25日)」においても、官報に掲載された情報について、機械可読なデータ構造とすることにより、「デジタル技術を活用した官報掲載情報の利活用が大きく拡大・進化することが期待される」との考え方が示されている。公告への法人番号追加は、この方針と合致する。

<根拠法令等>
  • 官報の発行に関する法律第4条第1項第2号
  • 会社法第449条第2項、第499条第1項、第789条第2項、第799条第2項、第810条第2項、第816条の8第2項
  • 破産法第32条第1項
  • 民事再生法第35条第1項
  • 会社更生法第43条第1項

2. 環境

No. 18. 使用済みの靴の再資源化促進に向けた制度整備
<要望内容・要望理由>

現在、世界では年間239億足の靴が生産されるが、その90%以上がごみとして廃棄され、その総量は年間約2,000万トンに相当するとされている。使用済みの靴はごみとして廃棄されるのが一般的であるが、今後、この分野においても研究開発等を通じて、サーキュラーエコノミーへの移行に取り組む必要がある。

しかし、使用済みの靴の排出元は各家庭であることが多く、一般廃棄物となるため、製造・販売事業者等による回収や再生利用への取り組みが進みにくいのが実情である。

わが国においては、拡大生産者責任に則り、製造事業者等自身が自社の製品の再生又は処理の行程に関与することで、効率的な再生利用等を推進することを目的とする広域認定制度が設けられている。これまでに産業廃棄物では300件以上、一般廃棄物でも50件弱の事例が認定されており、事業者による資源循環への取り組みを後押ししている。

そこで、広域認定制度の対象として「靴」を追加する、もしくは、2024年5月に公布された「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」における大臣認定の対象とすることを検討すべきである。

これにより、消費者が使用済みの靴を再資源化できるルートを確保し、それらへの認知が高まることに加え、使用済みの靴をビジネスベースで再資源化する取り組みが促進されることが期待できる。

<根拠法令等>
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第9条の9
  • 資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律
No. 19. 消費者から回収した再資源化目的の廃棄物に関する輸出規制緩和
<要望内容・要望理由>

廃棄物処理法に基づく廃棄物の輸出入規制は、国内における排出事業者責任の空洞化を防ぐ目的での国内処理の原則や、国外において生じた廃棄物が国内における廃棄物の適正処理に支障をきたすことを防止する観点から制定されている。こうして、廃棄物における不法な輸出入を厳しく取り締まることは、わが国の生活環境の保全や公衆衛生の向上に寄与している。

一方で、循環経済の実現が国家戦略として位置付けられ、企業においても経営課題となっている昨今では、事業者が再資源化等に取り組む際のビジネスモデルを検討する過程で、輸出規制の緩和がビジネスベースで取り組むうえで必要との意見がある。具体的な一例としては、消費者から回収した使用済みの靴などを再資源化すべく、高度な技術を持つ海外企業に処理委託を行うために輸出を行うといったケースである。現状では、こうしたケースであっても、廃棄物の輸出と見なされ大臣の確認を受けなければならず、一般廃棄物にあたるとされた場合、その申請ができるのは市町村であり、「自らの事業活動に伴って生じた一般廃棄物を輸出する場合」を除き、事業者が申請者となることは想定されていない。なお、産業廃棄物については事業者が輸出の申請をすることができる。

そこで、輸出先の国における再資源化が確実であること、申請者が排出事業者責任の観点から不適正処理の未然防止策を講じることを前提に、自社が製造・販売した使用済み製品を国内で回収し、国外で再資源化する事業者については、回収した使用済み製品を産業廃棄物として扱い事業者が輸出申請できるようにすべきである。または、このような事業者を一般廃棄物の輸出の申請対象に加えるべきである。

これにより、事業者がグローバルのサプライチェーンを活用して再資源化等の促進に取り組むことを可能とすると期待できる。

<根拠法令等>
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第10条、第15条の4の7
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第6条の26
No. 20. プラ新法での自主回収・再資源化に際しての再委託の容認
<要望内容・要望理由>

海洋プラスチックごみ問題、気候変動、諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応を契機に、日本国内でプラスチックの資源循環を促進する重要性が高まっている。多様な物品で使用されるプラスチックに関して、包括的に資源循環体制を強化する目的で、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下、プラ新法。2022年4月施行)」が制定された。

プラ新法では、国の認定を受けることで廃棄物処理法上の特例を受けられる規定があり、特に第39条第1項「製造・販売事業者等による自主回収・再資源化」では、政府からいくつかの事例が認定を受けている。プラスチック使用製品の製造、販売又は提供する事業者が、自治体や消費者と協力して積極的に自主回収・再資源化を行っている。

一方で、プラ新法では、認定の申請者が、収集・運搬及び再資源化事業(処分・再資源化)を委託することは認められているが、再委託は認められていない。全体としては廃棄物処理法からの緩和措置を恩恵として受けられるものの、効率的な物流網の利用及び処分・再資源化には課題が残る。

そこで、再委託の受託者がプラ新法の「事業者による自主回収・再資源化事業計画の認定における収集、運搬の受託者」の基準を満たすこと、認定の申請者が排出事業者責任を持つことを前提に、プラ新法の認定の申請者と委託契約を結んだ受託者が、その他の収集・運搬事業者にその業務の再委託を可能とすべきである。

これにより、既にプラ新法の認定を受けている事業者が、実務上の過大な負担をすることなく、需給の状況に伴う繁忙に取り組むことが可能となる。また、今後企業が制度の活用を考える際、ビジネスの実効性を踏まえた検討を行いやすくなり、わが国におけるプラスチック資源循環の一層の促進が期待される。

<根拠法令等>
  • プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)第39条第1項、第2項第5号、第2項第6号
No. 21. 排出場所と同一敷地内での廃棄物発電事業等の容易化
<要望内容・要望理由>

廃棄物処理政策は、廃棄物の適正処理の確保を前提として、3Rの推進、地球温暖化対策への寄与といった様々な要請に応えながら今日に至っている。廃棄物分野における地球温暖化対策に資する取り組みとして、熱回収を含めた廃棄物による発電がある。発生抑制・再利用・再生利用のいずれもできずに「燃やさざるを得ない廃棄物」となったものから得られるエネルギーを有効活用することは、循環型社会形成推進基本法でも「熱回収」として位置付けられている。

廃棄物の熱回収を排出事業者が実施するにあたり、その設備投資が課題となるため、リサイクル事業を実施するSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)等を設立して、資金を調達する手段が考えられる。

具体的な事業として、家畜糞尿を用いたメタンガス化発電事業(売電事業)を、排出事業者(畜産事業者など)の敷地内で、排出事業者を構成員に含むSPCで実施するケース等が想定される。しかし、同一敷地内にも関わらず、排出事業者と発電事業者(SPC等)が別法人であるために、排出場所から発電設備までの敷地内移動についても廃棄物処理法の適用対象となりマニフェスト発行等の事務負担が生じることとなる。

そこで、排出事業者が、廃棄物を排出事業者の敷地内から外部へ持ち出すことなく、同一敷地内で発電等による熱回収等を実施すること、ならびに廃棄物処理法上の基準に従って生活環境保全上の支障が生じない措置をとることを前提に、同一敷地内での排出場所から発電設備等への別法人間での廃棄物の移動については、廃棄物処理法上の適用対象外とすることにより実務上の負担の適正化を図るべきである。

これにより、産業廃棄物の排出事業者が、自らの敷地内でメタン等を用いた発電等による熱回収を行いやすくなり、循環型社会と低炭素社会の統合的実現に資する取り組みの促進が期待できる。

なお、廃棄物処理法第12条の7で「二以上の事業者による産業廃棄物の処理に係る特例」が設けられているが、「一体的に経営をしていること」等の要件があり、SPCでは特例の認定を受けられない状況にある。

<根拠法令等>
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第11条、第12条、第12条の7
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第8条の38の2
No. 22. 親子会社間における廃棄物の保管・委託等の一体的推進の容易化
<要望内容・要望理由>

事業者が産業廃棄物の処理を自ら行う場合、廃棄物処理業の許可は不要である一方、処理を他に委託する場合には、委託先は処理の業許可を得ている必要がある。許可制度を設け、許可基準に適合する事業者が廃棄物処理を行うことで、生活環境保全上の支障が生じる可能性や不法投棄等の不適正処理を未然に防止している。

しかし昨今、経営効率化の観点から企業の分社化等が進む中、一つの事業者であったものが、同一敷地内で親会社と子会社に分かれているケースが出てきている。こうした場合、従前(親会社と子会社に分社化される前)と排出や委託等の実態が変わらないとしても、二つの事業者に分かれることで廃棄物の保管や処理委託等を個別に実施する必要があり、事業者側の負担となっている。

そこで、廃棄物処理法の基準等を満たし、①同一の敷地内かつ子会社の発行済株式の総数を保有する(100%の親子会社関係等、一体的な経営を行っている)こと、②排出事業者責任は親会社にあること、もしくは親子会社間でそれぞれに共有したうえで、親会社が同一敷地内の子会社の廃棄物を集約して保管・委託等を可能とすることで、事業者側の実務負担をできるだけ効率化すべきである。

これにより、適正処理の確保に係る社会全体のコストが下がることが期待される。

<根拠法令等>
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第3条、第11条、第12条の7
No. 23. 店頭回収されたペットボトル等の効率的な収集運搬の加速化
<要望内容・要望理由>

スーパーマーケット等によるペットボトル等の店頭回収は、効率的・効果的な分別排出・回収・リサイクルに資する取り組みであるとともに、住民の意識向上や環境教育の観点からも有益なものである。こうした店頭回収は、スーパーマーケット等を中心に自主的に取り組まれており、事業者からはこの取り組みを継続・拡大したいとの声がある。

店頭回収されたペットボトル等は、自治体から「資源物」と判断され、商品配送の帰り便等を活用した物流ルートにより中間処理業者に引き渡されることで、社会全体でのコスト負担を下げる効率的な資源回収が実現している。

一方で、一部の自治体では、リサイクルを目的として店頭回収されたペットボトル等であっても、収集運搬費と引取価格の比較による有価性の有無などを根拠に「廃棄物」と見做されることがあり、廃棄物処理法上の許可車両での運搬が必要になるため、効率的な資源回収の妨げになっている。「廃棄物」への該当性は、輸送費の取扱等のみならず、物品の性状や排出状況等のその他の要素も含めて総合的に判断されることとされており、各自治体の判断には差異がある。

そこで、各事業者が、適正処理を行うための処理委託契約を行うなどの措置を講じている等、資源循環等を目的とするペットボトル等の店頭回収を行う場合には、これらを「資源物」と見做すことを妨げるものではないことを、国として各自治体に対し通知・通達すべきである。

これにより、全国に多数あるスーパーマーケット等での店頭回収が加速し、わが国における容器包装リサイクルの一層の促進が期待される。

<根拠法令等>
  • 令和3年4月14日 環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長通知「行政処分の指針について」
  • 平成28年1月8日 環廃企発第1601085号、環廃対発第1601084号、環廃産発第1601084号、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課リサイクル推進室長、廃棄物対策課長、産業廃棄物課長通知「店頭回収された廃ペットボトル等の再生利用の促進について」
No. 24. 小型家電リサイクル法の認定に係る登録管理項目の一部緩和
<要望内容・要望理由>

今後需要の大きな高まりが予想される希少金属・レアメタルは、ほぼ100%を輸入に依存していることから、経済安全保障上の課題となっており、その確保は国をあげて取り組むべき重要課題である。しかし、希少金属・レアメタルを製品内部に含む使用済みの携帯電話(スマートフォンやフィーチャーフォン)は「処分方法や持ち込み先が分からない・廃棄機会がない」ことを理由に、約9,400万台もの端末が自宅等に保管されているとの推計もある。これらの回収について、消費者に一層呼び掛け、適正な個人情報管理を行いつつ回収量を増やすことは、新しい社会課題である。

政府は、「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(以下、小型家電リサイクル法)」を2013年に制定し、国内の「都市鉱山」に埋蔵されている有用な資源を再資源化することを掲げ、大臣認定制度を設けている。しかし、大臣認定に際して、この認定を受けようとする事業者(再資源化事業者等)は、回収拠点(ボックスの設置場所、対面回収を行っている場所)の名称や所在地などの登録が必要であることに加え、認定後も回収拠点情報の管理及び変更手続きが都度必要となっている。これら手続の煩雑さが事業者側の実務上の負担として大きいとの指摘がある。

そこで、同法での大臣認定に際して、回収拠点については、回収拠点運営事業者(回収拠点とは、街中に展開する店舗等を想定。運営事業者とは、各店舗を運営する企業の本社を想定)のみを大臣認定の際の登録管理の対象とし、回収拠点運営事業者の直営店舗やフランチャイズ店舗等については登録管理の対象としないことにより、携帯電話等の使用済み製品の広域回収を行おうとする認定事業者の実務上の負担の軽減・適正化を図るべきである。もしくは、2024年5月に公布された「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」における大臣認定の対象として、携帯電話等の小型家電の回収(消費者が使用済み製品を持っていきやすい形での店頭回収など)を検討すべきである。

これにより、既に小型家電リサイクル法の認定を受けている再資源化事業者等の認定事業者は、不適正処理の未然防止に十分に留意することを前提として、現状より広域かつ効率的に携帯電話等の小型家電の回収を行うことが可能となる。加えて、国内の「都市鉱山」に埋もれた稀少資源の再資源化促進を通じた経済安全保障にもつながることが期待できる。

<根拠法令等>
  • 使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)第10条、第11条
No. 25. 原子炉関連技術の役務取引許可に関する規制緩和*
<要望内容・要望理由>

現在、「原子炉若しくはその部分品若しくは附属装置又は原子炉用に設計した発電若しくは推進のための装置」の「設計、製造又は使用に係る技術」の外国への役務提供について、「特定技術」として、取引ごとに経済産業大臣から許可を取得することが求められており、許可取得には、外交手続き含め半年以上を要する。

他方、米国においては、原子力技術に関する輸出規制である連邦規則10巻810条(10CFR810)により、日本を含む特定国への技術輸出について、一般許可例外として許可申請が不要である。また、カナダから日本へ同様の技術を輸出する際も、外交手続きを伴わない申請プロセスを2~3ヶ月程度で役務取引許可が発行される。

現在、新型炉の商業化に伴い、新規参入の機会が拡大しているが、役務取引許可の取得に半年以上を要するため、日本企業が入札へ参加できない、また、外国企業からの協業要請に応えられないといったケースが発生し、商機を逸する要因となっている。

そこで、原子炉関連技術の海外向け役務提供について、例えば、米国が10CFR810にて同様の技術輸出を許可不要と定めている国など、特定国への技術輸出について、同盟国である米国と同様の運用ができるようにすべきである。

これにより、日本企業による原子炉関連技術の輸出拡大が見込まれ、GXに不可欠な原子力関連技術の競争力向上が期待できる。

<根拠法令等>
  • 外国為替及び外国貿易法第25条第1項
  • 外国為替令第17条第2項

3. 人の活躍

No. 26. 職業紹介事業における求人・求職申込受理時の説明手段のデジタル化
<要望内容・要望理由>

「職業紹介事業の業務運営要領」では、求人の申込みまたは求職の申込みを受理した民間職業紹介事業者に対して、取扱職種の範囲等に係る情報を、原則、書面の交付によって、求職者・求人者に明示することが求められている。例外的に、ファクシミリを利用する方法または電子メール等を利用する方法が認められているものの、書面の交付を受けるべき者(求人者・求職者)が当該方法を明示的に希望する場合に限られており、結果的に、職業紹介事業者における事務作業の煩雑化につながっている。

ファクシミリまたは電子メール等を受信する手段を持たない求人者または求職者の立場を損ねることのないよう設けられた規制と考えられるところ、既に、通信手段としては電子メール等のデジタルツールの活用が一般化する中、書面による交付を原則とする必要性は、ほぼ失われている。同時に、通信手段としてのファクシミリも、デジタル化・ペーパーレス化の潮流をとらえ、例外的な方法として位置付けることが適当である。

そこで、「職業紹介事業の業務運営要領」の規定を改め、当該明示義務については電子メールによることを原則とし、求人者または求職者が書面の交付またはファクシミリの利用を求める場合のみ、例外的にそれによることとすべきである。

これにより、民間職業紹介事業者の事務作業の効率化が進展し、人材マッチングの効率化に資することが期待される。また、必ずしも書面交付を求めない求人者・求職者は、電子的方法で簡便に必要な情報を得ることが可能となる。

<根拠法令等>
  • 職業安定法第32条の13、第33条第4項
  • 職業紹介事業の業務運営要領 第9 職業紹介事業の運営 8 その他(3)法第32条の13及び第33条第4項に関する事項(取扱職種の範囲等の明示)
No. 27. 職業紹介事業における職業紹介責任者の専属要件の見直し
<要望内容・要望理由>

職業紹介事業における職業紹介責任者は、求人者又は求職者からの苦情処理や個人情報の管理、職業安定機関との連絡調整に係る統括管理等の役割を担っており、事業所ごとに専属の職業紹介責任者(法定の職業紹介責任者講習を受講済かつ欠格事由に該当しない者)を選任する義務がある。

具体的には、当該事業所において職業紹介に係る業務に従事する者の数が50人以下のときは1人以上の者を、50人を超え100人以下のときは2人以上の者を、100人を超えるときは、当該職業紹介事業に係る業務に従事する者の数が50人を超える50人ごとに1人を2人に加えた数以上の者を専属の職業紹介責任者として選任しなければならない。人手不足が深刻化する中、限られた人的資源の下で事業を遂行している事業者にとっては、当該専属要件によって柔軟な人員配置が阻害されている。

そこで、職業紹介責任者の責務である、苦情処理・情報管理・助言・指導などについて、メールやオンライン会議ツールなどデジタル技術の活用によってリモートでの対応が可能な環境を整備し、従来と同程度の統括管理機能を維持できる場合には、職業紹介責任者の専属要件を緩和し、複数事業所の兼任を可能とすべきである。

このようなデジタル技術の活用によるアナログ規制(常駐専任要件)の見直しは、政府方針にも合致するものである。

これにより、職業紹介事業者が機動的な人員配置を実施することが可能となり、業務効率化並びに求人者・求職者に対するマッチングサービスの質及び量の向上が実現し、労働市場における雇用のマッチング機能の強化、ひいてはわが国産業の競争力の維持・向上につながることが期待される。

<根拠法令等>
  • 職業安定法第31条第1項第3号
  • 職業紹介事業の業務運営要領 第3 許可基準(3)(ロ)職業紹介責任者の選任
No. 28. 職業紹介事業及び労働者派遣事業における事業報告書の様式見直し
<要望内容・要望理由>

民間職業紹介事業者は、毎年4月末までに、事業所ごとに所定の様式(「職業紹介事業の業務運営要領」様式第8号・様式第8号の2)に従って事業報告書を作成して取りまとめの上、事業主管轄労働局に提出をすることが義務付けられている。

また、労働者派遣事業者も同様に、毎年6月末までに、事業所ごとに所定の様式(「労働者派遣事業関係業務取扱要領」様式第11号)に従って事業報告書を作成して取りまとめの上、事業主管轄労働局に提出をする必要がある。

これらはいずれも、複数の事業所を有する事業者や取扱い業務が多岐に渡る事業者においては、本店で一元管理しているデータをもとに、事業所ごとの各項目の数値を所定の様式に転記して作成する必要がある。各事業者は、データの整合性を確保しつつ事業所ごとの報告書を作成することに多大な労力と時間を費やしている状況である。

そこで、事業所ごとに作成する現行の様式に加え、デジタル技術の活用により、当該事業者に係る全事業所に関する情報をまとめて入力・作成・確認できる「一覧表」形式による事業報告を可能とするよう様式を追加すべきである。具体的には、表計算ソフト「Excel」等を活用し、本店が一括して電子データで作成可能な様式を整えるべきである。

「一覧表」形式による事業報告は事業所ごとの事業報告を包含するものであり、また、所要の操作によって必要な事業所に関する情報を容易に抽出することができるため、各事業所の運営実態を的確に把握するという職業安定法及び労働者派遣法の趣旨にも合致する。

これにより、職業紹介事業者及び労働者派遣事業者の業務効率化・生産性向上が実現し、労働市場におけるマッチング機能の強化、ひいてはわが国産業の競争力の維持・向上につながることが期待される。

<根拠法令等>
  • 職業安定法第32条の16(法第33条第4項又は法第33条の3第2項において準用する場合を含む)
  • 職業安定法施行規則第24条の8(則第25条又は則第25条の3第2項において準用する場合を含む)
  • 職業紹介事業の業務運営要領 第7 その他の手続等(7職業紹介事業報告)
  • 労働者派遣法第13条
  • 労働者派遣法施行規則第17条
  • 労働者派遣事業関係業務取扱要領 第4 事業報告等
No. 29. 副業・兼業における「管理モデル」の運用明確化
<要望内容・要望理由>

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、管理モデルについて、「管理モデルについても、一般的には、副業・兼業を行おうとする労働者に対して使用者A(副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者)が管理モデルにより副業・兼業を行うことを求め、労働者及び労働者を通じて使用者B(時間的に後から労働契約を締結した使用者)がこれに応じることによって導入されることが想定される。」と記述している。これは、本業先と労働者が、①「副業・兼業は管理モデルによること」、②「本業先の労働時間の上限時間数」、③「副業先の労働時間の上限時間数等を合意すること」を超える要件を課している。

また、同「わかりやすい解説」13頁に記載のある、副業・兼業に関する合意書様式例②(「管理モデル」により会社が労働時間管理を行う場合に労働者と合意する事項の例)には、(4)として、副業先企業が一定条件を遵守することを条件に、副業・兼業を認めるものであることとあり、事実上、本業企業、労働者、副業先企業の三者合意を強いる内容となっている。

そこで、厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」及び同わかりやすい解説において、管理モデルを用いる際、1)本人・本業先・副業先の三者間の合意は必要でないこと、2)労働者と副業先との間の契約では、上記①副業・兼業は管理モデルを利用する、上記③本業先と合意した「副業先の労働時間の上限時間数」の範囲内で副業先における上限時間数等を合意すれば足りること、3)現行「副業・兼業の促進に関するガイドライン」わかりやすい解説にあるような、本業先における管理モデル利用に際し、副業先が一定条件を遵守することを条件としないことを、それぞれ明記し、運用を明確化することを要望する。

これにより、副業・兼業に係る手続きの負担が軽減され、副業・兼業の促進につながり、労働者の自律的なキャリア形成、企業の生産性向上が期待される。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第38条第1項
  • 副業・兼業の促進に関するガイドライン
No. 30. 外国語指導助手(ALT)の資格外活動の包括許可の対象範囲拡大
<要望内容・要望理由>

在留資格「教育」を取得している外国人は、日本の小学校、中学校、高等学校等において語学教育等の活動が可能であり、2023年末時点で約14,000人となっている。このうちの多くが外国語指導助手(ALT)として、地域の外国語教育の普及や国際化の推進に貢献している。

しかし、在留資格「教育」では、幼稚園や保育園、大学等の高等教育機関、公民館等において外国語指導を行うことができない。このため、これらの活動を行おうとする場合、別途、「資格外活動」許可を受ける必要がある。「資格外活動」は大きく、①一定の要件に合致し、1週について28時間以内の活動である場合に包括的に資格外活動が許可される「包括許可」、②「包括許可」に掲げる範囲外の活動について、個々に許可される「個別許可」の2通りがある。近年では、幼稚園や保育園における語学教育だけでなく、放課後の語学指導や語学キャンプ、大人を対象とした公民館での語学学習といった、生涯学習・リスキリングとしての語学教育のニーズは増加しており、在留資格「教育」での活動範囲を超えた「資格外活動」の必要性が高まっている。

こうした中、在留資格「教育」を取得している外国人のうち、JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)等を通じて、地方公共団体等に雇用されているALT(2023年12月時点で約5,100人)は、「包括許可」の対象として認められている。一方で、民間企業において雇用されているALT(同、約6,200人)は、「包括許可」の対象と認められておらず、幼稚園や保育園、大学等の高等教育機関、公民館での外国語指導のそれぞれの活動ごとに、「個別許可」を受ける必要があり、その手続きは「包括許可」に比べて煩雑となっている。また、「個別許可」は教える場所に紐づいているため、病欠などで急にシフト変更が必要になった際に、他の教員に振り替えることも難しい。

そこで、地方公共団体等に雇用されているALTにのみ認められている「資格外活動」の「包括許可」の対象範囲について、民間企業において雇用されている在留資格「教育」のALTについても、その対象とすべきである。

これにより、民間企業で雇用されている外国人の負担軽減や教員シフトの柔軟化に加え、語学学習を通じた日本人のリスキリングやグローバルな視野を持った人材育成につながることが期待できる。

<根拠法令等>
  • 出入国管理及び難民認定法第19条第2項
  • 出入国管理及び難民認定法施行規則第19条第5項第2号
No. 31. 鉄道システム等のインフラ輸出に資する在留資格「研修」の要件緩和*
<要望内容・要望理由>

在留資格「研修」は、外国人が日本の公私の機関で行われる研修制度を活用して、日本で技術や知識を学ぶ資格である。現行の同在留資格は、ODA対象国等経済格差のある国からの受け入れを想定しており、日本の受入れ機関が研修に要する諸費用を負担することが前提となっている。

こうした中、日本の鉄道システムなどの交通・物流インフラは、持続的な経済発展の基盤となるものであり、日本国内に技術的優位性やノウハウの蓄積があるため、各国から依然として旺盛な需要があり、「実務研修」に対するニーズは大きい。また、近年では、東南アジアを中心にODA卒業国が増え、送出国側に負担能力があるほか、とくにリーダー層からは有償であっても「実務研修」を受けたいといったニーズが存在する。実際に、フランスやドイツ、中国では、自国の技術やノウハウの輸出を戦略的に進めるため、鉄道システムに関する有償の実務研修を積極的に受け入れている。

他方で、日本の在留資格「研修」における「実務研修」の実施は、国や地方公共団体のほか、国際協力機構(JICA)や海外産業人材育成協会(AOTS)等の公的機関の招聘等、公的な要素を含む研修に限定されている。したがって、民間企業主体による研修は、座学等の「非実務研修」のみが認められているため、研修者のニーズに応えられていない事例が存在している。また、リーダー層で質の高い技術を学ぼうとする研修生は、一国ではなく、様々な国での研修を通じてスキルアップを図っており、現行の制度では、日本が研修先の選択肢から外れており、諸外国へのインフラ輸出戦略における遅れがさらに拡大していくことが懸念される。

そこで、在留資格「研修」における、鉄道システム等のインフラ輸出に資する民間企業主体の研修について、一定条件下での実務研修を可能とすべきである。一定条件として、例えば、第三者機関への実習計画と実施後報告の作成・提出の義務づけや、公的機関での時間要件(実務研修は、研修を受ける時間全体の三分の二以下であること等)を踏襲することが考えられる。なお、現行の技能実習制度や企業内転勤といった在留資格の場合は、受け入れる外国人と雇用契約を結ぶことが前提であるため、相手国のインフラ企業が国営企業などで兼職の規制が厳しい場合、当該機関からの日本での受け入れが困難となる。また、技能実習制度は、リーダー層の受け入れを想定した研修の趣旨とは異なるため、在留資格「研修」での受け入れが適切である。

これにより、質の高いインフラシステムの海外展開を通じて、日本企業の有する技術や品質への信頼の獲得、産業競争力の強化、ひいては国際社会における日本の地位向上に寄与する。

<根拠法令等>
  • 出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号
  • 出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)の法別表第一の四の表の研修の項の下欄に掲げる活動
  • 平成24年3月30日 法務省入国管理局「パッケージ型インフラの海外展開に係る在留資格「研修」における「非実務研修」の範囲の明確化について」
No. 32. 在留資格「特定技能」のビルクリーニング分野への清掃サービス付帯型住宅の追加
<要望内容・要望理由>

在留資格「特定技能」における、活動が可能となる特定産業分野のうち、清掃業務関連ではビルクリーニング分野が設定されている。その業務内容は、建築物衛生法に基づく特定建築物(不特定多数が出入りするオフィスビルやホテル等)の清掃等に限定されており、住宅の専有部は、個人の責任の下で維持管理すべきものとしているため、同法で規定する特定建築物の対象からは除外されている。

他方で、共働き世帯の増加等により、住宅専有部においても、住民自らが清掃を行うのではなく、清掃サービスを活用する世帯が増加している。また、近年は、清掃サービスが付帯された住宅がオフィスビルと併設する形で増えており、そうした住宅の清掃サービスは、ビルクリーニングを行う清掃事業者が受託するケースもある。

こうした中、清掃事業者の現場では、日本人はオフィス専有部・共用部、住宅専有部・共用部等を一人で清掃することが可能であるが、特定技能の在留資格を持つ外国人は、住宅専有部の清掃が認められていないため、人員配置等における不都合が生じている。

そこで、在留資格「特定技能」のビルクリーニング分野の業務内容について、建築物衛生法に基づく特定建築物等の清掃に限らず、清掃サービスが付帯された住宅の専有部も含めるべきである。

なお、住宅の共用部については、建築物衛生法の特定建築物ではないものの、不特定多数が出入りする部分であるため、ビルクリーニング分野の対象とされており、特定建築物から除外されていることをもって、ビルクリーニング分野における特定技能外国人の業務の対象から除外されるものではないと考える。

これにより、日本人と同様に、特定技能の在留資格を持つ外国人が、オフィス・住宅の専有部・共用部等、用途・区分に縛られずに清掃業務に従事することができ、清掃分野における人手不足の緩和及び効率化が図られる。

<根拠法令等>
  • 特定技能基準省令第1条第1項
  • 出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令(平成31年法務省令第6号)
  • 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 第3 1.ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針
  • 「ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領(令和5年6月9日一部改正)
No. 33. 在留資格「特定技能」の航空分野における在籍型出向の認可
<要望内容・要望理由>

近年、訪日外国人旅行者は急増しており、日本の航空需要は大きく拡大している。こうした需要を支える業務の一つに、航空機が空港に到着してから出発するまでの限られた時間内に行われる地上支援作業である「空港グランドハンドリング業務」があり、在留資格「特定技能」の航空分野において、人手不足の観点から外国人を受け入れている。

空港グランドハンドリング業界では、拡大する航空需要に対応するためにさらなる業務効率化を図る必要があり、教育研修を通じたスムーズな習熟を図る手段の一つとして、在籍型出向(従業員の籍を出向元に置いたまま、出向先の業務を行う仕組み)を活用している。客室清掃や手荷物搬送、コンテナへの積み込み業務等のスキルを身につけるためには、安全の確保や特殊な技能が必要であり、在籍型での出向の受け入れによって短期間で教育や経験を積むことが最も効果的な状況である。実際に、日本人の場合の在籍型出向期間の目安は、客室業務で3ヶ月程度、手荷物業務で最長4ヶ月程度となっている。

一方で、特定技能外国人の雇用形態は直接雇用に限られており、在籍型出向が認められていない。したがって、出向を通じたスムーズな教育研修や新たなスキル習得による迅速な受託体制の構築が困難となっている。

そこで、在留資格「特定技能」の航空分野において、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針の趣旨を踏まえつつ、例えば、以下の要件を課すことで、委託先企業、委託元企業双方向への在籍型出向を認めるべきである。

  1. ①出向先において出向元企業で従事する特定技能に定められた業務に従事すること

  2. ②出向元企業が、定められた義務的支援が不足なく行える体制整備を施していること

  3. ③業務委託契約を前提に、委託前教育、新たなスキル習得を目的とした出向派遣/受入れであることを双方で合意していること

これにより、人手不足である空港グランドハンドリング業務分野において、新規外国航空会社を受託できる人員を増やし、受入れ体制を早期に整えることができる。その結果、訪日外国人旅行者数の政府目標(2030年に6,000万人)の達成の一助となる。

<根拠法令等>
  • 出入国管理及び難民認定法第2条の5、第19条の16~18
No. 34. 在留資格「特定技能」の鉄道分野における在籍型出向の認可
<要望内容・要望理由>

地球環境問題や脱炭素化が喫緊の課題となる中、環境優位性を持つ鉄道は都市圏輸送や都市間輸送においてますます重要な社会インフラとして期待されている。他方で、安全輸送に不可欠な保守分野を中心に、協力会社も含めた鉄道業界全体で人手不足が深刻化している。こうした背景を踏まえ、2024年3月、在留資格「特定技能」において、鉄道が対象分野に追加された。

鉄道は保線・信号通信・電力・車両メンテナンス等の様々な業務区分の技術が統合された大きなシステムにより成り立っている。そのため、従事するにあたっては、全ての分野に共通する安全や各業務区分の基礎技術等の教育を行っている。この手段の一つとして、在籍型出向(従業員の籍を出向元に置いたまま、出向先の業務を行う仕組み)を活用することで、より深い知識・技術の習得が可能となる。鉄道会社の場合、業務区分の一部を子会社等に委託し、親・子・孫会社が一体となって鉄道を運行していることから、それぞれの会社に一定期間所属することにより、当該業務区分に関する体系的な知識や機器の仕組みはもちろんのこと、より実践的な教育を行うことができる。

実際に、技能実習制度では在籍型出向が認められていることから、鉄道分野においても、出向先と出向元企業で連携し、効率的な技術や知識の習得を行っている。一方で、特定技能制度は直接雇用に限られており、日本人や技能実習生等で認められている在籍型出向による教育・訓練を行うことができず、特定技能外国人のキャリア形成に支障をきたす懸念がある。

そこで、以下のような場合には、在留資格「特定技能」の鉄道分野においても在籍型出向を認めるべきである。

  1. ①出向先において、出向元企業で従事する特定技能に定められた業務に従事すること

  2. ②出向元企業が、定められた義務的支援が不足なく行える体制整備を施していること

  3. ③親会社と子会社、親会社と孫会社の関係にある複数の法人の間における在籍型出向であること

  4. ④同一の親会社をもつ複数の法人の間における在籍型出向であること

  5. ⑤資本関係は無くとも業務の受委託契約に基づき、事業上安定的な関係が構築されている複数の法人の間における在籍型出向であること

これにより、新規で入国する特定技能外国人についても、在籍型出向の活用による幅広い深い知識・技術の習得を通じて、国籍に関わらないキャリア形成が可能となる。

<根拠法令等>
  • 出入国管理及び難民認定法第2条の5、第19条の16~18
  • 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第8条
No. 35. 外国人雇用状況の届出の一括申請
<要望内容・要望理由>

外国人を雇用する事業主は、外国人労働者(在留資格「外交」、「公用」及び特別永住者を除く)の雇入れ及び離職の際に、「外国人雇用状況の届出」を公共職業安定所(以降、ハローワーク)へ提出することが義務づけられている。

雇用する外国人が雇用保険被保険者となる場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」または「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することで、「外国人雇用状況の届出」を行ったこととなる。したがって、全国に支店や店舗等を有している企業は、本社所在地を管轄するハローワークに一元的に当該届出を提出できる。

一方で、雇用する外国人がアルバイトなどで雇用保険被保険者とならない場合は、当該外国人が勤務する事業所の住所を管轄するハローワークへ、「外国人雇用状況届出書」をそれぞれ提出する必要がある。したがって、本社において外国人の雇用状況を一元的に管理していたとしても、それぞれのハローワークへ当該届出を行っている。また、電子申請「外国人雇用状況届出システム」での届出であったとしても、各地のハローワークそれぞれ別のアカウント(ユーザID、パスワード)にログインして提出することが必要で負担が大きい。

そこで、「外国人雇用状況の届出」のうち、雇用する外国人が雇用保険被保険者とならない場合に必要な届出についても、本社所在地を管轄するハローワークへの一括申請を電子申請も含めて可能とすべきである。

これにより、全国に支店等を有している企業における当該届出に係る人員・時間的なコストの削減に寄与する。

<根拠法令等>
  • 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(雇用対策法)第28条
No. 36. 建設業における営業所専任技術者の複数営業所兼務の容認
<要望内容・要望理由>

専任技術者の営業所への配置は、建設業29業種の全てにおいて、建設業許可取得要件の1つとなっている。営業所専任技術者は、適正な請負契約が締結されるよう技術的な観点から契約内容の確認を行う等の職務に従事する。近年、建設業界では、生産年齢人口の減少や高齢化等に伴い人手不足が顕在化しており、専任技術者の確保が難しい状況が続いている。また、IT・通信環境の進展に伴う働き方の変化に加え、建設業界全体の生産性向上が求められており、常識上通勤不可能ではない範囲内でのテレワークが専任技術者の常勤要件を満たすとする緩和措置がなされたが、依然として専任要件は残っている。

こうした中、国土交通省の「適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)」において、営業所専任技術者の営業所同士の兼務については、技術的には可能とされたものの、特段の制限なく兼務を可能とした場合、営業所専任技術者が適正な請負契約の締結等の本来の役割を果たせなくなることや、営業所の設置が容易となることで受注競争の激化を招くおそれがあること等が課題であるとされ、実現が見送られた。

しかし、当該検討会で示された課題は、特段の制限をつけなかった場合の課題であり、当該検討会では、営業所専任技術者が一定の条件のもと専任現場の監理技術者等を兼務することを可能とする方針が示されたところ、営業所同士の兼務についても同様に、例えば、2、3カ所の営業所に限るなどの一定の条件を設け、専任技術者が、WEB会議システム等のICT技術を用いることで、質を落とさずその役割を果たすことは十分に可能である。

そこで、営業所専任技術者が2、3カ所の営業所に限って兼務することを容認すべきである。なお、質の担保について懸念が残る場合には、いわゆる建設業を副業的に営む兼業企業の業種(例えば、電気通信工事業、電気工事業、管工事業等)からまずは兼務を認め、問題ないことを確認してから建設の専業業種(例えば土木一式、建築一式等)に広げていくことも考えられる。

これにより、専任技術者の担い手不足の解消や、近年のデジタル技術を用いた働き方の変化への対応を進め、建設業の生産性向上につながることが期待される。

<根拠法令等>
  • 建設業法第7条第1項第2号、第15条第1項第2号
No. 37. 実践的なデジタル人材育成を実現するための大学設置基準等の改正
<要望内容・要望理由>

わが国の産業界では労働生産性の向上やイノベーション創出の必要性から、デジタル人材へのニーズが急速に高まっている。こうしたニーズを背景に、高等教育機関におけるデジタル人材育成にも大きな期待が寄せられているものの、大学等におけるデジタル関係の教育は実践性に欠け、企業での即戦力となる人材輩出が十分に行われていない。また、当該分野で実務経験を有する教員は不足している。加えて、教員不足は、地方で顕著であり、地域におけるデジタル人材育成の阻害要因にもなっている。

国は令和4年度に、成長分野における教員不足の解消、より柔軟な教育プログラムが編成されるように、大学設置基準等の改正や特例制度の創設を行ったところである。大学設置基準等の改正や特例制度の創設は高く評価されるところであるが、新たに設けられた基幹教員の要件が依然として厳しく、実務家による教育活動の普及には至っていないこと、また特例制度について初年度の申請が少数であったことなどに鑑みると、産業界の人材ニーズに即応するには程遠い状況である。

そこで、大学がデジタル人材の育成により取り組みやすくなるように、基幹教員制度の要件緩和や教育課程等に係る特例制度の審査の柔軟化等の速やかな制度化を行うよう求める。具体的には、

  1. 1.基幹教員の要件緩和について

    実践的な教育が必要なデジタル関連分野では、絶対数が不足し、大都市圏に偏在する実務家教員で全国的な需要を満たすため、複数の大学・学部で教えることができる教員を増やす必要があるが、基幹教員の要件によって、それが阻害されている。これを解決するために以下の規制緩和の包括的実施を求める。

    1. 1)現行の大学設置基準では、1つの大学・学部にのみ所属する教員だけでなく、複数の大学・学部に所属する教員についても、各学部で最低限必要な基幹教員数の4分の1までカウントできるが、複数の大学・学部に所属する教員を基幹教員としてカウントできる上限(4分の1以内)を緩和すること

    2. 2)1つの学部で年間8単位以上の教育課程に係わる授業科目を担当することが基幹教員の要件とされているが、当該授業科目の算定にあたり複数学部の合計で認めること

    3. 3)基幹教員の要件である「教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担う教員」について、企業と兼務する者が教授会等にリアルタイムで参加する時間的余裕があるとは限らないことから、教授会や教務委員会など当該学部の教育課程の編成等について審議を行う会議に一定以上出席する責務を有し、かつ、当該会議に欠席した場合には議事録等を参照する権限を有する教員も含まれるなどの要件緩和

  2. 2.教育課程等に係る特例制度について

    実践的な教育が必要なデジタル関連分野では、絶対数が不足し、大都市圏に偏在する実務家教員で全国的な需要を満たすため、大都市圏の大学で行われるデジタル関連の講座を地方の他大学等にも提供し、単位互換を認めることが必要である。現行制度下で特例を受けやすくするため、以下の規制緩和の包括的実施を求める。

    1. 1)現行制度では、教育課程等に係る特例を申請した際に簡易な審査により認定が行われるモデルケースとして、①同時双方向型オンライン授業を活用した先導的な取組と②学修の多様化・深化×大学間連携、の2ケースが示されている。他大学等との単位互換をモデルケースに追加し、他大学等との単位互換の上限が60単位とされている制限を免除する特例を受けやすくすること

    2. 2)先導的な取組のモデルケースとして示されている【学修の多様化・深化×大学間連携】では、①連携大学間の協議会の設置と②連携協定の締結など継続的な連携を確保するための措置を講じた場合に、連携協定に規定された連携開設科目の単位を卒業要件となる修得単位数に算入することができるとされている。連携大学間の協議会を設置しなくても、連携協定の締結など継続的な連携を確保するための措置を講じた場合に、連携協定に規定された連携開設科目の単位を卒業要件となる修得単位数に算入できることとし、教育課程等に係る特例を申請した際に簡易な審査により認定が行われるモデルケースに盛り込むこと

    これらにより、より多くの大学で、実務家教員による実践的で質の高いデジタル教育の提供が期待できる。また、当該人材育成に取り組む大学の志望者増加、安定的な人材の輩出、ひいては産業競争力の強化等が期待できる。

<根拠法令等>
  • 大学設置基準第8条第1項、第19条第1項、第28条、第29条第2項、第30条第4項、第32条第5項、別表第一 学部の種類及び規模に応じ定める基幹教員数
  • 教育課程等特例認定大学等の認定等に関する規定

4. 新産業の成長

No. 38. 医薬品・治験薬の原薬・中間製品・製剤等の移動に関する要件緩和*
<要望内容・要望理由>

欧米では、医薬品規制調和国際会議(ICH)における議論等も踏まえ、原薬に関する製造管理及び品質管理の標準的なあり方を示した「原薬GMP(Good Manufacturing Practice)のガイドライン(ICH Q7)」に基づき、「医薬品及び治験薬」の原薬・中間製品・製剤等は、その有効期間が短い場合や、長い時間を要する微生物学的試験(微生物限度試験、無菌試験、抗体のウイルス否定試験など)などが課されている場合に、試験検査の結果を得ずとも、製造所から自社の管理下にある他の部門や受託製造業者への移動が可能となっている。

一方、日本では、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(GMP省令)において、「医薬品」の原薬・中間製品・製剤等は、長い時間を要する微生物学的試験など(通常2~3ヶ月)が課されている場合は試験結果を得るまで製造所から自社の管理下にある他の部門や受託製造業者への移動が許容されていない(原薬などの有効期間が短い一部のケースを除く)。また、治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)において、「治験薬」原薬・中間製品・製剤等に関してはそもそも条件が示されておらず、「医薬品」と同様の対応を求められている。

昨今、製薬企業は医薬品開発をグローバルで進めている中、欧米とは異なる日本独自の規制に即した医薬品・治験薬の原料・中間製品・製剤等の管理手順を設けて対応する必要が生じており、この日本と欧米との規制差がわが国における医薬品開発の遅れにつながり、ひいては、わが国医薬品市場の国際的な競争力の低下につながる。

そこで、通常2~3ヶ月を要する微生物学的試験などについては、欧米同様に試験結果が判明する前に、「医薬品」及び「治験薬」の原薬・中間製品・製剤等を製造所から自社の管理下にある他の部門や受託製造業者へ移動させることを容認すべきである。

これにより、治験薬や商用製品の初回出荷分の準備・製造のリードタイムの短縮による新薬の早期開発や、日本の医薬品開発国としての競争力向上につながる。

<根拠法令等>
  • 令和3年4月28日 薬生監麻発0428第2号「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(GMP省令)の一部改正について」第3 逐条解説20.第12条
  • 平成20年7月9日 薬食発第0709002号「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)について」第2の6
  • 平成13年11月2日 医薬発第1200号「原薬GMPのガイドライン」
  • 平成28年3月8日 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課事務連絡「原薬GMPのガイドラインに関するQ&A」
No. 39. 製薬企業から国民への治験に係る情報提供の実現*
<要望内容・要望理由>

日本では、厚生労働省通知「治験に係る情報提供の取扱いについて」(令和5年1月24日薬生監麻発0124第1号)により、製薬企業等による治験情報の提供に関する要件が示され、治験薬の名称や治験記号等が含まれる治験情報を提供可能となった。しかし、その対象が「治験に係る情報を求める者」のみに厳格に限定されており、製薬企業が発信する治験情報を国民が広く認識できる環境とはなっていない。製薬企業が「治験に係る情報を求める者」以外にも治験情報を提供する際には、依然として、「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日医薬監第148号)の対象として、治験薬の名称や治験記号等の商品名を含む情報提供は不可とされている。

昨今、一般的に治験は、複数の国や地域で行う国際共同治験が多い。治験参加者の募集に関してもグローバルで統一した手法が議論されることが多いが、日本については上述の規制があることにより、例外的な対応をとらざるを得ない状況にある。例えば、米国や中国では、一般人を対象に治験参加者の募集を行う場合でも、治験薬の名称や治験記号等の掲載に関する制限はない。また、特に米国においては、特定の治験に関する患者向けのセミナーやソーシャルメディア等での情報提供を含む、積極的な患者組み入れ手法が行われているが、一方で、上述のように日本固有の規制は、広く国民が自身の疾患にあった治験を探し適切な治験にアクセスすることの妨げになっていると考えられる。さらに、治験への患者組み入れの遅延にもつながり、わが国における迅速な治験の実施の障壁になることでドラッグラグが生じる可能性がある。また、一般的に製薬企業において治験参加者の募集にグローバルで統一した手法を議論している中、日本では、各治験で実施する情報提供が「治験に係る情報を求める者」のみを対象とした情報提供になっているか個別事例ごとに都度確認・検討する必要があり多くの時間と労力を要し、効率的な治験の実施の障壁になっている。日本固有の規制の存在が、企業が日本での開発自体を断念する一因となる可能性があり、最終的にドラッグロスにつながる懸念もある。

そこで、治験の情報提供は、「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」の対象外とした上で、厚生労働省通知「治験に係る情報提供の取扱いについて」を修正し、「治験に係る情報を求める者」のみではなく、広く国民に実施できるようにすべきである。元来、治験への参加には治験実施医師の医学的な判断が必要であり、各治験で規定された厳格な適格基準を満たした者のみが、十分なインフォームド・コンセントを経て治験に参加することから、国民への治験の情報提供は、本要件の「顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること」に該当しないと考える。

これにより、国民自らが治験薬の名称や治験記号等をもとに、治験に関する情報をWeb上で網羅的に検索することが容易となり、自身の疾患にあった治験を探して適切な治験にアクセスすることが可能になる。さらに、国内での迅速な治験に寄与することで、わが国における治験の活性化、ひいては、ドラッグラグ/ロスの解消にもつながる可能性がある。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第68条
  • 平成10年9月29日 医薬監第148号「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」
  • 令和5年1月24日 薬生監麻発0124第1号厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知「治験に係る情報提供の取扱いについて」
No. 40. 医療用医薬品の非臨床試験の適合性書面調査の廃止*
<要望内容・要望理由>

医薬品の製造販売承認申請に対して審査を行う独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、申請資料の信頼性の基準への適合性を確認するため、適合性書面調査を実施している。しかし、適合性書面調査は日本独自の施策であり、海外の承認申請時に規制当局が同様の調査を実施することはない。適合性書面調査は申請資料中の品質試験、非臨床試験及び臨床試験のいずれも対象になり得るが、このうち非臨床試験においてはnon-GLP試験(GLP#3対象外の試験。非臨床試験の中で毒性試験及び安全性薬理試験以外の試験を指す)が対象になり、試験の重要性やリスクを考慮してPMDAが適合性書面調査対象試験を選定している。しかし、承認申請時には既にヒトの有効性及び安全性を確認する臨床試験の結果が判明していることから、非臨床non-GLP試験の詳細な調査の必要性には疑問がある。適合性書面調査を行わずとも、仮に、申請資料中の非臨床non-GLP試験の内容に疑義が生じた場合は、通常の承認審査プロセスで行われている照会事項発出時に根拠資料の提出を求めることで代替可能と考える。

適合性書面調査用資料の条件や範囲の指定は調査の約1ヶ月前に提示を受けるため、それまで申請者は調査対象資料を特定することができない。さらに、電子ファイル化した資料の提出は調査の約2週間前までと準備期間が短い。このため、申請者としては調査の対象になるかどうかにかかわらず、調査資料の準備に時間を要することが想定される試験について、製造販売承認申請の前の段階から調査のための準備(試験に関連する全ての文書・データ類の電子化、共同研究先・導入元への現地訪問による文書・データ類の内容の確認など)を行わざるを得ず、多大な時間及びコストを強いられている。特に近年は海外のパートナー(CRO#4/製薬企業/ベンチャー等)との協働事例が増えており、その場合準備に必要なコストが顕著に増大する。また、日本独自の適合性書面調査に対して海外パートナーからの理解が得られず、準備に難渋することもしばしばある。さらには試験データ自体に問題が無いにもかかわらず、試験関連資料の不備(例えば使用動物の入荷の記録がない、使用細胞入手の記録がない等)のために再試験を余儀なくされるケースがあり、特に動物実験を追加で行う必要が生じた際には時間やコストだけでなく動物倫理の観点でも課題がある。再試験については最近PMDA及び日米欧の製薬産業業界団体で新たな適合性書面調査のチェックリストを作成する対策が行われたが、まだ完全に解決されたとは言えない。

世界的にも、GLP試験と異なり厳密な実施基準が定められていないnon-GLPの非臨床試験に対して調査が行われるのは日本だけであり、グローバル開発を進める上での課題となっている。これは日本におけるドラッグラグ/ロスの一因であるとも考えられており、また医薬品の開発コストの増大にもつながっている。

そこで、医薬品の承認申請における非臨床non-GLP試験は適合性書面調査の調査対象としない旨、通知にて発出することを求める。

これにより、規制の国際調和の一環として,非臨床non-GLP試験を適合性書面調査の対象としないことは日本の医薬品開発の環境改善につながるものと考える。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第6項
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第43条
No. 41. 薬事審査における民間等の国際標準化機関が作成した国際規格・標準の活用推進*
<要望内容・要望理由>

再生医療等製品の開発・実用化が急速に進んでいるが、再生医療等製品は従来の医薬品などとは異なる全く新しい製品であるため、その安全性や品質の評価方法について国際規格・標準を整備し、活用する動きが世界で加速している。

アメリカ食品医薬品局(FDA)のバイオ医薬品の承認審査を行うCBER(Center for Biologics Evaluation and Research)においては、再生医療等製品の開発と評価を促進するため、Voluntary Consensus Standard Recognition Program for Regenerative Medicine Therapiesと称して、民間が作成した国際規格・標準を再生医療等製品の薬事承認審査プロセスに活用するプログラムが2023年より開始されており、企業に民間が作成した国際規格・標準の積極的な活用を推奨している。さらに、民間の国際規格・標準の設定機関であるASTMインターナショナルや国際標準化機構(ISO)が作成した国際規格・標準を認定した上で、リスト化して公表している。

日本においては、厚生労働省及び医薬品医療機器総合機構(PMDA)が作成過程に参加し厚生労働省が通知するガイドラインや、PMDAが作成に携わり厚生労働大臣が定める医薬品の規格基準書である日本薬局方が、薬事承認審査プロセスに活用されている。企業は、規制当局が認定した規格・標準が整備されていれば、それに則って医薬品開発を実施するため、様々な作業の選択や最適化を自ら検討する必要がなく、その規格・標準の要求事項に沿って医薬品開発を進めることが可能である。また、薬事承認審査プロセスにおいても、企業にとっては規制当局が認定した規格・標準に則った医薬品開発を実施した旨を説明することが可能であり、規制当局にとっても審査すべき要点が明確となって、審査の省力化につながるため、両者にとってシンプルかつ系統的なやり取りが可能になる。しかし、日本においては、アカデミアや民間等の機関が作成した国際規格・標準については、薬事承認審査プロセスへの活用を推奨する旨が明示されていない。このため、企業としては、アカデミアや民間等が作成した国際規格・標準を積極的に活用することができず、日本における医薬品開発の遅れの一因となっている可能性がある。

そこで、医薬品開発の効率化・促進に向けて、アカデミアやASTMインターナショナル・ISOなどの民間等の国際標準化機関が作成した国際規格・標準(コンセンサス・スタンダード)をPMDAの薬事承認審査プロセスに活用することを推奨する文書を厚生労働省から発出していただきたい。

アカデミアや民間等の機関が主体となって作成したものであっても国際的に合意・調和された規格や標準を活用できるようになると、企業と規制当局間で規格や標準が共通言語となって系統的なやり取りが成立し、規制当局にとっては審査の効率化につながり、企業にとっては医薬品の研究開発期間が短縮され、結果として患者に革新的な医薬品を早く届けることができるようになる。また、再生医療産業を支援する周辺産業にとっても国際規格・標準に沿った製品・サービスを開発できるようになり、関連産業の発展にも資することが期待される。

<根拠法令等>
  • 平成26年8月12日 薬食機参発0812第5号「再生医療等製品の製造販売承認申請に際し留意するべき事項について」19ページ 5 その他参考にする指針
No. 42. 医療用医薬品の承認申請においてリアルワールドデータ(レジストリ)を利活用しうる対象疾患の拡大
<要望内容・要望理由>

現在、日本における医療用医薬品の承認申請等において、リアルワールドデータ(RWD)を利活用するために発出された薬生薬審発0323第1号/薬生機審発0323第1号の4(2)により、ランダムに患者を複数の群に分け医薬品の効果を検証するランダム化比較試験の実施が困難な疾患にRWDの利活用が限定されているため、RWDの利活用に関する議論が停滞している。

そこで、医療用医薬品の開発でRWDを利活用し、承認申請をより効率的に進めるために、例えば、まずはクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)構想#5で検討されている糖尿病や軽度認知症などの疾患に対象を拡大することにより、CIN構想におけるRWDであるレジストリデータを、他の条件で治療がなされた仮想の群(外部対照)を設定し当該医療用医薬品が投与された群と比較する、または、臨床試験は対照群を設定するのが通常であるところ、治療群のみで実施する際の有効性を判断するための値(閾値)等の設定に用いるなど、より多くの疾患で承認申請にRWDを活用できるようにすべきである。

このように、疾患を制限しないことにより、RWDを外部対照として用いる場合の方法論の議論やRWD利活用事例の蓄積が進み、医療用医薬品の承認申請における低コスト化、効率化が図られ、日本の医薬品・医療機器等の開発競争力の強化が期待できる。また、糖尿病や軽度認知症などの疾患への医療用医薬品に関して、承認申請におけるRWD活用の実績を積むことで、RWD利活用のノウハウが開発者に蓄積する。これにより、ランダム化比較試験の実施が困難な希少疾患や小児疾患においてもRWDを活用した承認申請が促進され、健康寿命の延伸が期待される。

なお、薬生薬審発0323第1号/薬生機審発0323第1号の6には、外部対照群として使用する際のバイアスに関する留意事項の記載があり、可能な限り背景情報を揃える必要性などが記されている。ランダム化比較試験の実施が困難な疾患はレジストリに登録されている患者数が少ないために、患者背景を揃えるためのデータ抽出が難しいことも想定される。一方で、現行制度のもとでは、糖尿病や軽度認知症などの疾患の方が患者背景を揃えるためのデータ抽出が容易であるにもかかわらず、これらの疾患に対する医療用医薬品の承認申請におけるRWD利活用を阻まれるという矛盾が生じている。

<根拠法令等>
  • 令和3年3月23日 薬生薬審発0323第1号/薬生機審発0323第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知「「承認申請等におけるレジストリの活用に関する基本的考え方」について」
No. 43. PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のプログラム医療機器審査期間の改善*
<要望内容・要望理由>

日本には高い技術力があるにも関わらず、審査期間が長いことが、プログラム医療機器の開発において欧米の後塵を拝する要因の一つになっていると考えられる。

PMDAにおけるプログラム医療機器の審査については従来、「医療機器規制と審査の最適化のための協働計画2024」にもある通り、標準的事務処理期間(例えば、新医療機器のうち通常審査品目の場合は12ヶ月とされ、優先審査品目の場合は9ヶ月とされている。)が設定されているが、標準的事務処理期間を大幅超過しても審査終了時期の見通しがたたないことがあり、事業計画立案上の大きなリスクとなっている。

米国食品医薬品局(FDA)により求められる、クラスⅡ医療機器と一部のクラスⅠ医療機器を対象にした市販前届出「510k」においては、書類受理後、90日で承認するか否か回答することを基本とし、100日を超える場合には提出者に対して未完了の旨を書面で通知し、早期の解決を図る体制を整えている。

そこで、こうした状況を鑑み、日本においても、最大の事務処理期間の設定もしくは80%タイルでの標準的事務処理期間の目標を90%タイルにすることによる予見性の向上、標準的事務処理期間の短縮について検討を行えるよう必要な措置を構ずるべきである。

これにより、現在よりもプログラム医療機器の迅速な製品開発や上市につながる。

<根拠法令等>
  • 医療機器規制と審査の最適化のための協働計画2024 8.標準的事務処理期間の設定
No. 44. 再生医療等製品の直接の容器・被包への表示方法の見直し*
<要望内容・要望理由>

細胞加工製品や遺伝子治療薬などの再生医療等製品は、製品の特性上、従来の医薬品と比較して製造量が少量であるケースが多い。限られた製造量の製品を、短い期間で医療現場の需要に応じて供給する必要があり、一般的な医薬品と異なって、ある種オーダーメイドのような側面があるため、スケールを取った生産対応を図ることが難しい。また、再生医療等製品の取り扱いにおいては、保管条件について-80℃以下などの超低温での保管が求められる製品が多く、超低温環境下での包装が可能な設備が必要となる製品もある。通常、医薬品のラベル情報のうち、邦文表示が必要な情報については、邦文化した該当情報をリラベル/オーバーラベルすることでラベル表示するケースが多いが、超低温環境下でのリラベル/オーバーラベルは、粘着剤の選定や結露への対応などが必要であり技術的ハードルが高いのが実情である。

このように再生医療等製品では、限られた製造量に対する包装を、超低温環境下での包装が可能な一部の設備で実施する必要があるが、グローバルに製品提供する場合、各国言語での包装・表示の実施に関して課題がある。日本においては、医薬品医療機器等法第65条の2で、再生医療等製品の製品名称等の法定表示事項について、「直接の容器」又は「直接の被包」に邦文での法定表示が求められている。そのため、邦文以外で記載された製品を国内へ供給する場合は、邦文表示の目的での超低温環境下でのリラベル/オーバーラベルの工程の立ち上げが必要となり、その工程が製品品質に影響を及ぼさないことを担保するための追加の評価も要することから、日本への再生医療等製品の導入遅延、ワーストケースでは日本への導入が見送られるリスクにもなりえる。技術的なハードルも高いこの追加工数を削減、あるいは無くすことができれば、短期間での供給が求められるケースが多い再生医療等製品を、より迅速に医療現場へ提供することが可能となる。

そこで、限られた製造量の製品を超低温環境下での包装が可能な一部の設備で包装する必要がある再生医療等製品においては、直接の容器・被包への邦文以外での法定表示、あるいは、直接の容器・被包以外(例えば二次包装)への邦文での法定表示を認めるように、同法施行規則を改正すべきである。海外の例として、EUでは各国現地言語での表示の代わりに、英文でのラベル表示が認められており、確立された設備での包装・表示及び各国の需要に合わせた製品供給を可能としている。

日本国内においても、医師の管理下で使用される再生医療等製品に対しては、邦文での直接の容器・被包への表示を必須とせず英語表記を許容する、あるいは二次包装品や添付文書などで日本語での翻訳を提示する対応が可能となれば、製品サプライチェーンの柔軟性が向上し、日本への製品の早期導入・上市が可能になり、ドラッグロスを防ぐことにつながると考える。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)第65条の2
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第218条
No. 45. 医療用医薬品における製造販売承認取得後の安全性に係る報告書類の効率的な運用*
<要望内容・要望理由>

日本で医療用医薬品の承認後に提出が義務づけられている安全性に係る報告書「医薬品安全性定期報告」(報告期間・頻度:承認後4~10年の間、最初の2年は半年毎、その後は1年毎)及び「感染症定期報告」(報告期間・頻度:承認後販売終了までの間、半年毎)は定期的かつ中には、販売期間中永続的に報告が求められる一方、関連する報告書間で情報の重複が見られ、資料作成に係る企業各社の負担が大きい。

「医薬品安全性定期報告」に関しては、海外でも販売されている医薬品の場合、Periodic Benefit-Risk Evaluation Report(PBRER、定期的ベネフィット・リスク評価報告)と呼ばれるグローバルで統一された報告様式の提出も求められている。海外では主にPBRERが安全性に係る報告書として提出されており、日本を含む全世界のデータに基づいた評価結果が記載されるが、日本の「医薬品安全性定期報告」では、日本のデータに注目した評価結果を記載する必要がある。PBRER及び「医薬品安全性定期報告」はいずれも重篤副作用の発現状況の検討や、医薬品使用時に特に注意が必要な副作用のリスク最小化策の検討といった評価の切り口は共通しているが、日本での「医薬品安全性定期報告」の対応のために重複した内容の資料を日本国内のデータのみと全世界のデータの2種類で作成・提出している状況である。

一方、「感染症定期報告」は、医薬品毎ではなく、「ウシ血清」等、医薬品の製造工程で使用する生物由来成分毎に提出が求められている。同一の生物由来成分を複数の企業が使用することは多く、そのため、同一の生物由来成分に関する(血液によるウイルス感染等であり、一般的な風邪等の感染症情報ではない)感染症情報を複数の企業が重複して検索・評価・報告している状況である。加えて、「感染症定期報告」では検索・評価の結果、報告すべき情報が無い場合に必要とされている報告書(ゼロ件報告)の場合も定期的に提出することが求められており、同一の生物由来成分を使用している複数の企業は、「報告すべき情報はなかった」という内容で、情報が重複した報告書を企業ごとに作成・提出している状況である。なお、海外においては生物由来成分の感染症情報に特化した集積報告書の存在は見受けられない。

そこで、「医薬品安全性定期報告」及び「感染症定期報告」それぞれの報告要件を見直し、重複する報告書類を削減すべきである。具体的には以下2点を要望する。いずれの要望も通知の補足等で対応できるものと考える。

  1. ①「医薬品安全性定期報告」の「別紙様式3」は提出不要にすべきである。日本における重篤な副作用は、1例ずつ規制当局である医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ報告されている。「別紙様式3」は、それら重篤な副作用の報告件数を半年もしくは1年の調査単位期間毎に集計した表である。PBRERにも全世界の重篤な副作用を当該調査単位期間と累積で集計した表がある。いずれも副作用の発生傾向の変化を確認することで安全性における新たな懸念の有無の調査に用いていると推察する。別紙様式3では報告件数の推移を見ることができるが、PBRER集計表においても当該調査単位期間の集積状況を累積の発生件数と比べることで副作用の発生傾向の変化を調査することは可能と考える。このように、PBRERの内容から総合的に当該薬剤の安全性状況を確認できるため、「医薬品安全性定期報告」の「別紙様式3」は提出不要にして差支えないと考える。

  2. ②「感染症定期報告」のゼロ件の報告書提出は不要とし、提出が無い場合は「報告すべき事項は無し」とみなすべきである。業界全体で年間約1,000報の感染症定期報告の提出のうち、約8割はゼロ件報告であり、ゼロ件報告の作成工数及び当局の集計作業も踏まえればその削減時間は膨大である。

これにより、企業はこれまで上述の対応に要していた時間を削減することができる。結果として、官民ともにこれまで以上に安全対策(新たな副作用情報の医療現場への注意喚起等)の効率的・効果的な評価に取り組むための業務軽減につなげることができ、医療現場や患者の薬剤適正使用推進の促進につながり、一層の安全性向上に貢献できる。

<根拠法令等>

(医薬品安全性定期報告)

  • 令和2年8月31日 薬生発0831第5号「新医療用医薬品に関する安全性定期報告制度について」
  • 平成25年5月17日 薬食審査発0517第4号 薬食安発0517第1号「安全性定期報告書別紙様式及びその記載方法について」

(感染症定期報告)

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第68条の14、同条の24
  • 平成29年4月28日 薬生発0428第1号「再生医療等製品及び生物由来製品に関する感染症定期報告制度について」
  • 令和6年3月29日 薬機安企発第6号「再生医療等製品及び生物由来製品の感染症定期報告に係る留意点について」
No. 46. 医療機関における診療録の保存要件の明確化*
<要望内容・要望理由>

現状、医療機関における診療録は、医師法第24条や保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条において、「治療の完結から5年間」の保存が義務付けられているところであるが、治療の完結は患者の症状によっては明確化できないため、診療録を破棄できず長年保管せざるを得ない。そのため、電子カルテシステム等を移行する際、不要である可能性の高いデータも含めた移行が必要となり、医療機関やベンダにその移行作業の負担が生じている(例:600床規模の特定機能病院の場合、移行する対象データが10年分の場合、データ移行に約10.3ヶ月要する。対象データには診療録に添付されたデータ等を含む)。あわせて医療機関では、これらデータの保管や移行のコストも生じている。

そこで、治療の「完結」の定義を明確にするための措置を講じ、破棄が可能となる時期をデジタルで判別できるようにすべきである。

これにより、破棄可能なデータをデジタルで機械的に判別・処理できるようになるため、医療機関やベンダが従来要していた不要な過去のデータの移行作業や維持管理に伴う工数的かつ金銭的負担が低減する。

海外では「最後のやり取り(最終診療日時)」や誕生日が起点とされており、保存期間を明確に判断できる。以下に2つ例示する。

  • アメリカ(HIPPA)・・・特定の種類の文書は記録が作成された時点または最後に発効した時点のいずれか遅い方から数えて6年間の診療記録を保存する義務がある(医療記録の保存期間は州法に拘束されるため、州により異なる)。
  • スウェーデン・・・成人は最後のやり取りから10年間。なお、未成年は18歳に達するまでの記録はすべて保管(患者データ法(Patientdatalagen)及び国立公文書館の規則(Riksarkivets föreskrifter)によって規定)。
<根拠法令等>
  • 医師法第24条
  • 保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条
No. 47. 薬機法で定める登記事項証明書の添付を不要とする申請先の拡大
<要望内容・要望理由>

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、薬機法)においては、卸売販売業者等に対し、法人の役員に関する証明書類として、登記事項証明書の提出を求めている。「デジタル技術を利用した申請等手続の簡素化について」(令和4年12月13日付厚生労働省通知)により、厚生労働省本省及び地方厚生局において、法務省が運営する「登記情報連携システム」を利用し登記事項を確認することが可能となったため、厚生労働省本省及び地方厚生局への申請に際しては登記事項証明書の添付が不要となった。その一方で、同システムを利用できない都道府県等への申請等に関しては、引き続き登記事項証明書の添付が必要とされている。

卸売販売業者は、薬事に関する業務に責任を有する役員(取締役)が交代するたび、管轄都道府県すべてに変更届を提出しなければならないが、提出先の都道府県ごとに添付書類が異なり、かつ、前述の背景から登記事項証明書の添付を省略できないのが現状である。卸売販売業許可を複数有している企業では、変更届に必要となる登記事項証明書の分量も膨大となることから、登記事項に関する交付請求に係る卸売販売業者及び法務局双方の事務負担、紙資源の大量使用といった社会課題が指摘されている。

そこで、現在、「登記情報連携システム」については、デジタル庁及び法務省によって、地方公共団体への利用拡大に向けた取り組みが進められているところ、デジタル庁及び法務省はその早期実現を図るべきである。また、地方公共団体への利用拡大が実現した時点で、厚生労働省は速やかに、都道府県への申請においても登記事項証明書の添付を不要とする旨の通知を発出すべきである。

これにより、卸売販売業者の事務負担の軽減はもとより、法務局・各都道府県での業務効率化及び紙使用量の削減等に資することが期待される。

<根拠法令等>
  • 薬機法施行規則第16条第3項
  • 令和4年12月13日 薬生薬審発1213第1号/薬生機審発1213第2号/薬生安発1213第1号各都道府県衛生主管部(局)長・各地方厚生局長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知「デジタル技術を利用した申請等手続の簡素化について」
  • 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律
  • 登記事項証明書添付省略に関する実施計画
No. 48. バイオ化成品及びバイオ燃料の原料確保・競争力維持のための関連規制の緩和
<要望内容・要望理由>

バイオテクノロジーによる物質生産及びその事業化には、製品の原料あるいは発酵プロセスの炭素源となる砂糖やでん粉といった資源の安定的調達と、現在最もバイオ化成品及びバイオ燃料の中間原料の主流となっているエチルアルコール(=バイオエタノール)の輸入・国内生産による柔軟かつ安定的な調達が求められている。

砂糖とでん粉は、国内生産・自給率の維持を目的として、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に拠り、海外からの輸入に際し一旦政府管轄組織への売渡し・買戻しというプロセスを踏まねばならず、その際に国際市場価格の約2倍の調整金が上乗せされ、国内流通時の価格は実質元価格の3倍の価格となり、砂糖とでん粉の輸入品を用いて化成品を国内生産する際のコスト高要因となっている。一方、国内産砂糖の価格は、足元では国際相場の3倍程度、生産量はバイオベース製品の事業化を支えるには圧倒的に少ない。でん粉もおおよそ同様である。

さらに、バイオテクノロジーを用いてエチルアルコール(=バイオエタノール)を生産し、燃料や化学品の基礎原料として利用するための研究開発及びその工業化においても課題が存在する。

バイオエタノールの生産を目的とした研究開発及び工業化を試みる場合、エチルアルコールとしての濃度が一定値未満の場合は酒類の製造免許等について定めた「酒税法」、一定値を超える場合はエチルアルコールの工業利用に際し酒類原料の不正な使用を防止し製造・輸入・販売に係る事業運営を適正なものとすることを目的とした「アルコール事業法」に拠って、エチルアルコールの試験的な少量生産や工業利用を目的とした生産にも酒類の製造販売と同様の手続きが求められ、研究開発や事業化検討の阻害要因となっている。例えば、研究開発のために試験的にバイオエタノールあるいはそのバイオエタノールを原料とし化学的プロセスを経てエチレンなどの基礎化学品を製造、さらに、その基礎化学品を原料として石油化学の技術を応用し種々の化学品の製造に着手する際にも、事前に免許・許可を取得の上、生産量・使用量・使用目的・廃棄量の事前届出と実績報告を行う必要がある。

また、「アルコール事業法」は、工業利用を目的としたバイオエタノールの国内生産及び海外からの輸入にも適用されるため、前述のような手続きや管理が求められ、新規参入や規模拡大の妨げになるとともに、最終製品の製造コストを押し上げる要因となっている。

そこで、以下3点を要望する。

  1. ①工業での使用の場合は、バイオ化成品製造及びバイオ燃料製造の原料となる砂糖やでん粉について「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」の特例措置として第3条第2項(砂糖調整基準価格)、第5条(輸入に係る指定糖の機構への売渡し)、第8条(輸入に係る指定糖の売戻し)及び第9条(輸入に係る指定糖の売戻しの価格)から除外すること

  2. ②バイオエタノールについて工業製品や中間原料として研究開発する際には、「酒税法」第7条(酒類の製造免許)、第8条(酒母等の製造免許)、第9条(酒類の販売業免許)及び「アルコール事業法」第3条(製造の許可)、第8条(変更の許可等)、第9条(報告等)の適用除外とすること

  3. ③国内で工業製品の製造の原料とするためにバイオエタノールを製造及び輸入販売する場合にも、「アルコール事業法」第3条(製造の許可)、第9条(報告等)、第16条(輸入の許可)、第17条(輸入の許可)の適用除外とすること

これにより、バイオテクノロジーを活用した化成品や燃料について、国内における研究開発及び事業化に際し、海外との原料コスト差や取扱いの不便さが解消され、高付加価値品の国内生産が進むとともに、日本に技術力優位性があるバイオテクノロジー産業の国際競争力を高めることができる。

<根拠法令等>
  • 砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律第3条、第5条、第8条、第9条
  • 酒税法第7条、第8条、第9条
  • アルコール事業法第3条、第4条、第9条、第16条、第17条
No. 49. 戸建住宅など低圧需要家のV2G(BEVの充放電)を促進するための発電側課金の見直し
<要望内容・要望理由>

近年、EVやPHEV等の電気自動車に蓄えられた電気を戸建住宅等で利用するV2H(Vehicle to Home)のほか、電気自動車や家庭に設置した太陽光パネルで発電した電気を蓄電し、未使用分をグリッドに戻す仕組みであるV2G(Vehicle to Grid)が普及し始めており、再生可能エネルギーを有効活用する一つの手段として注目されている。

そうした中、2024年4月から、太陽光発電と蓄電リソース(定置用蓄電池、BEV+V2H等)の出力が合算された同時最大受電電力(設備の定格出力の合計)が10kW以上であれば発電側、つまり戸建住宅等に対して託送料金が課金されることとなった。しかし、蓄電リソースを導入する家庭のインセンティブは電気代を安くすることと考えると、再生可能エネルギーの固定価格買取制度終了後の売電単価が約7~8円/kWhである一方、電力会社から買う電気の単価は30円/kWh程度のため、太陽光が発電している間は、蓄電リソースは充電する、即ち、太陽光発電と蓄電リソースから同時に放電(逆潮流)しないのが、現行制度下で想定されるユースケースであり、太陽光発電と蓄電リソースは別として扱うことに合理性がある。さらに、各戸建住宅等のV2Gで見込まれる収益に対して、発電側課金の影響は小さくないため、課金によって収益が減ればV2G参加ユーザーが減ると予想され、再生可能エネルギーの活用を目指す社会にとってもマイナスである。

そこで、託送料金の発電側課金の適用基準に関しては、同時最大受電電力の計算の際、太陽光発電と蓄電リソースは別として扱うなど、発電側課金の適用基準の見直しを求めたい。

これにより、戸建住宅など低圧需要家のV2GやV2Hのさらなる普及を通じた再生エネルギーの有効活用が期待される。

<根拠法令等>
  • 電気事業法第18条
  • 令和6年1月12日 経済産業省「相対契約における発電側課金の転嫁に関する指針」
  • 2023年4月 電力・ガス取引監視等委員会制度設計専門会合「発電側課金の導入について 中間とりまとめ」7頁 2.発電側課金の詳細設計 ①課金対象
No. 50. 遠隔操作型小型車(ロボット)の公道走行許可取得手続きの効率化
<要望内容・要望理由>

昨今、多くのまちで様々な関係者が公道での走行型ロボットの実証実験を行っており、実証実験は、走行型ロボット1台のみを公道走行させる試験段階から、複数台を同時に走行させる試験段階へと移行してきている。一方、1つのプラットフォームで複数台を同時に遠隔監視し、遠隔監視対象のロボットを1台増やす場合、その申請書類が同一であるにも関わらず、同一書類を都度提出し、複数台の実験を行うまでに数ヶ月を要する状況にある。これが円滑な実証実験を実行するにあたっての足枷になっている。

現状、公道での実証実験を行うための申請には、①ロボットデリバリー協会での安全基準適合審査に合格したロボットについて、都道府県公安委員会への届出による方法、②実証実験のたびに道路使用許可を申請し警察署にて協議を行う方法の2通りが存在する。日常的な改良と実証実験を続けて行う必要があるロボット分野では、①の方法は現実的ではなく、②の改良の都度道路使用許可を得て実証実験を行う方法が主流である。この方法では実質的に同様の申請内容であっても、前述した通り、ロボットの台数を1台増やすごとに道路使用許可申請及び警察署での協議が必要であり、実験者の実証実験データの取得と改良につなげるまでの時間的タイムロスに加え、台数項目以外は同一内容の申請について、協議の場を設け、書類確認対応を行う警察にとっても業務効率上負担になっていると考えられる。

そこで、申請する変更点がロボットの台数のみであり、同様の条件下で公道において実証実験を行う走行ロボットにおいては、目標台数に至るまでの全体計画を初回のみの提出とするなどによって、都度の申請を省略できるようにするべきである。

具体的には、「歩道走行型ロボットの公道実証実験に係る道路使用許可基準」の策定について(通達)(以下、通達)の6頁の「(6)遠隔監視型の公道実証実験において1名の監視・操作者が複数台のロボットを走行させる場合の基準」の「※同時に監視・操作するロボットの数を増やす場合は、原則として1台ずつ増やすこととし、都度、新たな実験として道路使用許可申請を行うこと」の後に、「ただし、公道以外の場所で複数台での実証実験を行った実績がある場合は、その結果を添付することにより、同時に監視・操作するロボットの数を1台ずつ増やし、目標の台数に達するまでの全体計画の提出を1度に行ってもよい」といった趣旨の文言を追記するなどの対応を求めたい。

事業者においては日々、公道以外の場所での検証を行っており、問題なく動作する根拠を示すことが可能である。また、警察庁の「歩道走行型ロボットの公道実証実験に係る道路使用許可基準」の1頁には「いまだ技術的な安全性が確立されておらず~(中略)~原則として道路交通法第77条第1項の道路使用許可を受けなければならない」と書かれているように、技術的な安全性の確立についても示すことができる。

これにより、公道で台数のみを変化させて同様の条件下で実証実験を行う走行ロボットの道路使用許可に係る都度の申請を省略し、走行ロボットの実用化のスピードアップとともに、警察をはじめとする関係者の業務効率化を図ることができる。ロボットの活用が叫ばれている現在において、実用化されたロボットの数が少ない、また、実用化されてもロボットは結局1台しか走行していない例が多い中、安全性を担保した上でのロボットのさらなる活用によって、多様なサービスの提供や生活の利便性向上につながることが期待される。

具体例として、都内で2025年度の実装を目指している2024年度の実証実験計画では、移動支援を目的とする走行型ロボットの同時走行台数について、最終的な稼働台数を5台として計画を進めている。台数増の過程でトラブルがなく、順調に実証実験を進めることができる場合でも、現行法制下では1回の道路使用許可に警察との事前の協議を含めて1ヶ月以上の時間を要する。実証実験の実施許可が出た後、実験実施に係る周知としてのプレス対応、什器セッティング等の準備のためにさらに1ヶ月程度の準備を要し、1台のロボット使用に係る実証実験で許可から実施まで2ヶ月程度を要する計算となる。それを5回繰り返すため、すべての実証実験の完遂までに10ヶ月以上の時間が必要となる。仮に、今回提案の申請手続きの見直しにより、警察との協議を初回のみとした場合には、2回目(2台目)以降の協議期間がなくなることで、実証実験の完遂までを5ヶ月程度に短縮できる見込みである。上記では移動支援を目的とする走行型ロボットの例を示したが、近い将来にこの他にも配送用や警備用、清掃用などの目的の異なる複数台の走行型ロボットで実証実験を重ねていく予定である。そうした場合に、現行の台数項目以外に申請内容に変更点がない実態を踏まえ、スピーディに実証実験を行える環境を整えることが、多様なサービスの実装を早期に確実なものとすることができ、警察関係者の業務効率化にも資する。

<根拠法令等>
  • 道路交通法第77条第1項
  • 令和5年4月3日 警察庁丙交企発第26号、丙交指発第15号、丙規発第14号、丙運発第8号「「歩道走行型ロボットの公道実証実験に係る道路使用許可基準」の策定について(通達)」
  • 令和5年4月 警察庁「歩道走行型ロボットの公道実証実験に係る道路使用許可基準」
No. 51. 実証・試験目的の車両輸出に必要な書類の見直し
<要望内容・要望理由>

海外で自動車車両(以下、車両)を用いた実証や試験を行う際、ナンバー付の車両の場合は、ナンバーの一時抹消時に発行される「登録識別情報等通知書」とともに、「輸出予定届出証明書」の税関への提出が求められる。一方、「輸出予定届出証明書」は、「登録識別情報等通知書」発行時に同時発行できるものの、別途発行する場合には、手続きのために国土交通省の地方運輸局へ出向く必要があるなど、発行までに時間を要するため、輸出までにリードタイムがかかっている。そのため、車両仕様によっては次の輸出便が1ヶ月後という状況もあり得る状態の中、適時の船積みのスケジュールに遅れる可能性も出ている。

そこで、ナンバー付の車両を海外での実証や試験に用いるために輸出する際の提出書類を「登録識別情報等通知書」のみとするべきである。「輸出予定届出証明書」発行の有無に関わらず、実際に「登録識別情報等通知書」発行済みの車両が輸出されると、税関から運輸局に連絡があるため、運輸局として輸出状況の把握は可能であり、「輸出予定届出証明書」によって当該車両が輸出「予定」にあるか否かを把握するニーズはないと考えられる。また、「登録識別情報等通知書」の発行がなされていない場合には輸出ができないため、「登録識別情報等通知書」の発行によって、盗難車の輸出等、第三者による無許可の輸出は防ぐことができる。

これにより、海外での実証や試験の重要性がますます増しているモビリティ分野において、適時の実証や試験の実施が可能となる。

<根拠法令等>
  • 道路運送車両法第16条第4項、第5項
No. 52. ロボット農機の圃場間等の公道移動に関する規制の緩和
<要望内容・要望理由>

人口減少下において農業の生産性を維持し発展させるためには、ICTを活用したスマート農業の実現が必須であり、ロボット農機の自動走行を活用した農作業の自動化は、上記問題を解決する手段となりうる。しかし、農機の自由な自動走行は圃場内や私道に限定されており、圃場間をつなぐ農道や公道の移動は許可が必要となっている(自動運転レベル4を除く)。農機の自動走行には事実上制約が多く、現状は農機移動のたびに有人による操縦が必要となるため、作業効率が大幅に低下し、上記問題の解決につながらない。

また、道路交通法では、レベル4の自動運転は「特定自動運行」と定義づけられており、これを行うには、対象地域を管轄する公安委員会の許可を受けることが定められている。許可を受けるためには「特定自動運行計画」の提出が必要であるが、この計画に従って行われる特定自動運行は、「人又は物の運送を目的とするもの」に限定されている。

そこで、「ロボット農機による圃場間等の農道や公道移動」を上記の特定自動運行の目的に追加することを提案する。

これにより、ロボット農機の操縦のために人員を割く必要がなくなり、農作業の抜本的な生産性の向上につながる。また、ロボット農機の監視に場所の制約がなくなるため、障がい者等でも監視業務に従事することが可能となり、農業者のダイバーシティも推進されることとなる。さらに、農家によるロボット農機の購入やロボット農機の監視・請負事業の創出につながり、ロボット農機の社会実装につながることが期待される。

<根拠法令等>
  • 道路交通法第75条の13第1項第1号、第5号
No. 53. 有機農産物の生産・販売拡大に向けた認証要件の緩和
<要望内容・要望理由>

農産物に「有機」や「オーガニック」(以下有機とする)と表示して出荷・販売する場合、日本農林規格(JAS規格)で定められている有機JASの検査認証を受けなければならない。

この検査認証では、化学肥料や農薬の使用状況の他に、「土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させること」も要件となっており、主にレタスはじめ葉物等の野菜で用いられる水耕栽培や施設栽培では、有機JASの認定を受けることができない。

そこで、現在は有機JASとして認証されない水耕栽培及び施設栽培でも、米国同様、「有機」や「オーガニック」と表示して出荷・販売を行うことができるよう、検査認証の要件の緩和を要望する。

これにより、水耕栽培や施設栽培での有機農産物の生産・販売が拡大することが見込まれる。このような栽培方法は、作物の生育が均一で比較的早く、かつ安定的に有機農産物の高収量が想定されるとともに、土壌を用いないクリーンな環境で栽培することにより、土壌病害や連作障害のリスクもない。また、高品質かつ値頃な価格で安全・安心な農産物を安定的に供給することが可能になるとともに、生産者の手取りの拡大が達成できる。「みどりの食料システム戦略」が策定されるなど、環境と調和のとれた農業活動がわが国においても課題となる中、持続可能な農業生産の実現につながることも期待される。

<根拠法令等>
  • 令和4年9月22日 農林水産省告示第1473号「有機農産物の日本農林規格」第2条(1)、第4条
以上

*を付した項目は諸外国の動向を踏まえた規制・制度改革提案


  1. 民間試算によれば、資源価格の高騰や円安による物価上昇を受け、2022年のリユース市場規模は約2.9兆円、リユース経験人口は約3,400万人に上る。2009年以降13年連続で拡大、2030年には4兆円規模市場になると見込まれる。また、古物商等の許可件数も増加し、2022年度末には48万4,178件を記録した(警察庁)。2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%(126.7兆円)、うち電子マネーが5.1%(6.4兆円)、コード決済が8.6%(10.9兆円)に上る(経済産業省)。
  2. 例えば、技適未取得機器を用いた実験等の特例制度を年間20件程度届け出る企業では、180日以内に実験等を終えられないケースが7~8割の場合、年間15件程度は技適を取得することになる。技適の申請費用は約100万円/件のため、年間1,500万円程度の費用が生じている。また、技適の取得は平均2ヶ月の期間を要する。
  3. Good Laboratory Practiceの略称。医薬品の毒性及び安全性薬理に関する非臨床試験の実施の基準。
  4. Contract Research Organizationの略称。企業、医療機関、行政機関等の依頼により、医薬品等の非臨床試験並びに臨床開発及び臨床試験(治験)に関わる業務を、受託、または労働者派遣等で支援する外部機関。
  5. レジストリを医薬品や医療機器の開発に利活用するため、疾患登録システムなどのネットワーク化を行う国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のCINがサポートしているレジストリには、糖尿病(J-Dreams)や軽度認知症(オレンジレジストリ)などがある。

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