脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律施行規則及び脱炭素成長型経済構造移行推進機構の財務及び会計に関する省令の一部を改正する省令(案)等に対する意見公募(2026年1月16日公示)
一般社団法人 日本経済団体連合会
環境エネルギー本部
排出量取引制度(GX-ETS)に関し、2026年4月からの本格稼働に向け、諸外国に比して短期間の厳しいスケジュールのなか、精力的な検討を迅速に進めた官民関係者に敬意を表する。取りまとめられた詳細制度設計の案は、総じて、排出削減と経済活動の両立に配慮した内容であり、本案に基づいて制度を本格稼働させることに基本的に賛同する。
そのうえで、GX2040ビジョン(2025年2月閣議決定)にも明記されている通り、わが国のGXはエネルギー安定供給確保、経済成長、脱炭素の同時実現を目指すものである。この点、ETSの設計・運用にあたっては、過度な炭素コストの賦課によって国内生産の競争力を削ぎ、カーボンリーケージが発生する事態を回避することが最重要課題となる。規制が緩い海外への生産移転が起こればグローバルな排出削減に逆行する懸念があるのみならず、わが国の経済成長やエネルギー安全保障・経済安全保障、ひいては国民生活にも影響が及ぶ。
「産業構造審議会 排出量取引制度小委員会 中間整理 ~排出枠の割当ての実施指針等に関する事項~」(以下「中間整理」という)の「9. 発展の方向性」においても触れられている通り、経済実態との整合性確保、とりわけ万全なリーケージ対策の観点からは、さらに検討・対処すべき課題がある。複雑な制度をわが国で初めて稼働させることで、想定外の事象が発生することも織り込まねばならない。抑制的に制度を開始すること、および、わが国の産業競争力に本制度が悪影響を及ぼす兆しがある場合には機動的な見直しを実施できる態勢を予め整えておくことが極めて重要である。
ひとたびカーボンリーケージが発生すれば、そこからの回復には長い時間を要する。また、グローバルに経済合理性を追求する企業は、往々にして静かに生産能力の移転を進める。政府には、リーケージが顕在化してからの対策では手遅れになるという緊張感を持って、さらなる検討や制度の運用にあたっていただきたい。
以上に加え、個別の点について下記の通り意見を述べる。
「GX推進法施行規則等を改正する省令等の一部を改正する省令#1」関係
【01】
[該当箇所]
第13条(排出目標量に関する確認報告書) 第2項
第18条(排出実績量に関する確認報告書)
[意見]
本省令案に規定の通り、登録確認機関による確認について、限定的水準の確認を前提に制度の運用を開始することに賛同する。
制度運用開始後も、当分の間、要求する確認水準は限定的水準とし、一部事業所の合理的水準への移行を検討するにあたっては、状況を慎重に見極め、時期にとらわれずに判断することとすべきである。
[理由]
登録確認機関の体制整備の状況に加え、制度対象事業者の手続き負担抑制の観点からも、本省令案が限定的水準の保証を求めていることは妥当である。
一方で、中間整理は、「2029年度以降、大規模事業所を対象に、段階的に合理的水準の確認を求めることとする」(p.26)としている。現時点で、制度運用4年目の時点で登録確認機関の体制がどの程度まで整うかは必ずしも見通せない。加えて、それ自体排出削減には繋がらない確認手続きについて、どの程度の負担を強制すべきかも検討を要する。
第1回 排出量取引制度小委員会で確認のあり方について議論が行われた後、サステナビリティ情報開示の文脈では、「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理」(2025年7月)が取りまとめられ、「企業に過度な負担を課すことなく、第三者保証制度を円滑に導入するためには、保証の水準は限定的保証とし、合理的保証への移行の検討は行わないことが適当」と整理された。EUにおいても、サステナビリティ開示指令(CSRD)に基づく開示について合理的保証への移行を検討する方針が示されていたが、企業の負担軽減の観点から撤回された。情報の使途が異なるとはいえ、データの信頼性と手続き負担とのバランスのあり方が国内外で再考されている現状も踏まえ、本省令案に定める確認水準を再度見直す場合には、改めての検討が必要と考える。
「実施指針#2」関係
【02】
[該当箇所]
全体
[意見]
算定の具体的な方法等に関するガイドラインを早期に公表すべきである。
[理由]
制度対象事業者が自社への影響を具体的に特定するためには、より詳細な手続きを定めたガイドラインが必要である。GX-ETSはGXの推進をはじめ経営戦略に大きな影響を及ぼすことから、ガイドラインを速やかに示すことで、事業者に早期の対応を促すべきである。
【03】
[該当箇所]
第5条(排出目標量の設定方法) 第三号 ト
[意見]
中間整理(p.56)に記載の通り、割当年度の前年度において高圧ガス保安法に基づく保安検査が実施された場合も、本箇所に定める措置の対象とすべきである。
[理由]
法定点検の実施による特定の年度における一時的な活動量の大幅減少は、基準活動量を調整すべき構造的な活動量の変動とは異なる。不可避的に発生する法定点検の影響が本措置の対象とならない場合、法定点検の対象となる事業所・業種とその他の事業所・業種との間の公平性を大きく損なうと考えられる。
【04】
[該当箇所]
第6条(脱炭素成長型投資事業者排出枠の割当てに当たって勘案すべき事項)
[意見]
本条に規定された措置を盛り込むことに賛同する。
そのうえで、本措置やその他の制度設計を通じてリーケージ防止への配慮が行われていることは高く評価するが、それらによってリーケージリスクへの万全な対策が行われているとは言い難い。中間整理の「9. 発展の方向性」の内容も踏まえ、経済活動の実態を踏まえた追加的なリーケージ対策のあり方について引き続き検討を行うべきである。併せて、GX-ETSがわが国の産業に与える影響を注視し、悪影響を及ぼす兆しがある場合には、機動的かつ柔軟な見直しを躊躇なく実行できるよう、予め態勢を整えておくべきである。
[理由]
本条の措置は、カーボンリーケージのリスクに対して制度の運用開始時点において一定の手当てを講じるものであり、重要と考える。
そのうえで、本措置は、中間整理(p.91)に(リーケージ業種に該当する事業者の)「資金ショートによるリスクに対応する」との設計思想が明記されているように、排出枠の不足に直面した事業者が資金ショートによって事業継続困難に陥る事態の発生を抑制する趣旨で講じられるものと理解される。
他方で、カーボンリーケージのリスクはより広範なシーンに存在する。例えば、中間整理(p.116)に記載されている「設備集約や統合等の事業構造改革」の際、集約される側の事業所では事業所の廃止や7.5%以上の活動量減少が起こる一方、集約先の事業所では7.5%未満の増産しか見込まれないケースもあると想定される。こうしたケースでは、生産性向上に資する事業構造改革の結果、排出枠の割当不足が生じることにもなりかねない。結果として、構造改革の減産側のみが国内事業所で進み、増産側は海外事業所で起こる、あるいは当該事業者が増産を諦め、海外企業等に生産を代替されるといったことが起こりうる。
上記の例に限らず、制度の運用を開始すれば、現状の制度設計では必ずしも手当てされていないリーケージリスクが可視化される可能性がある。GX-ETSが成長を阻害する制度となることのないよう、そうしたリスクには順次手立てを講じる必要がある。
【05】
[該当箇所]
第7条(脱炭素成長型投資事業者排出枠の割当てに当たって勘案すべき事項)
第1項
[意見]
本条に規定された措置を盛り込むことに賛同する。
そのうえで、GX技術区分表に該当する特許技術とGI基金を活用した研究プロジェクトのほかにも、客観的に特定・確認可能であり、かつGXを主目的とすることが明らかな研究開発の類型が確認できた場合には、本措置の対象を順次追加すべきである。
[理由]
ETSを導入した結果、目先の排出枠の購入が優先され、将来国内外の排出削減への貢献が期待される技術について、開発資金の流れが滞る事態は避ける必要がある。本条の措置はこうしたリスクを減じる合理的な手当てと評価できる。
そのうえで、上記趣旨を踏まえれば、GXを目的とする研究開発は幅広く本措置の対象とすることが望ましい。GXへの貢献が副次的なものにとどまる案件への徒な対象拡大は避ける前提のもと、制度上対応可能な限り、対象の拡大を模索すべきである。
【06】
[該当箇所]
第11条(投資環境の整備) 第1項
[意見]
国がGX投資の環境整備に努める方針に賛同する。引き続き、各種のGX技術・製品・サービスに対する大胆な投資促進策が講じられることを期待する。経済界としても、第10条に盛り込まれたイノベーションへの取り組み等を引き続き進める決意である。
[理由]
わが国が強みを有するGX技術・製品・サービスの展開を進め、国内の排出削減はもとより、AZECパートナー国をはじめ海外においても、各国の事情に応じた道筋のもとカーボンニュートラルに向けた取り組みに一層貢献していくことが、わが国の気候変動対策として極めて重要と考えるため。
【07】
[該当箇所]
第11条(投資環境の整備) 第2項
[意見]
保有義務量に対して著しく過剰な排出枠を保有する行為を抑制し排出枠市場に十分な流動性を確保するための方策について、検討を進めるべきである。一方で、保有義務量を上回る排出枠の保有を厳格に制限しすぎれば、国内投資のインセンティブを削ぐことにもなりかねない。バンキングのメリットと十分な流動性確保とのバランスを取ったバンキング抑制策のあり方について検討を深め、早期に制度案を示すべきである。
[理由]
中間整理(p.113)にも記載の通り、過度なバンキングは排出枠市場の流動性を低下させ市場価格の形成に悪影響を及ぼすことから、一定の抑制策が必要である。
一方で、バンキング自体は広く認めることが、事業者の安定的な事業運営、ひいては2050年カーボンニュートラルを見据えた中長期のGX投資の実行に資する。
今回制度対象となる日本企業の多くは、エネルギー効率の改善等による地道な排出削減に既に相当程度取り組んでおり、さらなる削減には大規模な設備投資が必要である。この場合、投資の決定、設備の製作・建設、装置の稼働を経て削減効果が現実化するまでには長い期間を要するため、排出量はスロープ状に漸減するのではなく、いわば階段状に、新設備が稼働するタイミングで大きく減少する形となることが想定される。一方で、割当量は毎年度の目指すべき水準に応じてスロープ状に減少する。このため、平均的に目指すべき水準に達している事業者であっても、不足や余剰の発生が避けられない。こうした傾向は、大規模・長期の投資が必要な業種ほど顕著になる。
かかる状況下で、将来の見通しを持って計画的に排出枠の調達とバンキングを行う選択肢が奪われれば、国際的にも情勢の不透明感が高まるなか、それでなくとも複雑な各企業のGX戦略の立案が一層難度を増すことになる。抑制策のあり方によっては、数年後の保有義務の履行に必要となることが明白な保有枠の売却を強いられる事態にもなりかねない。投資判断の計算が複雑になり、国内投資のインセンティブが削がれることが懸念される。
こうした観点から、排出削減への計画的な取り組みに資するバンキングを認めつつ、過度な市場の流動性低下を回避する、バランスの取れたバンキング抑制策を講じることが不可欠である。
そのうえで、バンキング抑制策は、排出枠の市場価格、ひいては制度対象事業者の経営戦略に大きな影響を及ぼすことから、早期に制度案を示し、事業者に対応の猶予を与えることも重要と考える。
【08】
[該当箇所]
第12条(排出実績量の算定)
[意見]
排出実績量の算定におけるCCUSや森林吸収の取り扱いについて検討を進めるべきである。
[理由]
カーボンニュートラル社会の実現には、排出削減に加え、除去・吸収量の拡大が不可欠である。除去・吸収の取り組みが適切に評価され、促進されるよう、中間整理(p.15)にも記載の通り、SHK制度における検討状況を踏まえつつ、本制度上の取り扱いについて整理を進めることが求められる。森林吸収量および木材製品の炭素蓄積変化量についてSHK制度上の対応が具体化していることも踏まえ、検討を加速すべきである。
【09】
[該当箇所]
第12条(排出実績量の算定) 第三号 ロ
[意見]
今後、パリ協定6条メカニズムに基づくクレジットの流通が拡大していく可能性がある。特に相当調整付きのものを念頭に、将来的に、本制度において利用可能なクレジットの対象を拡大することを検討すべきである。
[理由]
わが国の温室効果ガス排出量は世界全体の3%程度に過ぎず、グローバルなカーボンニュートラルの実現に向けては、国内での排出削減のみならず、国外の削減に貢献していくことも欠かせない。JCMプロジェクト以外も含め、海外で削減された排出量をGX-ETS上も評価できる制度のあり方を検討すべきである。
【10】
[該当箇所]
附則 第2条(検討)
[意見]
わが国の国際競争力の維持・向上等を勘案しつつ、本告示の実施状況を踏まえて必要な措置を講じる旨、明確に規定することに賛同する。GX-ETSがわが国の産業に与える影響を注視し、悪影響を及ぼす兆しがある場合には、機動的かつ柔軟な見直しを躊躇なく実行できるよう、予め態勢を整えておくべきである。
[理由]
今般、ETSという複雑な制度をわが国で初めて稼働させることで、想定外の事象が発生する可能性がある。加えて、経済実態との整合性確保、とりわけ万全なリーケージ対策の観点からは、中間整理の「9. 発展の方向性」において触れられている通り、さらに検討・対処すべき課題がある。抑制的に制度を開始することはもとより、必要に応じた機動的な見直しが行えるよう、予め準備を整えておくことが極めて重要である。
【11】
[該当箇所]
附則 第3条(検討)
[意見]
2031年度以降の目指すべき水準の検討にあたっては、本告示案において業種別ベンチマークに基づく目指すべき水準が設定されていない業種へのベンチマークの拡大を進めるとともに、既存のベンチマークについても、排出削減努力の差によらないばらつきが生じていると疑われる場合には適正化を実施すべきである。その際、必要な場合には、2031年度を待たずに目指すべき水準を改定することも排除すべきではない。
併せて、目指すべき水準以外の制度設計に関しても、運用開始後の制度の実態を踏まえつつ、2031年度以降のあり方についての検討を進めるべきである。
[理由]
中間整理に記載の通り、制度開始時点で「グランドファザリングの対象となる業種においても、過去の削減努力の適切な評価や、業種特性を踏まえた割当てを行う観点から、ベンチマーク対象業種への移行に向けた検討を行う」(p.116)ことが望まれる。
また、制度開始時点でベンチマーク対象業種となっている業種においても、業種によっては提供する製品・サービス構成の違いによる影響が必ずしも排除しきれず、削減努力の差によらないばらつきが生じている疑いがあるとの指摘がある。
こうした状況を踏まえたベンチマークの検討を進めるべきである。その際、新たなベンチマークの適用を原則2031年度以降とする方針は理解するものの、競争上の不公平を生じている場合等、必要な場合には、より早いタイミングでの改定も考慮すべきである。
このほか、目指すべき水準以外の制度設計についても、必ずしも2031年度以降を見据えた検討が行われていない部分があると認識している。GX投資は投資回収期間が長期に及ぶケースが多いことも踏まえ、企業が中長期の事業戦略や投資計画にGX-ETSのインパクトを適切に織り込めるよう、早期に見通しを示すことが望まれる。
【12】
[該当箇所]
別表第1、別表第2
[意見]
今回示された目指すべき水準の算定基礎となっているベンチマーク水準およびグランドファザリング削減率の考え方に強く賛同する。
[理由]
今回示された目指すべき水準の算定に用いられたベンチマーク水準およびグランドファザリング削減率は、2030年度までという時間軸も踏まえつつ、現実的に取り組みうる対策を想定したものといえる。
仮に、両指標が非現実的な水準に設定された場合、GX-ETSはほぼ全ての制度対象事業者に回避困難な追加負担を課す制度となる。すなわち、制度対象外の国内事業者のみならず海外事業者との競争に際して、制度対象事業者の国内事業所は不利を背負うことになる。GX-ETSが国内事業活動に対する縮小圧力として機能する格好となり、経済成長の実現を旨とするGX推進法の目的に違背する。
また、制度対象事業者は、大口の排出者であると同時に、生産プロセスに由来する温室効果ガス排出の削減に関する第一線の知見を有している。現実的に対応しうる水準の削減をETSによって強度高く促しつつ、GX先行投資支援等によりGX投資と研究開発を加速することが、カーボンニュートラルの実現を目指す観点からも合理的である。
【13】
[該当箇所]
別表第1
[意見]
上位と中位の乖離が大きい一部のベンチマーク業種について、2030年度時点の目指すべき水準を「上位50%水準×0.915」によって定める手当てを講じることは合理的であり、支持する。
[理由]
原単位が悪い事業者に排出削減努力を促すことは当然重要である。しかしながら、対応のための時間的猶予を与えることもなく非現実的な削減を求め、国内生産能力を縮小させる結果となれば、地球規模の排出削減にもわが国の成長にも逆行する。グランドファザリング対象業種との公平性の観点も含め、本件措置は合理的と考える。
【14】
[該当箇所]
別表第1 備考⑥、⑨、⑫、別表第2 備考③、⑨、別表第3 備考③
[意見]
中間整理(p.56)に記載の通り、割当年度の前々年度において(一)~(三)に掲げる事情がある工場等又は輸送手段についても、これら事情の影響による基準活動量等の更新を行わないこととすべきである。
[理由]
中間整理の内容と異なり、本告示案は、割当年度の前々年度に災害等の不可避的要因が生じていた場合における基準活動量等の調整に係る措置を規定していないように見受けられる。仮に前々年度における災害等の影響を調整しないこととなれば、災害等の翌々年度における割当量の算定の際に、災害等の影響を受けた活動量等とその翌年度の活動量等の平均を前年度の基準活動量等と比較して7.5%以上の変動がないか確認することとなり、本措置の趣旨を損ねることになる。
【15】
[該当箇所]
別表第1 備考⑩(八)、(九)
[意見]
(九)については、「前年度の基準エネルギー消費原単位に0.925を乗じた値【以下】である工場等又は輸送手段」と規定すべきものと考える。
そのうえで、基準燃料使用量の更新と独立に基準エネルギー消費原単位が更新されうる制度設計となると、燃料ベンチマークおよびグランドファザリングの対象となる業種において、排出削減努力の差によらない割当量の差が生じることを懸念する。基準エネルギー消費原単位の更新は、基準燃料使用量の更新のタイミングに合わせて行うこととすべきである。
[理由]
基準エネルギー消費原単位が基準燃料使用量と独立したタイミングで見直される場合、直近平均燃料使用量が前年度における基準燃料使用量から7.5%以上変化したタイミングにおいて、直近平均エネルギー消費原単位が基準エネルギー消費原単位から7.5%以上変化しているか否かは、基準エネルギー消費原単位がいつ更新されたかに相当程度左右されることとなる。
この場合、中長期的に同等の省エネや活動量増減が起こっている事業者間であっても、省エネと活動量変化のペースの微妙な前後によって基準活動量の見直され方、ひいては割当量に差が生じうると考える。
【16】
[該当箇所]
別表第2 備考⑥(二)
[意見]
中間整理(p.87)に記載の通り、「特定工場等に指定された年度から」でなく、「特定工場等に指定された年度の翌年度から」の3ヵ年度平均によって起点年度平均エネルギー起源排出量を計算することとすべきである。
[理由]
別表第2の備考⑤および備考⑥(一)の規定を踏まえると、2011年度時点で特定工場等に指定されていた工場等と同様に、それ以降に特定工場等に指定された工場等についても起点年度およびその前後各1年度のエネルギー起源排出量の平均を取って起点年度平均エネルギー起源排出量を定めるには、上記の通り期間を設定することが適当である。
「GX推進法の規定に基づき参考上限取引価格及び調整基準取引価格を定める告示#3」関係
【17】
[該当箇所]
第2条(参考上限取引価格及び調整基準取引価格)
[意見]
参考上限取引価格および調整基準取引価格について、求められる対策に要する費用を基に設定するとの基本方針のもとで算定を行ったことは合理的である。
[理由]
第7回排出量取引制度小委員会 資料3に記載の通り、「制度対象者の足元の需給が適切に反映されれば、排出枠価格はこれらの対策費用の範囲内で推移すると予想される」(p.6)。市場取引価格がこの範囲となるよう上下限価格を設定することで、需給の状況を逸脱した価格変動を抑制し、取引を安定化することが可能になると考える。
【18】
[該当箇所]
第2条(参考上限取引価格及び調整基準取引価格)
[意見]
本告示で定める参考上限取引価格や調整基準取引価格が不適切に参照されてGX需要創造を妨げることのないよう、政府は価格設定の根拠や意味合いの周知を徹底すべきである。
[理由]
わが国が2050年カーボンニュートラルの実現を目指す以上、現時点で一定の経済合理性を有する排出削減策の導入促進のみならず、実用化に膨大な費用と長い時間を要する対策の研究開発・社会実装にも早い段階から取り組むことが求められる。後者の対策コストはGX-ETSにおいて当面求められる対策の費用水準を大幅に上回る。産業分野によっては、こうした高い排出削減コストを伴うGX製品が適切に評価されて市場に流通する「GX需要創造」が、GXの推進に不可欠である。
仮に、今般設定される排出枠の上下限価格がわが国におけるあらゆる種類の排出削減を評価する指標と誤解されて参照されれば、GX製品市場の創出が阻害され、将来の大幅削減に繋がるイノベーションの実現、ひいてはカーボンニュートラルの達成時期が遠のく結果となりかねない。
【19】
[該当箇所]
第2条(参考上限取引価格及び調整基準取引価格) 第一号
[意見]
参考上限取引価格(上限価格)が制度対象事業者の国内投資リスクを過度に高めることのないよう、制度運用開始時点の価格水準は抑制的なものとすべきである。
併せて、市場価格は需給によって決まるという前提に立脚しつつ、上限価格が頻繁に出現しない市場環境整備を行うことが不可欠である。特に、制度の開始にあたっては想定外の事態が生じるリスクもあることから、実勢市場価格が一定程度低い水準から始まるよう環境整備を行うことが望ましい。
[理由]
上限価格については、今後、制度対象事業者が国内投資を判断する際、GX-ETS対応で発生しうるコストを見積もる基礎になると考えられる。上限価格の発動自体は稀であっても、平時から、国内投資の判断に上乗せされるリスクの尺度となる前提で、一定程度抑制的な上限価格を設定することが重要である。
上限価格は、市場が想定外の値動きをした際にあっても、国民生活や産業活動に大きなインパクトが生じない水準に設定することが前提となる。ただし、そのような前提で設定された上限価格が頻繁に出現すれば、わが国の産業競争力に甚大な影響を及ぼすおそれがある。過度なバンキングに対する抑制策を導入するなど、流動性確保策を講じる必要がある。
【20】
[該当箇所]
第2条(参考上限取引価格及び調整基準取引価格) 第二号
[意見]
調整基準取引価格(下限価格)は、本来、産業立地で競合する各国の排出枠の実勢価格を上回らない水準で設定したうえで、実際の取引価格は市場に委ねることとすべきものである。
本告示案に示された1,700円/t-CO2を採用するのであれば、とりわけリーケージ防止の観点から、制度開始後の状況を注視し、必要に応じ柔軟かつ機動的な制度見直しを実行することが不可欠である。
[理由]
わが国の産業競争力確保とリーケージ防止の観点から、下限価格水準の設定に際しては、産業立地として競合する中国・韓国における排出枠の実勢価格も考慮すべきである。市場取引の結果によらず、制度的に、こうした国々よりも高い排出枠価格を強制することによる影響を懸念する。
仮に本告示案の水準を堅持するのであれば、今後の制度運用や市場設計にあたっては、リーケージ防止に一層留意する必要がある。
【21】
[該当箇所]
附則 第2項(検討)
[意見]
本項各号に示された今後の参考上限取引価格・調整基準取引価格の設定のあり方は、制度対象事業者に計画的な排出削減投資を促す合理的な水準の引き上げの見通しを示すものといえる。
そのうえで、事業者の予見可能性確保は当然重要であるが、国内外の情勢変化により、ここに定める引き上げ幅がわが国の産業競争力に影響を与えることが懸念される際は、本項各号に記載の方法を見直すことも躊躇すべきでない。
[理由]
2030年度までの間、産業立地で競合する各国における炭素価格の動向等に現時点で想定されない情勢変化が発生する可能性がある。そうした際にあっても本項の規定に固執すれば、制度対象事業者の国内事業活動の競争力が削がれ、ひいてはわが国の成長実現に逆行する事態となりかねない。
- 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律施行規則及び脱炭素成長型経済構造移行推進機構の財務及び会計に関する省令の一部を改正する省令
- 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行に資する投資を行おうとする事業者に対する脱炭素成長型投資事業者排出枠の割当ての実施に関する指針
- 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)第39条第1項及び第116条第1項の規定に基づき、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律の規定に基づき参考上限取引価格及び調整基準取引価格を定める告示