於 台北
東亜経済協会と日本経済団体連合会の東亜経済人会議日本委員会は、2026年3月12日、第53回東亜経済人会議を台北で開催した。台湾側からは東亜経済協会の黄教漳理事長をはじめ約80名が、日本側からは、東亜経済人会議日本委員会の飯島彰己委員長をはじめ約63名が参加した。
会議では、台日それぞれの経済情勢ならびにデジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)、医療・バイオテクノロジー分野における台日協力の可能性を探るとともに、その在り方について、議論を深めた。
台湾と日本は、地理的・文化的な近接性に加え、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を共有するパートナーとして、人的・文化的・経済的な交流を長年にわたり積み重ねてきた。これまで築かれてきた、そうした基盤の上にどのような新しい協力関係を切り拓いていくか、台日双方にとって、持続的成長や経済安全保障とも大いに係わる課題である。近年、台日間の投資が拡大していることは、こうした新しい協力関係の兆しをうかがわせるものである。
折しも、世界では、自由貿易への反発や自国優先の姿勢が顕著になり、長年に亘って整備され、また遵守されてきたルールに基づく自由で開かれた秩序が大きく揺らいでいる状況にある。こうした中にあって、安定した秩序の下でこれまで発展を遂げてきた台日は、今こそ、そうした秩序の維持・強化に向けて行動を起こすことの重要性を確認した。そのうえで、双方は、台日経済関係の一層の深化・発展に向けた方策について対話を深めるとともに、世界貿易機関(WTO)第14回閣僚会議(於カメルーン)を2週間後に控えて、多角的な自由貿易体制を立て直すべく、必ずしも十分に機能していない同機関の改革に向けて協力することで一致した。
台日は、内にあっては、少子高齢化に伴う人口減少への対応、気候変動への対応、エネルギーの安定供給の確保といった共通する課題に直面している。これらに対処するにあたっても、内向きに終始するのではなく、課題解決に資する連携を推進し、台日経済関係の一層の深化につなげるとともに、そうすることによって得られた経験と知見を諸外国において積極的に活かすことが重要との認識を共有した。
半導体産業は、AIの開発・実装を含むDXおよびGXを支える中核的な基盤であり、経済安全保障の観点からも、台日双方にとって重要な戦略分野である。研究開発、製造、人材育成等において、台湾積体電路製造(TSMC)による日本での事業展開をはじめ、先端半導体分野を中心に官民挙げた具体的な協力が進展していることを踏まえ、双方は、引き続き相互補完的な強みを活かしながら、サプライチェーンを含めた産業基盤の強化に継続的に取り組む必要性を確認した。あわせて、2025年12月に署名された「デジタル貿易に関する相互協力のための台湾日本関係協会と公益財団法人日本台湾交流協会との間の取決め」にもとづき、DXの推進に不可欠なデータ利活用の推進、サプライチェーン全体を俯瞰したサイバーセキュリティのレジリエンス強化、データの円滑な越境移転等について、双方が、引き続き協力して取り組むことが重要であるとの認識で一致した。
脱炭素化への取り組みが不可欠となる一方、電力需要の増大にも対応し、環境負荷の低減とエネルギーの安定供給とを両立させることが台日双方にとって重要な課題である。台湾では、半導体産業の興隆やデータセンターの増設により電力需要が逼迫しており、日本でも、今後同様の事態が懸念されているなか、経済成長と脱炭素化との両立を可能とする安定したエネルギー供給の確保が急務である。それに関連して、台湾において進展している洋上風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギー導入の取り組みが紹介された。さらに、本分野における台日間の連携を促進する上で、カーボンクレジットの活用を含む実務的な協力の在り方を検討する意義は大きいとの認識を共有した。
台日双方において高齢化や医療ニーズの高度化が進むなか、医療・バイオテクノロジー分野では、研究開発の成果を確実に事業化につなげていくことが重要となっている。実際、同分野では台日間で戦略的パートナーシップの締結や先進医療分野での技術協力等、具体的な連携事例が見られる。こうしたなか、双方は、デジタル技術の活用を含め、研究開発や実証・実装に向けた取り組み、ならびにスタートアップ支援等を通じたイノベーション創出について、今後さらなる協力の可能性が開けているとの認識を共有した。
双方は、今次会合の議論と成果を踏まえ、台日経済関係をさらに深化・発展させるべく、諸外国市場への展開も視野に入れながら、今後も多様な分野で双方の強みを活かした戦略的な連携・協力を進めていくことが重要であることを確認した。そのためにも、産官学連携や人材交流の一層の促進を通じて相互理解を深めるとともに、産業基盤を強化する必要があるとの認識で一致した。
双方は、第54回東亜経済人会議を適切な時期に、東京で開催することで合意した。