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Policy(提言・報告書)  環境、エネルギー 資源安全保障に資するサーキュラーエコノミー推進に関する提言

2026年3月17
一般社団法人 日本経済団体連合会

近年、鉱物資源等を巡る地政学リスクが増大しており、国際的な資源獲得競争が激化している。とりわけレアメタル等の重要鉱物は、デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)の実現に必要な関連機器の製造に不可欠であるものの、特定国に偏在し、希少性が高まっている。中でもレアアースが多く賦存する中国は、2023年以降、戦略的に輸出管理を強化している。

経団連は本年1月末、EUにおけるサーキュラーエコノミー(CE)政策の現状と民間企業の最新動向を把握すべく、約2年ぶり2回目となる「CE訪欧ミッション」をフィンランドとドイツに派遣した。政府高官等との懇談を通じて、EUでは、中国や米国等の地政学的脅威を踏まえ、CEを環境政策の枠を超えて、資源安全保障政策・産業競争力強化政策として位置づけ直し、循環型バリューチェーン構築によりEU域外への鉱物資源の流出を極小化し、鉄やアルミニウム、銅などのベースメタルを含めた鉱物資源を域内に確保していく方針であることについて、明確に確認できた。

「資源を持たない島国」であり、モノづくり産業を基盤に発展してきたわが国は、EU以上に国を挙げて、CEを基盤に資源安全保障対策を強化する必要がある。

わが国では従前より、主にJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)を通じて、一次鉱物資源について自律性確保に向けた取組みが進められてきた。最近では経済安全保障推進法により対策が強化されているが、昨今、地政学リスクが高まる中、DX・GX等による需要の変化等を踏まえ、調達途絶リスクを最小化すべく、一次資源の獲得強化に向けて、①国家備蓄の充実#1、②官民連携による調達先の多様化#2、③採掘・製錬段階の支援#3など、取組みを一層深化すべきである。

こうした一次資源の獲得とともに重要なのが、二次資源(リサイクル資源)の戦略的活用である。わが国ではかねてより、「都市鉱山」に豊富な資源が眠っているとして、リサイクルに積極的に取り組んできた歴史的経緯がある。今こそ、将来の需給動向も見据えて都市鉱山を戦略的に捉え直し、産官学連携の下、「CEへの移行」の中核として「都市鉱山戦略」を位置づけるべきである。

具体的には、今後、「CE加速に向けた都市鉱山戦略アクションプラン」を策定し、経済安全保障や成長戦略、環境保全の観点から、GXとの整合性にも配慮しつつ、今後必要性が増す各種鉱物等に関する需給の現状と見通しに基づいて、短期・中期・長期の対策を講じていく必要がある。

その際、関連する業種・企業の意見を十分に聴取した上で、素材・製品ごとの需給やリサイクルの実態など業種特性を踏まえて、政策を策定することが重要である。また、その政策に必要な財源は、GX経済移行債によるGX財源に限定せず、一般財源等で賄うことを検討すべきである。

かかる課題認識のもと、経団連は、「CEへの移行」を国家戦略に位置づけた「第5次循環社会形成計画(2024年8月閣議決定)」も踏まえ、現在精力的に議論が進められている日本成長戦略の策定に向けて、以下提言する。

1.製品等の製造段階における環境配慮設計の強化

CEの推進、とりわけ都市鉱山戦略を実効性あるものとするためには、製品設計段階から将来の資源回収を前提とした取組みが不可欠となる。「今日の製品設計が、明日の都市鉱山の質を決める」という認識のもと、川上段階からの取組みを強化すべきである。

企業は製品等の製造にあたり、鉱物資源等の使用削減(リデュース)に取り組むとともに、将来の資源回収・再利用を前提に、解体・分離・リサイクル容易性の向上に資する環境配慮設計のより一層の推進に加えて、代替素材の開発・長寿命化・化石資源由来プラスチックのモノマテリアル化等に取り組む必要がある。

その際、素材・製品の特性や、素材供給・製品化・消費者への提供、収集・回収までの製品の流れを踏まえ、関係業界間はもちろん、消費者とも連携して取り組むことが極めて重要である。政府は企業の研究開発投資を政策的に後押しすべきである。

2.資源の安定供給・サプライチェーン強靱化に資する再生資源供給体制強化

(1) 国内再資源化等拠点の強化・ネットワーク化の推進

ベースメタル、レアメタルをはじめとした鉱物資源の安定供給や、わが国基幹産業が求める質と量の両面で二次資源を安定的に供給できる再生材供給サプライチェーンの強靱化を図るべく、わが国資源循環産業を国際的な資源循環の一翼を担う成長産業として育成すべきである。そのため、政府には投資予見可能性が確保できる経済的支援が求められる。その一環として、非鉄製錬所等の国内再資源化等拠点の強化とそれらのネットワーク化の推進が有効である。非鉄製錬所には鉱石に含まれるレアメタル成分を副産物として回収できるという特徴#4がある。有価物を低コスト・省エネルギーで回収する技術を含め、都市鉱山からレアメタル等の製錬・分離精製、前処理分別における解体選別技術などのリサイクル技術の開発や設備投資等への支援が求められる。加えて、二次資源が一次資源に比べてコストが嵩む現状を踏まえ、特に重要な鉱物について政策的な措置を講じることも必要である。

また、電気自動車等に搭載されるリチウムイオン電池(車載用LiB)や、今後大量廃棄が予想される太陽光パネルについて、国内資源循環を強化すべく、多数の関連業種との連携に基づくエコシステムの構築を急ぐ必要がある。

(2) 使用済製品等の国内収集・回収体制の強化

今後必要性が増す鉱物資源等を含む二次資源(リサイクル品)の最大限活用とスケールメリットを通じたリサイクル費用低減のため、e-scrap(電子部品スクラップ)をはじめとした使用済製品等を国内外からより多く収集・回収することが鍵となる。「分ければ資源、捨てればゴミ」という名言がある通り、再生材原料の効率的な収集・回収を推進すべきである。

わが国では2000年代以降、各種リサイクル法や資源有効利用促進法(3R法)、「経団連循環型社会形成自主行動計画」等によって、使用済製品や容器包装等のリサイクルが推進され、着実に成果をあげてきているものの、とりわけ家庭から排出される使用済製品やごみに関して、回収率の向上や効果的な収集・選別体制の構築に課題があるものも存在する。高齢化の進展や過疎化が進む市町村の現状等も踏まえ、質と量とコスト面の観点から、今後、どのような収集・回収のあり方が望ましいか、資源や製品の種類ごとに、議論を深めていくことも中長期的な課題となり得る。

また、再資源化事業等高度化法の活用を含めて、優良な産業廃棄物処理事業者に対する広域処理の容易化や諸手続の簡素化などを推進すべきである。広域処理の推進はスケールメリットを通じたコスト低減の観点から特に重要である。

今後、資源循環を高度化していく上では、これまで廃棄物として処理されたものにも新たな資源価値を見出し、資源回収を積極的に進めていくことも課題となる。そのためには、業界の枠を超えた連携体制の構築、リサイクル技術の高度化、含有元素も含めた情報の共有化など、社会全体での取組みが重要である。

(3) 二次資源の需要創出・確保

資源安全保障の観点から、二次資源が安定的かつ積極的に活用されるよう、素材・物品ごとのリサイクル状況等を踏まえた動静脈企業間の長期売買契約や出資契約の推進など、二次資源を活用する動脈企業と、生み出す静脈企業との連携強化が重要となる。

また、最終的には、消費者が再生材利用製品を積極的に購入する必要がある。再生材利用製品への受容性拡大や使用済製品等の資源回収への理解促進など消費者への啓発活動を積極的に推進するとともに、再生材利用製品の購入意欲を高めるインセンティブ措置についても検討が求められる。さらに、特にリサイクルが進みにくい物品に係る再生材利用製品について、公共調達も推進すべきである。

加えて、再生材に求める品質基準が厳しい場合、リサイクルに過剰なコストがかかり、結果として社会全体の負担が増すだけでなく、安定的な供給も困難になる可能性がある。再生材の特性等を踏まえ、再生材の品質基準のあり方について、動脈・静脈企業や政府等で議論を深めていくことも課題である。

(4) 国外への資源流出対策の強化

廃基板や使用済鉛蓄電池、車載用LiB、廃車ガラ、太陽光パネルなどが実態と異なる名目や不適正な形で輸出されるなど、重要鉱物やベースメタル、プラスチックなどの再生資源原料の国外流出が指摘されている。国外への資源流出を防止するため、関係省庁の地方組織間の連携を強化するなど、資源の不正輸出防止対策を強化すべきである。また、健全な事業者による資源循環を阻害しないよう十分に配慮しつつ、不適正ヤードへの規制強化や、地方自治体や警察と連携した取締強化が必要である。

さらに、トレーサビリティ向上の観点から、企業秘密に配慮した上で、重要鉱物等を含む使用済製品の国外流出防止に資するデータ連携(資源循環データベース等の開発・社会実装)を推進することが重要である。

3.国際資源循環ネットワークのハブ機能の強化

国際的なCEの推進、ひいてはわが国資源安全保障強化やスケールメリットを活かしたリサイクル費用低減の観点から、国内のみならず海外の都市鉱山からの回収も積極的に行うことが重要である。日本の技術や資金・施設を活用して国内外の拠点でリサイクルを推進するなど、わが国がハブ機能を果たす形で国際資源循環ネットワークを構築すべきである。

わが国非鉄製錬所では既に欧米諸国等からe-scrapを輸入し、日本国内で鉱物資源のリサイクルに取り組んでおり、官民が連携して、重要鉱物を含む資源循環ネットワーク構築に向けた取組み強化が有効である。

具体的には、EUでは既にe-scrap等の使用済製品の囲い込みを強化すべく輸出規制が強化されつつある。e-scrap等の循環資源の輸入及び処理を適切に実施している事業者に対して過度な負担とならないよう、e-scrap輸入手続の簡素化に加え、日EU間での輸出入手続の円滑化等を推進すべきである。

また、ASEAN諸国等において、わが国のリサイクル技術等を活用し、現地の都市鉱山の資源循環を推進することが重要である。政府はわが国における経験や知見を活かして、現地における廃棄物適正処理やリサイクル促進に向けた法整備や運用の支援に貢献することが求められる。また、資源獲得競争が激化するなか、まずは現地で事業を展開している日系企業との連携を強化し、さらには現地企業との連携へと拡大していくなど、e-scrap等の国際的な回収・資源循環推進に向けた仕組みを構築すべきである。

なお、国際資源循環ネットワークのハブ機能を果たす上では、一次資源・二次資源を問わず、日本と各国とを結ぶ安定した物流網の確保も重要であり、その観点から、港湾施設等の維持・整備も課題である。

さらに、経団連CE訪欧ミッションにおいて、ドイツやフィンランドから、日欧間でのCE推進に向けた連携強化への期待が寄せられた。これまでの経験や専門知識等を共有しながら、EUをはじめとする同志国が連携してCEを推進していくことが重要と考える。これにより、わが国の優れた技術や知見を国際標準の形成に反映させ、グローバルなCE推進における主導的役割を果たすことにもつながる。

4.異業種・動静脈・産官学連携の強化と消費者啓発

CEは一社だけの取組みでは実現できない。異業種・動静脈連携の強化はもちろん、スタートアップや地方自治体を含めた産官学の連携を推進することが不可欠である。環境省・経済産業省と経団連が創設した「循環経済パートナーシップ(J4CE)」や、経済産業省と環境省が連携し経団連も協力している産官学連携組織「サーキュラーパートナーズ(CPs)」のほか、「資源循環自治体フォーラム」等の取組みを活用しつつ推進していくことが重要である。まずは地域の特性等を活かしながら地域単位でCEを推進し、地方創生につなげていくことが求められる。

また、CEの具現化や資源安全保障を強化するためには、資源循環を担う人材の確保・育成、省力化・省人化投資の推進が重要である。大学・教育・研究機関への支援も含めて、産官学が連携して取り組む必要がある。

さらに、CEの実現には消費者の理解と行動が不可欠である。「GREEN×EXPO 2027」を消費者啓発の場として最大限活用し、資源循環の重要性を広く発信することで、社会的気運を醸成すべきである。

CEへの移行は、単なる環境政策にとどまらず、経済安全保障に直結するものである。CEの推進こそが、戦略的な物資の国内循環を生み、わが国の自律性(Autonomy)と国際社会における不可欠性(Indispensability)を確保するための鍵となる。経団連は、会員企業・団体とともに、資源安全保障に資するCEの実現に向けて取り組んでいく。

以上

  1. 鉱種毎のサプライチェーンリスクを明確化したうえで、対象鉱種や備蓄水準の機動的見直し等
  2. グローバルサウス等における上流権益獲得支援、同志国と連携した上流開発プロジェクト等への支援、EPA(経済連携協定)の活用や首脳レベルでの資源外交の推進等
  3. 老朽設備を含む国内製錬所への投資支援や製錬の高効率化・低コスト化技術等の開発・社会実装支援、スラグの活用拡大、領海・排他的経済水域等に賦存する国産海洋鉱物の商業化に向けた資源量把握や各種技術開発、JOGMECによる一貫した事業支援の強化等
  4. 原料に様々な元素が含まれるため、特定レアメタルに特化した部分的強化だけでは資源の有効活用や環境負荷低減に限界があることから、多品種・多元素の回収に適応した製錬システム全体の強化が必要。

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