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会長コメント/スピーチ 会長スピーチ 経団連定時総会における中西会長就任挨拶 GDP600兆円経済に向けて ― Society 5.0を推進する

2018年5月31日

本日、この定時総会において、経団連会長にご選任いただきました中西宏明でございます。会員の皆さまからのご信任に感謝いたしますとともに、大変重い責任に身が引き締まる思いでございます。経団連会長として、皆さまのご支援、ご協力のもと、職務を全うするように、全力を傾注する覚悟ですので、何卒よろしくお願いいたします。

また、榊原会長におかれましては、この4年間、優れた識見とリーダーシップをもって経団連を率いてこられました。この間の多大なるご貢献に、あらためて、心からの敬意と謝意を表する次第でございます。新会長としてしっかりバトンを受け取り、榊原会長が策定された経団連ビジョンの理念を継承し、「豊かで活力ある日本」の実現に向けて取り組んでまいります。

■ 日本経済を取り巻く状況

6年目を迎えたアベノミクスのもと、景気は緩やかながらも安定的な回復を遂げています。今後の日本経済は、デフレからの完全脱却に向けて、新たな飛躍のステージに入ります。折しも、テクノロジーの進歩で世界は、これまでとは全く異なる時代を迎えています。デジタル化による新たな産業革命の時代が到来しました。コンピューターやインターネット、AIなどを駆使したサイバー技術と現実を高度に融合させたシステムで、さまざまな課題を解決したり、経済的な発展を遂げる。私がその重要性をおこがましくも説いていく、その推進に力を尽くしてきた「Society 5.0」、すなわち人類にとっての5番目の社会はすぐ目の前にあると思っています。

産業構造、社会基盤など、経済社会そのものが大きく変わります。従来の発想や手法にこだわっていては、日本経済の発展や競争力の維持・強化は望めません。産業構造の大胆な転換等も視野に入れつつ、官民が連携して思い切った一歩を踏み出していく必要があります。経団連は、この機をとらえ、イノベーションとグローバリゼーションによる「豊かで活力ある日本」を目指し、これから申し上げる3つの柱にそって、デフレ脱却・経済再生の実現に邁進してまいります。

■ Society 5.0を中核とする成長戦略の強化

第1の柱は、Society 5.0 を中核とする成長戦略の強化です。Society 5.0の実現を国連が掲げる持続可能な開発目標、SDGsの達成につなげるというコンセプトを、日本国内のみならず世界に向けて、積極的に発信していきたいと考えています。

具体的には、Society 5.0に向けて、イノベーションの促進、イノベーション・エコシステムの構築、デジタル技術・データ活用の促進、サイバーセキュリティの強化など、Society 5.0 の全体像をより具体化するとともに、重要分野別のロードマップを策定します。同時に、さまざまな場面で、Society 5.0に関し、世界経済フォーラム(WEF)をはじめとする国内外の関係機関とも連携して、その認知度の向上、理解の促進に力を入れてまいります。

また、Society 5.0 を支える基盤としてのエネルギー政策の見直しも重要な課題です。政府の新しいエネルギー基本計画の策定にあたっては、安全性確保を大前提に、エネルギー安全保障、経済性、環境適合性のバランスの取れたエネルギーミックスの実現を求めてまいります。これに加えて、次世代型のエネルギー供給のためのインフラ整備にも取り組みます。

生産性向上も重要な課題です。人口減少下における成長の実現や創造的な働き方を推進する労働市場改革や、女性、高齢者をはじめとする多様な人材が活躍できる社会をつくり上げてまいります。

さらに、活力ある地方経済の再生が、わが国経済の発展には欠かせないという認識のもと、地方創生への取り組みを強化してまいります。今年度も北海道から九州まで全国7地区の地方経済団体を訪問します。その際、地方経済活性化の観点から、都道府県域を越えた持続可能な広域的経済圏の確立に向けて、忌憚のない意見交換を進めたいと考えています。

■ Society 5.0にふさわしい経済・社会基盤の整備

「豊かで活力ある日本」に向けた第2の柱は、構造改革です。Society 5.0にふさわしい経済・社会基盤の整備が必要です。

国民の将来不安を払拭するため、社会保障制度の持続可能性の確保や財政健全化に真正面から取り組みます。とりわけ、経団連が再三申し入れてきた、2019年10月の消費税率10%への引き上げは、何としても実現しなければなりません。

社会保障制度改革については、現役世代や企業の社会保険料負担を出来る限り抑制するため、思い切った社会保障給付の効率化・適正化を働きかけます。高齢者には、多少苦い改革となりますが、安心・安全な未来の設計に向けて、避けて通ることはできません。

また、企業活動の活性化に資する規制改革、税制改革、地方の行財政改革を通じたビジネス環境整備への働きかけも強め、外国から企業や人材を大いに呼び込んでいきたいと思います。

■ 民間経済外交の多面的展開と国際的な発信力の強化

第3の柱は、民間経済外交の多面的展開と国際的な発信力の強化です。この数年で世界情勢は大きく変化しており、今日、私たちは、グローバル化の変容ともいうべき事態に直面しております。パワーバランスの変化、反グローバリズムの台頭といった新たな時代に直面し、わが国はこれまで以上に戦略的な外交を展開していく必要があります。また、そのなかで、企業や経済界などの果たす役割もますます高まっております。経団連といたしましても、これまでとは、次元の異なる民間経済外交の展開を通じて、国際社会での発信力、発言力を高めていきたいと思います。

経団連は、この間、一貫して自由貿易を推進してまいりました。今後とも自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に積極的に貢献してまいります。そのために、米国、中国、欧州をはじめとする主要経済パートナーとの経済交流を拡大してまいります。

以上申し上げた3点を踏まえ、今後、経団連は、政治との連携はもちろん、さまざまなステークホルダーとの連携を強化しながら、わが国そしてグローバル経済の安定的かつ持続的な発展に貢献してまいります。

そのためにも、私は、世界全体を巻き込む大きなコンセプトを語り、時として政府・与党に対しても、忌憚なくものを申す「提案型」の会長として職責を果たしたいと考えています。会員の皆さまのご理解とご協力を重ねてお願い申し上げ、私の就任のあいさつとさせていただきます。

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