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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2016年5月9日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【為替】

最近のあまりに急速な円高の動きは、実体経済を離れた投機的なものとしか思えない。通貨当局がこうした動きにブレーキをかけるのは当然である。麻生財務大臣は為替介入の用意があると発言されているが、財務省と日銀が市場介入を行うのであれば、経済界としては支持したい。為替は経済のファンダメンタルズを反映した水準で安定して推移していくことが重要である。

【G7伊勢志摩サミット】

先般の安倍総理の欧州歴訪はG7伊勢志摩サミットを前に大変有意義なものであったと思う。安倍総理が「金融政策、機動的な財政政策、構造改革について、それぞれの国の事情を反映しながら、バランスよく協力を進めていくことが重要だという点で各国首脳と一致できた」と言明しているように、来るG7サミットへの周到な準備ができたのではないか。

先のB7東京サミットにおいて、現在の経済の停滞状況から脱却し、持続的で力強い世界経済を実現するためには、G7がリーダーシップを発揮して、世界経済を牽引していくべきだとの認識で一致した。その上で、「機動的な財政政策を実施するとともに、生産性向上のための大胆な構造改革を断行することが強靭な経済を達成する上では不可欠である」との共同宣言を取りまとめ、安倍総理に手交した。G7サミットではB7共同宣言を踏まえた政策の方向性を示し、世界経済の安定的かつ持続的な成長に向けた牽引役を担う覚悟を表明してほしい。G7が協調して政策を打ち出すことは可能であるし、そうなることを期待している。

【米国大統領選挙】

ドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補として指名を獲得することが確実な情勢である。トランプ氏のように、過激な政策・政治姿勢を打ち出す候補者が、今の米国でなぜ強い支持を得られるのかという問題意識を持っている。所得の低い白人層を中心に、自由貿易や自由競争、自己責任といった共和党の政策に強い不満があることが主な要因とされているが、それだけであれほどの広範な支持を得られるとは思えない。今日の米国の実情をしっかり理解したいと感じている。

共和党の中でもトランプ氏の過激な発言にかなり抵抗感があると聞いており、また、トランプ氏は副大統領候補を現役の政治家から選ぶとしていることから、大統領選挙本選に向けてもう少しリーズナブルな選挙公約が打ち出されるのではないか。仮に今の発言内容がそのまま米国の政策に反映されることがあれば、緊張と困難を生みかねないが、公約等を見た上で判断したい。

【日ロ関係】

今回、安倍総理がソチを訪問し、プーチン大統領と非公式ながら首脳会談を行った。両首脳による会談は第一次安倍内閣から数えて今回で13回目である。このように首脳間で親密な関係を構築していることは、両国にとって重要な意義がある。

平和条約締結交渉が停滞し難しい状況にある中、安倍総理が発言されているように、今までの発想にとらわれない新しいアプローチで交渉を進めていくことは理解できる。9月にもウラジオストクで首脳会談が行われると聞いているが、両首脳が引き続き粘り強く対応していくことで、望ましい方向性が示されることを期待している。

経団連としては、6月に朝田 日本ロシア経済委員長を中心とするミッションをモスクワに派遣し、ロシアとのビジネス対話を継続していく。ロシアは未開拓の分野が多くあり、様々なポテンシャルを秘めている。経済界は政府の取り組みに呼応して、日ロ間の互恵的、多面的な経済関係の構築に努力していきたい。

【外国人材の受入れ】

日本の経済社会の活力の維持・強化のためには、外国人材の受け入れ拡大が重要である。特に高度人材については、すでに国際的な人材獲得競争が行われる中、有能な技術者・専門家の確保は産業界にとって重要課題となっている。高度外国人材が自由に活躍できる環境を整備することは経済活動に不可欠である。また、一般的な移民問題についても、性急に議論する必要はないが、棚上げにすることはせず、将来的な課題として議論していくことは必要である。

【パナマ文書と租税回避】

一般論として、違法な脱税は当然取り締まるべきであり、合法であっても過剰な節税は慎むべきだと考えている。とりわけ、国家・国民を率いる政治指導者には襟を正していくことが求められる。また、先のG20財務大臣・中央銀行総裁会議でも確認されたように、パナマのように税務情報の開示が不十分な国・地域は透明性を高めることが必要である。

【コーポレートガバナンス】

企業のガバナンスについては、どの方法が良くて、どの方法が悪いということはなく、会社の状況に合わせて行っていくことが重要である。最近、東芝とセブン&アイで指名委員会を中心に外部性と客観性の高い形で社長が指名されたが、これは一つの方法として評価できる。特に、東芝における指名プロセスは社会的にも納得のいく形であったと思う。

【豪州の次期潜水艦の共同開発国を巡る国際受注競争】

わが国が豪州の次期潜水艦の共同開発国に選ばれなかったことを残念に思う。日本政府には、原因の分析と検証を行い、今後の国際共同開発・生産案件の実現に向けた戦略を策定してもらいたい。産業界としても協力していく。

防衛装備品の海外移転については、2年前の閣議決定を受けて、一定の条件下、海外への移転が許されることになった。具体的には、平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合や日本の安全保障に資する場合には、防衛装備品の移転が認められる。民間だけでは対応できない分野であり、国のリーダーシップの下、官民が協力し、適切に役割とリスクを分担して対応していく必要がある。

以上

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