会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  夏季フォーラム後の記者会見における榊原会長発言要旨

2016年7月22日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【夏季フォーラム総括】

今年の夏季フォーラムは、1980年の第1回夏季フォーラム以来、メイン参加者39名、随行者等含めて100人超の最大規模での開催となり、内容的にも密度の濃い、実りの多い議論を行うことができた。また、友野副会長の的確な采配もあり、有意義でメリハリのある討議ができた。参加者間で醸成した共通認識を今後、大いに発信していきたい。

今はデフレ脱却と経済再生を確実に実現し、GDP600兆円経済への道筋をつけるための正念場にある。政府には、脇目もふらずに経済最優先で取り組んでもらいたい。経済界としても、企業こそが経済成長の原動力であることを十分自覚し、政治との連携を深めながら、わが国経済の再生に向けて全力で取り組んでいく。

【経済対策】

経済対策については、短期の景気対策として、需要喚起、消費喚起、設備投資促進につながるよう、大胆に国費を投入してほしい。また、中長期的には、GDP600兆円経済の実現に向けて、成長戦略を推進することが重要であり、とりわけ官民戦略プロジェクト10の第一に掲げられた第4次産業革命、Society 5.0を成長戦略の柱として実行しなければならない。官民を挙げた推進体制とそのための予算対応が必要である。

総合的で大胆な経済対策が待たれる。その規模を巡って様々な報道があることは承知しているが、重要なのは国費をどれだけ投入できるかである。その点をしっかり議論していきたい。

【Society 5.0】

第4次産業革命、Society 5.0の推進は成長戦略の柱であり、新しい社会の創出に向けて、官民を挙げて取り組む必要がある。経団連としても、すでにSociety 5.0の実現に向けた提言を公表しており、この内容に沿って意見を発信していく。これは、単なる産業の生産性向上にとどまらず、社会的課題の解決につながる新たなスマート社会の創出である。その実現には5つの壁、即ち、省庁の壁、法制度の壁、技術の壁、人材の壁、社会受容の壁を突破していかなければならない。Society 5.0のコンセプトが社会に浸透していくよう、第4次産業革命官民会議への参画などを通じて、政府と一体となって取り組んでいく。

【地方創生】

地域経済の活性化は重要課題である。安倍総理も「地方創生なくして、経済再生なし」との方針を示しており、経済界としてもその認識を共有している。地方創生に向けた経団連の活動は、地方経済懇談会と地域経済活性化委員会の2つを軸としている。

第1の地方経済懇談会について、日本全国各地の地方経済団体と地域経済の現況や経済発展に向けた重要課題などを巡り意見交換を行っている。昨年も7カ所を回り、地域経済活性化に向けた有意義な基盤をつくることができた。今後も地方経済懇談会を通じて、地域の経済団体との交流と連携を強化していく。

第2の地域経済活性化委員会は昨年6月に古賀副会長を委員長として新たに発足した委員会であり、熱心に活動している。古賀副会長は、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」の「地域しごと創生会議」に委員として参画するなど、経済界の意見を発信している。また、地方創生に向けた経団連アクションプログラムを策定し、地域経済活性化委員会を中心に取り組んでいる。このアクションプログラムは経団連として総合的に取り組むと同時に、会員企業が自発的に取り組むものでもある。それぞれの企業の立場で、具体的な活動を強化するよう要請している。例えば、地方における起業促進に向けて、全国のスタートアップ都市推進協議会と協力し、起業環境の整備、大企業と地域の中小企業とのマッチング支援などの活動に取り組んでいる。加えて、経済界と農業界との連携強化、大企業人材の地方への還流を推進している。

今回の夏季フォーラムを通じて、地方創生が経団連の重要課題であることを経団連幹部の間で共有することができたことは大きな成果である。

【経済連携】

TPPは成長戦略の要であり、成長著しいアジア太平洋地域に貿易・投資の共通ルールを定めるきわめて重要な制度インフラである。TPPが一刻も早く発効することが日本のみならず加盟国にとって重要である。この観点から、わが国が率先して承認する必要があり、先日、経済4団体長が安倍総理を訪問し、早期実現を求める提言書を手交した。安倍総理からもTPPは成長戦略の柱として国内で早く承認し、アメリカにも早期批准を求めていくとの明快な見解が示された。わが国が早く承認することで、米国に対してもオバマ大統領の在任中の批准を後押しすることになるだろう。経団連の訪米ミッション(2016年5月22日~28日)においても、USTRや商務省との面談の際、オバマ大統領の在任中の批准を勝ち取るため、最大限努力するとの意向が示された。そう簡単ではないだろうが、その方向に進んでいると思う。

経済連携に関しては、まずはTPPの確実な発効を求めたい。同時に日EU EPAの今年中の妥結を目指してもらいたい。アジアにおいても、日中韓FTA、RCEPといった交渉中のメガFTAを着実に進めることが重要である。当面は交渉中のメガFTAを脇目もふらずに前に進めてほしい。

以上