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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2017年1月10日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【春季労使交渉】

本日の会長・副会長会議で2017年版経労委報告の最終案について審議を行い、承認された。17日の幹事会で承認を得て、機関決定する。

経団連会長に就任して以来、経済の好循環を回すためには、賃金引上げが必要であると訴え、過去3年取り組んできた。特に、ベアについては、それまでの5年間なされてこなかった流れを変え、3年連続で実現した。ボーナスも高い水準となっており、経済の好循環の実現に向けて、経済界としての役割を果たしてきた。ただ、未だデフレ脱却、経済再生は道半ばであり、今年の経労委報告の中で賃金引上げのモメンタムを継続していく強い意思を示している。収益が拡大した企業、中期的なトレンドとして収益が改善している企業においては、昨年に引き続き、年収ベースでの賃金引上げを前向きに検討するよう、従来より一歩踏み込んだ表現としている。具体的な賃金引上げの内容については、定昇、ベア、賞与・一時金、諸手当等、各社の状況に応じて最適な方法としてほしい。

安倍総理からは、少なくとも前年水準並みの賃金引上げと4年連続のベアの実施、期待物価上昇率を勘案した議論などについて要請があった。これらについても、それぞれ経労委報告で言及している。

各社における労使交渉の結果次第であるが、春季労使交渉の結果、今年も賃金引上げのモメンタムが継続し、昨年同様、年収ベースでの賃金引上げと4年連続のベアが実施されることを期待したい。

【副業・兼業】

副業・兼業については、一部の企業で認められてはいるものの、多くの企業では、就業規則で職務専念義務を定め、禁止している。副業・兼業を通じた社員の能力開発、人材開発といったポジティブな側面もあるが、社会保険料や雇用保険料の負担、労働時間の管理など整理すべき課題は多い。

経団連では、長時間労働の是正を重要課題に掲げ、働き方改革に取り組んでいる。こうした状況下、副業・兼業を推奨するのはやや抵抗があり、今のところ旗を振って推進する立場ではない。副業・兼業については、実態や課題を踏まえて慎重に検討することが必要である。

【日米関係】

トランプ次期大統領の企業に対する一連の発言や行動は、米国の雇用を守るという趣旨からのものであると受け止めている。その点、日本企業はすでに米国に4110億ドルにのぼる直接投資を行い、直接・間接含めて170万人の雇用を創出し、米国経済の発展と輸出の拡大に貢献している。今後、産業促進的な政策の下、規制改革、減税、インフラ投資により米国の事業環境がより魅力的で力強いものになれば、さらに対米投資が拡大し、雇用創出につながると思う。政策の透明性、継続性も重要であり、それらを加味した政策が打ち出されることを期待したい。

現在、トランプ次期大統領がツイッター上で発言していることについては、次期大統領によるものであり、一定の重みはあるものの、米国大統領による公式な政策発表ではない。この点を峻別して、過剰反応することなく、対応しなくてはならない。1月20日の大統領就任演説、その後の一般教書演説の中で、具体的にどのような政策が打ち出されてくるのかしっかり注視していく。

今月中に日米首脳会談が開催されるとも聞いているが、経済界としてもさまざまな機会を捉えて、日米関係の重要性を訴えていく。日米関係は、政治や安全保障はもとより、経済的にも極めて重要な二国間関係である。特に、TPPについては、トランプ次期大統領の発言どおり、仮に就任初日に米国の離脱を表明する事態になっても、自由で開かれた通商経済体制は世界経済の持続的発展に重要であり、米国にとっても同様であることを米国新政権に対して粘り強く訴えていく。また、NAFTAについても、トランプ次期大統領は見直しを示唆しているが、これを活用して、多くの日本企業がメキシコに進出し、無関税で米国へ輸出している。このビジネスモデルが否定されると、さまざまな制約が生まれる。引き続き注視していかなくてはならない。ただ、米国の繁栄の背景には自由貿易投資体制があり、この点はトランプ次期大統領も理解されていると思うので、適切な方向に動いていくことを期待したい。

経団連はここ2年訪米ミッションを派遣している。私が参加した2015年のミッションでは、全米商工会議所など米国各地で講演を行ったが、日本企業による米国経済への貢献について、十分に理解されていないところもあった。そこで、相互理解促進のため、2017年もミッションを派遣し、ワシントンDCや各州において、政治家や米国経済界との対話を行い、自由で開かれた経済の重要性、日本企業の米国経済への貢献を発信していく。

【日韓関係】

釜山の日本総領事館前の少女像の設置、それに伴う駐韓日本大使の帰国など、日韓関係を巡る問題が続いているが、日本経済への直接の影響は限定的であると見ている。ただ、韓国では、朴大統領への弾劾など政治情勢の混乱が続いており、これがいつまでも続くようでは、日本企業の韓国での経済活動や韓国企業との経済交流に影響を及ぼしかねない。

2015年の日韓合意により、日韓両国は慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した。この合意内容が誠実に履行されることが重要である。

以上

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