会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  記者会見における榊原会長発言要旨

2017年3月21日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【春季労使交渉】

現在までの妥結結果を見る限り、多くの企業でベア実施を回答している。賞与・一時金についても、満額、あるいは昨年実績以上の回答となっている。また、今年の労使交渉の特徴は、働き方改革を労使交渉の項目の一つに取り上げていることであり、これが処遇改善へとつながる動きとなっている。ベアについては金額ばかりが注目されるが、大事なことは4年連続でベアが実施されるということである。この4年間の累積効果は相当大きく、消費喚起に向けた大きな後押し効果を発揮すると期待している。とりわけ、中小企業では、人材不足の状況下、人員確保への対応という要素があったと思うが、先行き不透明な中、相当に高い水準で賃金引上げがなされた。総じて今年の春季労使交渉は賃金引上げのモメンタムの継続、年収ベースで昨年を上回る賃金引上げといった経団連の呼びかけに沿うものであり、評価している。こうした動きが引き続き広がっていくことを期待したい。

【働き方改革】

今回、時間外労働の上限規制を巡って、政労使で合意できたことは、労働基準法70年の歴史の中でもインパクトのある大改革である。今回の労使合意は、経団連と連合の間でなされたものであるが、交渉過程では日本商工会議所や全国中小企業団体中央会とも連携してきた。それでもすべての経済団体や労働組合を代表しているわけではなく、経団連、連合に所属していない企業・団体の状況も勘案しながら対応していかなければならない。

今回の政労使合意は、改革の骨子であり、今後、これを法律に盛り込んでいくことになる。これまで、36協定を締結しさえすれば、青天井に残業することができたが、この流れを変えていく。月45時間、年360時間を原則的な上限、例外的な上限も月100時間未満とし、罰則規定も盛り込まれる。これらを遵守するためには、大企業でも相当な努力が求められ、中小企業はなおさらである。働き方改革をやらなければならないことは皆が理解してくれており、今後、現実的にどのような対応が必要となるのか、細かく詰めていくことが必要である。拙速になってはならないが、準備にあまり時間をかけてもいけない。働き方改革は安倍政権の最重要課題の一つであり、経団連としても早く実現したい。

【G20財務大臣・中央銀行総裁会議の評価とB7ローマサミット】

共同声明の中に、保護主義への対抗、自由貿易推進の重要性が盛り込まれた方が良かったことは確かだが、書かれていないからと言ってそれらが否定されたということではない。共同声明に「経済に対する貿易の貢献の強化」が明言されているように、保護主義に対抗し、自由貿易を推進することは不可欠である。また、共同声明に盛り込まれた包摂性・公正性の促進、格差の縮小という視点も重要である。

3月31日にG7参加国・地域の経済団体により、B7サミットをイタリア ローマで開催する。現在、共同宣言について事務レベルで議論を行っており、保護主義の台頭に対するけん制や自由貿易の維持・推進をうたいたい。米国はじめ参加国の立場もあるが、日本の経済界としては、自由で開かれた国際経済秩序を維持することの重要性を強力なメッセージとして発信したい。

以上