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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2017年5月22日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【教育財源】

日本の教育に対する公的支出は、GDP比で見た場合、OECD諸国平均を下回っており、教育投資の拡大が課題となっている。幼児教育の無償化や教育の機会拡充をはじめとする未来への投資について、社会全体で考えることに違和感はない。

その財源を巡り、様々な方策が議論されている。まず教育国債については、わが国の厳しい財政状況を踏まえれば、むやみに発行し、将来世代に負担を先送りすることは避けるべきである。今の世代で解決することが重要である。また、子ども保険については、経団連としては、4月27日に公表した提言の中で、課題を指摘している。具体的には、世代間や世代内の公平性や使途の問題など慎重な検討が必要である。経団連としては、教育の財源は基本的には税で賄うべきであると考えている。今後よく議論を行うことが重要である。

【財政再建】

経団連会長として、財政審議会会長として、経済財政諮問会議民間議員として、2020年PB黒字化の旗は降ろすべきではないと考えている。厳しく困難な目標であることは承知しているが、その旗を降ろすべきではない。一部の試算ではPB黒字化まで1年、2年の遅延はあるとしているが、経済成長により税収を増やし歳入を拡大する、更なる歳出削減を進めるなどといった取り組みを進めることが重要である。そうすれば2020年PB黒字化はまったく達成できない目標ではない。PB黒字化というタガが外れてはならず、GDP比債務残高などの新たな目標を加えるべきではない。PB黒字化は至上命題である。また、2019年10月の消費税率引き上げは国民と国際社会への公約であり、必ず実現してもらいたい。

財政健全化に向けては、地方財政改革も重要な課題である。地方交付税で財政移転を行っている中、すべての自治体の基金残高の合計が21兆円にも達している現状は率直に言って驚きであった。基金がどのような目的で積み上げられているのか、まずは自治体は説明責任を果たすべきである。そうしなければ、地方税を納める企業や住民の理解、納得は得られないと思う。どのような改善を図るかについての方法論は総務省で考えてほしい。

【休暇の分散化】

現在、政府が検討を進めている「キッズウィーク」は昨年3月の官民対話の場で私から提案した内容に沿ったものであり、歓迎したい。観光振興において、国内旅行の活性化は重要な課題である。国内旅行の市場規模は2004年の28兆円から、2012年には20兆円を切り、8兆円も縮小している。観光産業にはかなり大きな経済効果が期待され、これを活性化し、市場規模を少しでも戻していくことが重要である。

観光振興に向けては、長期休暇の取得や休暇の分散化が鍵となるが、企業に有給休暇などの制度がある反面、学校の休日は固定化されている。学校休日を弾力的に運用することができれば、家族で長期休暇を取ることが可能になる。親が休みでも子供が休めないという状況を変え、学校ごとに休日に自由度を持たせることはできないかと考え、昨年3月、こうした提案を行った。政府には、しっかり制度設計を行って、実行に移してもらいたい。経済界としても、年休取得率の向上に向けて、年3日程度の追加的な年休の取得などを呼びかけていく。

【TPP】

ハノイでのTPP署名11カ国による閣僚会合を受けて共同声明が発出された。具体的には、TPPの戦略的・経済的意義を再確認し、TPPの早期発効を追求すること、そのために米国の参加を促進する方策を含めた今後の選択肢を評価するプロセスを開始することが盛り込まれた。TPPの早期発効に向けて、11カ国のコミットメントが明確に確認されたことを歓迎したい。7月にも東京で高級事務レベル会合が開催されるようだが、日本政府には力強いリーダーシップを発揮してほしい。また、11月のAPEC首脳会合の際にTPP11の実現に向けた方向性が示されることを期待している。

米国政府はわが国との二国間FTA交渉に意欲を示している。高水準を達成したTPPの成果を踏まえて二国間交渉を行うことで、将来的なTPPとの融合の可能性もあるだろう。最終的には米国を含めた12カ国でのTPPの実現が望ましいが、まずはTPP11をしっかり進めてもらいたい。

【日中関係】

北京で開催された一帯一路国際協力サミットフォーラムに出席した。大変盛況であり、大きな盛り上がりが感じられた。開幕式で挨拶した習近平国家主席は、各国の協力を得て、アジア、ヨーロッパ、アフリカを含むユーラシアでの巨大な経済圏の形成を推進すること、そのための5つの方針として、平和の道、繁栄の道、開放の道、イノベーションの道、文明の道を構築していくことを述べた。その際、政治色や軍事色は含めないことも指摘していた。日本からは自民党の二階幹事長が団長として参加し、日本政府として一帯一路に積極的に参画していくことを表明した。これは中国だけでなく、国際社会への重要なメッセージになったと思う。一帯一路構想は貿易の自由化・円滑化とインフラの連結性の向上を掲げているものの、参加国による温度差があることも確かであり、政治的な懸念を表明する国やインフラ建設の負担に懸念を持つ国もあった。ただ、全体的には一帯一路構想に積極的に参画していこうという方向性が打ち出された画期的な会合であったと思う。

5月16日には二階幹事長と習近平国家主席との会談に同席した。二階幹事長が安倍総理の親書を手交し、読み上げたことを受け、習主席は日中間に課題があることを指摘しつつも、未来志向の良好な関係を築いていきたいと応えた。和やかで明るく前向きな会談であった。

今年は日中国交正常化45周年、来年は日中平和友好条約締結40周年を迎え、両国間で様々な周年事業が計画されている。私は日中国交正常化45周年・日中平和友好条約締結40周年交流促進実行委員会委員長を務めており、二階幹事長には最高顧問を引き受けていただいている。この2年で政治、経済だけでなく、文化、学術、スポーツなど様々な草の根レベルでの交流事業を推進し、日中友好の象徴的な年にしていきたい。まずは、6月13日より北京で日中グリーンエキスポを開催し、日本の優れた環境技術を中国へ紹介していく。日中グリーンエキスポは2011年に開催し、2012年に直前に中止となって以降、日中間の懸案のため中断していたが、今年6年ぶりに45周年の目玉事業の一つとして開催する。12月には一昨年に開始し、今年で3回目となる日中企業家及び元政府高官対話を開催する。これらは日中友好事業の経済面での大きな柱となるものである。多くの交流事業を重層的に行い、日中関係の強化に貢献していきたい。

【憲法問題】

安倍総理は今も経済最優先の政権運営をされていると承知している。現政権が経済最優先の旗を降ろしたとは思っていないし、そうした心配もしていない。今後もこれを堅持してほしい。不安定化する国際情勢の中、憲法問題を放置することへの問題意識から、安倍自民党総裁は憲法改正に関する提案を行ったと理解している。

以上

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