会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  記者会見における榊原会長発言要旨

2017年6月26日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【日EU EPA交渉】

日EU EPAは10年来の経済界の期待・要望であり、様々な場を通じて早期実現を訴えてきた。日EU EPAの実現は日本とEUの双方にとって、成長と雇用の創出につながるとともに、何よりもルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の形成に大いに資するものである。また、反グローバリズムや保護主義の傾向が強まる中で、世界経済の3割弱、世界貿易の3割超を占める日本とEUが、大規模で高水準、かつ包括的なEPAに合意することの意義は大きく、世界に対して力強く前向きなメッセージを発信することになる。安倍総理も7月のドイツでのG20の際、EUとの首脳会談を実現し、大筋合意を目指したいと発言している。経済界としても、来月の大枠合意を強く期待している。

【原子力政策】

現行のエネルギー基本計画において、原子力はS+3Eに照らして、安全性の確保と地元の理解を前提に重要なベースロード電源として活用していくこととされており、経済界もこの方針を支持している。東芝の原発事業の縮小や韓国での脱原発に向けた動きなどは承知しているが、それらによって、わが国の基本的なエネルギー政策が影響されることはない。

先の通常国会で日印原子力協定が承認され、今夏にも発効する見通しになった。インドの経済社会の持続的な発展を実現していくうえで、エネルギーの安定供給は最も重要な課題の一つである。同協定により、わが国の先進的な技術を導入し、インドのエネルギー事情が改善されるよう期待している。また、「核兵器のない世界」の実現という目標も日印首脳会談で共有されており、本協定は、軍縮・核不拡散にも配慮された枠組みである。

韓国では、文大統領が新たな原発の建設を凍結し、稼働中の原発は設計寿命を超える延長はしないという趣旨の発言をしたと聞いている。現在、韓国の総発電量に占める原発の割合は30%と高い。こうした状況下、脱原発に向けて具体的にどのように対処していくのか、関心を持って見守っていきたい。

【内閣支持率】

2012年12月に安倍政権が発足し、4年半が経過した。安倍政権はこの間、国民の高い支持を受けてきた。4回の国政選挙すべてで与党が勝利しており、これは、国民が政策運営を支持していることの表れである。安倍政権は歴代の政権の中でも安定性の高い政権運営を行ってきたが、ここにきて内閣支持率が下がり、不支持率が上がっていることを注視している。先の通常国会における政権運営の中で、国民の理解を得られるような答弁や説明が必ずしも十分ではなかったということか。また、支持率が高いことで、政府・与党の中にも過信する面もあったのかもしれない。安倍総理も国会閉会後の記者会見の中で、こうした点について率直に反省し、今国会の反省の上に立って、国民の信頼回復に努めていくと述べている。国民へ真摯に説明していくことを期待したい。

【東京オリンピック・パラリンピック】

東京オリンピック・パラリンピックまで3年あまりと間近に迫ってきた。経済界では、オリンピック・パラリンピック等経済界協議会を発足させ、2020年に向けた国民の機運醸成、大会後のレガシーの形成、スポーツの普及、障がい者スポーツの支援、社会のバリアフリー化、地方創生などの活動を展開しており、東京オリンピック・パラリンピックを全面的にサポートしている。オリンピック・パラリンピックには大きな経済効果が期待されている。これを支持し、実現していくことが経済界の役割である。

【コーポレートガバナンス】

政府の未来投資会議でも相談役・顧問のあり方について、コーポレートガバナンスの観点から議論がなされた。相談役・顧問の意義は会社によって一様ではない。重要なことは相談役・顧問について、役割や趣旨などを株主に開示していくことである。相談役・顧問が会社に何人いるか分からないというようなことがあってはならない。

また、企業活動は国際化しており、連結対象子会社の数も増えている。この部分のガバナンスを、親会社がきちんと管理することは当然である。昨今、綻びが生じている事例があるが、海外の子会社だから分からなかったで済む問題ではない。きちんとしたガバナンスを徹底するべきである。

【最低賃金】

経済の好循環実現のためには一定程度の賃金引上げが求められるが、中小企業にとって経営の負担となっていることも事実である。他方、人手不足を背景に、中小企業を中心に賃金の上昇圧力は確実に強まっており、人材確保のためには一定の賃金引上げが必要である。この連立方程式を解くのが中央最低賃金審議会の役割であり、適切な結論を導き出せるよう、経団連としても同審議会の議論に関わっていく。

【タカタの経営破綻】

タカタが自社の判断として、民事再生法による経営再建を目指す方針を採ったと理解している。速やかな事業の立て直しを期待したい。エアバッグは自動車の重要部品であり、供給不安や市場の混乱が起こらないよう、関係者との間で円滑な調整を進めてもらいたい。

以上