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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 北陸地方経済懇談会後の共同会見における榊原会長発言要旨

2017年11月9日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【北陸新幹線】

北陸新幹線の全線開業には、大きく3つの意義があると考えている。第1に、関西、東京、名古屋をはじめ隣接地域との結びつきを強化し、広域経済圏の実現を加速させることである。第2に、いわゆるゴールデンループを活用した周遊観光をはじめとした広域観光の推進に大きく貢献することである。第3に、非常時における東京・大阪間のバイパス・迂回機能である。

昨日、北経連と関経連をはじめとする経済団体の間で、北陸新幹線の早期延伸の実現に向けて、連携を強化していくための話し合いがなされたと伺っている。関係方面に対して働きかけを行っていくことにより、北陸新幹線の早期整備に向けた具体的な検討が進むことを期待したい。また、新幹線の延伸も重要であるが、高規格の幹線道路・港湾や空港の整備促進や機能強化などのインフラ整備も肝要である。これらの取り組みは、広域経済圏の充実にも資する。全体の財政制約があるなかで、整備対象の優先順位を定めて進めていくことも大事である。

【北陸地域の景気と人手不足対策】

現在、北陸3県の有効求人倍率は1.77と、全国平均の1.52よりもはるかに高い水準にあり、慢性的な人手不足の状況が一層強まっている。とりわけ、北陸地域の経済を牽引する主要産業である観光やものづくり等における人手不足が深刻になっており、この地の経済成長の大きなボトルネックになりつつあると思う。

働き手の確保についての課題は、大きく3点である。まず、女性のさらなる活躍推進である。北陸地域の女性の就業率は全国で最も高い水準にあり、女性の一層の活用が期待される。加えて、高齢者など多様な人材が活躍できるよう、環境を整備することが重要である。

第2に、他地域から人を呼び込むことである。北陸の大学を卒業しても、地元の企業に就職する人は比較的少なく、地域外に流出していると聞く。北陸の大学を卒業した人材の地元就職を増やすのと同時に、他地域から北陸に来てもらう手立てを講ずる必要があるが、北陸には高い市場占有率を誇る、特色ある有力企業が多く存在する。地域の魅力を高め、人材の定着を図るとともに、他地域から人を呼び込む戦略を進めていく必要がある。例えば、北陸科学技術大学院大学は、留学生が半数を占めるものの、卒業後は必ずしも北陸で就職しないとのことであり、大学院人材の確保も大きな課題である。

最後に、生産性の向上のための取組みも欠かせない。IoT、AI、ロボットなどの先端技術を導入して生産性を上げていく。これに関連し、安倍総理が先頭に立ち、経団連も協力して「生産性向上国民運動推進協議会」を立ち上げた。経団連会員企業も様々な形で協力し、中小企業を中心に生産性の向上に資するプロジェクトを進めようとしている。こうした機能の活用も含め、全ての施策を組み合わせて、人手不足に対応することが重要である。

【賃金引上げ】

先の経済財政諮問会議で、安倍総理から来年度の春季労使交渉において、3%の賃上げ実現を期待したいとのご発言があった。これを真摯に受け止めていかに対応するか、現在議論している。賃上げに対する社会的な期待や要請が昨年以上に高まっていると感じている。この4年間、2%台、月額7000円台の賃上げを続けてきたが、今一つ消費が活性化しない実態がある。3%の賃上げを行えば、それだけで消費が拡大するというものでもないだろうが、賃上げが消費拡大の一助となることは確かだ。また、消費低迷の大きな要因である将来不安の払しょくのためには、社会保障制度の持続性の確保が重要であり、政府がしっかり対応して道筋をつける必要がある。

いずれにせよ、月例賃金の引き上げにとどまらず、ボーナスや諸手当等を含めて総合的に判断していきたい。消費性向の高い子育て世帯に手厚く配分することもあるだろう。消費がいきなり活性化することはない。来年1月の経労委報告において方向性を出すよう、時間をかけて検討していく。

以上

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