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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における中西会長発言要旨

2018年6月25日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【働き方改革/高度プロフェッショナル制度】

経団連は、時間ではなく成果で評価する新たな働き方が求められる中、高度プロフェッショナル制度は必要な制度であると考えている。高度プロフェッショナル制度は、長時間労働を助長するものではなく、時間に捉われない形で成果を出す働き方を評価する仕組みである。今回、法律で制度の大枠が決まることになる。企業は、その制度の大枠の中でどのように運用するかを検討していく。制度の採用に企業側が慎重という報道が一部あるようだが、ニーズがないということではまったくない。まだ制度の大枠しか決まっていないので、労務を担当している役員が採用に慎重な姿勢になることはあろうが、経営者はそうした見方をしていない。

残業時間の上限規制の中小企業への適用が遅れることについては、中小企業の間では人手不足が深刻で、受注を断るという事態も出ており、こうした中で残業もできないとなれば企業経営は相当厳しく、やむを得ない。同時に、人材の募集にも苦労しており、現在の中小企業の経営環境はかなり困難な状況にある。これらを踏まえれば、中小企業への一定の配慮は必要である。

働き方改革はとかく、高度プロフェッショナル制度や残業時間の上限規制にばかり焦点が当たっているが、そもそも日本の働き方がこのままでよいのかという問題に真正面から向き合うものだ。即ち、この20数年、生産性が上がっていないことが議論の出発点である。頑張る・頑張らないといったレベルの話ではなく、仕事のやり方や会社の仕組みの見直しまで含めて、法制度の改正と同期して働き方改革を進めていかなくてはならない。日本企業の生産性を巡っては、様々な課題が指摘されている。製造業が急速にサービス産業化していく中で、サービス産業の生産性が今のままでよいということは決してない。突き詰めれば、働き方改革は日本企業の生産性を向上させるという挑戦である。

【コーポレート・ガバナンス】

コーポレート・ガバナンスに関する経済界の雰囲気は数年前に比べてすっかり様変わりした。その要因としては、投資家からの働きかけが強まったことや、ガバナンス上の問題が経営の根幹を揺るがす事例が出てきたことがあげられる。経団連の中でも、ガバナンスコードなどのコーポレート・ガバナンスの方策を前向きに捉える経営者が圧倒的多数となっている。株主総会もそうした動きを反映した運営になりつつあり、より建設的な、株主と真正面から対話する総会になっている。

【IR(統合型リゾート)】

より多くの外国人をわが国にお迎えすることは、経済的な観点からだけでなく、日本の文化を広めていくという意味でも重要である。MICE(Meeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Event)、IRはその一助となる。IR推進にはエンターテインメント等の魅力付けが有効である。他方、IRの導入にあたっては、ギャンブル依存症といった社会的な課題への十分な目配りが必要であることも承知している。

【福島第二原発の廃炉】

東京電力にとっては大変な経営判断であったと思うが、やむを得ないものと理解している。機械設備としては問題がなく正常に動くとしても、福島第一原発の問題を抱える中、福島第二原発を再稼働させるのは難しく、廃炉という判断となったのであろう。福島第二原発は正常に管理されており、今後、通常のプロセスで廃炉が進んでいく。今回の判断が他の原発の再稼働問題に直接的に影響することはない。

【日米関係】

(米国による鉄鋼・アルミニウムの輸入制限に対して、EUが対抗措置を発動し、それに対して、トランプ大統領が輸入車への20%の関税賦課をほのめかしているが、)すぐに世界経済・日本経済に大きな影響をもたらすようなことはないと見ている。ただ、日本を輸入制限の対象にすることは、国防条項である通商拡大法232条の趣旨には合わない。大変心配している。経済界としては、政府と連携を密にしながら対応していくしかない。

トランプ大統領は従来とは異なる手法で政権運営をされる方である。他方、日頃対話している米国関係者は我々経済界と同じような考え方を持っている。対米活動については、ワシントンDCだけと交流していても十分ではなく、各種ルールや税制に関しては、知事はじめ州政府との対話が重要である。このため、経団連の米国ミッションでは、ワシントンDCだけでなく、各州も訪問して、幅広い対話を進めており、引き続きこうした活動を強化していく。日米経済関係は深化しており、雇用の創出、広範なサプライチェーンの展開など、貿易だけ切り出して論じることはできなくなっている。また、輸入制限の除外申請を行うのは輸入側であり、日々のビジネスを通じた企業同士の対話・連携も重要である。

【RCEP(東アジア地域包括的経済連携)】

RCEPには中国、インドも含まれ、域内の範囲が広い。それだけ交渉が難しい面があるが、意義も大きく、報われる度合いもまた大きい。日本としては、RCEPをTPP11で妥結したレベルの協定へと近づけていくよう踏ん張らなければならない。TPP11にも、タイなどが参加の意向を示すなど前進が見られており、こうした動きと総合して、自由貿易体制を堅持・強化していくことが重要である。

【大阪北部地震】

亡くなられた方々、被災された方々のことを思うと痛ましい出来事であったが、震度6弱の揺れが起きる中、人的被害、建物の倒壊は限定的であった。耐震対策が着実に進んでいることの表われだと思う。過去の大規模地震に比べて、サプライチェーンを含めた経済被害も大きくなく、事前の準備・対策が有効であったのだろう。他方、地震を引き起こした断層の検証など詳細な分析を早急に行う必要がある。

以上

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