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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 経済三団体主催新年祝賀パーティ後の共同会見における中西会長発言要旨

2019年1月7日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【日本経済の見通し】

日本経済の先行きについて、悲観的に見ていない。

消費税率引き上げが景気を少し押し下げることはあるだろうが、日本経済の基調に係るものではなく、景気の後退にはつながらない。企業活動を通じて、多少なりとも米中対立の影響を感じることはあるが、景気動向に影響するまでには至っていない。

日本経済のファンダメンタルズは引き続き堅調である。特に、デジタル化関連の投資が増えている。製造業に限らず、サービス・小売り・流通において、投資が本格化してきており、事業の変革というビジネスチャンスが控えている。この変化は捉え方次第で、機会にもなれば脅威にもなる。どれだけ機会にしていけるかが鍵である。

金融資本市場の変動が激しい中、先行きを見通すことは難しいが、円相場は100円から110円の間を行ったり来たりするのではないか。日経平均株価は、最低限2万円を維持し、できれば2万3千円を超えてほしい。

【春季労使交渉】

賃金引上げを巡って、政治と経済界の共通認識ができつつある。賃金は労使の交渉により決まるものである。働き方改革をはじめとする社会的な要請を踏まえて、近年では、処遇の見直しの必要性が企業の間で共有されている。経営者の間でも、賃金引上げよりも、生産性やモチベーションの向上につながる処遇はどうあるべきかという議論が多い。もちろん、企業業績が好調な中、賃金引上げへの期待があることも理解している。

【外国人材の受入れ】

外国人材の受入れを積極的に進めるべきである。人手不足対策ということだけではない。多様性に乏しい日本社会は放っておけば内向き志向に陥ってしまう。観光や仕事など様々な目的で、より多くの外国人に日本を訪れてもらいたい。昨年の出入国管理法改正案の成立を受けて、多様な外国人材の受入れに向け、具体的な議論、取り組みを進めていく必要がある。

【財政・金融政策】

バランスシート不況と言われるように、バブル崩壊以降、わが国企業ではバランスシートが悪化し、設備投資が伸びなくなっていた。これを打開するために導入されたのがアベノミクスであり、成果は出ている。しかし、世界的に消費者行動が変化し、良い物を作っても売れなくなっている。消費者のお金の使い方も変化した。

このように経済の実体が変わる中で、財政政策、金融政策、企業活動をいかに回していくかが問われている。政府・日銀は六重苦、とりわけ行き過ぎた円高の是正に向けて大きな役割を果たしてきたが、多少なりとも弊害も出てきており、それを踏まえ、適宜適切な金融政策を講じつつ、経済の好循環をどう実現していくかが新たな課題となっている。

【安倍政権への要望】

安倍政権は、短期的には景気対策など様々な策を迅速に講じており、「決められる内閣」である。他方、長期的な視野に立った政策立案については議論がまだ不十分である。エネルギー問題がその典型だ。日本のエネルギーはコストが高く、外国に過度に依存しており、温室効果ガスの排出量も多い。将来的に重い課題になることは明らかであるが、議論が足りていない。経済界からも積極的に議論を仕掛けていく。

【経済団体の役割】

SDGsに代表されるように、企業活動の目的そのものが社会全体をより良くすることになりつつある。勿論、企業の目的の一つは収益を拡大することであるが、持続可能性が確保されなければ意味をなさない。企業は今、自社の事業内容を社会貢献につながるよう方向性を定めている。そうした事業でなければ、投資が集まらない。

こうした中、経済団体も業界の利益を代表しているのではなく、社会への貢献という方向に企業を牽引する存在だと国民から思われなければならない。日本人の民度は高く、国民の意識は高い。一時の話題性ではなく、どの企業が真に社会への貢献を果たしているのか、国民に正確に見極めてもらいたい。その厳しい判定にたえ得る企業でなければならない。

【大阪万博】

2025年大阪万博は、Society 5.0という夢のある未来社会を世界に訴える好機である。当然、主催国として大きな責任がある。資金面での心配も耳にするが、なにより中身が重要である。どのような万博にするのか、国際社会にどのように具体的に発信していくのか、その議論を加速していく。

以上

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