会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  定例記者会見における中西会長発言要旨

2019年2月25日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【エネルギー問題】

日本のエネルギーを巡る現状に強い危機感を抱いている。福島原発事故から8年が経過してなお、日本の火力発電の比率は約80%となっている。先進国の中にこのような電源構成の国はなく、事故後3年くらいの間は、国際社会にも「あれだけの大事故があったのだから仕方ない」という同情論があったが、今や「日本は質の高いインフラ整備を推進すると言いながら、化石燃料ばかり燃やしている」という批判的な見方が主流となっている。エネルギー基本計画において、化石燃料由来の電力を半分程度にする目標を立てているが、この実現は極めて困難な状況にある。再エネを増やそうにもグリッドやコストといった大きな課題に直面し、新しい設備・技術への投資が進まない。新しい電力のあり方について議論は重ねられているものの、現場での技術開発・設備投資はずっとなされていない。

このままでは日本の産業基盤を支えてきた高品質な電力インフラが崩壊し、コストも上昇してしまう。エネルギーのS(安全性)+3E(安定性、経済性、環境性)が壊れてしまうという危機感がある。エネルギーの全体像を踏まえた国民的議論をせず、現状のまま看過していては、日本の将来は危ういものになる。原発推進、原発反対といった個別の論点ではなく、国の根幹であるエネルギー問題全体について議論する仕掛けが求められている。

ゼロエミッションの電力を現実的に増やしていくためには、原子力を動かさなければならない。また、100年後、200年後の化石燃料が枯渇する未来までも視野に入れて、今から人類がやるべきことを考えれば、原子力のテクノロジーを維持・発展させることは必要である。好き嫌いの議論は止め、感情論に流されず、どうすべきかという観点から客観的に原子力を議論すべきである。先日、「原発と原爆が結びついている人にこれを分けて理解していただくのは難しい」という趣旨の発言をしたのは、現実に原発と原爆を結びつけて考えている方々がいることが念頭にあったためである。浜岡原発を視察した後に問われて答えたものであるが、浜岡原発や周辺の住民の方など特定のものや人を意図した発言ではない。いずれにせよ表現自体も不適切であった。

【東日本大震災からの復興】

住まいの再建は概ね完了するまで進んだが、産業の復興は道半ばである。とりわけ東北の農畜水産品への風評被害は根強く、諸外国での輸入規制が大きな課題である。国を挙げて取り組む必要がある。

【国際リニアコライダー(ILC)】

ILCは国際機関である。資金の問題を別にすれば、国際的な枠組みの中、日本において物理学上の遠大な課題にチャレンジすることは快事である。学術的な成果を求められているようだが、そもそも研究とは、成果が上がることが予め分かっているものではない。予算等の措置がなされ環境が整うのであれば、日本に誘致してもらいたい。

【採用選考活動】

これまでのルールが適用されている間は、何かがすぐに大きく変わるということではないが、経団連の「2021年度以降はルールを策定しない」という問題提起を受けて、学生の問題意識も随分変わったと思う。働き方改革や日本型雇用システムの課題について、前向きな議論を進め、学生の活躍の幅を広めていく動きにしていきたい。

【B20】

3月14日、15日に経団連が主催するB20サミットでは幅広い政策課題について議論し、共同提言をG20に提出する。現在、共同提言案の取りまとめを進めているところであり、例えばデータの取扱いを巡って活発な議論が交わされている。信頼の確立された環境の下、データが自由に流通することはビジネス上、極めて重要であるという認識は、各国の経済団体の間で共有されている。そのために何をどこまでやるかという合意ができるかどうかが問われている。粘り強く進めていくしかない。

【日米貿易協議】

米中摩擦の先行きが見通せない中、日米の貿易協議についても、非常に先が読みにくい情勢になっている。企業としては、サプライチェーンをどのように構築していくかということになる。これまでと違う商流を創る機会が生まれる余地もあるとポジティブに捉えている。もっとも貿易量、輸送量は減ってきているので、対処方法としては、レジリエンスを高めていくしかないし、そうすべきである。

【普天間飛行場を巡る問題】

普天間飛行場の危険を除去し、安全を確保することが辺野古移設の目的である。県民投票を通じて、反対の意思が数字で明確に示されたが、代案が見つからないのも事実であり、なかなか解がない。政府には、引き続き県民の理解が得られるよう、丁寧に対応してもらうしかないのではないか。

以上