会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  定例記者会見における中西会長発言要旨

2020年5月11日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【デジタルトランスフォーメーション】

本日の会長・副会長会議で、提言「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」を審議し承認されたので、この場で公表する。

Society 5.0を実現するうえでカギとなるのはDXであるが、これは単にデジタル化を進めるのでなく、多様な人々の想像力と創造力を組み合わせ、新しい価値を協創することである。良いモノを作れば売れるという単純なことではなく、お客様や他の企業と一緒に価値を創り出していくことが重要である。また、業界や組織、現場で働く人々の意識や見方も変えていく必要がある。緊急事態宣言の発令により顕わとなったデジタル化のボトルネックを解消していかなければならない。日本発のDXは、「多様な主体の協創による生活者の価値の実現」である。

提言では、組織全体の方向性を司る「経営」、DXを推進する「人材」モデル、具体的に作るべき「組織」の体制や文化、データとシステムといった「技術」的基盤の整備など、新しい価値を協創する上で必須となる要素に関するコンセプトを打ち出した。多くの企業で活用が進み、協創に結びつけば、日本全体のDX推進が加速する。トッパンフォームズと金融7社が進める「AIRPOST」というプロジェクトが本日発表されているが、こうした実プロジェクトを通して協創の機運を高めていきたい。

【緊急事態宣言の解除】

三つの密を避ける、手洗いをする、マスクを着用するなど感染症予防対策の原則を徹底することにより、新型コロナウイルス感染症が一定のレベルに抑制できれば、経済活動も徐々に可能になる、というのが政府の基本認識であり、それに基づく対応が進められている。感染者が減少傾向を辿っている地域で経済活動が再開可能となることは自然であり、違和感はない。

もっとも、宣言の解除はワクチンや治療薬が確立するまで、しっかりと予防対策を講じるという条件付きのものでなければならない。条件を満たせば一気に解除してよいというものではない。予防対策を怠れば、再拡大、爆発的感染の可能性もある。医療提供体制は何としてでも維持していく必要があり、打つべき手を考えたい。こうしたことから、当面は警戒を解くわけにはいかない。

【追加経済対策】

新型コロナウイルス問題が長期化する事態も想定して、議論すべきである。緊急事態だからと言って、政府が青天井に支援を行うことは現実的ではない。必要に応じて迅速に、同時に長期戦を見据えたかじ取りを政府にお願いしたい。

【新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン】

ガイドラインの趣旨は、人と人との接触8割減を実現しつつ、いかに経済活動を維持するか、その方策を具体的に示すことである。工場勤務者の週休3日が取り沙汰されているが、各社が試行錯誤されている様々な方策の一例に過ぎない。経団連が間もなく公表するガイドラインは、各社に強制するものではない。

【9月入学】

欧米の大学の入学時期やグローバル人材の育成の必要性等を踏まえると、「大学の9月入学」については、基本的に反対ではない。より幅広い初等・中等教育なども含めた話になると、検討すべき事柄が多く、関係者間でよく議論して決める必要がある。

他方、諸外国に比して日本の教育現場のデジタル化の遅れは顕著であり、コンテンツの準備などを含めオンライン教育を可能とする仕組みづくりなどの議論が先であろう。

【改正外為法】

本改正により日本政府は、like-minded countryでない国の企業による日本企業買収の拒否権限を持つことになった。安全保障と投資誘致という、いずれも重要不可欠な政策目的をいかに両立させるかという極めて難しい課題であり、経団連も議論に参加し、意見も反映されている。対日投資に支障が生じないよう、今後の運用を注視する必要がある。

以上