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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 記者会見における発言要旨

2021年5月10
一般社団法人 日本経済団体連合会

【久保田事務総長】

本日の理事会審議により、3月にご報告した、来期の執行部の体制案に変更があったのでご報告する。

6月1日の定時総会をもって、中西会長は任期途中となるが退任される。次期会長候補者としては、中西会長のご指名により、住友化学の十倉雅和会長に就任いただくこととなった。また、これに伴い、副会長候補者として内定していた住友化学の岩田圭一社長は、副会長への就任をご辞退されることとなった。なお、その他の内定候補者につきましては、変更はない。この結果、副会長は19名となる。

4月13日、中西会長から、健康上の理由により6月1日の定時総会をもって経団連会長を退任したいとの申し出があった。後任について、現役副会長あるいは副会長経験者で、会社の社長・会長を務めている経営者の中から人格・識見、経営手腕に優れ、指導力と行動力を持つ方々を候補者としてリストアップし推薦させていただいた。最終的に、中西会長が、日本経済が抱えている課題とりわけデジタルトランスフォーメーションや気候変動問題に熱心に取り組まれている、十倉住友化学会長を指名された。この間、名誉会長の方々とも相談した。

なお、次期会長の任期は、中西会長の任期を引き継ぐのではなく、新たに、1期2年、通常2期4年を予定している。

【十倉次期会長候補】

中西会長のご指名により、6月1日の定時総会をもって、経団連会長に就任することとなった。突然のことであり、私自身、非常に驚いているが、大変光栄である。

本来であれば、本年は、中西経団連の集大成の年であり、任期の途中で、健康上の理由により退任を余儀なくされた中西会長の無念さに思いを致すと、胸が詰まる思いである。浅学菲才の身だが、微力ながら、次期会長として、中西会長の方針を継承しつつ、わが国の経済社会のさらなる発展に力を尽くしてまいりたい。

当面は、このコロナ禍からの復活を目指すべく、政官民が力を合わせて、感染拡大の防止と経済回復の両立に全力で取り組むことが重要である。そして、ポストコロナの新たな時代には、新しい発想と大胆な政策が求められることが想像される。

こうした中で、私自身、中西会長が進められてきた路線をしっかりと踏襲してまいりたい。サステイナブルな資本主義を確立するべく、昨年11月に策定した「。新成長戦略」における5つの柱、①DXを通じた新たな成長、②働き方改革、③地方創生、④国際経済秩序の再構築、⑤グリーン成長の実現、といった基本施策の具体化を目指し、副会長の皆様とともに、経団連活動を積極的にリードしてまいりたい。

このような火急な事態であり、また、何よりも、コロナの問題が収束しない難しい状況にあるが、マルチステークホルダーの要請にこたえ、広く国民各層、社会全体から支持される経団連を目指してまいる所存である。

(記者:経団連会長を引き受けた理由と抱負は。)

私の大好きな言葉は、「義」である。経団連会長への就任は非常に悩んだが、要請を受けることは自分にとって義があると判断した。引き受けた上は、志を胸に全力を尽くしたい。

中西会長は、病院で闘病生活を送りながら、経済界をリードして様々な発信をされた。その不屈の精神に心より敬意を表したい。

(記者:ウィズコロナ、アフターコロナの日本経済をどのように牽引していくのか。)

審議員会副議長として、「。新成長戦略」の策定に携わったが、本戦略で最も共感しているのは、サステイナブルな資本主義の確立を目指すという点である。企業は、ともすれば今まで利益重視、効率重視の経営をしてきたきらいがあるが、それが結果として、生態系の破壊を招き、格差を生んだという批判もある。これを受け、米国のビジネス・ラウンドテーブルや世界経済フォーラムは、株主第一主義を脱しステークホルダー主義をとるべきと主張している。こうした世界の趨勢の中で、経団連も、ソーシャル・ポイント・オブ・ビューを持って、マルチステークホルダーと価値を協創するような資本主義市場経済の実現を目指すべきである。

(記者:政治と経済の連携、経済界の政治に対する影響力の低下についてどう考えるか。)

経済安全保障の問題に象徴されるように、政治イデオロギーという上部構造と経済という下部構造が連動し影響し合う時代にあって、経団連は積極的に政治に協力しつつ、ビジネスの実態を踏まえた政策提言を行い、その実現を働きかけることが肝要である。

経団連の発信力低下という評価を耳にすることもあるが、世界で様々な課題が山積する中にあって、通常の経済政策ではなくSociety 5.0という社会像を提示したことは非常にインパクトがあり、中西経団連の最大の成果であると考える。Society 5.0を発展させたビジョンが「。新成長戦略」だ。この中でも特に重要な政策が、デジタルトランスフォーメーションとカーボンニュートラルである。菅政権の重要政策と軌を一にしていることから、政府と力を合わせて、これらの面で世界をリードしていきたい。

(記者:中国、韓国との関係、ミャンマー情勢をどう考えるか。)

中国は、日本の主要な経済パートナーであり、安定した日中関係の構築は両国のみならず世界経済にとって非常に重要である。責任ある大国として引き続きハイレベルで緊密に連携し、地域、国際社会の発展に貢献していくことが大事である。日本の経済界は、様々な機会を通じて中国との緊密な対話を継続している。われわれの主張をしっかりと伝え、相互理解を深め、協力できる分野を広げ、両国経済関係のさらなる発展に貢献していきたい。

日韓両国は長い歴史を有する重要なパートナーである。日韓関係のベースは、1998年の日韓共同宣言にあると考えており、再度ここに立ち戻るべきである。両国の間には、旧朝鮮半島出身労働者による訴訟やいわゆる従軍慰安婦の問題、GSOMIA問題、輸出管理など課題が山積しており、これらが早期に改善に向かうことを期待したい。折しも、RCEPが署名されたところであり、今後の日韓間の貿易拡大、日韓企業によるビジネスの連携強化が期待できる。経団連は引き続き、韓国との経済交流を推進して、未来志向の日韓関係に貢献していく。

ミャンマーの問題に関しては、自由、民主主義、法の支配、人権といった普遍的価値をベースに考える必要がある。

(記者:脱炭素社会の実現にどう取り組むのか。)

2050年のカーボンニュートラルを達成するためには、2030年の温室効果ガスを2013年度比46%削減するという目標を、歯を食いしばっても達成しなければならない。厳しい挑戦になるが、イノベーションは、こうしたチャレンジングな目標を実現しようとする時に起きるものである。

経団連は、提言「2050年カーボンニュートラル実現に向けて」(2020年12月)で、4つの具体的なアクションを提言し、その実行を企業に促している。一点目は、イノベーションの創出であり、企業は、経団連の「チャレンジ・ゼロ」を中核に挑戦を一層拡大している。二点目は、投資循環による電力システムの次世代化である。三点目は、サステイナブル・ファイナンスの推進、四点目は、イノベーションの海外展開である。これらアクションが実を結ぶよう、働きかけ続けていく。

(記者:十倉ビジョンを取りまとめる考えはあるのか。)

「。新成長戦略」に含まれているビジョンは私の考え方と全く同じであり、まずは、「。新成長戦略」に掲げているサステイナブルな資本主義を構築し、社会から協力を得られる経済界、産業界をつくっていきたい。

以上

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