1. トップ
  2. 会長コメント/スピーチ
  3. 記者会見における会長発言
  4. 経済三団体共催 2022年新年祝賀会後の記者会見における十倉会長発言要旨

会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 経済三団体共催 2022年新年祝賀会後の記者会見における十倉会長発言要旨

2022年1月5
一般社団法人 日本経済団体連合会

【日本経済の活性化】

2021年の日本経済は世界経済より低成長となったが、政府は2022年度の成長率を3.2%程度としており、期待している。

当面のリスクは新型コロナウイルス感染症、インフレ、原油高等、今後2~3年の課題はDX、GXの推進による経済成長である。これまで海外投資に比べて国内投資はあまり進まなかったが、DX、GXのためには不可欠である。企業にとってチャレンジではあるが、最大のチャンスでもある。経済社会の活性化につながることを期待している。

岸田総理は「成長と分配の好循環」により経済の持続可能性を追求するとしている。成長のためには好循環が必要であり、賃金を引き上げても将来不安があれば消費にはまわらない。企業はDX、GXという大変革を好機ととらえ、投資拡大を目指さなければならない。同時に、政府による産業政策の役割は大きく、DX、GXのための投資を加速してほしい。貿易立国、科学技術立国のためには教育も重要である。

【新型コロナウイルス感染症】

国内外で共通する課題は、引き続きコロナ対策である。1年前と違い、mRNAワクチンが普及し、治療薬も利用できる状況となっている。これによりパンデミックからエンデミックに移行すれば、経済社会を順調に活性化していくことができる。この流れを先進国から世界中に広げていくために国際協調を進めるべきである。

【GX(グリーントランスフォーメーション)】

岸田総理が「新しい資本主義」の中心にGXを据えておられることは心強い。経団連が掲げる「サステイナブルな資本主義」は「新しい資本主義」と軌を一にする。

2050CNの実現のためにはイノベーションが不可欠である。新しい技術を生むには、要素技術開発に10年、プラント実証に2~3年、社会実装に3~4年、プラント建設・チューニングに1~2年、合計すると約20年かかる。遅滞なく取り組まなければならない。

GXにおける検討課題として、第1にエネルギーミックスが挙げられる。日本は国土面積あたりの太陽光発電設備導入量が主要国で最大であるが、再生可能エネルギーだけではエネルギー需要のすべてを賄えないことから、ベースロード電源となる原発の排除は現実的ではない。核エネルギーは人類の英知である。カーボンニュートラルの大きな潮流は2050年で終わるわけではない。原子力については、原発はもちろん、関連技術や専門人材を維持し、その先の核融合にしっかりとつなげていく必要がある。

第2はグリーンディールである。電力網など社会インフラの整備は企業単位では困難であり、政府が火付け役になることが欠かせない。

第3として、カーボンプライシングを指摘したい。炭素税に限らず、排出量取引、クレジット取引などを含めて幅広く議論すべきである。

第4は経済外交。EUタクソノミーでは、ハイブリッド車でさえ適切な投融資対象から除外され、電気自動車が優遇されている。こうした動きに経済外交で対処してほしい。

第5の課題として、GXがもたらす社会変容への対応である。GXは環境のみならず、ライフスタイルや産業など社会そのものを大きく変える。産業構造の変化に人々が柔軟に対応していけるよう、今から策を講じる必要がある。例えば、労働力の移動を円滑にすべく、リカレント教育やリスキリングが求められる。

第6はサステナブルファイナンスである。CN実現に向け、研究開発・社会実装を支える官民のファイナンスの視点も重要である。

このように課題は多岐にわたり、いずれも重要かつ喫緊である。各省ごとの対応では解決できず、政府全体で取り組むべきである。

【賃金引き上げ】

政府は税制などにより賃金引き上げに向けた環境を整備している。一方、企業が重要なステークホルダーである従業員に成果を適切に分配することは当然であり、責務である。賃金引き上げは、各企業が社内外の状況、自社の支払能力、労働組合との真摯な話し合いを通じ、「賃金決定の大原則」に則って対応するものである。こうした考え方が浸透していくことを期待している。

【国際情勢】

2022年の最大のリスクは「中国のゼロコロナの失敗」とユーラシアグループが指摘している。コロナ禍により各国が国内に目を向けざるを得なくなっている。こうした時こそ国際協調が必要である。特に、気候変動、感染症による生態系の崩壊といったグローバルな課題には一国だけでは対処できない。日本は国際協調の中心的な役割を果たすべきである。

人権問題について、国連はビジネスと人権に関する指導原則において、是正措置なども含めて企業に取組みを求めている。経団連は企業行動憲章実行の手引きを改訂するとともに、新たにハンドブックを策定した。人権問題が経済安全保障と関連づけて語られることもある中、企業には引き続き、人権尊重を経営の要諦と位置付ける基本姿勢を堅持し、自主的に実効ある取組みを進めていくことが求められている。

以上

「会長コメント/スピーチ」はこちら