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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定時総会後の記者会見における十倉会長発言要旨

2022年6月1
一般社団法人 日本経済団体連合会

【経団連会長就任2年目の抱負】

5名の副会長を新たに迎え、本日、新体制がスタートした。山積する内外の重要課題はいずれも待ったなしであり、危機感を胸に、一丸となって課題克服に全力で取り組んでいきたい。

経団連会長に就任してからこの1年間、「サステイナブルな資本主義」の重要性、必要性を訴えるとともに、「社会性の視座」を核に、とりわけ新型コロナ対策と経済活動の両立、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現に注力してきた。

今年はさらに踏み込んで「サステイナブルな資本主義」を実践していく。その核となるGX、デジタルトランスフォーメーション(DX)は社会に変容を求めるものであり、この未曾有の変革をリードする経団連も常に変化に身を曝していく決意である。そこで、日本経済を力強く牽引することが期待される有望な3分野、「クリエイティブ産業」「バイオ産業」「モビリティ産業」の振興に注力すべく、本日、3つの委員会を発足させた。

イノベーションを核とする成長戦略の推進と並行して、2つの重要政策にも積極的に取り組んでいく。一つは、自由で開かれた国際経済秩序の再構築、もう一つは、全世代型社会保障改革と多様な働き方の実現である。明るい未来を将来世代に残していけるよう、経団連は内外の情勢変化に迅速かつ柔軟に対応しつつ、今なすべき政策についてしっかりと提言し、その実現を図っていきたい。

【新設委員会の活動方針】

クリエイティブエコノミー委員会では、最近注目を集めているWeb3.0やメタバース、NFTのみならず、日本が強みを有する漫画やゲームなどソフトパワーをさらに強化していく。日本ファンが増え、ひいては訪日観光客が増加し経済の好循環につながることを期待したい。

バイオエコノミー委員会では、バイオテクノロジーの活用で、ヘルスケア、食料、環境といった地球規模の課題を解決する方途について検討する。バイオはデジタルとの相性も良く、米国では多くのスタートアップが生まれている。また、政府とバイオ業界が策定しているバイオ戦略とも整合性を取りながら、関西や東京圏で進められているバイオクラスター形成の検討にも加わっていきたい。

モビリティ委員会では、モビリティ産業の国際競争力強化を図る。MaaSの考え方を踏まえ、例えば、外出したいという高齢の方のニーズに応えた移動の制約を減らした快適な生活や、カーボンニュートラル(CN)の実現、自動運転等のデジタル化といった課題への対応が求められている。モビリティには様々な産業が絡んでくることから、日本自動車工業会はじめ関係団体ともよく連携しつつ取り組んでいく。

【日本経済の低成長の要因】

この20年間、日本経済は円高とデフレに苦しんだ。円高を背景に海外投資が進む一方で、国内投資が伸び悩んだ。スタートアップやイノベーションによる新しい付加価値の創造も十分とは言えない規模にとどまった。人口減少下にあって、労働生産性もあまり伸びなかった。今後は、こうしたジャパニフィケーション(日本化)と呼ばれる状況から脱却していかなければならない。

そのためには、科学技術に基づくイノベーションを起こして付加価値を高めていく必要がある。DXとGXを投資の軸に据えて、スタートアップエコシステムを構築してイノベーションを起こすことが重要である。幸い、GXに関して、政府はNDC(Nationally Determined Contribution)を掲げている。この公約を果たすために、研究投資や社会実装を進めなければならない。経団連は、2050年までの累計で400兆円程度の投資が必要と試算し、実行を求めている。今こそ、国内投資を起こす千載一遇のチャンスである。

〔長年横ばいの賃金動向について問われ、〕理想的には、物価上昇をベースアップでカバーし、時々の業績を賞与に反映させ、経済を回していくことが望ましい。今年の春季労使交渉の第1回集計結果(経団連調査)によると、月例賃金引上げのアップ率(対前年比)は2.27%と高く、3年連続の下降から反転した。業績がコロナ前の水準にまで回復した企業については3.02%に達している。この賃金引き上げのモメンタムを来年以降もしっかりと維持していくことが肝要である。

【日本のエネルギー事情】

〔泊原発の運転差し止めを命じる判決について問われ、〕司法の判断を尊重する。個別の判決についてはコメントを控える。本件について今後の推移を見守りたい。

日本のエネルギー事情を考えるうえで、日本の置かれた地理的制約をよく理解する必要がある。日本は島国で、隣国とグリッド網でつながれていないため、電力の融通がきかない。こうした制約要因も考慮しつつ、再生可能エネルギーを増やさなければならない。太陽光発電は、平地あたりではすでに世界最大であり、今後増設するには自ずと限度がある。日本近海は非常に深いため、洋上風力発電設備の建設コストが高い。地熱発電もポテンシャルはあるが、国立・国定公園の保護との両立が難しい課題で、進展していない。また、再生可能エネルギーはどうしても天候に左右される。こうしたことから、やはりベースロード電源として原子力発電が不可欠である。

原発は、原子力規制委員会の審査に合格し、地元住民の了解を得て安心安全を確保した上で再稼働することが基本である。近い将来のエネルギー需要を考えれば、既設の原子炉の最大限の活用、リプレース・新増設、SMRへの取り組み、核融合に向けたイノベーションを同時並行で促進すべきである。なお、原子力全般の取り組みを進めるにあたり、核燃料サイクル・最終処分の確立といったバックエンドへの対応は欠かせない。

【水際対策】

水際対策が着実に前進していることはありがたい。他方、1日あたりの入国者数の上限はいまだ2万人にとどまっている。上限を引上げ、最終的には入国者枠の撤廃に向けて取り組み、G7諸国並みとなることを期待したい。

以上

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