会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  定例記者会見における十倉会長発言要旨

2022年6月20
一般社団法人 日本経済団体連合会

【参議院選挙】

時代の転換点にある今、各党には、国の針路を国民にわかりやすい形で示し、持続的で活力ある経済社会の構築に向けて意見を戦わせてほしい。

食料やエネルギー価格の急激な上昇への対応という足元の課題への対応はもとより、自由で開かれた国際秩序の形成という中長期的な課題についても議論していただきたい。

さらに、混沌とする国際情勢の中で、エネルギー、食料も含めた安全保障をいかに確保するのかについて、しっかりとした議論を期待する。

【令和臨調】

山積する内外の諸課題の克服に向け、経団連は政策提言や意見発信を行っている。同時並行で多様な取り組みがなされることは歓迎である。各分野の識見を有する方々の間で、「統治構造改革」「財政・社会保障」「令和の国土構想」について議論が深まることを期待する。

【福島第一原発事故集団訴訟の最高裁判決】

司法判断を尊重する。個々の判決についてのコメントは控えたい。今次判決について、政府は原子力政策の方向性に影響を与えるものではないとの受け止めで、安全第一と地元理解を踏まえて原発の再稼働を進めていく方針であると承知している。原子力はカーボンニュートラル実現に不可欠なゼロエミッション電源であり、安全性確保に万全を尽くしながら引き続き活用すべきである。再稼働にあたっては、安心の大前提である安全をしっかりと確保した上で、地元住民の理解を得ることが基本である。

【日銀の金融政策】

金融政策が焦点を当てるべきは物価の安定であり、日銀は「物価安定の目標」(前年比2%)の達成に必要な金融政策を堅持している。諸外国との比較で日本の金融政策が論じられるきらいがあるが、置かれている経済状況が国によって異なるという事実をよく踏まえる必要がある。

〔為替と企業の海外事業の関係について問われ、〕為替相場が事業に与える影響は、業種・業態によってさまざまである。経営上、為替の変動を短期的に見るか中長期的に捉えるかについても、各社でまちまちであろう。

〔海外人件費上昇の経営への影響について問われ、〕企業が海外進出を決める要因はさまざまである。内外の人件費の差を考慮する要素の一つとする社もあろう。他方、コロナ禍の下でのITの活用による勤務形態の急速な変化を受け、海外駐在より日本での勤務に軸足を移す企業があってもおかしくない。もっとも、一般的に、海外駐在に伴う人件費が経営に大きなインパクトを与えるとは考えにくい。

【物価対策】

資源・エネルギー価格高騰等に伴う現在の物価上昇を金利政策で抑制するという考え方は本末転倒である。

〔物価対策として消費税率を引き下げることの是非を問われ、〕今、全世代型の社会保障改革に関する議論を進めようとしている。税の話もその中でしっかりとなされると思っている。

ロシアによるウクライナ侵略に起因するエネルギーや食料の価格高騰に対して、政府は財政支出で手当てしている。中長期的には、自給率を引き上げるための諸政策を検討する必要がある。

足元の対応をしっかりと取りながら、成長と分配の好循環を確たるものとし、持続可能で活力ある経済社会を築いていくことが肝要である。そのために企業が担う役割は大きい。経団連は引き続き、賃金引き上げのモメンタムの維持を呼びかけていく。

【首相直轄の組織】

〔首相直轄の省庁横断的な組織の設置意義を問われ、〕日本で改革が進まない要因として、縦割り行政が指摘されて久しい。省庁横断的に取り組むのが効率的、効果的であるような事案、例えば、感染症対策やデジタル対応に関しては、既存の枠組みを超えた新たな取り組みも求められよう。

【世界難民の日(6月20日)】

日本の難民認定者数が少ないことは以前から指摘されてきた。ロシアのウクライナ侵略を機に、難民という地球規模の重要課題への内外の関心が高まっている。難民の受け入れに関する議論が深まることを期待する。

【外国人材の活用】

日本の少子化は「静かな有事」と称されるほど底流で進行している。労働参加率の低下は、日本の潜在成長率を引き下げる要因の一つである。外国人材の受け入れの議論では、経営資源という観点のみならず、受け入れに伴う様々な環境整備への視点も欠かせない。

【テレワーク、働き方改革】

〔テレワークを含めた働き方について問われ、〕新型コロナウイルス感染が急拡大していた局面では、一律のテレワーク要請は有意義であった。コロナ感染がエンデミックとなり、社会経済活動が平時に戻った後の勤務形態については、業種・業態によって様々である。

以上