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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2023年2月27
一般社団法人 日本経済団体連合会

【十倉会長訪米】

2月19日から23日までの間、米国ワシントンD.C.を訪問した。経団連会長に就任して初めての訪米となる。今回のミッションには、東原副会長と久保田副会長・事務総長が同行し、レモンド商務長官、グランホルム エネルギー長官、キャンベルNSCインド太平洋調整官らと懇談した。また、全米商工会議所、ビジネスラウンドテーブル(BRT)、戦略国際問題研究所(CSIS)、ピーターソン国際経済研究所(PIIE)にて、米国の政治経済情勢などについて専門家と意見交換を行った。

私からは主に、ルールに基づく国際秩序の形成や自由で開かれたインド太平洋の実現、気候変動やエネルギー安全保障をはじめとするグローバルな課題の解決に向けた日米協力の重要性を強く語りかけた。米国のTPPへの復帰についても、改めて強く働きかけた。日米両国の官民は、安全保障を軸に様々な共通課題について政策対話を深めている。日米が同盟国として歩調を合わせていくことの重要性を再認識した。

今年、日本がG7、米国がAPECの議長国を務める。この機会に、日米が緊密に連携して、国際社会においてリーダーシップを発揮していく必要がある。この点、米国側からの期待を強く感じた。こうした交流や対話は、一度で終わらせるのではなく、頻繁に、長く続けていくことが肝要である。経団連は引き続き、あらゆる機会に、連邦政府関係者、州政府関係者といった米国側要人との対話を重ね、日米パートナーシップの強化に取り組む所存である。

〔米国の物価の現状について問われ、〕滞在中の朝食でチップを含め35ドル程を支払って、足下の物価高を肌身で感じた。翻って、この20年間も物価が上がらぬままの日本が、世界の中でいかに例外的な存在であるかを痛感した。

〔ビジネスラウンドテーブル(BRT)が主張するステークホルダーキャピタリズムについて問われ、〕行き過ぎた株主資本主義や市場原理主義がもたらした格差や温暖化といった弊害を克服するのもまた、資本主義である。その際、経団連が最も重視しているのは「社会性の視座」である。こうした考えを申し上げたところ、米国経済界の方々からも広く賛同が得られた。

【植田和男日銀総裁候補】

理論と実践の両方を兼ね備えた候補者である。良い後継者に恵まれた、と黒田総裁も安堵されているのではないか。欧米の中央銀行トップにアカデミア出身者が就くことは珍しくない。金融政策の面で国際連携・協調を推進する観点からも良い人選である。

異次元の金融緩和が長期間続けば副作用もあろうが、実体経済を見ながら上手く舵取りをされるのではないか。適切な金融政策を講じられると確信している。

【春季労使交渉】

賃金引上げのモメンタム維持・強化に向けた心強い発表が相次いでいる。トヨタやホンダが労働組合の要求に満額回答したのは、できるだけ早く多くの層に賃金引上げのモメンタムを広げようという配慮があったからではないか。こうした動きの拡大を大いに期待したい。

〔「政労使会議」の意義について問われ、〕構造的な賃金引上げには持続的な経済成長が不可欠である。そのためには、国内投資の活性化、賃金引上げのモメンタムの維持・強化によって消費が増え、デマンドプル型のインフレを実現する必要がある。同時に、将来への安心を確たるものとすべく、全世代型社会保障改革を断行しなければならない。政労使会議は、こうした認識を共有する場であるべきだ。

【N分N乗方式】

世帯人数が多いほど納税額が低くなるのはメリットである。他方、高額所得層優遇や、共働き世帯に比べ片働き世帯が現行制度より有利になる、といった課題も指摘されている。海外の制度をそのまま日本に適用するというのではなく、様々な角度から慎重な検討を重ね、わが国社会に合った制度を構築するのが基本である。

【G7の役割】

G7は、民主主義、自由、人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々の集まりである。その最大の役割は、こうした価値に賛同する国・地域を増やしていくことである。生態系の破壊、地球温暖化、核エネルギーの平和利用といった地球規模の課題の克服に国際協調は不可欠であり、グローバルサウス(途上国)を巻き込んだ取り組みを目指すべきである。

【セキュリティ・クリアランス】

経済安全保障の観点からも、機微な情報の流出防止策としてのセキュリティ・クリアランス制度の整備は望ましい。「ファイブ・アイズ」メンバー国では、民間人に対してもセキュリティ・クリアランスが導入されている。日本においても、共同研究をはじめ民間の活動であっても、官民対話を経た制度設計を前提に、セキュリティ・クリアランスは求められるのではないか。

以上

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