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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2023年9月4
一般社団法人 日本経済団体連合会

【国産水産品応援消費】

政府によるALPS処理水の放出を契機として、現在、中国等が日本の水産物の輸入を全面的に停止するなど、日本の水産業は深刻な事態に直面している。

経団連は「災害復興特別委員会」を中心に、東日本大震災の被災地の復興や福島第一原発の廃炉に向けて、風評の払拭、地元産品の消費拡大、産業振興に地道に取り組んできた。それだけに、今回の中国等の対応は極めて遺憾である。

皆で手を携えて、現下の苦境を乗り越えていかなければならない。政府には、外交努力を通じて、事態を早期に解決してもらいたい。経済界も当然、水産事業者の支援活動を展開していく。全会員企業に対し、社員食堂や各種会合での日本の水産品の積極的な活用等の応援を呼びかける。皮切りに、本日の会長・副会長会議の昼食も国産水産品を積極的に取り入れたメニューとした。日本の水産物が安全で美味であることを改めて実感した。

〔国内の水産事業者への支援策について問われ、〕政府による約200億円規模の支援策(4日発表)は非常に力強い内容であり、政策効果を期待している。視野を広げれば、やれること、希望が持てることはいろいろとある。例えば、海外から来訪される方々が日本の食文化に触れ、水産物を堪能され、実体験を情報発信してくだされば、それもまた有効な対策となる。

【ALPS処理水海洋放出】

ただの処理水ではなくALPS(Advanced Liquid Processing System)による処理水であるという大事な点を再認識することが肝要である。ALPS処理水は最先端技術で細心の処置を施されたものであり、IAEAの報告書(2023年7月公表)で指摘されているとおり、その安全性は科学的、論理的、客観的に保証されている。安全性の高さとその根拠を内外に辛抱強く丁寧に発信し、伝えていく必要がある。それにより、安全が納得、実感され、内外の人々の安心へとつながっていく。

【エネルギー価格激変緩和措置】

〔燃料油価格、電気・都市ガス料金に関する激変緩和措置の継続の決定(8月30日)について問われ、〕エネルギー価格の高騰が及ぼす国民生活への影響を考慮したものであろう。賃金と物価の好循環が始まりつつある時期だけに、極端なエネルギー価格の上昇には必要な対応を行うべきであり、今回の政府の決定はその考えに合致するものである。

【最低賃金】

〔岸田総理が最低賃金を2030年代半ばまでに全国加重平均1,500円に引き上げる方針を表明した(8月31日)ことの受け止めを問われ、〕岸田内閣の掲げる「成長と分配の好循環」の実現に向けて、政府が最低賃金の中長期的な目標を掲げられたものと受け止めている。

最低賃金では、公労使三者構成の最低賃金審議会において議論を行うことと、労働者の生計費と労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力の三要素を考慮して適切に引き上げていくことの2点が大事である。政府の方針は、この点が改めて強調されている。中小企業や中小企業団体の意見を十分踏まえながら、賃金支払能力を高める支援策とセットで検討することが肝要であり、政府にはデジタル化など生産性の改善・向上に資する支援策の導入・拡充を大いに期待する。

経団連は引き続き、取引条件の改善と適正な価格転嫁に向けて、「パートナーシップ構築宣言」への参画企業の拡大と、実効性の担保・向上を働きかけていく。

【日中経済協会合同訪中代表団】

〔「日中経済協会合同訪中代表団が2024年1月に訪中予定」との報道について問われ、〕両国の間に政治や経済など色々な課題が存在している時こそ、対話を欠かしてはならない。対話がなくなれば、諸課題の解決は遠のいてしまう。経済界は過去、日中両国の政治関係が厳しい時でも対話を続けた。それが両国関係のみならず世界全体に資するものであったという自負がある。現況において、中国は引き続き経済の門戸を開き、日本の経済界と意見交換を行いたいと考えているのであろう。4年4カ月ぶりの訪中の実現は意義深く、対面で互いが熱意を伝えなければならない。米中対立など困難な環境下にあるが、経済安全保障が話題にのぼれば、「スモールヤード・ハイフェンス」(限定された分野を厳重に管理)を原則としつつ、自由で開かれた経済を共に創っていくとの日本の経済界の思いを伝えたい。また、経団連は日中企業家及び元政府高官対話(日中CEO等サミット)の開催も予定している。今年は日中平和友好条約締結45周年の節目の年であり、両国の交流が大いに進むことを期待している。

【そごう・西武ストライキ】

〔そごう・西武で実施されたストライキの受け止めを問われ、〕個別企業の事案であり、是非等についてのコメントは差し控えたい。

労働組合の当事者が、ストライキの実施によって重要なステークホルダーである顧客や地域社会に与える影響を深く憂慮する姿は非常に印象深く、感銘を受けた。そうした労組側の思いも踏まえ、新たな親会社を含む経営側と労組側でしっかりと協議がなされ、労使双方にとって適切な着地点が見出されることを切に願う。

以上

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