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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2023年12月18
一般社団法人 日本経済団体連合会

【税制改正大綱】

〔令和6年度与党税制改正大綱で、減税策が示される一方、財政健全化につながる安定財源の議論が先送りされたことについて問われ、〕単年度主義ではなく、中長期のスパンで財政均衡を図るダイナミックな経済財政運営を行う必要がある。大綱では、防衛費増額に伴う増税開始時期や、税と社会保障の一体改革への道筋は示されなかった。岸田政権の掲げる「成長と分配の好循環」の実現には、少子化対策にも資する、全世代型社会保障改革が不可欠である。短期的な施策と同時並行で、中長期的な視点での議論を行い、国民に方向性を明示すべきである。

〔将来的な法人税率引上げも視野に入れた検討の必要性が同大綱で言及されていることについて問われ、〕中長期の課題として言及されたものと認識している。法人税の改革は税制全体で考えるべきものである。どのような税制が望ましいか、しっかりと議論していく必要がある。その際、わが国の法人実効税率が主要国の中で依然低くないことにも留意が必要だ。無論、防衛費増額をまかなう財源の確保といった場合に、企業として応分の負担をするにやぶさかではない。

〔賃上げ促進税制の見直しで、継続雇用者の給与支給額を前年度から7%以上増やした大企業向けの法人税軽減枠が創設されることについて問われ、〕経団連調査では今年、約4分の1の企業が5%以上の月例賃金引上げを実現しており、7%以上となった企業もあるだろう。賃金決定の大原則に則った検討の結果、大幅な賃金引上げを実現できる企業が多く出てくることが望ましい。企業は、税制上の措置の有無に関わらず、社会的責務として賃金引上げを進めている。構造的な賃金引上げを確たるものとするには官民双方の取り組みが不可欠であり、政府が諸政策で賃金引上げのモメンタムを後押しするための環境整備を進めてくれることは心強く、ありがたい。

【金融政策】

〔日銀の金融政策の見直しについて問われ、〕日銀は、日本がデフレに逆戻りすることのないよう、賃金と物価の好循環が実現しているかを慎重に見極めようとしているのではないか。サービス業で価格上昇が見られており、また、政府・日銀の掲げる2%の適度な物価上昇を継続的にカバーすべく、経団連が今年以上の熱量で賃金引上げに取り組んでいることから、時期はわからないが、遠くない将来、政策変更の環境が整うのではないか。市場と齟齬のある金利政策は経済に悪影響を及ぼす。金利は経済の体温とも言われており、できるだけ早く金融政策を正常化すべきだと思うが、経済の状況を踏まえ、日銀が適切に判断されるであろう。

【診療報酬改定】

〔政府が2024年度の診療報酬改定で本体部分の改定率を0.88%とする方針を固めたとの報道について問われ、〕公費・保険料負担等に基づく診療報酬制度においては、国民負担への目配りも必要である。他方、看護師などの現場従事者の処遇改善の必要性や、病院と診療所の経営状況の差異も踏まえ、メリハリをつけた改定が求められる。財政制度等審議会の建議は、診療所の報酬単価を適正化することなどにより診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当、という内容であり、議論に一石を投じたのではないか。

【AZEC】

〔アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想、ならびにそれを支援する賢人会議の設置について問われ、〕アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想が具体化してきた背景には、カーボンニュートラル達成には、各国固有の経済的、地理的な状況を踏まえた多様な道筋があるというわが国の考え方が、ASEAN各国に受け入れられてきたことがある。

カーボンニュートラル、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現には、既存の技術で削減可能な部分もあるが、2050年でゼロを目指すとなると、やはり革新的な技術、ソリューションを開発しなければならない。日本では現在GX推進を通じて鋭意それを行っている。アジアは世界の温室効果ガス排出の半分以上を占め、今後も工業的に伸びようとしてる国が多い。日本が開発した技術・製品により、アジア各国の事情に応じたソリューションを提供し、地球規模のカーボンニュートラルに貢献してまいりたい。こうした考え方に沿ってAZECを推進するために、賢人会議の設置が合意されたものと理解している。

【政治資金パーティー問題】

〔政治資金規正法の改革の必要性について与党からも声が出ていることの受け止めを問われ、〕いわゆる政治資金には大きく、政治寄附と政治資金パーティー券の2つがある。経団連が、社会的責任の一環としての社会貢献という位置づけで企業に呼び掛けているのは政治寄附。他方、政治資金パーティー券については、政治資金規正法で定められたルールを遵守するのが大前提。自民党派閥のパーティー収入の一部が政治資金収支報告書に不記載だったことは、裏金と言われても仕方なく、残念だ。本件については、各派閥が責任をもって原因を究明し、事実を明らかにすべきである。政治資金規正法の改正については、要否も含め、各政党、各会派を中心によく議論していただければと考える。

【今年の漢字】

今年の漢字には「環」をあげたい。今年は「成長と分配の好循『環』」を掲げて賃金引上げなどに精力的に取り組んだ。「環」境問題の解決に向け、CCUなどによる炭素の循「環」利用といったグリーントランスフォーメーションも動き始めている。「『サーキュラー』・エコノミーの実現に向けた提言」も公表した。加えて、大阪・関西万博の「リング」の建設も進んでいる。「環」とつながりの強い1年であった。

以上

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