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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2024年2月26
一般社団法人 日本経済団体連合会

【日経平均株価】

〔日経平均株価が最高値を更新するのに約34年を要したことについて問われ、〕原因はデフレである。日本企業は、長引くデフレ環境下で、設備、負債、雇用の三つの過剰を克服する経営努力を続けた。その一環として、積極的な海外進出も行われた。対外直接投資の著しい増大はそれを如実に示している。こうした結果、上場企業が過去最高益を記録するまでに至っているが、他方で、国内では投資や消費が伸びず、賃金も物価も上がらない状態が続くこととなった。つまり、日本経済は合成の誤謬に陥っていた。しかし足元では、コストプッシュ型であるとはいえ物価が上がり始め、賃金引上げのモメンタムも生じている。投資と消費も上向きつつあり、「成長と分配の好循環」に向けた日本経済の潮目が大きく変わりつつある。こうした変化が評価されたことも、株価の上昇に一役買ったのではないか。

もっとも、株価は短期的な資金の流れに左右される面もあり、現下の株高の要因として、円安や中国経済の減速による資金流入も指摘できる。しかし注目すべきは、「成長と分配の好循環」が実現するのではないかという、日本経済への市場の期待感であり、それが株価にも反映されているということだ。社会課題の解決に資する国内投資の促進や、賃金引上げを通じた消費の拡大を通じて「成長と分配の好循環」を確かなものとし、株高を持続性のあるものにしていかねばならない。そのためには官民連携による取り組みを継続していくことが肝要である。

〔現在の株高がバブルであるとする一部の指摘について問われ、〕そのような見解があることは承知しているが、史上最高値を更新したことは素直に喜ぶとともに、「成長と分配の好循環」の実現に向けた決意を新たにするきっかけととらえたい。

【財政健全化】

〔日銀の金融政策が正常化されれば、政策金利の上昇によって国債の利払い費が増大し、財政負担が重くなるのではないかとの指摘を受け、〕適度な物価上昇を伴う賃金と物価の好循環が実現すれば、実質の政府債務残高は目減りし、税収も増える。

無論、適度な物価上昇の効果を確かなものとするためには、中長期的に財政健全化を果たす必要があり、歳出改革を含め、ダイナミックな経済財政運営を行わなければならない。

【賃金引上げ】

〔今年の春季労使交渉で、自動車産業や人手不足の深刻な外食産業等の一部企業で高水準の賃金引上げでの早期決着が相次ぐ現状について問われ、〕結構なことである。とりわけ自動車産業は、半導体不足が解消され、円安もあって業績好調である。広範なサプライチェーンを形成する自動車産業において、大企業のみならず中小企業にも賃金引上げのモメンタムが及ぶよう、労務費を含む適正な価格転嫁を進めていってほしい。業界ごとに置かれた状況は異なるが、こうした前向きな動きが各所に広がり、社会的規範となっていくことを期待している。

また、マクロ経済的には、外食産業といった人手不足が顕著な産業において大幅な賃金引上げが行われ、労働移動が生じ、結果として経済の新陳代謝が進むことは、悪いことではない。円滑な労働移動の推進によるわが国全体の生産性の向上は重要である。その前提として、リスキリングを含むリカレント教育の強化などを通じた、「労働移動推進型」セーフティネットへの移行・整備が欠かせない。

【採用活動】

〔少子化や人手不足が企業の採用活動に与える影響について問われ、〕人手不足への対応として、各企業が工夫を凝らすなかで、新卒一括採用だけでなく通年採用や経験者採用を増やすなど採用の多様性が増していく方向に進むと思う。

〔新卒採用活動の早期化について問われ、〕現在、政府が策定・公表する形で、就職・採用活動日程ルールが示されている。学生には学業に専念してほしいという大学側の切実な要望もある。一方、企業では通年採用や経験者採用など採用方法の多様化が進んでいる。こうした要事に目を配り世の中の動向を見ながら、ルールのあり方について議論がなされていくであろう。

【ウクライナ支援】

〔ウクライナの復興に向けた日本企業の今後の支援について問われ、〕いまだ戦時下にあることを思えば被害、苦難の次元が違うかもしれないが、少なくともわが国には、多くの自然災害からの復旧・復興という貴重な経験がある。農業や医療、交通インフラといった分野での優位性もある。こうした知見をもって、ウクライナの復興に貢献できるのではないか。人道的観点から支援を行う民間企業も増えてくるだろう。

日・ウクライナ経済復興推進会議(2月19日開催)では、日本、ウクライナ両国の民間企業、政府機関等が56の協力文書を締結した。次の不可欠のステップとして、各企業等が実際に現地を訪れ、具体的な支援を検討・実行していくことが重要である。まずは、日本政府が打ち出したウクライナへの渡航制限の一部緩和措置について、今後、政府関係者から運用方針などをよく聞きたい。

【政治資金】

〔企業の政治献金のあり方について問われ、〕まずもって、政治資金規正法で定められたルールの遵守と、政治資金の透明性の確保が問われている。遵守徹底と透明性の確保に向けたルールの見直しを目指し、各政党、各会派の間でしっかりと議論していただきたい。

〔自民党派閥の政治資金問題をめぐる衆議院政治倫理審査会の公開の是非について問われ、〕政治資金の重み、あり方などについて、各議員には様々な受け止め、思い、意見がおありではないか。最終的には、国会で判断されるべきものである。

【大阪・関西万博】

〔日本建設業連合会の宮本会長が、大阪・関西万博の大屋根(リング)が完成すれば、リングの内側のパビリオン建設等に必要な重機や資材の搬入に制約が生じると聞いているとして、各工事間のスケジュール調整をしっかり行うよう求めた(2月22日)ことについて問われ、〕宮本会長は、工期は厳しいが必ず仕上げる、と強く決意されている。そうした思いから、工事に支障の出ないような環境整備を万博協会に改めて求める意図でなされた発言ではないか。

以上

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