1. トップ
  2. 会長コメント/スピーチ
  3. 記者会見における会長発言
  4. 定例記者会見における十倉会長発言要旨

会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2024年4月8
一般社団法人 日本経済団体連合会

【金融政策】

〔日銀の政策金利の引上げについて問われ、〕大規模金融緩和からの政策転換にあたり、日銀は、市場に混乱を生じさせないよう相当腐心していて、その結果、株価や為替に大きな影響が出ていないのではないか。今後の利上げについては、デマンドプル型の2%程度の適度な物価上昇が実現できているかどうかを慎重に見極め、適切な時期に判断されるであろう。わが国の現在の政策金利と、中立金利との間に乖離があることから、短期間で大幅な利上げを行うことはないにせよ、徐々に引締めへと舵を切っていかれるだろう。日銀の判断を尊重し、見守りたい。

〔日銀が緩和的な金融環境を続けることにより過度な円安が続いていることについて問われ、〕為替は国力を反映するものなので、1ドル150円を超える現在の為替は日本経済の実力を踏まえれば適切ではなく、やはり過度な円安と言えよう。短期的に投機マネーの動きに影響されている面もあろうが、中長期的には、為替は適切な水準へと是正されていくであろう。

【実質賃金】

〔2月の実質賃金(厚生労働省、毎月勤労統計調査)が前年同月比1.3%減で、23カ月連続のマイナスとなったことについて問われ、〕今年の春季労使交渉ではこれまで、昨年を大きく上回る、想定以上の賃金引上げが実現している。こうした賃金引上げのモメンタムを来年以降も維持・強化し、賃金と物価の好循環、構造的な賃金引上げを実現していく必要がある。そのためには、コストプッシュ型で引き起こされた今回の急激な物価上昇を、デマンドプル型の2%程度の適度な物価上昇に安定させることが不可欠である。企業は生産性の改善・向上をベースに、物価上昇に負けない賃金引上げを継続的に実現していく。政府・日銀には、適切な政策運営を行ってもらいたい。こうした官民の取り組みが実り、早晩、統計上の実質賃金がプラスとなることを期待している。

【日本版ライドシェア】

〔2024年4月に運用を開始した、「日本版ライドシェア」への期待と課題を問われ、〕地域交通の担い手が不足している過疎地域や、観光地等において、深刻なタクシーの供給不足に陥っている所がある。他方で、規制を一気になくし海外と同じような制度を全国一律に導入することへの懸念の声もある。そうした中、安心・安全を大切に、さまざまな意見に耳を傾けながら、必要な地域から段階的に制度を導入していくという進め方は評価に値する。制度を運用する中で得られた教訓を活かし、さらなる法制度の整備に向けて議論を重ねてほしい。

【自民党党紀委員会】

〔自民党が党紀委員会を開催し(4月4日)、関係議員39名を処分したことの評価を問われ、〕自民党として、関係議員の政治責任を問い、離党勧告をはじめとする厳しい処分を行うなど、一定のけじめをつけたと評価している。今後は、自民党のガバナンス強化、ならびに政治資金規正法の改正等の政治改革に向け与野党で議論を重ねてほしい。

〔自民党総裁である岸田首相に対する処分がなかったことについて問われ、〕党のガバナンス強化や政治改革を成し遂げることこそが、トップである総裁の果たすべき責任ではないか。

【日米首脳会談】

〔日米首脳会談(4月10日)への期待を問われ、〕首相が9年ぶりに国賓待遇で訪米し、首脳会談を行うことは非常に意義深い。首脳間の対話を通じて、わが国唯一の同盟国である米国との強固な信頼関係を深化させることは不可欠である。

米上下両院合同会議での演説では、米国に対し、日米同盟関係の強化のみならず、両国が果たすべきグローバルな役割の重要性についても訴えられるであろう。さらには、フィリピンも加わった三カ国による首脳会談も予定されており、自由で開かれたインド太平洋が強く意識された訪米であると認識している。

首脳間の忌憚のない対話を通じて、日米同盟が盤石であることを世界に改めて示してほしい。今回の訪米はまた、未来志向の日米関係の姿を国際社会に見せる好機である。世界が分断傾向にある今、日米両国が若い世代のために何ができるかが語り合われ、未来に向けた日米のパートナーシップの強化やリーダーシップの発揮について大きな方向性が定められることを大いに期待している。

【台湾東部沖地震】

〔台湾東部沖地震(4月3日発生)の受け止め、経済界の支援について問われ、〕台湾東部沖地震により、亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げる。令和6年能登半島地震以降、プレート運動に起因する地震が国内外で相次いでおり、天災への十分な備えが必要不可欠であることを改めて痛感した。

能登半島地震が発生した際、台湾の官民からいち早く支援をいただいた。誠にありがたく、頭が下がる思いである。日本政府は既に資金協力を表明しており、経済界からの支援もこれから本格化してくるであろう。台湾はわが国にとって、基本的価値観を共有する重要なパートナーであり、苦しい時にはお互いに手を差し伸べることが大切である。

【小林製薬】

〔小林製薬の「紅麹」の成分を含む健康食品による健康被害を受け、消費者庁が機能性表示食品の制度の見直しの検討を開始するとの報道の受け止めを問われ、〕機能性表示食品については、医薬品のような製造工程の管理などは行われていない。しかし、もしそうした製造過程に問題が生じたのであれば、それに対応した見直しを行うべきだとする声が出てくることは、当然であろう。

〔経団連が要望した機能性表示食品の制度解禁が実現し、ビジネス優先、安全性置き去りになったのではないかと問われ、]規制改革要望をまとめるにあたって、安全性を犠牲にしてビジネスを優先するという考えはない。新しい制度のもとで、問題が起これば、そこは速やかに見直すべきである。その問題が人の健康に関わることであれば、問題があった部分について、もう少し慎重に、厳しく管理すべきであるという声は出てくる。そうした声は傾聴すべきものだ。

以上

「会長コメント/スピーチ」はこちら