一般社団法人 日本経済団体連合会
【東海地域経済懇談会】
〔本日の懇談会の所感を問われ、〕大変有意義な懇談であった。懇談の中で、中経連からは、「中部圏ビジョン2050」について紹介があった。ビジョンの中では、経済、心身、生活、環境という四つの豊かさのバランスある実現、人口減少などこれに向け解決すべき10の切り口(課題)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)など課題解決に向けた五つのカギが示されており、いずれも大変重要な指摘である。ビジョンの実現に向け、様々な分野で広域連携が進むことを期待している。
また、東海商工会議所連合会からは、中小企業の生産性向上やインバウンドの推進などについて話があった。東海地域には、日本が誇るものづくりの技術、豊富な観光資源などがある。こうした特長をさらに磨き上げ、ご当地をさらに活性化していってほしい。
経団連としては、地域が抱える課題の解決や地元の魅力を高めていく主体的な取り組みを後押ししていきたい。
【東海経済】
〔東海地域の経済について問われ、〕東海地域は日本のものづくりの一大拠点であり、とりわけ自動車等の輸送機器という裾野の広い産業を有する点が特徴である。同産業は、GXやDXといった大きな課題に直面しているが、ぜひ乗り越えてほしい。東海地域においては、30年間のデフレ時代に染みついた行動様式からの脱却を果たし、イノベーティブな活動を進められることを期待する。
また、東海地域は昇龍道や伊勢・志摩など、観光資源にも恵まれている。日本を元気にする地域であってほしい。
【春季労使交渉】
〔今年の春季労使交渉における中小企業の賃金引上げ、および東海地域の企業に対する期待を問われ、〕経団連は、賃金引上げの力強いモメンタムについて、2023年を「起点」の年、2024年を「加速」の年と位置付け、2025年をその「定着」の年とすべく取り組んでいる。特に、今年の春季労使交渉では、働き手の約7割を占める中小企業の社員や、4割近くに上る有期雇用等労働者の賃金引上げがカギを握っている。大企業と中小企業だけでなく、中小企業と中小企業、中小企業と消費者との取引も含め、労務費を含む適切な価格転嫁が重要という認識や、「良い製品・良いサービスには相応の値が付く」ことをソーシャルノルム(社会的規範)として浸透させるべく、運動を展開している。
ものづくりの一大拠点である東海地域には、中小企業も多く存在する。わが国の価格転嫁の特徴が凝縮された地域であり、ぜひ日本を元気づけてほしい。東海地域の取り組みを大変楽しみにしている。
【日産・ホンダ経営統合】
〔日産自動車と本田技研工業の経営統合に向けた協議が打ち切りとなったとの報道について問われ、〕個別の案件についての詳細なコメントは差し控えるが、世界をリードする日本の自動車業界の販売台数第2位の企業と第3位の企業による経営統合の話は、総じていえば良い方向であったと思う。
企業の経営統合は、私自身も経験があるが、価値観や企業文化、企業価値、合併方式、そして統合比率などの壁があり、難しい。ただし、(経営統合は困難だったかもしれないが)一連の協議の中で、両社間で色々なアイデアが出てきたであろう。両社にとって良い方法があれば、個別の分野で協業するとよいのではないか。
【日米首脳会談】
〔日米首脳会談(7日)への期待を問われ、〕わが国にとって、米国は唯一の同盟国であり、自由・民主主義・法の支配などの基本的な価値観を共有するパートナーである。日米首脳会談は、この関係性を維持・強化するための絶好の機会である。
また、日本の米国への直接投資残高は世界1位、雇用創出も世界2位と多大な貢献をしている。石破総理には、日本と米国は経済的にも重要なパートナーであるということを発信していただきたい。
加えて、日米両国が、世界、とりわけアジアの安定に向けて取り組みを進め、国際社会において共にリーダーシップを発揮することも重要である、という点もぜひ訴えていただきたい。
【トランプ関税】
〔米国によるメキシコ、カナダへの関税発動の延期、および中国への追加関税について問われ、〕一つの国が関税を引き上げれば、必ず対抗措置がなされ、自由貿易が停滞していく。世界経済全体にとっては決してプラスにならないだろう。一般論として、関税については、ルールを踏まえて決定する権限が各国にあるが、米国には自由で開かれた国際秩序を維持・強化すべく、世界を牽引するリーダーであってほしい。
カナダとメキシコへの関税発動の1カ月間の延期が発表されたことは、歓迎すべきである。その間、冷静な話し合いがされることを期待したい。中国への追加関税の発動については、中国からも報復措置が発表された。大国間での関税の掛け合いや輸出規制の厳格化は、自由な貿易を縮小させ、世界の先行きをより不透明にするものであり、好ましくないだろう。