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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見(5/7)における十倉会長発言要旨

2025年5月7
一般社団法人 日本経済団体連合会

【FUTURE DESIGN 2040】

 昨年12月に公表した「FUTURE DESIGN 2040」について、文章化し、より詳細に記述したうえで書籍として出版することとした。5月10日から書店に並ぶ予定であり、皆さまにはこの機会に是非改めてご一読いただきたい。

書籍にしたのは、より多くの皆さまにわれわれの問題提起をお届けしたいとの思いからである。幅広い周知にお力添えをいただきたい。

この「FUTURE DESIGN 2040」の書籍の出版を契機に、中長期視点での国のあり方について議論がさらに深まることを期待している。

【トランプ関税】

〔赤澤大臣が参加した日米の関税協議の第2回会合について問われ、〕「一致点を見出せる状況にはない」と石破総理は言われており、2回目の交渉を終えた時点で、米国側の意向は必ずしも日本側の考えと一致していないということであろう。

合意を急ぐあまり易きに流れないよう、品目別関税を含む全ての関税措置が見直されるよう、引き続き粘り強く協議を続けることが重要である。

他方、高関税措置の影響が既に出ている現状にあっては、精力的な協議を通じて可能な限り早期の関税撤廃を目指す努力も必要である。

その意味で、総理や赤澤大臣も「ゆっくり急ぐ」と表現しておられるが、腰を据えた対応、腹のすわった対応という意味で「じっくり急ぐ」というスタンスでぜひ取り組んでほしい。

〔今後の交渉のスケジュール感について問われ、〕6月中旬のG7サミットで日米首脳会談が実現する可能性はあるが、スケジュールの詳細はわからない。事務レベルの協議が開始されており、日程感も次第に詰まってくるだろう。

米国側は朝令暮改的な面もあるため、急いてはことを仕損じるようなことのないよう、基本的スタンスを固めて交渉に臨み、期限ありきで妥協されないことを期待する。

基本的スタンスという意味では、日本は資源を持たない島国であることから、「貿易・投資立国」の実現が不可欠であり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けてリーダーシップを発揮すべきである。そのためには、CPTPP等の枠組みも活用した、EPA・FTAのネットワーク拡大を急ぐ必要がある。

〔トランプ大統領が海外で制作された映画に対し100%の関税を課す方針を明らかにしたことについて問われ、〕交渉事における武器として関税を課す対象が多岐にわたりすぎるという印象をもっている。そもそも米国は、比較優位の原則に基づく自由貿易体制の中で、IT・デジタル産業等を中心に大きく成長してきた国である。にもかかわらず、製造業等、比較優位上伸び悩んだ産業を過度な関税で保護する政策を打ってきていることは、理解に苦しむ。

とりわけ、コンテンツは文化であり、自国民が諸外国の作品に触れる機会を奪うような政策は好ましくない。

〔トランプ関税の影響や世界経済の減速見通しを踏まえ、今次決算で慎重な業績見通しを発表する企業が相次いでいることについて問われ、〕トランプ関税の直接的な影響というよりも、先行きが不透明であることによって、消費や投資が低調になるという間接的な影響を懸念する企業が多いであろう。ただし、そうした影響を数値化することは難しいため、発表する業績見通しに織り込んでいる企業は少ないのではないか。もっとも、自動車等の品目別関税の直接的な影響を受ける業界においては、一定程度、影響を織り込んで業績見通しを発表する企業があるだろう。

【米国の反DEI政策】

〔トランプ大統領の就任後、米国で反DEIの潮流が顕著であることについて、サステイナブルな資本主義を掲げる経団連としての見解を問われ、〕経団連がサステイナブルな資本主義を掲げた趣旨は、行き過ぎた市場原理主義が、格差の拡大・固定化・再生産を生み出してきた現状を変えるべきだと考えたからである。そうした考えのもと、公正・公平な社会、分厚い中間層を復活させ、成長と分配の好循環を生み出そうとしてきた。

その中で、DEIを推進する理由は、女性や外国人をはじめ、さまざまな主体の人権を尊重し、多様な価値観をまさに万機公論に決するようにぶつけ合い、包摂することで、大量生産・大量消費の資本主義では生み出せなかったイノベーティブな付加価値を生みだすことにある。

トランプ大統領の掲げる反DEIは、必ずしもジェンダーを念頭においたものではないと認識しているが、ジェンダーギャップでも世界から大きく遅れをとる日本としては、DEIの取り組みを加速していくことが肝要である。

なお、トランプ政権下で反DEI施策が打ち出されても、8割弱の米国企業がDEIを推進する方針に変わりがないと回答しているとの調査結果もあり、反DEIが大きなトレンドになることはないのではないか。

【有価証券報告書の株主総会前開示】

〔有価証券報告書の株主総会前開示に対する考えを問われ、〕有価証券報告書を株主総会の前日ないし数日前に出すこと自体は、対応可能な企業もあろう。他方、今後非財務情報も含め有価証券報告書のボリュームが大幅に増える中で、さらにそれを株主総会前に投資家が確認できるよう十分に配慮する形で大幅に前倒して開示できる企業はそう多くないだろう。今般の加藤金融相の要請趣旨に沿って開示の前倒しを進めるのであれば、会社法と金融商品取引法の見直しも含め、企業が実務上対応可能な開示方法、内容の検討が必要であり、今後議論が加速していくのではないか。

【阪急・阪神HD角和夫前会長ご逝去】

角氏とは仕事以外で何度かお会いしたが、非常に人格・識見の高い方だという印象であった。晩年、運営する宝塚歌劇団のハラスメントの問題で大変悩んでおられたと聞いていた。心よりお悔み申し上げたい。

以上

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