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Policy(提言・報告書) 環境、エネルギー 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣試案)
に対する意見

2010年6月30日
(社)日本経済団体連合会

1.検討の視点

世界経済の持続可能な発展を実現する上で、気候変動問題の克服は避けて通れない課題である。わが国産業界は、優れた環境・エネルギー技術を活かし、地球規模での低炭素型社会の構築に主体的に貢献してきており、今後も貢献していく所存である。また、実効ある温暖化対策については、政府に積極的に協力していきたい。
地球規模の低炭素社会の構築のためには、短中期的には、既存の最先端技術を最大限普及させることが重要であり、長期的には革新的な技術開発に取り組んでいくことが必要である。そこで、地球温暖化対策に係る中長期ロードマップには、技術の担い手なる企業の貢献を後押しするような政策が盛り込まれることを求めたい。
こうした観点から、中長期ロードマップの検討にあたっては、「実現可能性」、「国民負担レベルの妥当性」、「国際的公平性」を確保することが重要である。

(1) 実現可能性の確保

実現可能性の確保ができない中長期ロードマップを策定した結果、結局目標を達成できないこととなれば、生産活動や雇用などの経済活動を縮小したり、海外からのクレジットの購入を余儀なくされる。その結果、革新的技術の開発普及に支障をきたしたり、生産拠点の海外移転(炭素リーケージ)、国内雇用の減少といった経済への悪影響が生じることとなる。

(2) 国民負担レベルの妥当性の確保

温暖化対策の費用の最終的な負担者は、国民や企業である。さまざまな政策課題がある中で、温暖化対策にどの程度資源を配分することが適切なのかを議論する必要がある。その結果として、国民負担レベルについて十分な分析と情報開示を行い、その妥当性については、国民的議論を経て決定する必要がある。

(3) 国際的公平性の確保

欧米等に比べ過大な限界削減費用の負担を強いられれば、わが国経済の活力が奪われ、結果として、革新的技術の開発普及活動といった企業活動に支障をきたすだけでなく、雇用や財政、地域経済、企業の競争力に悪影響が及ぶこととなる。

(4) 他の政策とのバランスの確保

温暖化対策は、成長戦略、エネルギー安全保障、行政刷新といった他の政策のバランスが取れたものである必要がある。

2.検討プロセス

上記を確保するため、中長期ロードマップでは、対策・施策の内容や、その対策・施策による国民生活への影響に関する科学的・合理的な分析を十分提供するとともに、その検討過程では、削減技術に関する情報を有する、あるいは実際に削減を行う企業や国民の意見を十分聴く必要がある。
産業界は、産業部門の削減対策の情報を十分提供し、実効あるロードマップの策定に貢献する用意がある。そこで、個別の削減対策について、業種別に政府全体で意見を聴く機会を設けていただきたい。
さらに、経済社会への影響にかかる経済モデルについては、(1)専門的な知見が必要であること、(2)専門家の間でも前提条件や計算モデルの考え方において意見が著しく分かれていること、(3)モデルに関するデータの開示が十分行われていないこと、(4)昨年開催された政府のタスクフォースにおける検討との整合性・継続性が取れていないこと、等から、データ等の情報を検証し易い形で十分に開示したうえで、タスクフォースの参加者も含め専門家・機関によるレビューを行うべきである。
また、政府全体として、経済社会への影響に責任を持って検討する場を設けるべきである。

3.個別論点に関する意見

上記の観点を踏まえ、中長期ロードマップ(環境大臣試案)に対する意見は以下の通りである。

(1) 排出量取引制度、地球温暖化対策税、固定価格買取制度

これらについては、生産拠点の海外移転を通じた炭素リーケージの招来や、技術開発の停滞、国際競争力や雇用への悪影響、過度な国民負担、エネルギー安全保障への悪影響等が懸念され、極めて慎重な検討が必要である。特に、これらの政策全体としての影響を分析したうえでの検討が不可欠である。

(2) 個々の政策

個々の政策の実現可能性等については、当会会員から、別添のような質問・疑問が寄せられており、検討過程では、これらについて答えるとともに、それに基づき議論を尽くすべきである。

(3) 経済モデル

また、試案にある経済社会への影響についても、当会会員から、別添のような質問・疑問が寄せられており、検討過程では、これらについて答えるとともに、それに基づき議論を尽くすべきである。

以上

(別添)

「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣試案)」
に対して会員より寄せられた意見

[日々の暮らし]

  1. 試案では、太陽光発電が最大5,000万kW(住宅用太陽光発電が2020年までに最大2,440万kW(990万世帯)工場等で最大2,560万kW)導入されるとしている(試案90頁(なお、試案5頁では1000万世帯とされている)、91頁)。しかし、以下の点から過大な見積もりなのではないか。具体的にどのような政策により導入を図ろうとしているのか。

    1. (1) 現在すでに太陽光を導入している世帯が33万世帯である中(試案90頁、なおエネ研3頁では30万世帯)、2020年に990万世帯に普及させるためには、来年(2011年)からの10年間の平均で、年間95.7万台づつ普及させていく必要がある。しかし、余剰電力買取制度の下でも、現在の導入ペースは年間15万台に過ぎない。
    2. (2) 耐震基準や設置場所等を勘案すれば、住宅への太陽光パネル等の導入は、約1,000万戸が限度とされる。こうした中、太陽光990万戸に加え、太陽熱温水器も750万台〜1,000万台の導入が見込まれており(試案参考資料24頁、25頁)、ひとつの世帯に太陽光パネルも太陽熱温水器も設置する必要がでてくる。
    3. (3) 全量買取プロジェクトチーム(経産省)で提示された試算では、導入量3,700万kWの場合ですら、一人当たりの負担額は、系統安定化対策費用も含め、約15,000〜30,000円とされている。試案では、再生可能エネルギーの中でも相対的にコストが高い太陽光だけで、最大5,000万kWの導入量を想定しており、受け入れ可能な額か疑問がある(そもそも、いくらの負担を想定しているのか)。
    4. (4) 試算では、工場等における太陽光発電導入量を最大2,560万kWとしているが(試案参考資料33頁)、経済合理性を追求する企業が相対的にコストが高い太陽光発電を大量に導入するとは考えにくい。
  2. 試案では、高効率給湯器が2020年までに最大4,100万台導入されるとしている(試案6頁)。しかし、現在すでに普及している高効率給湯器が約480万台、給湯器の年間販売台数が約300万台強であり、販売される給湯器が強制措置により来年からすべて高効率となったとしても、2020年に4100万台には達せず、過大な見積もりなのではないか。使用に支障の無い機器を強制的に買い替えさせる措置を想定しているのか。

  3. 試案では、2020年までに、次世代基準(H11年度基準)以上の基準を満たす省エネ住宅の割合を新築で100%、既築で30%としている(試案90、91頁、試案参考資料26〜29頁)。しかし、以下の点から過大な見積もりなのではないか。具体的にどのような政策により導入を図ろうとしているのか。

    1. (1) 次世代基準(H11年基準)を満たす住宅の割合は新築の1〜2割にすぎず、これが10割に上昇するとは考えにくい。
    2. (2) 供給能力に関し、断熱構造化のためには、高い施工技術や管理能力が必要であり、施工業者はもちろん設計事務所などを含めた技術力の向上が必要であるが、特に中小事業者の対応が遅れている。ロードマップに示されたペースで供給することは困難ではないか。
    3. (3) 次世代基準を満たす住宅では坪3〜4万円の追加の初期投資費用が発生することから、次世代基準を満たす住宅の普及は困難ではないか。光熱費にかかるランニングコストが減少するため、トータルでは初期投資の回収が可能ということかもしれないが、個人の体感、生活のスタイル、家族状況、地域の気候条件等により、光熱費の負担が必ずしも減少しない場合がある。例えば、同じ基準を満足した住宅でも、湿度の高い地域では除湿に多くのエネルギーを使うので光熱費が逆に増加する場合も想定される。こうした場合も踏まえ試算を行うべきではないか。
  4. 試案では、2020年の新車販売に占める次世代自動車の割合を50%としている(試算5頁)。しかし、日本自動車工業会は10%+αとしており、大きなかい離がある。50%の試算の根拠を開示すべきである。

  5. 試案では、鉄道車両のエネルギー効率を2005年比最大10%向上させるとし、その手段として、可変電圧可変周波数(VVVF制御)・回生ブレーキ等を備えた省エネ型車両の導入をあげている(試案8頁)。しかし、例えば、回生ブレーキを備えた車両は近くに車両がなければ機能せず、地方の鉄道会社では、困難ではないか。エネルギー効率10%向上の試算の根拠は何か。

  6. 試案では、航空機のエネルギー効率を2005年比最大24%向上させるとし、その手段として、低燃費機の開発・普及、バイオ燃料への転換、効率的な運航システム、地上動力装置の活用を挙げている(試案8頁)。しかし、こうした対策は、すでに進んでおり、さらに大きなエネルギー効率の改善は2020年段階では難しいものと思われるが、ロードマップでの2020年にエネルギー効率24%向上の試算の根拠は何か。

  7. 試案では、船舶のエネルギー効率を2005年比最大25%向上させるとしている(試案8頁)。しかし、省エネ型船舶の導入費用は高い一方、海運業界は中小企業が多く、多額の費用を負担できるところは少ないと考えられる。「エコシップ促進税制等」(試案8頁、54頁)、「低炭素船の導入等に向けた各社の取組を後押しするような仕組み」(試案56頁)が示唆されているが、具体的にどのような支援(制度、規模)を想定しているのか。

  8. 試案では、業務部門の削減について、90年比真水15%削減のケースですら、2000年比21%の削減となっており(試案参考資料54頁)、東京都の排出量取引制度の対象を、中小規模事業所に拡大し、かつ、全国的に実施した場合の想定よりも削減率が大きくなっている (東京都は2015年度以降平均基準年度比17%削減)が、どのように実現するのか。

  9. 試案では、2020年段階で、公共交通分担率を現状の2倍とし、旅客一人当たりの自動車走行量を1割減少させることとしている(試案65頁)。そのための施策の一部として、LRT(路面電車)や自転車道の整備については2030年で、それぞれ1500km、5万kmの敷設を想定している。しかし、LRT(路面電車)や自転車道の整備等で路面電車や自転車道の整備などは都市設計自身から見直す必要があり、膨大な費用もかかる。短期間での実現は困難と考える。2020年での敷設距離はどの程度を想定しているのか。また、これらの道路整備ができたとしても、実際にどれだけ利用されるかは明確でなく、自動車交通需要の1割以上削減効果についても実現可能性に疑問があり、実際にどのように実現するのか。

[ものづくり]

  1. 試案では、太陽光発電や次世代自動車の急激な普及が見込まれている(試案6頁、7頁)。しかし、その生産(材料の生産も含む)段階において、排出量が増えることが見込まれる。この点は、試案においてどのように盛り込まれているのか。

  2. 試案では、ものづくりにおいて、「有価証券報告書等を通じた環境関連情報の開示」が謳われている(試案9頁)。有価証券報告書は国内外の企業グループ全体での連結ベースで行われており、海外において全ての国の電力排出係数等必要なデータを毎年取得できる保証がなく、国内においても公表のタイミングにより前年度の電力排出係数を適用せざるを得ない。したがって、十分に信頼のおけるデータの開示とはならないが、この点について、どのように考えるのか。

  3. 試案では、ものづくりにおいて、「企業・製品のLCA評価も加えた排出量・削減効果の算定・報告・公表」の導入が示されている(試案59頁)。具体的にどのような仕組みを想定しているのか。

  4. 試案では、ものづくりにおいて、削減のための技術を例示している(試案9頁)が、網羅的ではない。削減の試算の際に想定している技術を全て列挙してほしい。

  5. 試案では、横断的な措置として、キャップ・アンド・トレード方式の国内排出量取引制度の導入が明記されている(試案13頁)。削減のための技術が全て導入されれば、国内排出量取引制度は不要と結論付けるのが合理的と考えるが、そのように考えてよいか。

[「エコ社会」地域づくり]

  1. 試案では、真水での25%削減を行う場合の投資額を100兆円としているが、これには、地域づくりに関する費用が含まれていない(試案20頁)。「エコ社会」地域づくり(試案10頁)に必要な費用はどのような根拠でいくらぐらいの金額を見積もっているのか。

[ゼロカーボンエネルギー]

  1. 試案では、2020年時点の電力CO2排出係数が示されていない。具体的な係数と根拠、計算式を明示していただきたい。

  2. 試案では、工場、公共施設等大型建築物への太陽光発電の導入量を2020年までに2,560万kWとしているが(試案参考資料33頁)、設置場所が課題であると考える。耐震性や景観の確保の観点も踏まえた試算なのか。具体的な試算の根拠を開示してほしい。

  3. 試案では、風力発電の導入量を2020年までに最大1,131万kWとしている(試案95頁)。しかし、以下の点から、過大な見積もりではないか。具体的にどのように実現しようとしているのか。

    1. (1) 風力発電のわが国の陸上での建設ポテンシャルは、640万kWであり、1,131万kWを導入するためには、自然公園や洋上での立地が必要となる。
    2. (2) 上記の建設可能な陸上の土地においても、景観、騒音、環境アセスメントの対象化といった問題がある。住民の合意が必要であり、全ての土地に建設ができるかは不明である。
    3. (3) 洋上建設についても、漁業権との調整が必要であり、調整後立地できない場合もある。立地できたとしても、調整のために膨大な費用が必要であり、この費用は設置コストとして加味されているのか。
    4. (4) 上記の通り、立地制約が大きいので、立地が可能だとしても、諸外国と比較してコスト高となることが想定されるが、当該コストを固定価格買取制度を通じて国民が負担できると想定しているのか。
  4. 洋上風力のコストは、対策に必要とされるコスト(99.8兆円)に含まれているのか。

  5. 試案では、地熱発電の導入量を2020年までに最大171万kWとしている(試案12頁)。しかし、150℃以上の熱水資源量の80%強が国立公園特別地域などに指定されている上に、その他の地域でも温泉地等の観光地の場合もあり、設置が困難と思われるが、具体的にどのような場所に設置することを想定しているのか。
    また、設置にかかる時間も環境アセスメント等の調査から実際の操業運転まで10年かかるといわれている。現在54万kWの状況で2020年までに倍近い追加導入量(117万kW)を達成するのは時間的に難しいのではないか。

  6. 試案では、中小水力発電の導入量を2020年までに最大600万kWとしている(試案)が、経済的に見合う場所は既に立地されており、開発ポテンシャルとしては限定的になるのではないか。また、送電設備を含めて経済的に見合うところは少ないと思われる。
    さらに、設置場所が山間部のより奥地に進むとすれば、それに伴う新たな自然環境・生物多様性への影響の発生が懸念される。小型化を進めたとしても、発電電力を達成するために設置台数の増加が必要となり、結局、景観を含めた自然環境・生物多様性への影響も懸念される。具体的にどのような場所に、どのような方法で設置することを想定しているのか。

[その他]

  1. 「地球温暖化問題に関する閣僚委員会 タスクフォース会合」の国環研日本技術モデルでは、真水の削減は20%が限界とされていた。今回のロードマップでは真水で25%削減が可能となっているが、その要因は何か(試案参考資料7頁、8頁)。

  2. 試案では、「世帯グループの実情に合わせた対策案」が示されている(試案22〜25頁)。これには1世帯を想定した補助金・減税が盛り込まれているが、2020年までに、全世帯に対して、どの程度の財政支出が見込まれるのか。
    また、試案20頁の「温暖化対策を実施するための追加投資額」の総計99.8兆円には、上記の財政支出が含まれているのか。

  3. 2020年に25%削減に向けた対策の遂行は、事業活動や国民各層ごとに異なる度合いでプラス・マイナス双方の影響を与えるはずだが、事業活動や国民各層の生活におけるプラス・マイナス双方の影響を示していただき、実際の削減に対する負担金額がいくらになるのかを示していただきたい。

[経済モデル]

  1. 伴教授モデル

    1. (1) 伴教授のモデルでは、促進モデルの場合には25%削減目標が実際に課される頃からGDPが減退していく結果になっている。この減退は何が要因で生じると考察しているのか。
      また、「後半期間を経過すると、規制強化の負の影響が経済に現れる」としているが(伴教授モデル24頁)、2020年以降のGDP成長をどのように試算されているのか。
    2. (2) 伴教授のモデルでは、エネルギー起源CO2ベースで、90年比21%の削減に過ぎず、また、エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスの状況が示されていない。これが、「2020年(温室効果ガス)▲25%削減に伴う社会・経済への効果・影響」として紹介されている(試案26頁以降)のはなぜか。また、エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスの状況はどうなっているのか(伴教授モデル11頁、試案26〜35頁)。
    3. (3) 伴教授のモデルにおける「労働技術進歩率」とはどのような概念か。この「労働技術進歩率」にコストはかからないのか。
    4. (4) 伴教授のモデルでは、AEEI(Autonomous Energy Efficiency Improvement:コストのかからないエネルギー効率の改善)が年率2.5%とされているが、楽観的に過ぎるように思われる。年率2.5%改善の根拠は何か。
    5. (5) 伴教授のモデルでは、なりゆきケースが、ベースラインケースに対して資料(伴教授モデル)に表れている 変更点(設置費用低減(年率5%)、設置領域拡大(年率20%)、限界削減費用の負荷(5.6万円)(伴教授モデル9頁))のみであり、限界削減費用5.6万円を課すにも関わらず、GDPが-0.4%となるに過ぎない(伴教授モデル11頁、12頁)結果となっている。タスクフォースの結果と比較して、楽観的な結果に思われるが、なぜこのような結果になるのか。
      また、そもそも設置費用、設置領域(伴教授モデル9頁)とは何か。新エネルギーの設置費用、設置領域と理解してよいか。
    6. (6) 伴教授のモデルでは、なりゆきケースやイノベーション促進ケースにおいて、5〜6万円の限界削減費用を課すにも関わらず(伴教授モデル11頁)、電力料金が10%程度しか上昇していない(伴教授モデル17頁)。タスクフォースでの検討における各モデルにおいては、25%削減の場合には、電力料金がほぼ倍になっていたことを鑑みれば、上昇の度合いが少ないように思われるが、なぜこのような結果になるのか。
    7. (7) 伴教授のモデルでは、なりゆきケースにおいて全量買取制度がない一方、イノベーション促進ケースにおいてそれが導入されていることとされている(伴教授モデル9頁)。しかし、電力料金については、なりゆきケースが10.2%上昇(対ベースラインケース)なのに対し、イノベーション促進ケースが10.7%の上昇(同)となっており、全量買取制度の導入による電力料金への影響が0.5%の価格上昇にとどまっている(伴教授モデル17頁)。これはなぜか。
      なお、電力料金に影響すると想定される新エネルギーの導入量は、1347億kWhとなっているが、どちらのケースかは明示されていない。 (伴教授モデル22頁)。
    8. (8) 伴教授のモデルにおいて、新エネルギーの導入量が、なりゆきケース(全量買取制度なし)でもイノベーション促進ケース(全量買取制度有り)でも変わらないのはなぜか(伴教授モデル22頁)。
    9. (9) 伴教授のモデルでは、なりゆきケースからイノベーション促進ケースへの変更点は、設置費用の低減(年率8%)、設置場所拡大(年率32.5%)、全量固定価格買取制度実施、中間投入の追加増(年率0.5%)、家計支出の追加増(年率1%)、限界削減費用(5.2万円)(カッコ内はベースラインケースからの変更分と思われる)と思われるが(伴教授モデル9頁)、これらのどの要素が、イノベーションの促進につながっているのか不明である。また、どのようにしてイノベーションの促進は生じているのか。そのためのコストをどの程度見込んでいるのか。
    10. (10) 伴教授のモデルでは、(新エネルギーの)設置費用が、なりゆきケースで年率5%低減、イノベーション促進ケースで年率8%低減とされている(伴教授モデル9頁)。しかし、以下の点を踏まえれば、現実的とは言えないのではないか。各電源の設置費用はどうなっているのか。
      1. 風力発電や地熱発電は、設置費用が安いところから設置が進むため、設置費用はむしろ逓増していくことが予想される。
      2. 太陽光発電においても、急激な拡大が起これば、シリコン価格の上昇が生じ、設置費用が増加することも考えられる。
    11. (11) 伴教授のモデルでは、なりゆきケースからイノベーション促進ケースへの変更点は、設置費用の低減(年率8%)、設置場所拡大(年率32.5%)、全量固定価格買取制度実施、中間投入の追加増(年率0.5%)、家計支出の追加増(年率1%)、限界削減費用(5.2万円)(カッコ内はベースラインケースからの変更分と思われる)と思われ(伴教授モデル9頁)、新エネルギーの増加を想定することによって、新エネルギー設備供給のための生産が増加し、その結果GDPの増加が生じていると考えられる。しかし、新エネルギー設備の供給がすべて国産により賄われるとは限らず、むしろ海外からの輸入により賄われることも考えられる。輸入はどの程度考慮されているのか。
    12. (12) 伴教授のモデルでは、「投資の増加は、資本を増加させ、経済を拡大させる。2020年の資本は、基準ケース(ベースラインケースのことか?)と比較して33兆円増加」とある(伴教授モデル23頁)。省エネ投資がすべて生産能力拡大につながるようなモデルになっていると考えてよいのか。省エネ投資は、エネルギー投入コストを低減にはつながるものの、生産能力の増強にはならないことが多いことから、省エネ投資がすべて生産能力拡大につながるようなモデルは適切とは言えないのではないか。
    13. (13) 伴教授のモデルでは、90年比25%削減により、鉄鋼業や非鉄金属・金属製品製造業の雇用が7〜8%増加するとされているが(小沢環境大臣の国会答弁)、なぜそのような結果が得られるのか教えてほしい。
    14. (14) 伴教授のモデルでは、削減によりGDPがプラスになるとしているが(伴教授モデル24頁)、どの程度の削減がもっともプラスになるのか。
  2. 藤川教授のモデル

    1. (1) 「分析結果・産業連関モデル(藤川教授のモデル)」では、温暖化対策によって2020年で45兆円の需要増があり、その内訳として、「エコ技術・エコ製品の日本からの輸出」を12兆円としている(試案32頁)。他方、「エコ技術・エコ製品の海外からの輸入」はいくらぐらいを想定しているのか。
    2. (2) 藤川教授のモデルでは、「新市場の創出の結果として、ある程度、従来型の産業が縮小することが考えられるが、本モデルではこのようなマイナスの影響を評価していない」としているが(試案32頁)、マイナスの影響を評価した場合には、どのような結果となるのか。
    3. (3) 藤川教授のモデルでは、国立環境研究所の日本技術モデルのデータをベースとしているが(藤川8頁、9頁)、「地球温暖化問題に関する閣僚委員会 タスクフォース会合」における国環研日本技術モデルでは、20%削減までしかできないとされており、25%削減可能とする国環研日本技術モデルは、他の専門家による検証が必要なのではないか。
    4. (4) 藤川教授のモデルでは、温暖化対策による生産波及により、温室効果ガスが2%増えるとされているが(藤川教授のモデル13頁)、それでもなお25%削減が可能ということか。
  3. 松橋教授のモデル

    1. (1) 松橋教授のモデルでは、「90年25%削減(うち、10%相当は海外クレジット)」の温暖化対策を実施した場合、「全ての所得階層において、所得(等価変分で計測)はなりゆきケースよりも向上」とあるが(試案32頁)、海外クレジット購入分を考慮しても同様の結果なのか。
    2. (2) 松橋教授のモデルでは、次世代自動車の普及、家電のエネルギー効率向上、太陽光の価格低下により、「全ての所得階層において、所得(等価変分で計測)はなりゆきケースよりも向上」としているが(試案31頁、松橋教授モデル7頁、16頁、18頁、19頁、22頁)、次世代自動車の普及等がなぜ起こるのか。炭素税の賦課によりこれらが生じるとすれば、炭素税の制度設計(税率、課税対象、税収等)をどのように想定しているのか。
  4. 日経センターモデル

    1. (1) 日経センターモデルについては、最大でも90年比9%の削減となっているが(試案34頁)、これが、「2020年(温室効果ガス)▲25%削減に伴う社会・経済への効果・影響」として紹介されている(試案26頁以降)のはなぜか。
以上

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