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Policy(提言・報告書) 都市住宅、地域活性化、観光 平成24年度住宅関連税制改正・予算等に関する要望

2011年7月19日
(社)日本経済団体連合会

東日本大震災は、被災地の住生活に大きな打撃を与えただけでなく、わが国全体の住宅をめぐる課題を改めて浮き彫りにした。甚大な被害をこうむった被災地域では、今後多くの住宅需要に応じていかなければならない。また、住宅の耐震性能向上はもちろん、電力供給問題を背景として、省エネ・創エネ・蓄エネ化も待ったなしの状況である。

住宅は人々の生活の基盤として心身を守るシェルターの役割を果たすとともに、街並みや地域コミュニティを形成する社会的資産である。新しい日本を創生し、活力と魅力あふれる社会の実現に向けて、良質な住宅の蓄積を進めていく必要がある。そのために、予算、税制、規制緩和等の各方面での効果的な支援策を間断なく講じていく必要がある。

また、被災地の復旧・復興のためにも、日本経済全体の活性化を進める施策が重要となる。住宅投資は内需の柱であり、住宅建設による経済効果に加え、入居に伴う耐久消費財の購入等を含め、経済や雇用に対する波及効果は極めて大きい。しかし、今年の後半から重要な税制・予算措置の多くが適用期限を迎えるほか、来年には住宅ローン減税の最大控除額がさらに縮小されることから、住宅市場の一層の冷え込みが懸念されている。

そこで、国民がライフステージやライフスタイルに応じた豊かで快適な住生活を享受するとともに、地球環境問題、少子化・高齢化、防災、安全・安心といった社会的課題を克服するために、社会インフラとしての良質な住宅ストックの形成と循環を実現できるよう、平成24年度税制改正及び今後の予算編成に対して以下要望する。

Ⅰ.平成24年度住宅関連税制改正

1.住宅購入者の資金調達の円滑化及び負担軽減

厳しさを増しつつある現下の経済情勢において、国民の住宅取得やリフォームに対する資金負担は依然として大変重い。1,400兆円の個人金融資産の半分を占める高齢者の金融資産を住宅投資に回し、世代間の所得移転を通じてより多くの国民が住宅を手に入れることができるよう、資金確保や住宅の取得・保有に係る負担軽減のための措置を講じる必要がある。

(1)新築住宅に係る固定資産税の減額措置の維持・恒久化

①新築された住宅に対する固定資産税の減額措置(一般住宅は当初3年間、中高層耐火住宅は当初5年間、120m2相当部分について1/2に減額)、及び、②新築された認定長期優良住宅に対する固定資産税の減額措置(一般住宅は当初5年間、中高層耐火住宅は当初7年間、120m2相当部分について1/2に減額)を維持・恒久化すべきである。

(2)住宅の取得に係る贈与税の非課税限度額及び相続時精算課税の特例維持・拡大

住宅取得等資金に係る贈与税の特例措置(非課税限度額を平成22年は1,500万円、平成23年は1,000万円とする)及び相続時精算課税の特例(贈与者の年齢制限を設けない)を維持・拡大すべきである。

(3)住宅及び土地の取得に対する不動産取得税の税率の特例延長

住宅及び土地の取得に対する不動産取得税の税率の特例措置(税率を3%とする)を延長すべきである。

(4)宅地評価土地の取得に対する不動産取得税の課税標準の特例延長

宅地評価土地の取得に対して課される不動産取得税の課税標準の特例措置(固定資産税評価額の1/2とする)を延長すべきである。

(5)住宅用土地に対する不動産取得税の特例措置の延長

住宅用土地に対する不動産取得税の軽減措置(住宅の床面積の2倍(200m2限度)相当額を減額)を受ける場合の土地取得から新築までの期間要件の特例措置(特例3年、100戸以上の共同住宅等でやむを得ない場合には4年)を延長すべきである。

(6)新築住宅のみなし取得時期に係る不動産取得税の特例延長

デベロッパー等に対する新築住宅のみなし取得時期の特例措置(1年以内)を延長すべきである。

(7)消費税の見直しを含む税制抜本改革への対応

現在、住宅の取得時において、土地、家屋に対して不動産取得税、登録免許税、印紙税、消費税など重層的な課税がなされており、このような諸課税の整理、簡素化が必要である。消費税の見直しを含む税制抜本改革にあたっては、住宅の購入に係る税負担が住宅市場の縮小を招かない配慮が必要である。

2.良質な住宅取得を促進する特例措置の延長

良質な住宅ストックの形成・循環に向けて、近年、わが国の住宅政策は質的充実への転換が進んでいるが、いまだ十分なレベルに達しているとは言えない。わが国全体の住宅の質の底上げに向けて、良質な住宅の新築、改修、住替え、建替え等の各方面からの政策支援を進める必要がある。

(1)長期優良住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除(投資型減税)の拡充・継続

高齢者の金融資産を長期優良住宅の建設につなげていくためには、自己資金も減税の対象となる投資型減税が不可欠である。長期優良住宅の新築等を行い、居住の用に供した場合には、標準的な性能強化費用相当額(1,000万円を上限)の10%相当額を、その年分の所得税額から控除する措置について、制度の使い勝手を改善した上で継続すべきである。

(2)認定長期優良住宅の保存登記等に係る税率の軽減延長

認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率を軽減する措置(不動産価額の0.1%とする)を延長すべきである。

(3)認定長期優良住宅に対する課税標準の特例延長

認定長期優良住宅に対する不動産取得税の課税標準の特例措置(1戸につき課税標準から1,300万円を控除)を延長すべきである。

(4)居住用財産の買替え特例及び譲渡損失の繰越控除等の延長

①居住用財産の買替えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(課税繰延べ)、②居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失に係る繰越控除(譲渡損失の損益通算及び3年繰越控除)、及び、③居住用財産の譲渡損失に係る繰越控除((住宅ローン残高-譲渡価額)を限度として譲渡損失の損益通算及び3年繰越控除)に係る措置を延長すべきである。

Ⅱ.住宅関連予算編成

1.住宅エコポイント制度の拡充・継続

住宅エコポイントは住宅購入者にとってメリットが分かりやすく、住宅市場の起爆剤として高い効果を発揮している。しかし、平成23年12月末までの延長が予定されていた同制度は、期限が短縮されて7月末までに建築着工・工事着手した新築・リフォームまでを対象とすることとされた。

低迷する住宅市場を着実に回復軌道に乗せるとともに、耐震性向上や電力供給不足に対応する省エネ性能等の向上という観点からも、質の高い住宅の普及を強力に進めるために、省エネ機器や電力の使用状況の見える化機器の導入支援や、BEMS#1、HEMS#2の導入をはじめとする建築物の省エネ化支援と併せて、内容の拡充を図った上で住宅エコポイント制度を継続すべきである。

2.住宅ローンの金利引下げ幅拡大の延長

平成23年12月末まで延長されている優良住宅向けの住宅ローン「フラット35S」について、住宅エコポイントと同様に、住宅購入者の納税額に関係なく便益が得られ、低迷する住宅市場の下支えに大きな効果を発揮していると考えられることから、同措置のさらなる延長が不可欠である。

以上

  1. Building Energy Management System : ビル・エネルギー管理システム。IT技術等の活用により、空調・照明等の最適運転を実現する等、ビルのエネルギー消費の管理を支援するシステム。
  2. Home Energy Management System : 家庭用エネルギー管理システム。IT技術等の活用により、家電機器等の最適運転を実現する等、家庭のエネルギー消費の管理を支援するシステム。

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