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Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 日米インターネット・エコノミー民間会合 共同声明

2012年3月21日
(社)日本経済団体連合会
在日米国商工会議所

日本経済団体連合会、在日米国商工会議所は、日米情報通信政策当局によるインターネット・エコノミーに関する政策協力対話の開催に併せて、2012年3月21日、東京の経団連会館において民間対話を開催した。日米の産業界代表者は、インターネットが内外の経済活動に果たす役割の重要性を認識し、今後の一層の発展のために以下の通り共同声明を取りまとめた。英文版はこちら

1.インターネットに係る政策調和の必要性

インターネットを通じた自由でグローバルな情報流通は、世界経済の発展や人々の生活の質の向上に不可欠であり、その推進に向けた政策にはグローバルな調和が求められる。

我々は、日米政府が1月に取りまとめた「日米ICTサービス通商原則」や、OECDが2011年12月に公表した「インターネット政策決定に係る原則に関する提案」などの趣旨を踏まえ、多国間における政策調和の進展を期待する。さらに、我々は、日米政府がTPP交渉に積極的に参加し、インターネットを通じたサービス分野の貿易自由化・ルール作りに全力を尽くすことを期待する。

インターネットを通じたオープンで相互運用可能な形での情報流通は、中国、インドを含めたあらゆる国との間で、確保されるべきである。

EUでは、新たな個人データ保護規則が提案されており、域内におけるハーモナイゼーションが進むことが期待される一方で、より良いサービスの提供に影響を及ぼしかねないとの懸念もある。日米政府が協調して、国際的な整合性、実効性のあるルールが世界のあらゆる国で整備されることを期待する。

2.クラウド・コンピューティング・サービスの推進

利便性、コスト、耐災害性等に優れたクラウド・コンピューティング・サービスは、社会の発展に大きな貢献をしている。我々は、行政、医療、教育、交通、エネルギー、金融、防災等、あらゆる分野におけるクラウド・コンピューティング・サービスの活用・普及に向けて連携を深め、一層の情報共有やサービスの創出を進めていく。日米政府に対しては、クラウド・コンピューティング・サービスの積極的な活用を期待する。

我々は、日米政府が、クラウド・コンピューティング・サービスの利用を前提に、インターフェースや連携手続き等の国際標準化等を進めるとともに、ビッグデータの取扱い、知的財産権の保護、情報セキュリティの確保、データセンターの低消費電力化、サーバの設置場所、ネットワーク品質、プライバシーや消費者利益の保護などについて、国境を越えたクラウドサービスの利点を失うことのないよう、日米双方の産業界が活用できる国際的に調和のとれたルール整備を進めることを期待する。

3.サイバーセキュリティーの高度化

インターネットを経由し、国境を越えて高度化した組織的なサイバー犯罪が、企業活動に対する脅威となっている。被害規模も拡大傾向にある中、国毎の法制ないし取締りのみによってインターネット上の犯罪を防止することは困難である。インターネットの安全性の確保は、グローバルに拡大を続ける21世紀のネットワーク社会の根底を支えるものであり、これを脅かすサイバー攻撃に対しては、国際的な枠組みによって、実効性のある形で抑止力を強化する必要がある。

標的型サイバー攻撃をはじめとする様々な脅威に対し日米政府が連携を深めて対策を強化するとともに、官民が連携し、悪意のある組織や攻撃方法ならびに対応策のデータベース化などにより情報共有を図り、ネットワークセキュリティーの高度化を図っていくべきである。

4.公的部門におけるICT利活用の促進

電子行政、医療、教育、交通、エネルギー分野など、公的部門におけるICTの利活用は、社会の利便性や効率性の向上と経済発展に繋がる。官民がその必要性を共有し、連携を図りながら、公的部門におけるICT利活用の促進を図り、その成果を他の国々へも展開すべきである。公的部門のICT利活用は、社会全体の豊かさに繋がるよう、BPR#1BPO#2、ビッグデータの有効活用、オープンガバメントなどを同時に推進すべきである。

これらの推進にあたっては政府CIO#3の果たすべき役割が大きい。日米政府はベストプラクティスを共有しながら、政府CIOの機能を高めていくべきである。

我々は日本における番号制度の導入を歓迎するとともに、同時に検討されている法人番号について、国際的な経済取引の基盤となるよう、日米の連携を期待する。

5.震災への対応

日本の産業界は、東日本大震災における米国政府及び米国企業の迅速かつ多大な支援に感謝する。日本は、震災からの復興・街づくりに、ICTの利点を活かし、省庁、国・地方、官民の壁を越え、オールジャパンで取り組むことが重要である。今回の震災で得られた、ICTの課題と有用性については、日米両国のみならず、多国間で共有し、災害に強い情報通信ネットワークの構築や、安否確認等のアプリケーションの高度化、非常時の対応に活かしていくべきである。

6.IPv6の推進

世界的に利用可能なIPv4アドレス資源の縮減・偏在により、世界規模で円滑にIPv4からIPv6へ移行することが持続的なインターネットのイノベーションと経済の発展に不可欠となっている。2012年は、IPv6にとって記念となる年であり、6月には世界中で主要なインターネット企業が永続的なIPv6の提供を開始し、また米連邦政府機関は今年9月末までにすべての外向けサーバおよびサービスをIPv6対応させる予定である。

日米両国は既存のインフラを生かしつつ協力して、世界各国と歩調を合わせてIPv6展開を進める必要がある。

7.研究開発、人材育成、デジタル・リテラシー向上に関する協力

我々は、高齢化、エネルギー問題等の社会的な課題の解決のためのICTやインターネットの活用に向け、日米政府がITS#4、クラウドサービス、スマートグリッド等の研究開発に関し、国際的調和を踏まえながら協力することを期待する。

健全かつ安全なインターネット社会の形成を担うのは、人材である。我々は、日米政府が産業界・教育界と連携し、ICTの利活用を担う人材の育成に積極的に関わることを期待する。

インターネット上の有害情報に対しては、日米の関係者がフィルタリングなどの技術開発や普及に関する連携を深め、インターネットの開放性を損なわない対策を講ずるべきである。青少年がインターネットから完全に遮断されるのではなく、インターネットを賢く安全に使えるように教育されるよう、我々は、デジタル・リテラシー教育の普及や保護者によるコントロール機能の提供に引き続き注力していく。

日米産業界は、以上のテーマが進展するよう、より連携を深めるとともに、日米政府が具体的なアクションプランに基づき行動することを期待する。

以上

  1. Business Process Re-engineering:業務プロセス改革
  2. Business Process Outsourcing:業務外部委託
  3. Chief Information Officer:最高情報責任者
  4. Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム

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