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Policy(提言・報告書) 経済政策、財政・金融、社会保障 社会保障制度改革の推進に向けて

2013年10月15日
一般社団法人 日本経済団体連合会

2013年8月、政府は、社会保障制度改革国民会議の報告書を踏まえ、社会保障制度改革推進法(以下「推進法」という。)第4条の規定に基づく「法制上の措置」の骨子を閣議決定した。これに基づき、次期臨時国会では社会保障制度改革の工程表ともなる法律案が審議されることとなる。

そこで、税と社会保障、さらには財政を含めた一体改革実現の観点から、今後の検討に向けた経済界の考え方を下記により提示する。老若男女の別を問わず、すべての世代が互いに支え合い、安心して暮らせる経済社会の構築や、持続可能で成長と両立する社会保障制度の確立、さらには、社会保障分野における地域や民間の役割を高めるための環境整備が図られるよう、政府・与党の真摯な対応を望みたい。

1.着実な消費税率の引上げ

社会保障と税一体改革の趣旨に鑑み、2014年4月の消費税率8%のみならず、2015年10月に消費税率10%の既往方針を堅持する。

2.給付の重点化・効率化策の着実な実施

社会保障制度の持続可能性を高めるためには、給付の重点化・効率化は不可欠である。今後の個別施策の検討にあたっては、重点化・効率化策が着実に実施されるよう、結論を得るべきである(別紙参照)。併せて、制度横断的に改革の実を上げているか否かを定期的にしっかりと検証していく必要がある。

3.際限なき社会保険料負担増の抑制

現役世代の勤労者や企業が負担する社会保険料は賃金に対して課されるため、なし崩し的な負担の拡大は、賃金や雇用を抑制し、企業や個人の活力の発揮や経済成長を阻害する。社会保険料負担の増加に一定の歯止めをかけることが肝要であり、給付の重点化・効率化への取組みが十分でないまま、後期高齢者支援金への全面的な総報酬割並びに介護納付金への総報酬割の導入や、被用者保険、被用者年金における標準報酬月額の上限額の見直しを行うべきでなく、再考が必要である。

4.自助努力の積極的な奨励

自助努力を積極的に促す施策も必要である。例えば、推進法に盛り込まれた健康管理や疾病・介護予防などの自助努力を行うインセンティブを持てる仕組みの検討に加え、老後の所得確保のための私的年金の普及・拡大や、医療・介護ニーズへの備えに対する政策的な支援の拡充を図るべきである。

5.国民への分かりやすい説明

今回の改革にあたって、国は、現状との対比での給付や負担の変化、わが国財政や国民生活への影響などの定量的なデータを示し、分かりやすい情報発信に努めるべきである。また地方においても給付と負担の動向など、地域における社会保障の姿の定期的な発信に努めるべきである。

6.社会保障・税番号制度の利活用促進

負担能力に応じて負担する仕組みを構築するためには、番号制度の利活用により所得の捕捉を確実なものにする必要がある。併せて、データに基づく医療サービスの重点化・効率化を図るため、情報保護体制の構築や本人の了解を前提とした医療データの活用に向けた環境整備が急がれる。

以上

別紙

重点化・効率化の具体例

分野項目
医療 後発医薬品の使用促進
診療報酬・療養費の不正請求に関わる指導・監査の強化
70~74歳の患者負担の本則化(1割→2割)
医療保険の給付範囲の見直し(一部の高度医療の適用除外・保険免責制等)
医療の標準化、外来診療を含む診療報酬の包括払い化の推進
医療保険給付費の総額管理制度の検討
介護 軽度者の訪問介護給付から生活援助を除外
予防給付を再編し自治体独自の高齢者福祉事業で吸収
補足給付の除外(税で対応)
所得や要介護度に応じた負担率の設定
ケアプランの作成への利用者負担の導入
特別養護老人ホームの利用者限定(重度者・低所得者)
区分支給限度基準額の引き下げの検討
年金 マクロ経済スライドの見直し
(物価変動率がマイナスあるいは低い場合でも発動)
低年金者に対する福祉的給付の見直し(制度廃止も視野)
高所得者の年金受給額の適正化
子育て 児童手当の特例給付の廃止や所得限度額の見直しの検討
民間活力を活かした保育サービスの拡充
  1. 認可保育所の設置等において法人格による差を設けない
  2. 株式会社が設立した保育所への施設整備費や賃料の助成を拡充
「幼保連携型認定子ども園」への株式会社の参入を認める
以上

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