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Policy(提言・報告書) 税、会計、経済法制、金融制度 BEPS行動1(電子経済の課税上の課題への対処)に係わる公開討議草案に対する意見

2014年4月14日

OECD租税委員会御中

一般社団法人 日本経済団体連合会
税制委員会企画部会

BEPS行動1(電子経済の課税上の課題への対処)に係わる公開討議草案に対する意見

OECDが本年3月24日に公表した「公開討議草案 BEPS行動1:電子経済の課税上の課題への対処」に対し、以下の通り経団連の意見を提出する。

  1. OECDが指摘する通り、グローバル化やデジタル化が進展する中で、現行の国際課税制度が経済実態に追いついていない面があるのは事実であり、特に行動計画1の電子経済に対する課税については、BEPSの有無に係らず、ルールの明確化が期待されるところである。今回、行動計画1に関連して、情報通信技術や電子経済に関する背景をまとめたOECDの取り組みを評価する。

  2. 電子経済と従来の経済活動を区分するのは困難であり(パラ59)、よって、電子経済に対し、従来とは別の税の仕組みを作るべきではない(パラ205)、という結論を支持する。

  3. 1998年のオタワ会合にて示された課税フレームワークの5原則(中立性、効率性、簡素かつ予測可能性、公平かつ効果的、柔軟性)について触れているが、これらはセクションVIIで紹介されている幅広い課税問題に対するオプションを評価する上で、有用であり、これを基礎として検討すべきとの考え方(パラ204)を支持する。

  4. 一方、課税問題に対するオプションの殆ど(セクションVIIの3.1から3.4まで)が、上記2と3の考え方とは一致しておらず、しかも有用性に疑問があり、企業に過大な負担を強いるおそれがある。また、他の取引の取扱いにも影響が及ぶことが懸念される。

    3.1(PEから除外される範囲の見直し)、3.2(「Significant Digital Presence」に基づく新たなネクサスの創設)、3.3(仮想PEの創設)においてPEの概念を広げようとする提案については、極めて注意深い検討が必要である。これらにより、徒に源泉地国での課税が強化され、居住地国との間で「二重課税」が拡大するリスクがあると懸念する。電子経済におけるPEの在り方については、1998年以降、Business Profit TAGにおいて、詳細な検討が精力的に行われ、その結果としてモデル条約5条のコメンタリ-改訂が行われた経緯がある。また、PEに関しては、BEPS行動計画7において今後さらなる検討が加えられる(2015年9月期限)。このような状況を踏まえると、モデル条約5条の在り方や新たなPE概念を、電子経済に関する行動計画1の中だけで結論付けるべきではなく、行動計画1においては、あくまでも問題提起と論点の整理にとどめるべきである。

    3.4(電子取引に対する源泉徴収税の創設)についても、そもそも、電子取引を他の取引と区分するのは適切ではない以上、これのみに源泉徴収税を導入する必要は無く、かえって二重課税等の新たな歪みを生じるおそれがある。

    以上のことから、電子取引の課税について当面検討すべき課題は、所得税(Income Tax)ではなく付加価値税(VAT)であると考える。

  5. 付加価値税(VAT)については、企業のコンプライアンス・コストに十分配慮した措置が必要である。その上で、

    1. (1) B2C取引については、外国事業者を顧客の所在地国で登録させること、及びその負担を軽減する簡易な登録を考えるということについて支持する。併行して、公平性の観点から、外国事業者の確実な申告、納税捕捉率の向上等、適正な課税を実現するための国際的な仕組み作りを進める必要がある。

    2. (2) 「役務が提供された場所」及び「簡易な手続きとメカニズム」については、国際的に一致したルール作りが必要である。

  6. 他のBEPS行動計画の対策は電子経済にも適用可能と考えられる。

    国境を越えたサービス取引における消費課税の問題点はWP9にて議論されており、またPE定義については、行動計画7(2015年9月期限)にて議論される。行動計画2(ハイブリッド・ミスマッチ取決めの効果否認)、3(外国子会社合算税制の強化)、8(移転価格税制:無形資産)、12(タックス・プランニングの報告義務)等も適用可能と思われる。

  7. 国際課税ルールの変更については複雑な論点があり、この行動計画1の中で拙速に事を進めるべきではなく、他の分野での検討状況も踏まえながら、それらと整合的な形で取りまとめて行くことが適切である。但し、その際にも企業への影響や負担を考慮して慎重な検討を行うべきである。

以上

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