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Policy(提言・報告書) 経済連携、貿易投資 大阪からベトナムへ
―海外への挑戦
-経団連シンポジウム 「TPPを活かす」 パネルディスカッション第2部

井上 浩行 大裕鋼業 社長

国内需要減少に直面し海外進出を決意

当社は資本金1億円、従業員77人の大阪の企業である。大阪府堺と石川県に工場・事業所を持ち、コイルセンターにおいて鋼板加工を行い、配電盤設備、オフィス家具やエアコン等家電、建設機械等のメーカーに販売している。国内産業空洞化に伴う鋼材需要の減少を背景に、国内の鋼板加工量は過去15年で30%も減少している。こうした中、当社の製品やサービスが世界に通用するか試そうと、思い切って海外進出を決意した。日本の中小企業360万社の多くは海外との接点がないが、当社が成功すれば、多くの中小企業にとり、海外進出を考える励みにもなると考えた。

工場立ち上げ・顧客開拓への苦労

過去の視察の経験から、経済成長が著しく、勤勉で親日的、社交的なベトナムに進出を決めた。昭和30年代の大阪に共通する温かな雰囲気にも親しみを感じた。つてやノウハウはなかったが、2013年に中小企業基盤整備機構のFS(フィージビリティ・スタディ)支援事業に応募して助成を獲得、現地調査を実施し、手ごたえを得た。

現地の工場を買い取って改築し、2014年9月に初めて顧客に加工販売を行い、これまでに日系10社を含む32社の顧客を開拓し、あと一歩で黒字というところまできた。

日本の中小企業はもっと海外へ

実際に飛び込んでみて気づいたことは、日本の中小企業にとって想像以上のビジネスチャンスがあるということである。ベトナムでは日本企業が非常に尊敬され日本製品が高く評価されている。ベトナムの中小企業は多少品質が劣っても欧米や中南米に積極的に輸出している。日本の中小企業はもっと質の高い製品を作っているのに、低成長に直面した二代目、三代目には挑戦する気概があまり感じられない。ぜひ積極的に海外に出て行くべきである。

TPPは中小企業にフォローの風

TPP協定は当社にとってフォローの風である。人手が限られる中、困難も多く、現地の日本人責任者は落ち着くまで三人交代した。一方、日本では貿易担当部署を設置し、現地企業との取引や、日本の中古設備の海外での再利用を進めるなど戦略的に取り組み、国内の新規設備投資もできるようになった。

ベトナムでは今、TPPを受けて縫製工場、紡績工場の進出が進んでいる。日本だけでなく香港、シンガポール、韓国、台湾などからも来ている。6月には初の高炉メーカーの生産開始も予定されている。こうした機運にのり、着実に事業を展開していきたい。

以上

経団連シンポジウム 「TPPを活かす」 開催概要

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