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Policy(提言・報告書) 環境、エネルギー 廃棄物処理分野における情報の電子化の推進に関する提言

2017年3月14日
一般社団法人 日本経済団体連合会

1970年に制定された廃棄物処理法は、1990年代に深刻な社会問題であった、不法投棄・不適正処理事案の撲滅や最終処分場の確保、排出抑制の徹底等への対応のため、数次にわたる改正が行われてきた結果、極めて厳格な法律となっている。排出事業者責任#1の徹底に関する規制強化が繰り返された結果、排出事業者には、違反した場合に罰則を科される廃棄物の処理委託基準やマニフェスト#2の交付義務、実地確認の努力義務#3等が課され、遵法処理の徹底が求められている。また、悪質な処理業者排除の観点から、産業廃棄物処理業者(産業廃棄物処分業者および産業廃棄物収集運搬業者の総称)や処理施設設置者に対しても、廃棄物の保管基準や処理基準、取扱う品目ごとに取得が求められる業や施設の許可、役員・法人の欠格要件およびその連鎖#4等、厳しい規制が課されている。

このようなことから、排出事業者および処理業者に課されている報告・許可申請等の行政手続は、極めて煩雑であり、遵法意識の強い事業者にとって、過度な負担となっている。経団連がこれまで規制改革要望等で求めてきたように、各種行政手続の合理化を求める意見は強い。

政府は、現在、「政府総合システム改革(政府情報システムの棚卸を通じたシステム数削減・統合、運用コストの引き下げ、政府・地方公共団体におけるクラウド技術の活用促進等)」の推進や、「マイナンバー制度」の導入を通じ、電子政府化を強力に推進している。こうした動きは、Society 5.0(超スマート社会)の実現のため、電子政府の構築を求める経団連の主張とも整合している。

また、廃棄物処理分野における情報の電子化は、行政手続の合理化のみならず、産業廃棄物の適正処理の推進、不法投棄の撲滅、資源の有効利用等、本格的な循環型社会の構築に資するものであることから、その推進に向け、下記のとおり提言する。

1.進めるべき電子化の内容

(1)処理業者の許可情報等の公開・一元管理

排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する場合には、当該委託廃棄物に関する業の許可を取得している産業廃棄物処理業者に委託しなければならない。万が一、委託先の処理業者が不適正な処理を行った場合、排出事業者に悪意がなくとも、排出事業者は罰則の対象になる場合があり、排出事業者は処理業者が保有する業許可証の写しを確認するなど、委託先を慎重に選定している。しかしながら、悪質な処理業者が業許可証を改ざんしている場合、それを排出事業者が見抜くことは著しく困難である。

行政が信頼性のあるデータベースを構築し、処理業者の業許可情報や業許可証の写しを一元管理し、公開すれば、排出事業者によるスムーズかつ適切な処理業者の選定や処理委託が可能となり、産業廃棄物処理の適正化が進む。

また、優良産廃処理業者認定制度や熱回収施設設置者認定制度に関する認定状況や過去の行政処分の履歴をデータベース化し、公開することで、廃棄物処理業界のより一層の優良化の推進が期待できる。

将来的には、廃棄物処理状況やリサイクル率を排出事業者が把握できるよう、産業廃棄物処分業者の処理フローや再資源化率等の処理情報の電子管理・公開についても、検討すべきである。

(2)報告手続の電子化および合理化

廃棄物処理法が厳格な法律であるが故に、排出事業者によるマニフェスト交付等状況報告や多量排出事業者報告、処理業者による産業廃棄物の処理実績報告等、行政から多くの事項について報告が求められている。不法投棄や不適正処理防止等の観点から、行政が多くの情報を必要とすることは理解するものの、報告書ごとに求められる記載項目の重複や、地方公共団体により異なる様式等について改善を求める意見は強い。

各種報告手続について、様式を統一し、電子化を進めることで、排出事業者や処理業者にとっての事務負担の軽減だけでなく、行政にとっても運営の効率化が達成される。

また、マニフェストには、排出事業場の名称や所在地、廃棄物の種類や量、運搬先や処分事業場の所在地等、行政が求める情報の多くが含まれており、マニフェストにより報告が求められる項目と各種行政手続により求められる項目の整理・統合を行うことで、より一層の手続の効率化が期待できる。その際、排出事業者および処理業者は、廃棄物の種類や事業者の規模に関わらず、原則として電子マニフェストを使用することとするなど、すべてのマニフェスト情報が集約される仕組みが不可欠となる。

<報告手続の電子化により情報が集約される報告の例>

  • マニフェスト交付等状況報告、多量排出事業者報告(排出事業者)
  • 産業廃棄物の処理実績報告(処理施設設置者、処理業者)
  • 県外産業廃棄物の搬入に係る実績報告(排出事業者、処理業者)

(3)許可申請手続等の電子化

処理業者や処理施設設置者は、役員や住所等に変更があった場合、地方公共団体に届け出る必要がある。こうした届出手続は、複数の地方公共団体で許可を有する処理業者や処理施設設置者にとって、とりわけ大きな負担となっている。許可申請手続を電子化すれば、処理業者や処理施設設置者の事務手続の負担が軽減するとともに、環境省や地方公共団体にとっても、迅速な処理業者の許可情報等の把握が可能となり、それらの電子情報の活用により、前述「(1)処理業者の許可情報等の公開・一元管理」の実現にも寄与する。電子申請を既に実現している地方公共団体の事例等を参考に、許可申請等に関する情報を一元的に管理できる、全国的なシステムを構築すべきである。

<申請の電子化が求められる手続の例>

  • 産業廃棄物処分業、収集運搬業の許可(新規・更新・変更)
  • 産業廃棄物処理施設の許可(新規・更新・変更)
  • 広域認定制度申請
  • 県外産業廃棄物搬入届出書

(4)遵法性向上のための機能付与

排出事業者は、排出事業者責任の全うのため、社内向けマニュアルやガイドラインの整備、独自の社内システムの導入等の様々な手法により、コンプライアンスの徹底を図っている。こうした排出事業者による独自の取組みにとどまらず、収集運搬業者と処分業者を含めた一連の関係者が使用するシステムに、遵法性向上のための機能を付与することが、廃棄物の適正処理を推進する観点から重要である。具体的には、処理業者の許可品目外の廃棄物や許可期限を超えている場合に、電子マニフェストシステムの入力制限がかかる仕組みや、処理業者が処分または保管可能量を上回る廃棄物を受託していないかどうかを確認するため、処理業者の受託中の廃棄物量を可視化する仕組みなど、排出事業者が未然に不適正処理事案の兆候に気づくための仕組みが有効である。

このような機能が付与されることにより、排出事業者にとっては、排出事業者責任を全うしやすい環境が整備されるとともに、行政にとっては、法令違反の未然防止や不法投棄・不適正処理事案の撲滅等の効果が期待される。また、これら仕組みを構築するうえで、排出事業者にとっての利便性は重要な要素である。

<付与することが期待される機能の例>

  • 処理業者の許可品目外の廃棄物が引き渡される場合や、処理業者の許可期限を超えた引き渡しが行われる場合の、電子マニフェストの入力制限
  • 処理業者の受託中の廃棄物量を可視化する仕組み

2.今後の進め方

廃棄物処理分野における情報の電子化は、排出事業者による排出事業者責任の全う、適正処理業者の選択、トレーサビリティの確保等に貢献するだけでなく、処理業者の遵法性向上や優良化の推進といった効果も期待される。行政にとっても、環境省と地方公共団体間のスムーズな情報共有、遵法監視等の迅速化・合理化が見込まれるなど、各関係者にとって電子化推進の意義は大きい。

ただし、廃棄物処理分野における情報の電子化推進にあたり、電子マニフェスト使用の原則化に向けた措置、事業者の営業秘密に対する配慮、ネットワーク環境に恵まれない事業者への対応、各関係者にとって使い勝手のよいシステムの構築等、解決すべき課題は多い。

電子政府化や「Society 5.0」の推進が急務とされるなか、まずは、環境省が主体となって検討会を設置し、環境省、地方公共団体、排出事業者、処理業者等の関係者が一同に会した場で1~2年かけて検討を実施し、順次電子化に着手すべきである。検討会では、循環型社会形成に向けたあるべき姿を描いたうえで、解決すべき課題や各々の関係者に求められる役割、推進方策等について検討することが重要である。そのような検討を踏まえ、紙による申請・管理から電子による申請・管理への抜本的な移行を実現すべきである。

以上
廃棄物処理分野における情報の電子化(イメージ)

  1. 事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない(廃棄物処理法第3条)。
  2. 事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合、環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票を交付しなければならない(廃棄物処理法第12条の3)。
  3. 事業者は、産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない(廃棄物処理法第12条第7項)。
  4. 役員aおよび役員bがその役員を務める法人Aがあり、役員bが法人Bの役員を兼務している場合において、役員aが欠格要件に該当した場合、法人Aは欠格要件に該当して許可が取り消され、法人Aの許可取消原因が、廃棄物処理法上の悪質性が重大なものである場合、さらに法人Aの役員bおよび役員bがその役員を兼務する法人Bも、欠格要件に該当し許可を取り消される。

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