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Policy(提言・報告書)  労働政策、労使関係、人事賃金 「採用選考に関する指針」の手引き

一般社団法人 日本経済団体連合会
2017年4月10日改定

1.本指針の適用対象者について

指針の規定は、日本国内の大学、大学院修士課程、短期大学、高等専門学校の卒業・修了予定者が対象となる。大学院博士課程(後期)に在籍している院生は対象とならない。

2.広報活動について

企業が行う採用選考活動は、一般に広報活動と選考活動に大別することができる。

(1)広報活動とは

広報活動とは、採用を目的として、業界情報、企業情報などを学生に対して広く発信していく活動を指す。本来、こうした情報は可能な限り速やかに、適切な方法により提供していくことが、ミスマッチによる早期離職の防止のために望ましいものである。しかし、早期化ゆえの長期化の問題に鑑み、開始時期以前においては、不特定多数向けの情報発信以外の広報活動を自粛する。

広報活動の実施に際して留意すべきことは、それが実質的な選考とならないものとすることである。また、会社説明会などのように、選考活動と異なり学生が自主的に参加または不参加を決定することができるイベントなどの実施にあたっては、その後の選考活動に影響しない旨を明示するとともに、土日・祝日や平日の夕方開催に努めるなど、学事日程に十分配慮する。

(2)広報活動の開始時期について

広報活動の開始期日の起点は、自社の採用サイトあるいは就職情報会社の運営するサイトで学生の登録を受け付けるプレエントリーの開始時点とする。それより前には、学生の個人情報の取得や個人情報を活用した活動は行わないこととする。

また、広報活動の開始日より前に行うことができる活動は、ホームページにおける文字や写真、動画などを活用した情報発信、文書や冊子等の文字情報によるPRなど、不特定多数に向けたものにとどめる。なお、広報活動のスケジュールを事前に公表することは差し支えない。

(3)広報活動であることの明示について

広報活動の実施にあたっては、学生が自主的に参加の可否を判断できるよう、その後の選考活動に影響を与えるものではないことを十分周知する。具体的には、広報活動を行う際の告知・募集の段階と実施時の段階の双方において、当該活動が広報活動として行われる旨を、ホームページや印刷物への明記、会場での掲示や、口頭による説明などの形で学生に周知徹底する。

なお、広報活動であることを示す場合の内容としては、以下のような例が考えられる。

【会社説明会の場合の明示例】

○ 明示する場面
  1. 開催の告知・募集段階
  2. 開催当日の案内(口頭、会場における掲示など)
○ 具体例

例1)「この説明会は、学生の皆さまに今後の就職活動を行う上での参考として、当社や業界の状況をご理解いただくための広報活動の一環として開催するものであり、本説明会への参加の有無が今後の採用選考のプロセスに影響するものではありません
(あるいは、下線部分に替えて)
本説明会に参加しなかったからといって、今後の採用選考上不利に働くことはありません

例2)「この説明会は、広報活動の一環として、当社の事業やCSRへの取り組みなどについて理解を深めていただくために行うものです。説明会への参加は任意であり、参加者の方々を対象に選考を行うことは致しません」

3.選考活動について

(1)選考活動とは

選考活動とは、一定の基準に照らして学生を選抜することを目的とした活動を指す。

(2)選考活動の開始時期について

選考活動は、活動の名称や形式等を問わず、実態で判断すべきものである。具体的には、(1)選考の意思をもって学生の順位付けまたは選抜を行うもの、あるいは、(2)当該活動に参加しないと選考のための次のステップに進めないものを言う。こうした活動は、時間と場所を特定して学生を拘束して行う面接や試験などの「狭義の選考活動」と、エントリーシートによる事前スクリーニングなど多様な方法を含む「広義の選考活動」に分類することができる。

このうち、ウェブテストやテストセンターの受検、エントリーシートの提出など、日程・場所等に関して学生に大幅な裁量が与えられている「広義の選考活動」に開始時期の制限を課すことは、効率的な選考に支障が生じることや、学事日程への影響も少ないことなどを考慮すると適当ではない。そこで、開始時期(卒業・修了年度の6月1日)より前に自粛すべき活動は、面接と試験のみとする。

(3)選考活動における留意点

選考活動は、広報活動と異なり、学生が自主的に参加不参加を決定することができるものではないため、学事日程に配慮していくことが求められる。

具体的には、面接や試験の実施に際し、対象となる学生から申し出があるケースも想定されるため、事前連絡についても余裕をもって行うほか、当該学生の事情を十分勘案しながら、例えば授業やゼミ、実験、教育実習などの時間と重ならないような設定とすることや、土日・祝日、夕方以降の時間帯の活用なども含めた工夫を行うことが考えられる。

また、大学等の履修履歴(成績証明書等)について一層の活用を検討することが望ましい。

4.広報活動の開始日より前に実施するインターンシップについて

インターンシップは、産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環と位置付けられるものである。したがって、その実施にあたっては、大学等のカリキュラム上、特定の年次に行う必要がある場合を除き、募集対象を学部3年/修士1年次の学生に限定せず、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある。

また、教育的観点から、募集段階において詳しいプログラム内容を学生に公開するとともに、職場への受入れや仕事経験の付与、インターンシップの受入れ後の学生へのフィードバックなどを行うことが望ましい。

なお、インターンシップ本来の趣旨を踏まえ、教育的効果が乏しく、企業の広報活動や、その後の選考活動につながるような1日限りのプログラムは実施しない。

5.広報活動開始前に行われる学内セミナーについて

広報活動開始前に行われる学内セミナーについては、以下に掲げる条件を満たす場合に、キャリア教育に積極的に協力していく観点から参加することができる。

【広報活動開始前に行われる学内セミナーへの参加条件】
  1. 「企業等の協力を得て取り組むキャリア教育としての学内行事実施に関する申合せ(平成26年9月16日就職問題懇談会)」に基づき、大学が企業に参加協力を求める内容を記した文書等に以下の要件を満たしている点が明記されていること。
    • 大学が責任をもって主催すること。
    • 大学が参加する学生に対し、キャリア教育の一環であり、採用選考活動とは一切関係ないことを明示していること。
    • 大学が参加企業に対し、学生の個人情報を提供しないこと。
  2. 参加にあたっては、学生の個人情報を取得しない。

6.留学経験者などに対する多様な採用選考機会の提供

近年ではグローバル人材を求める観点から、留学経験者を対象に、一括採用とは別に採用選考機会を設けることも少なくない。留学すると不利になるといった認識が学生に生じることのないようにする観点から、別途の採用選考機会の設定をはじめ、留学経験者向けの様々な取組みを行っている企業は、自社の採用HPなどを活用しながら積極的な周知を行うことが求められる。

また、最近はセメスター制からクォーター制に移行する大学があるほか、ギャップイヤーを導入する動きもある。今後とも多様な経験を経た学生が企業社会で活躍する道を開くため、一括採用のほかに夏季・秋季採用をはじめ、様々な募集機会を設けていくことが望ましい。

7.その他

(1)夏季における服装について

採用選考活動の実施期間において、クールビズ等の取り組みを実施している場合、学生に対して服装の取り扱いを周知する。

(2)卒後3年以内の未就業者について

卒後3年以内の未就業者の取り扱いについては、2015年10月1日から適用された「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」の趣旨を踏まえつつ、自社の実情や採用方針に則り、適切な対応に努める。

(3)指針及び手引きの見直しについて

採用選考に関する指針及び手引きは、活動の実態や、取り巻く環境の変化等を踏まえて、適宜、必要な見直しを行う。

以上
≪本件問い合わせ先≫

採用選考に関する指針及び手引きに関するお問い合わせは、以下までご連絡ください。
経団連労働政策本部
TEL: 03-6741-0181  FAX: 03-6741-0381  E-mail: koyou@keidanren.or.jp


〔参考〕

「労働政策、労使関係、人事賃金」はこちら