Policy(提言・報告書) 経済政策、財政・金融、社会保障  平成30年度診療報酬改定に関する要請

平成29年11月22日

厚生労働大臣
 加藤 勝信 殿

健康保険組合連合会会長  大塚 陸毅
国民健康保険中央会理事長原  勝則
全国健康保険協会理事長安藤 伸樹
全日本海員組合組合長森田 保己
日本経済団体連合会会長榊原 定征
日本労働組合総連合会  会長神津 里季生

平成30年度診療報酬改定に関する要請

平成30年度診療報酬改定にあたって、下記のとおり医療保険者関係団体の意見をまとめましたので、改定率及び改定の基本方針の策定に適切に反映されるよう、強く要請いたします。

わが国の国民医療費は、高齢化の進展に伴い急激に増加し続け、27年度には42兆円を超えました。また、団塊の世代が75歳以上となる37年度(2025年)にあっては、約61兆円(27年6月19日 厚生労働省保険局総務課資料「医療保険制度改革について」)に達するとの推計もあるなど、今後さらなる増加は避けられない状況にあります。

国内経済は、緩やかな回復基調にあるものの、デフレ脱却・経済再生を達成するほどの力強い成長には至っておりません。
このような状況のなかで、医療費を含めた社会保障費の増大は、保険料負担の増加を通じて、企業と個人の経済活動の足枷ともなり、結果として経済成長が大きく鈍化することが懸念されます。

医療保険者の財政は、今後とも医療費の伸びや高齢者医療制度に対する拠出金のさらなる増大により一層深刻な状況に陥ることが見込まれます。被用者保険では、これまで度重なる保険料率の引き上げ等により財政危機を凌いできましたが、負担は限界にきております。また、国民健康保険においても、改革は進められているものの、依然として厳しい財政状況が続いております。

このような背景から、政府はいわゆる「骨太方針2017」において、「人口・高齢化の要因を上回る医療費の伸びが大きいことや、保険料などの国民負担、物価・賃金の動向、医療費の増加に伴う医療機関の収入や経営状況、保険財政や国の財政に係る状況等を踏まえつつ、診療報酬改定の在り方について検討する」こととしております。

一方、先日公表された医療経済実態調査結果では、全体として経営状況にやや悪化の傾向は見られるものの、過去5年間を見ても国公立病院以外は概ね堅調であります。また長年の間、賃金・物価水準が上昇しないデフレの下で、診療報酬本体は概ねプラス改定が行われてきたため、両者のギャップは大きな状況にあります。
今後とも高齢化により医療費は増加が見込まれるのに対し、医療保険制度を支える現役世代の生産年齢人口は減少するため、国民負担は増大し、結果として国民皆保険制度崩壊にも繋がりかねません。
したがって、国民負担抑制のための方策を早急に講じなくては37年度(2025年)以降を乗り切れるとは到底思えません。

このため、国民負担の抑制といった観点を踏まえ、30年度改定において診療報酬はマイナス改定とすべきです。
併せて、薬価・特定保険医療材料改定及び薬価制度の抜本改革等による引下げ分は診療報酬本体に充当せず、確実に国民に還元する必要があります。

介護報酬との同時改定となる30年度改定にあたっては、医療と介護の連携、効率化を主眼に地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化を推進するための施策を講じるべきです。また、前回改定において取組んだ急性期をはじめとする患者の状態像に応じた適切な評価をさらに推進するほか、患者本位の医薬分業に向けた調剤報酬の適正化や「骨太の方針2017」で示された目標を踏まえた後発医薬品の使用促進など、全体として医療費の適正化・効率化を図っていくことを基本方針とすべきです。
薬価制度に関しては、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」の方向性に沿い、医薬品等に関する費用対効果評価の導入も含め、医療保険財政の影響に配慮した抜本的な見直しを講じるべきです。

30年度の診療報酬改定が、国民皆保険制度の持続性の確保と37年度(2025年)を見据えた医療提供体制の構築を指向したものとなることを強く要望致します。