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Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 日米IED民間作業部会共同声明2019

2019年10月9日
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はじめに

2012年以来、日本と米国の産業界は日米IEDに対し、グローバルな視点から国境を越えるデータの流通、個人情報の保護と利活用の両立、サイバー・セキュリティ等に関する意見を発信し、第三国におけるデジタル市場とインフラの共同展開を図ってきた。これまでの経験と発信してきた意見を基に、近年のデジタル・エコノミーをめぐる状況を踏まえ、経団連、在日米国商工会議所、米国商工会議所は、本共同宣言において、以下のとおり、日米両国が目指すべき方向性や具体的に取り組むべき施策を示す。

Ⅰ.データ活用のための政策枠組みの整備

(1)次世代データ・ガバナンス枠組みの確立

電子商取引を促進するため、われわれはデジタル製品・サービスの無差別的な取扱いと、電子的送信に対する関税不賦課を提言する。さらに、国ごとに異なる法規制に鑑み、次世代データ・ガバナンス枠組みの構築においては以下の事項を優先すべきである。

  • リスクに基づくセキュリティとプライバシー保護の基準について、法域を越えた国際的な相互運用性を推進することによって、各国のプライバシーやデータ保護、知的財産権に関する法的枠組みを尊重しつつ、国境を越えたデータ、情報、アイデア、知識の自由な流通を確保。両国政府が、二国間、複数国間、多国間の貿易協定や、APECのCBPR、2019年のG20大阪サミットで合意されたDFFTイニシアティブのような新たな概念を通じ、これを実現するよう期待
  • コンピュータ設備の所在地に関する企業の独立した意思決定、ならびに企業情報の機密保持を確保することによって、電子商取引を促進

日米両国は、とりわけブロックチェーン、IoT、AIや3Dモデリングのような次世代技術を活用するため、民間セクターによるデータ利用方法の開発を奨励すべきである。

(2)電子商取引に関するWTOルールの実現

デジタル・エコノミーはこれまで急速に拡大してきたが、現行のWTOルールでは今日の課題に適切に対応することは不可能である。こうしたなか、われわれは、2019年1月25日に76カ国が発出した電子商取引に関する共同声明の下での進展に留意する。現実のビジネスの変化を把握し事業を進めやすい環境を確保するため、われわれは電子商取引の貿易的側面についてのWTOルールの実現に向けた対話の加速を支持するとともに、可能な限り多くの国・地域が参加する高水準の成果を達成することを目指し、関係国・地域が革新的で開かれた包摂的な形で取り組むよう奨励する。とりわけ、データ流通や電子商取引に関する国際ルール作りを進めていくプロセスである「大阪トラック」における議論の進展を期待する。

日米両国は、電子商取引に関する関税の恒久的な不賦課の実現を究極の目標に、電子商取引が様々な国際フォーラムの重要議題に位置付けられるよう、できる限り注力すべきである。

Ⅱ.サイバー・セキュリティ分野の国際協力の推進

サイバー・セキュリティに地球規模で協調して取り組むことが、事業活動と世界の経済成長のために不可欠である。日米両国は緊密に協力して以下を実行すべきである。

  • 企業の自主的なサイバー・セキュリティ強化に向けたインセンティブの提供
  • 合意に基づく標準とリスク管理のベスト・プラクティスに依存したリスクベース・アプローチの促進による、サイバー・セキュリティ・リスクの特定あるいはサイバー・セキュリティ・リスクからの保護、サイバー・セキュリティ事案の探知、事案への反応、被害からの回復
  • サイバー攻撃やサイバー・インシデントに関する企業間・セクター間の有意義かつ自主的な情報共有プログラムの奨励
  • 国家や非国家主体によるサイバー攻撃に対する市民、産業、公的機関等を防衛するための有意義かつ自主的な官民連携。日米両国および国連サイバー・セキュリティ専門家会合等の国際フォーラムでの協力推進が非常に重要
  • サイバー・セキュリティ教育の充実

Ⅲ.信頼できるAI活用の促進

人的資本への投資拡大ならびにAIの研究開発に基づくデジタル技術の社会的・経済的メリットを最大化するためには、信頼できるAIを構築し、日米両国が「AI-Ready」な社会に変革することが必須である。その際、AIおよびその他のデジタル技術は、とりわけエネルギー消費や気候変動、ヘルスケアを含むSDGsの目標達成に向けて活用すべきである。このためにも、政府が公的データを公開し、さらなるデジタル化、ドキュメント・データの標準化、追加的予算の確保などを通じて公的データの質と有用性を向上させることが不可欠である。

しかしながらわれわれは、過去のあらゆる産業革命同様、社会課題を克服する必要性を認識している。日米両国は先導役として、企業および他のステークホルダーと協力しつつ、AIのメリットが十分に裨益することを確保すべく、信頼を得て社会で広範に活用されるような、全体的かつ人間中心で未来志向のAI開発・利用原則を定めるべきである。

以上

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