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Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 「デジタル広告市場の競争評価 中間報告」に対する意見

2020年7月27日
一般社団法人 日本経済団体連合会
デジタルエコノミー推進委員会企画部会

デジタル広告市場のルール整備を行ううえで、市場の公平性や透明性を確保することは重要である。しかし、デジタル広告市場のように、多様な事業が展開されており、変化の速度が速い市場において、事業者に過度な規制を課したり、技術的・経済的に実施困難な取組みを求めたりすると、わが国のデジタル分野におけるイノベーションの停滞を招く恐れがある。

こうした観点を踏まえ、「デジタル広告市場の競争評価 中間報告」について、以下のとおり意見を述べる。

2 デジタル広告市場における課題と対応の方向性に係る基本的な方針
(1)デジタル広告市場の特性と課題

[1] (p18) 事業者間の適正な競争を目指すことは重要であるが、プラットフォーム事業者が法令に基づき、サービス運営のために必要かつ相当な範囲でデータを収集している場合には、それを妨げるべきではない。

3 各課題と対応の方向性
課題①:[透明性] デジタル広告市場における質に係る問題

[2] (p24,28) p24に記載のとおり、広告の質を担保するために、一部の広告主や業界団体が自主的な取組みを進めつつある。まずは、そのような自主的な取組みの効果を注視し、そのうえで問題が解決されない場合に、新たなオプションについて検討することとすべきである。

課題②:[透明性] 価格や取引内容などの不透明さ

[3] (p33) パブリッシャーとプラットフォーム事業者の取引、広告主とプラットフォーム事業者の取引は、それぞれ別の市場でなされるものである。取引状況の透明性向上は重要であるが、そのために、パブリッシャーが広告の落札価格にアクセスできるようにすることが有効であるのか、十分な検討が必要である。

[4] (p33,p38,p86) 取引IDや第三者による到達指標等の測定、オープンAPI、データポータビリティの導入に関しては、技術的実行可能性や導入コスト等、幅広い観点を十分に検討すべきである。

課題④:[データ利活用]

[5] (p44) 記載のとおり、広告主がプラットフォーム事業者に求めるオーディエンス・データの範囲は、広告主の間で必ずしも定まっていない。また、一部のプラットフォーム事業者は、広告の訴求効果等に関する情報を広告主やパブリッシャーに対して既に提供している#1。さらに、オーディエンス・データの提供にあたっては、webサイトに関連する営業秘密等が含まれることや、webサイトに対する利用者の信用が毀損されることのないよう、細心の注意が必要となる。オーディエンス・データの提供について、まずは関係者による検討、および事業者の自主的な取組みの効果を注視すべきである。

課題⑥:[垂直統合] 自社優遇(入札設計等)

[6] (p53) 入札ルール設計・運用等の公平性を確保することは重要であるが、プラットフォーム事業者に具体的措置ならびにその開示を求め、モニタリングする仕組みを設けることは、営業秘密等の公開につながる恐れがあるほか、プラットフォーム事業者にとって大きな負担である。わが国のイノベーションやデジタル化を阻害することがないよう、慎重な検討が必要である。

課題⑩:[消費者の視点] パーソナル・データの取得・利用に係る懸念

[7] (p60) 消費者の不快感等が指摘されているターゲティング広告に関しては、消費者や広告主の便益の向上に資する面もあることを踏まえて検討すべきである。

[8] (p73) どのような義務が課されるのかが明確でないまま、プラットフォーム事業者が「データ・フィデューシャリー・デューティ」を負っているとして追加的な義務を示唆することは、プラットフォーム事業者を過度に萎縮させる可能性があることから、十分な検討が必要である。

その他

[9] 本中間報告では、全体を通じプラットフォーム事業者によるデータの開示・提供等が対応の方向性として示されているが、プライバシー保護や個別の契約条件の制約を十分に考慮したうえで、慎重な検討を行うべきである。

[10] 関係者が「デジタル市場競争会議ワーキンググループ」の検討の進捗状況や方向性を把握し、必要に応じて意見を述べられるようにすべきである。

以上

  1. 公正取引委員会「デジタル・プラットフォーム事業者の取引慣行等に関する実態調査(デジタル広告分野)について(中間報告)別紙1」pp52-53

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