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Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 日米IED民間作業部会共同声明2021

2021年11月5
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はじめに

2012年以来、日本と米国の産業界は日米IEDに対してデジタルエコノミー政策の枠組み整備、サイバーセキュリティ分野の国際協力、信頼できるAIの活用の促進などに関する意見を発信し、第三国におけるデジタル市場とインフラの共同展開を図るための貢献をしてきた。これまでの経験や貢献を基に、2021年4月の日米首脳会談や近年のデジタルエコノミーをめぐる状況を踏まえ、日米両国が目指すべき方向性や具体的に取り組むべき施策について、以下のとおり意見を述べる。

1. 5G以降の時代における信頼できるデジタル基盤

今後、様々な産業の基盤となる5G/Beyond 5Gには、現実世界をサイバー空間と融合させ、Society 5.0の実現に大きく寄与することが期待されている。その一方、現実世界とサイバー空間の垣根を越えた経済活動の相互連関の深化により、サイバーリスクが高まっている。信頼できる安心安全なネットワーク環境構築のため、日米両国は官民の全ての関係者が緊密に協力して以下に取り組むべきである。

  • Open RANや5G・Beyond 5G(6G)など新たな技術開発促進の加速
  • IoTを含めたサイバーセキュリティの強化
  • 重要技術の育成と保護に向けた半導体サプライチェーンでの連携
  • 新たな技術の国際標準規格策定に係るパートナーシップの強化

2. ポストコロナ時代のデジタル化の促進とAIを活用した競争力の強化

(1)デジタル化促進

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、ヘルスケアや教育、行政などの分野におけるクラウドを含むデジタル技術活用の必要性が改めて浮き彫りとなった。ポストコロナ時代においては、日米間でデジタル化の促進に向けた課題共有・枠組み作りが必要である。

(2)AI活用

AIは、あらゆる企業の成長に必要な中核技術として期待されている。こうしたなか、AIを活用した革新的な事業が日米の企業において生まれ始めている。OECDやG7,G20ではAIの開発原則や利用原則が策定されており、今後APECなどにおいて日米が協力することで、こうした原則を各国に展開すべきである。

今後、日米の競争力の強化と社会課題の解決がさらに促進されるよう、以下では日米企業におけるAIや関連技術などを用いたデータ活用事例を示す。

~データ活用事例(詳細は添付資料とする)~

【日本側事例】

  1. ① データドリブンなスマート営農ソリューション
  2. ② 札幌市データ活用プラットフォーム構築事業
  3. ③ 感染症予報サービス
  4. ④ AI駆動型創薬
  5. ⑤ 医療・健康データの活用

【米国側事例】

  1. ① 製造業における事例(自動運転車の安全性の測定・証明等)
  2. ② 小売業における事例(ディープラーニングによる需要予測)
  3. ③ 教育における事例(オンライン教育の充実)
  4. ④ 行政における事例(官民におけるデータ共有等)

3. 次世代に向けたデータ流通の枠組みの構築

データローカライゼーション規制は、海外企業に追加的なコストを生じさせるだけでなく、規制の対象国のイノベーションや経済成長を阻害する要因にもなり得ることから、データローカライゼーション規制の撤廃に向けた国際的な協力体制の構築が必要である。日米の強いリーダーシップの下、OECDにおける議論が進展することを期待する。

国際的な意見交換の場において越境データ流通の課題を取り上げ、その解決に向けて世界各国と協調してDFFTを推進することが重要である。データ流通の阻害要因を排除するため、CBPRを念頭においた越境データ流通の国際枠組みの展開や、データ保護法制の調和など、プライバシーとデータ保護における相互運用性の強化に向けた取組みを日米が積極的に展開すべきである。具体的には、EU、英国などのOECD加盟国、ASEANなどを幅広く巻き込んだデータ流通に関するルール作りに取り組むことが挙げられる。

ガバメントアクセスを対象とする高次原則の策定に向けたOECDの議論が進捗し、早期の合意に至ることを期待する。

日欧のデータ流通における合意と早期の合意が予想される米欧のデータ流通に関する協議に基づいて、日米欧三極間をはじめ主要国間でのデータの越境移転がプライバシー保護に配慮したかたちで円滑に進むよう、より強固な多国間の枠組みが構築されることを望む。

4. グローバルに調和したビジネス環境の構築に向けた日米のリーダーシップ

グローバルに調和したビジネス環境の構築のためには、日米が世界をリードするかたちで、技術の開発・活用における協調や法規制の調和に取り組むことが不可欠である。日米両国は緊密に協力して以下を実行すべきである。

  • 2023年に日本で開催されるインターネットガバナンスフォーラム(IGF)や、OECD、APEC、G7、G20など各種国際的な枠組みにおける重要アジェンダでのリーダーシップ発揮
  • 高品質のAIやデジタル技術、Open RANなど日米が関わる技術開発成果のGDCP参加国などへの展開
  • 安全・安心かつ公正なサイバー空間を創出するための、脅威インテリジェンスの共有と法整備の促進
  • デジタル技術やデータを活用した、ビジネス活動を過剰に制限しない規制の整備、および規制・制度の調和による日米のイノベーション促進
  • 感染症拡大の影響からいち早く脱却し、グリーンICT(サステイナブル・デジタルデベロップメント)の実践などを含む、地球環境問題に対峙してデジタル技術を最大限に活用した変革を確実にするための日米共通のモデル作りに向けた官民協力

おわりに

2021年4月の日米首脳会談で合意された日米競争力・強靭性(コア)パートナーシップや、その後に行われた気候サミットにおいて触れられたとおり、本提言で述べた5G/Beyond 5G・AI・越境データ移転などと同様に、グリーンICTの重要性が増している。

グリーンICTの実現に加え、デジタルや科学技術の分野における両国の競争力の向上のためにも、再生可能エネルギーの普及拡大に向けた規制改革・イノベーションを推進していく必要がある。日米両国の産業界は、日米両国政府に対して有益な政策提言を行うべく、これら最新のデジタルエコノミーを取り巻くトレンドを精力的に取り込み、引き続き両国発展のため緊密に連携していく。

以上

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