日本経済団体連合会(経団連)と韓国経済人協会(韓経協)は2025年10月17日、東京の経団連会館で第32回首脳懇談会を開催した。経団連側は筒井義信会長はじめ11人、韓経協側は柳津(リュ・ジン)会長はじめ14人が出席した。
日本と韓国は、1965年の国交正常化以来、政治・経済はもとより、社会・文化を含めて幅広い分野で交流を深めるとともに、企業間の競争と協調を通じて大きな発展を遂げてきた。日本にとって韓国は第3位の、韓国にとって日本は第4位の貿易相手国であり、半導体分野をはじめ相互補完的な経済関係が構築されているなど、今や互いにとって欠くことのできないパートナーである。特に、2023年春の両国首脳によるシャトル外交再開を契機として、両国関係は大きく改善し、官民双方において、多様な分野で連携・協力が加速している。日韓国交正常化60周年の節目を迎えた本年、また、国際情勢が厳しさを増す中、両国関係を新たなステージに引き上げるべく、更なる連携・協力の道を切り拓いていかなければならない。
経団連と韓経協は、本首脳懇談会の開催や2023年に設立した日韓・韓日未来パートナーシップ基金の活動等を通じて、未来を志向した両国経済関係の深化と拡大に重要な役割を果たしてきている。32回目となる本年の首脳懇談会では、上記の認識に基づいて、統一テーマ「新たな時代における日韓連携・協力の推進(日韓経済協力2.0)」の下、日韓両国の経済情勢や見通しを共有するとともに、日韓経済関係の深化に向けた連携、両国が共通して直面する社会課題への対応、新たな日韓協力をめぐって意見を交換した。併せて、前16日には、国交正常化60周年を記念して、経団連総合政策研究所ならびに日韓・韓日未来パートナーシップ基金とともに、「日韓国交正常化60周年記念フォーラム」を開催し、両国を取り巻く諸課題について幅広い視点から討議を行った。続く記念レセプションでは、石破内閣総理大臣より両国関係の更なる深化に向けた経済界への期待が表明された。今回の一連の会合を通じて、経団連と韓経協は、二国間関係の更なる発展を期すとともに、両国が依拠してきたルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序が大きく揺らぎ、対立と分断が進む中で、国際場裡においても、両国が連携・協力していくことの重要性を再確認した。
具体的には、第一に、双方は、世界貿易機関(WTO)の各種協定や自由貿易協定/経済連携協定を活用することによって、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序を維持・強化することの重要性について一致した。特に、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)については、かねて本首脳懇談会において、高水準のルールを満たすことができる国・地域への加入拡大の必要性と重要性を強調してきたところである。経団連と韓経協は、引き続き、韓国のCPTPP加入に向けて働きかけを行うことで一致した。また、双方は、経済協力を強化するための制度的枠組みの必要性について議論した。また、日韓中FTAについて、貿易・投資の自由化ならびにルールの両面で、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定より高いレベルの規律を目指して交渉が加速されることを期待するものである。さらに、より公正・公平な多角的な自由貿易体制を実現すべく、意思決定や紛争解決を中心とするWTO改革を促していく必要性について認識を共有した。
第二に、日韓を取り巻く国際環境が厳しさを増す中、双方は、地域の平和と繁栄に向けて、自由で開かれたインド太平洋を実現するために米国を含めた三カ国による連携・協力をさらに深めていくと共に、地域における様々な枠組みの連携を強化していく重要性を確認した。経済界として、世界各地で拡大する保護主義的な措置を含むグローバルな通商環境への共同対処、エネルギー分野における協力、サプライチェーンの強靭化、AI など先端技術分野での政策協力などでの連携を強化すべく、日韓米ビジネス対話をはじめとする三カ国経済界による対話の重要性を確認した。
第三に、双方は、APECや経済開発協力機構(OECD)などの国際枠組における協力の重要性を確認した。本年5月に韓国済州で開催されたAPEC貿易担当大臣会合において、多角的貿易体制を通じた連結性等について議論が行われ、共同声明が取りまとめられたことを歓迎すると共に、10月31日から韓国慶州にて開催されるAPEC首脳会議での実りある成果に期待を表明した。また、OECDにおいて、共にアジアから参加する国同士、例えば、グローバル・ミニマム課税等、諸課題の検討に関し連携を強化することで一致した。
第四に、双方は、少子高齢化や気候変動問題等、共通する社会課題の解決に向けて、互いの知見や経験を活用した連携・協力を推進することで一致した。この点、両国政府による「日韓共通の社会課題への対応に係る当局間協議」の立ち上げを歓迎した。両国が2050年のカーボンニュートラル実現を掲げる中で、安定的なエネルギー供給の確保に向けて、水素・アンモニアの供給・利用拡大に資するサプライチェーン強靭化や効率的なインフラ整備、水素の安全性向上などの分野において連携を推進することとした。また、炭素国境調整措置(Cross Border Adjustment Measures, CBAM)に代表される気候変動対策のための制度のWTO整合性について議論を本格化させるべきとの認識で一致した。
2024年の日韓往来が1200万人を超えるなど過去最多を記録する中で、それぞれの地域同士など、大都市間に限らない重層的な交流を一層活発にする必要性を確認するとともに、観光交流の円滑化のための具体的な方策について議論した。また、高度人材の交流やスタートアップ連携などを通じて、イノベーション促進に取り組んでいくことで一致した。加えて、将来世代間の交流を一層発展させるための人的往来の方策について議論した。さらに、自然災害が激甚化・頻発化する中での防災・減災分野における協力の推進や、両国が世界的に強みを有するエンタメ・コンテンツ分野におけるコンテンツ制作や第三国展開等の連携可能性について検討を深めた。
双方は、2026年の然るべき時期に、第33回経団連・韓経協首脳懇談会をソウルで開催することで合意した。
Policy(提言・報告書) 地域別・国別 アジア・大洋州 第32回経団連・韓経協首脳懇談会 共同声明
以上