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Policy(提言・報告書)  経済政策、財政・金融、社会保障 令和8年度診療報酬改定に関する要請

令和7年11月28日

厚生労働大臣
 上野 賢一郎 殿

健康保険組合連合会会長  宮永 俊一
国民健康保険中央会理事長原  勝則
全国健康保険協会理事長北川 博康
全日本海員組合組合長松浦 満晴
日本経済団体連合会会長筒井 義信
日本労働組合総連合会  会長芳野 友子

令和8年度診療報酬改定に関する要請

医療保険関係団体の総意を下記のとおり取りまとめたので、令和8年度政府予算編成において、適切に反映されることを強く求める。

(基本認識)

  • これまで長期にわたり物価・賃金が停滞する中で、高齢化に相当する医療費の増加に加え、医療の高度化等により医療費が高騰し続け、被保険者と事業主の保険料負担は既に限界に達している。今こそ成長と分配の好循環による保険料負担の抑制と医療保険制度の安定化が不可欠である。
  • 一方で、第25回医療経済実態調査の結果、令和6年度における一般病院の平均損益率は、前年度から0.2ポイント改善したものの、7%程度の赤字であり、病院の経営を安定化させることや、医療機関に勤務する方々の賃金を引き上げる必要性は理解できる。ただし、医療法人の一般診療所と歯科診療所、法人の薬局はいずれも平均損益率が5%程度の黒字で、病院と診療所・薬局の経営状況には格差がある。さらに、病院の中でも相対的に急性期の病院で赤字が大きく、回復期と慢性期の病院で赤字が小さい等の機能別格差や、同じ機能の中でも施設間格差があることを強く認識すべきである。
  • また、新たな地域医療構想、かかりつけ医機能報告制度、医師偏在是正の総合的な対策パッケージ、医療DXの推進や医療のICT化等の動きは、更なる少子高齢化に伴う医療ニーズの変化と地域差の拡大を念頭に、限りある医療資源を有効活用し、患者にとって安全・安心で効果的・効率的な医療を目指すものであり、スピード感を持って取り組む必要がある。

(診療報酬改定・薬価改定の方向性)

  • 基本診療料の単純な一律の引上げは、病床利用率や受療率の低下による影響を含めて医療機関の減収を医療費単価の増加によって補填する発想であり、患者負担と保険料負担の上昇に直結するだけでなく、医療機関・薬局の経営格差や真の地域貢献度が反映されず、非効率な医療を温存することになるため、妥当ではない。
  • 地域において医療ニーズに沿うかたちに医療機能の分化・強化・連携を推進し、医療提供体制を最適化することや、医療機関の経営マネジメントを強化し、それぞれの医療機関・薬局において医療DXやICTを活用しながら各医療職が活躍できるよう、組織運営を効率化する視点が必要である。
  • 薬価制度・材料価格制度の改革においては、医療保険財政の持続可能性、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給という3つの視点が重要である。

【要望事項】

  • 現役世代を中心とした保険料負担の抑制と物価上昇局面での保険給付の両立を図り、将来にわたり国民皆保険制度と医療提供体制を維持するために、医療の在り方を着実に改革して医療機関・薬局の経営を健全化し、確実に医療従事者の賃上げを担保すること。

  • 充実すべき部分についても、税制や補助金との明確な役割分担を前提として優先順位を意識し、確実な適正化とセットで真にメリハリの効いた診療報酬改定を行うこと。その際には、診療所・薬局から病院へ財源を再配分する等、硬直化している医科・歯科・調剤の財源配分を柔軟に見直すこと。

  • 医薬品・医療材料について、ライフサイクルに応じた市場の棲み分け、根拠に基づく適切な価格設定と適切な使用方法、費用対効果評価制度のより一層の活用を追求すること。

以上

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