一般社団法人 日本経済団体連合会
環境委員会 環境リスク対策部会
経団連は、日本の代表的な企業・業種別団体約1,700社・団体から構成される総合経済団体である。メンバーは化学、繊維、電機電子、自動車、鉄鋼、製紙、セメント、機械、造船をはじめとする製造業全般、電力、石油、鉱業、ガス、建築を含むサービス業等、多岐にわたる。グローバル化のもと、企業のサプライチェーンはEUを含む広範に及んでいる。
本年3月より欧州化学物質庁(ECHA)が開始した、PFAS規制案(以下、規制案)の審議における社会経済性評価委員会(SEAC)の意見案に対するパブリックコンサルテーション#1に際し、経団連において環境リスク政策を所掌する環境リスク対策部会を代表し、以下の通り、意見を提出する。
PFASは耐熱性や化学的安定性等、他の物質にはない様々な性質を有し、エネルギー(燃料電池、リチウムイオン電池等)、半導体製造や自動車部品、産業機械、各種機械器具、通信、医療、建築、生活用品等の幅広い用途で不可欠な素材として利用される。PFAS制限による社会経済への影響は大きく、今般、2023年に実施されたパブリックコンサルテーションで寄せられた意見を踏まえ、社会経済性の観点から、比例性、社会経済影響、実施・執行可能性、代替可能性に基づき、用途別に規制案の妥当性を検証したことを評価する。REACH規則第68条第1項を踏まえ、PFASを一律に規制するのではなく、経済・社会への影響を考慮しつつ、科学的根拠に基づくリスク評価により、人の健康または環境への影響が認められる物質に限り、個別具体的に必要な規制が設定されるべきである。
他方、今次SEAC意見案は2023年実施のパブリックコンサルテーションの意見が一部に反映されているものの、必要性を超える不適切な規制が課されることによる経済・社会への影響、他の政策目標との整合性に対する懸念が払拭されたとは言いきれない。サプライチェーンはセクターごとに単純に分けられるものではなく、グローバルに広がりを見せる中、貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)との整合性も考慮し、必要性を超える規制により、サプライチェーンや国際貿易に混乱をもたらすことがないよう十分留意する必要がある。
また、ドラギレポートでも指摘されている産業競争力強化や、グリーントランジション、エネルギー安全保障、経済安全保障といった他の重要政策課題の実現に真に必要な投資を阻害することがないよう政策調整を図ることも重要である。加えて、代替物質の開発・社会実装の実現可能性や時期自体に不確実性が存在し、代替物質の特定や開発のために想定を超える追加的な負担が生じる恐れがある中、過度に硬直的な運用とならないよう配慮も求められる。
本パブリックコンサルテーションで寄せられる、PFASに関わる業界団体や企業による新たな科学的・技術的な知見や管理実務の実情、定量的なデータ等を踏まえ、社会経済への影響を最小化すべく、実態に即した適切な措置が講じられることを期待する。その際、多岐にわたるPFASの各用途分野はグローバルなサプライチェーンを通じて密接に連関しているため、市場の混乱を避ける上でも、排出最小化に資する管理措置(排出管理、報告、モニタリング等)を条件として継続使用を認める選択肢(RO3)について、比例性、社会経済影響、実施・執行可能性、代替可能性およびモニタラビリティの観点から優先的に検討されたい。あわせて、制限の開始後も、最新の科学的知見やデータ等に基づき、規制の適用範囲や条件等の見直しを定期的に行う枠組みを整備されたい。