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会長コメント/スピーチ 会長スピーチ 第5回 アジア・ビジネス・サミットにおける榊原会長講演

2014年9月14日~15日 於:フィリピン マニラ市
(正文:英語

1.はじめに

本年6月に経団連の会長を拝命した榊原です。今般、第5回アジア・ビジネス・サミットの共同議長として、比日経済委員会のジョゼ会長ならびにご出席の皆様と意見交換を行えることを光栄に思う。

アジアは世界の成長センターとして世界経済を牽引している。2013年のアジアの実質GDP成長率は平均で6.2%#1と世界の平均4.1%#2を上回る。また、最近の世界経済の成長率の約2/3がアジア経済によって支えられている。

この成長を持続的なものとする鍵を握るのは、各国のビジネス環境の整備と域内の貿易投資の活性化である。

おりしも、アジアでは、来年末のASEAN経済共同体の発足に向けた動きに併せて、ASEAN+6によるRCEP交渉が進展するなど、さらなる飛躍の絶好の機会が訪れている。

本日は、皆様に、日本経済の最近の状況についてご紹介しつつ、アジアの持続的な成長に向けた戦略について認識を共有したい。

2.日本経済の状況

日本は2012年12月に政権交代があり安倍内閣が発足。長く続いたデフレからの脱却を目標に、アベノミクスと呼ばれる「三本の矢」からなる政策パッケージ、すなわち、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「成長戦略」を推進している。

アベノミクスが功を奏し、日本では、経済に明るい兆しが見える。本年度の大企業製造業の設備投資計画は、前年比+12.7%を記録#3するなど、企業の投資意欲の高さがうかがえる。直近(7月)の雇用者数も前年同月比1.0%増#4、賃金も前年同期比プラスで推移している。個人消費については、本年4月に行われた消費増税の影響を受け、先行きには注視が必要だが、概ね想定の範囲内。こうした動きを背景に、消費者物価も緩やかな上昇を続ける見通しである。

このように、日本では、安定した政治の下、企業業績の改善が設備投資、賃金の上昇に結びつき、経済全体を底上げしていく形で、「経済の好循環」が始まり、デフレ脱却も視野に入りつつある。これを持続的なものとするために、第三の矢である「成長戦略」の加速化が重要な課題となっている。

3.アジアの持続的成長に向けて

「成長戦略」は、日本が成長著しいアジアと共に発展することを大きな柱としている。経団連は、(1)ハード・ソフトのインフラ整備、(2)経済連携の推進を「車の両輪」として経済界の立場から成長戦略の実現に貢献している。

(1)インフラの海外展開

アジアにおいて、国境をまたがるグローバルなサプライチェーンのネットワークの構築が進んでいる。これをさらに強固にするうえで、道路、工業団地等の基幹インフラの整備が不可欠である。例えば、域内の陸上輸送の連結性を強化し、物流コストを低減していくことなどが大きな課題である。

日本としては、優れた技術を活かしわが国のインフラを官民一体となって海外展開することで、アジア諸国とwin-winの関係を構築していきたい。

(2)ソフト・インフラ整備

ハード・インフラが整備されても、不透明な国内規制、行政手続の遅延、煩雑な税制等のビジネス環境を支えるソフト・インフラが脆弱な場合、事業活動に支障をきたす。

ビジネス環境の改善は、外国人投資家だけでなく、国内企業にも利益をもたらす。実際にビジネスを展開している我々民間セクターが協力して各国・地域の政府に改善を働きかけていくべきである。

(3)経済連携の推進

日本を含むアジア・ビジネス・サミットのメンバーの多くは、RCEP、TPP、日中韓FTA等の実現を通じた貿易投資の自由化を目指している。2020年のFTAAPの完成も視野に、可能な限り広範な経済連携のネットワークを張り巡らせる必要がある。

FTAやEPAは排他的であってはならず、一定の条件の下、どの国・地域であっても交渉に参加できることが不可欠である。

包括的なFTAやEPAは、貿易や投資・サービスの自由化のみならず、人の異動の活性化に貢献する。

少子高齢化による労働力不足に直面する国・地域と、人口ボーナスを享受している国・地域が共存しているアジアでは、高度人材、熟練労働者、看護・介護従事者等の国境を越えた移動を促進することで相互補完が可能となる。今回のサミットで、「人の移動」が新たにテーマとしてとりあげられたことは極めて時宜を得たことである。

4.結語

21世紀はアジアの時代である。我々民間セクターが一丸となって、アジアならびに世界の持続的成長をリードしていく必要がある。

アジア・ビジネス・サミットが経済界の一層の連携を強化する契機となることを祈念し、私からの発言とさせて頂きたい。

以上

  1. 2014年(IMF予測値)
  2. 2014年(IMF予測値)
  3. 日銀短観2014年6月調査
  4. 労働力調査2014年7月分(速報)

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