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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2015年11月9日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【採用選考活動】

今年度から採用選考活動の開始時期の後ろ倒しを行ったが、広報活動期間が従来と比べて1カ月延長された上、経団連の非会員企業は例年通りの活動を行ったために、学生にとっても企業にとっても活動が長期化し、様々な問題が生じた。会員企業を対象としたアンケート調査の結果をみると、自社の採用選考活動に悪影響があったとする回答は9割近くに達しており、開始時期の見直しを求める声も8割に及んでいる。調査では学生に対する影響も聞いており、9割以上が何らかのマイナスの影響があったと答えている。

そもそも学生が学業に専念するためのスケジュール変更であったが、その学業にとって就職活動の長期化が最も問題となっており、来年度も現行スケジュールを維持した場合、再び今年度と同じことが繰り返されることになりかねない。現在の学部3年生のためにも何らかの改善を早急に図る必要がある。

来年度は、既に現行のスケジュールに沿って、3月の企業説明会などの開始に向けた準備が始まっている。また、大学側の声に、広報活動を3月開始に後ろ倒ししたことで、学部3年生が落ち着いて学業に専念できたとの評価がある。そこで、広報活動の開始時期は3月1日を維持することが適当であると考えている。

一方、選考活動の開始時期については、早く決めることが学生にとっても大事であり、政府や大学関係者と十分に調整を図ったうえで、11月中に正式に決定したい。経団連としては、8月の選考開始のスケジュールを2ヵ月程度前倒しする必要があると考えている。その背景としては、学生の学習機会の確保という後ろ倒しが目指した精神を尊重しながら、長期化した就職活動の是正を図るとの考えに立脚したものである。2018年入社対象以降の選考活動のあり方についても、実態を踏まえながら、経団連の雇用政策委員会で引き続き議論を重ね、関係者とも意見交換を行い、なるべく早期に新たな対応方針を決定していきたい。

そもそも、今年のスケジュールの後ろ倒しについては、経団連内部で当時から問題点を指摘する声はあったが、政府からの要請に対応したものだった。2013年11月には、政府や関係4府省(文部科学省、経済産業省、厚生労働省、内閣府)から、約450の経済団体に対して、正式な書状をもってスケジュール遵守の要請があり、1年の猶予期間を経た後、今年から新スケジュールのもとでの採用選考活動を実施した。必ずしも経団連が希望したスケジュール変更ではなく懸念もあったが、新しい指針を作り、会員企業への遵守を呼びかけた。一方で、政府からの要請を会員に呼びかけなかったり、守らないと表明した団体もあった。こうして始まった新スケジュールであったが、今年実施してみて、様々な問題点が明らかになった。学生の学習期間を十分に確保するという大前提のなかで、まずは現行の枠の中で最低限の改善を行い、より良いものにしていきたい。

今回、2ヵ月程度の前倒しを判断したのは、3月から広報活動を開始すると、広報活動には少なくとも3ヵ月は必要になる。一生のことであり、学生としてはできるだけ多くの会社を訪問し、色々な可能性を自分の目で確かめたいという気持ちがあると思う。広報活動をあまり短縮するわけにはいかない。しかし、あまりに遅くすると、今回のように長い、暑い時期の活動という問題が起きる。この兼ね合いの中で、2ヵ月程度がひとつの落としどころかと判断した。仮に5月まで前倒すとなると、3月の広報活動開始から2ヵ月しかなく、3月の広報活動開始の中で5月の選考開始は難しいと考えた。

毎年スケジュールが変わること自体が問題だという指摘もあるが、今年のスケジュールについてはあまりにも多くの問題が指摘されており、これを知りながらもう一年続ける方が問題である。責任ある立場としては、問題点が多く存在することを知りながら、何もしないというわけにはいかない。朝令暮改という指摘もあるが、責任を果たすという観点からは何もしない方が問題だと思う。できる限り、何らかの改善をするべきであり、関係者と議論をし、理解を得た上で、11月中に決定したい。

【官民対話】

前回の官民対話で、安倍総理より設備投資と賃上げに関する経済界の基本的な考え方を示してほしいという要請があった。安倍総理の発言の趣旨は、アベノミクス新三本の矢の強い経済の実現(2020年のGDP600兆円)に向けて、一番重要なことは経済の好循環をまわしていくことであり、このためには政策的な対応も必要だが、大きなエンジンとなるのは消費の拡大であり、そのためには継続的な賃上げが必要であること、また経済が活性化するためには、設備投資の拡大が必要であるということである。この認識については、完全に共有しており、経済界としてこれにどう応えていくのかということだと思う。

過去2年間、経済界は自主的な判断に基づいて、賃上げに取り組んできた。日本経済のためには、経済の好循環が必要であり、そのために経済界が先頭を切って、ベアも含めた賃上げに取り組んだ。そして、賃上げと賞与の増加が実現した。これは企業の自主的な判断の結果である。今回も経済界の自主的な判断に基づき、企業の業績に応じて、賃上げに取り組むということだと思う。設備投資についても、政府から言われて取り組むのではなく、積極経営を進める中で、どれだけ拡大できるかということである。経団連としては、デフレマインドから脱して、積極経営に転じ、新たな成長機会を創り出していこうと継続して呼びかけていく。

【補正予算】

補正予算の中心となるのはTPPへの対応になると思う。一方、経済界としては、経済の好循環を回していくためには、いくつかの政策対応が必要であると考えている。例えば、法人税減税により、企業活動を支援することが求められるし、規制緩和も十分ではない。また、設備投資や研究開発投資の促進策も必要である。さらには、消費喚起策なども検討してもらいたい。具体的には、エコ住宅の取得への税制優遇や新技術搭載の自動車に係る取得時の課税の軽減などであり、これらが補正予算の対象になると思う。

予算規模について、具体的な数字は差し控えたい。他方、財政再建に取り組み、2020年のPB黒字化を実現するためには、相当思い切った歳出改革が必要である。こうした財政再建とのバランスの中で最大限の景気刺激策が求められる。

【企業倫理】

消費者の信頼・信用を得ることは企業活動の大前提である。経団連としては、会員企業に対して、経営トップ自らが先頭に立って、企業統治体制を確立し、企業倫理の徹底に向けた取り組みを行うよう、引き続き呼びかけを行っていく。

【消費増税に伴う負担軽減策】

軽減税率については、導入反対の立場を表明しており、これは変わらない。ただ、決めるのは政府であり、軽減税率が導入されることが前提になりつつある。政府が導入するというのであれば、中小事業者への事務負担が過度に増大しないよう十分配慮してほしい。また、8%から10%への増税分は社会保障費に充てることになっており、軽減税率により、歳入が大幅に減少することのない形で導入してもらいたい。対象品目をどうするかについては、専門家に委ねるが、1兆3000億円の減収というのはいかにも大きいと思う。

以上

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