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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 関西会員懇談会後の会見における榊原会長発言要旨

2016年1月26日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【関西経済】

関西経済は日本全体の約2割を占めており、双発エンジンとして日本経済を牽引するポテンシャルは高い。とりわけ、ここ数年インバウンドの増加によって、消費の拡大など関西経済は様変わりするほど活性化している。関西国際空港の外国人利用者は急増しており、今年4月の民営化を契機にさらに受け入れ機能が拡大すれば、関西経済はさらに成長すると思う。

また、特区の指定を受けながら、なかなか進捗していない地域がある中で、関西は特区を経済成長につなげている。具体的には、健康・医療産業やエネルギー産業の振興に精力的に取り組み、2025年までに医薬品・医療機器の輸出額を1兆円、リチウムイオン電池、太陽電池などの電池生産額を5兆円にする目標を掲げている。輸入手続きの簡素化などの具体的な規制緩和にも取り組んでおり、関西では十分に特区が活用されていると思う。

さらに、北陸新幹線の大阪延伸も関西経済の推進力になる。ルートが決まり、これが実現すれば、関西経済の活性化に大きく貢献するだろう。リニア中央新幹線について、2027年に東京と名古屋の間で開業される予定となっているが、大阪までの全線で同時開業が実現すれば、関西は双発エンジンとしての強みをさらに増すと思う。リニアの全線同時開業は関西だけの問題ではなく、日本全体にとって重要な成長戦略となる。全線同時開業による経済効果は年間6700億円、18年間で12兆円となるとする試算もある。リニア中央新幹線は日本経済の大きな成長要因になることから、経団連としても、どのような形で協力できるのか、国の役割も含めてしっかり検討していきたい。

【経済情勢】

年明け以降、原油安や中国経済の先行き懸念が影響し、金融資本市場が動揺し、株安が続いている。一部にはリーマンショックになぞらえる向きもあるようだが、現在の市場の混乱は実体経済ではなく、投機的な動きを反映したものであり、中国経済の先行きなどについて、過剰に反応していると思う。リーマンショックの時と比較しても、米国経済は強く、2~3%の経済成長を続ける力がある。欧州経済も安定しており、堅調に推移している。日本経済もアベノミクスの下、緩やかながら着実に回復を遂げている。

先日の経済財政諮問会議では、政府に対して、昨今の金融資本市場の動きを注視しつつ悲観的な見方をせず、毅然とした姿勢で対処すべきであり、投資家の心理を鎮静化するような前向きなメッセージを出すよう要望した。経済界も現在の投機的な動きにまどわされずに、しっかり成長戦略を推進していく。

中国経済は成長率が7%を切ったものの、日本の約2倍の経済規模を持つ国が6.9%の成長率で拡大している。そのこと自体が大変重要なことである。あれだけ大きな国で、様々な産業がある中では、業種・業態あるいは地域によって景況感は異なり、停滞している業種・地域もあれば、10%を超える成長を遂げている業種・地域もある。中国経済全体で見れば、6%台後半の中高速成長を続けていく基盤は十分に備わっており、過度に悲観する必要はない。

原油安は日本経済にとっては全体としてプラスに働くものであり、現在の市場の動きは実体経済を反映しているとは言えない。関西経済について、全国の中でも特に中国経済との結びつきが強いとはいえ、中国経済自体が懸念するような状況ではないことから、外的要因をさほど気にすることはない。関西経済は全体としては着実に回復を遂げており、2015年もインバウンドの効果もあり、堅調に推移していくと思う。

【原発再稼働】

高浜原発3号機はすべての準備が整えば、1月29日にも再起動し、4号機についてもまもなく再起動に向けた準備が整うと承知している。3・4号機ともに稼働すれば、関西の電力料金は下がり、震災以降、家庭にも企業にも、重い負担となっていた状況が緩和される。全国で約40基の原発の稼働が停止している中、昨年、川内原発が再稼働し、これに続いて、高浜原発が稼働し、徐々に他の原発も続いていけば、経済性ある価格での安定的なエネルギー供給や、地球環境問題への対応に貢献することになる。関西電力には、国の安全基準に則って、計画通り再稼働を進めてもらいたい。その他の原発についても、原子力規制委員会の審査に合致し、地元の理解を得たうえで、再稼働していくことを強く期待したい。

【春季労使交渉】

経労委報告でも述べているように、定期昇給、ベア、賞与、諸手当などを総合した年収ベースの賃金引上げを呼びかけている。各企業の収益の状況に応じて、できるだけ昨年を上回る賃金引上げが実現することで、当然消費喚起にもつながることを期待している。

【外国人材の受け入れ】

労働力不足は既に様々な業種で顕在化している。運送業や介護だけではなく、製造業でも工場の労働者がなかなか集まらない。円安を受けて、海外工場の国内移転を計画しようとしても、労働力不足が原因で進まないと聞いている。労働力不足は産業横断的に成長の阻害要因になっている。特に介護においては、高齢化に伴い数十万人レベルで人材が不足することは明らかであり、外国人に頼らざるを得ない。

日本社会の伝統や文化に合致するような形で外国人を受け入れる制度を検討するべき時期に来ていると思う。経団連としても、しっかり検討していきたい。移民と言うとハードルが高いかもしれないが、外国人が条件付きで長期に働く場を作ることは避けて通れない。外国人材を受け入れるための思い切ったシステムを構築することが不可欠であると思う。

以上

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