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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2016年2月24日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【経済情勢】

円高と株安が進み、為替は1ドル=112円を切り、株価も1万6000円を下回っているが、いずれも実体経済とはかけ離れた水準である。日本経済のファンダメンタルズは堅調であり、現在の動きは市場参加者の将来不安に対する過剰反応だと見ている。多くの企業が想定する為替レートは1ドル=118円程度であり、現在のレートで期末を迎えるとなれば、企業業績にも直接影響してしまう。市場が日本経済の実体を踏まえた姿に戻ることを期待したい。

マイナス金利の影響を巡っては、少し長い目で評価していく必要がある。現象としては、3日間は良くて、その後効果が剥落したように見えるが、銀行の貸出金利や住宅ローン金利が下がるなどプラスの効果も現れつつある。銀行経営への影響も当初懸念されたほど大きくない。今は経済再生に向けてあらゆる手段を総動員すべきときであり、こうした中での日銀の対応を歓迎している。経済の好循環に向けた効果が現れることを期待したい。

【同一労働同一賃金】

正規、非正規などの雇用形態の違いにより、賃金に不合理な格差が生じているのであれば、それを解消していくことを目指すべきである。これは経済の好循環を回していくためにも必要なことであり、今年の経労委報告の中でも、非正規労働者の時給の引き上げ、正規化を呼びかけ、各社において取り組みが進められている。同一労働同一賃金については、日本の雇用慣行に合った制度とすることが肝要である。多くの日本企業では、その人の仕事の内容や責任の程度のみならず、期待、役割、転勤を含む将来的な人材活用など様々な要素を勘案して、賃金を決めている。これは日本企業の競争力の源泉の一つである。同一の職務内容であれば同一の賃金を支払うという単純なものとするのではなく、わが国の雇用慣行を踏まえた議論が必要である。安倍総理も日本の雇用慣行を尊重しながら、制度を設計していくと発言されている。経済界としては基本的な考え方について理解を得られており、同じ方向を見ていると考えている。

【採用選考活動】

昨年の3月広報活動開始、8月選考活動開始のスケジュールでは、広報期間の長期化などの問題が生じ、学生、企業の双方にとって負担が大きかった。このため、少しでも改善する必要があるとして、今年から選考活動の開始時期を8月から6月に2カ月前倒しした。今年はそのスケジュールの下で初めての採用選考活動となるが、昨年、指摘された課題が少しでも改善されることを期待したい。

今年の新スケジュールでの活動の後、実態調査を行う。その調査結果を踏まえて、必要だと判断すれば、再度見直す可能性もあるが、見直しを前提にしているわけではない。採用選考活動を巡っては、通年採用にすべきなど様々な議論があるが、一定のルールは必要だと考えている。

【企業向け政策減税】

2012年度比で2014年度の企業向けの政策減税が2倍になったとの指摘がある。その背景としては、2012年度当時は赤字企業が多かったことがある。

また、2014年度の政策減税の合計額1兆2000億円の内、6700億円が研究開発促進税制によるものであり、その多くは大企業が占めている。ただ、そもそも研究開発税制が政策減税なのかという議論がある。諸外国には日本より大規模でかつ本則としているところもある。企業の研究開発は競争力の源泉であり、イノベーションこそが経済成長を牽引するとの考えのもと、経団連も研究開発減税を本則として措置すべきだと主張している。加えて、企業が大規模な研究開発投資を行った結果、減税の恩恵を受けるのであり、それだけ研究開発への投資も増大している。

【原子力発電所の再稼働】

高浜原発1・2号機が老朽原発として初めて再起動する見通しとなったが、これは世界一厳しいと言われる原子力規制委員会の基準に則り、客観的・科学的に審査した結果であると受け止めている。厳しい審査基準に適合した原発については、その運転年数に関係なく再稼働していくことを期待したい。

【Brexit】

英国がEUに残留するかどうかは、6月23日に実施される国民投票においてあくまで英国民が決めることである。

英国の経済界からは、英国がEUの単一市場の一部であることで、5億人の市場に関税なしでアクセスでき、それが経済成長の基盤となっていることから、EUに残留することが英国の繁栄につながるとの考えを聞いている。

日本企業にとっても、英国は米国に次ぐ第2位の投資先(フロー)であり、約10兆円の投資残高がある。日本の経済界としては、日本企業の利益を守るためにも英国がEUに残留することを期待しているし、EUへの残留が英国にとっても、EUにとっても望ましいことだと思う。英国がEUを離脱するとなれば、世界経済全体にとってもマイナスの影響を与えかねない。

【与党議員を巡る問題】

与党議員に対して指摘されている個別の問題にコメントはしない。ただ、国政を担い、国民生活を守る立場にある閣僚、国会議員として、軽々しい言動はあってはならない。自らを律し、よく勉強を重ね、事実関係を確認した上で発言していくことが求められる。同時に、自らの発言に責任を持たなくてはならない。発言や言動が政権運営や国会審議に影響を与えることがあってはならず、経済界として苦言を呈したい。政治家として行動を律してほしいし、これ以上問題が起きないことを切に望んでいる。

今国会には、来年度予算だけでなく、重要法案が多く控えている。政策論議とはかけ離れた事象で国会の審議が遅れることはあってはならない。幸い来年度予算については年度内成立に向けた道筋がついたが、その他の重要法案についても、遅滞なく成立させていくことが重要である。

【民主党と維新の党の合流】

一般論として、政権担当能力を有する野党の出現は、国民にとっての選択肢が増え、良いことである。ただし、単なる選挙目当ての数合わせであってはならず、基本的な理念や政策を軸にして合流することが重要である。民主と維新の合流については、どのような政策を掲げるのか、まだ見えていないところがあり、一般論以上のことは言える段階ではない。今後の行方を注目したい。

以上

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