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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2016年9月12日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【採用選考活動】

今年の採用選考にあたっては、選考活動の開始時期を昨年の8月1日より2カ月前倒しして6月1日とした。これまで、雇用政策委員会を中心に、各社の活動実態や、開始時期変更の影響の検証などを行ってきたが、暑く長い就職活動を学生に強いるといった昨年の問題は是正されたと概ね評価する声が多い。実際、経団連のアンケート調査でも、回答企業の約70%が昨年に比べて今年のスケジュールが良かったと回答している。大学側との意見交換においても、昨年より改善されたと聞いており、学生側の大きな混乱も見られていない。一方で、広報活動期間を5カ月間から3カ月間に短縮したことで、活動の早期化・短期化をもたらし、企業研究やマッチングなどの面で課題が残った。この点については、もう少し時間をかけて検討する必要がある。

現段階で最も重要なことは、2018年入社対象の活動について、できる限り早期に経団連の方針を公表することである。こうした点を総合的に考慮した結果、2018年入社対象についても今年の対応を維持し、採用選考に関する指針や手引きの変更は行わないこととした。今後は、会員企業に対して、様々な機会を通じて指針の遵守を呼びかけていく。政府からも各業界団体に経団連の指針を遵守するよう要請が出されている。企業の自己責任の原則の下、指針の遵守を願うし、またこれを呼びかけていく。

留学生や教育実習生への配慮について、留学生向けには企業が別途採用枠を設けたり、海外で企業説明会を開催しており、大きな問題は生じていないと理解している。また、教育実習生については、面接を平日の夕方や土日に設定するなど、多くの企業が様々な配慮を行っている。それでも都合をつけられなかった実習生もいるようであり、さらなる対応を検討する必要はあるだろう。できることをやっていきたい。

2019年入社以降のスケジュールついては、もう少し時間をかけて検討し、来春までには公表したい。12月広報活動開始、4月選考活動開始の元々のスケジュールを評価する声が多いことも承知しているが、今の時点では何も決めておらず、白紙の状態である。あらゆる選択肢を議論の俎上に上げて、関係機関とも連携を図りながら、議論を行なっていく。

他方、指針を廃止し、通年採用にすべきだという声があることも承知している。ただし、わが国の場合、新卒一括採用が通例となっており、就職を希望する学生の9割が卒業と同時に就職している。会長副会長会議の議論でも、スケジュールを含め一定のガイドライン、指針は必要であり、何をやってもよいという無法状態は良くないとの意見が大勢であった。何らかの形で指針は維持するべきだと考えている。

【未来投資会議】

今般、成長戦略の司令塔として、未来投資会議が創設されたことは、誠に時宜を得たものである。経済界としても、アベノミクスの成長戦略を加速すべく、積極的に参画していく。アベノミクスが始動して約3年9カ月が経過したが、この間、経済界が主張してきた事業環境の国際的なイコールフッティング確保に向けて、行き過ぎた円高の是正、法人税改革、経済連携協定の推進など所謂6重苦の解消が進んできた。これに呼応し、経済界でも設備投資、研究開発投資、M&Aの活発化や賃金の引き上げなど、積極経営の推進に取組んできた。しかし、個人消費の低迷や、新興国経済の成長鈍化などもあり、わが国経済が本格的な成長軌道に乗るまでには至っていない。投資も力強さを欠いている。そこで、未来への投資を本格化させるため、これまでの取組みに何が不足していたかを、官民それぞれでしっかり検証する必要がある。

政府には、昨年11月の官民対話で提案した設備投資促進策や規制改革など9つの事業環境整備の取組みを検証しつつ、府省の壁を超えて、これまでの成長戦略、とりわけ構造改革を総ざらいしてもらいたい。経済界としても、これまでの設備投資や研究開発投資のあり方を検証しつつ、政府と歩調を合わせて、企業や系列の壁を超えて、新たな成長戦略展開の方向性を検討していく。

経済界の提案の下に「日本再興戦略2016」に盛り込まれた「官民戦略プロジェクト10」のうち、第4次産業革命・Society 5.0が成長戦略の要となるものであり、この推進体制を整備する必要がある。現在、内閣府、経済産業省、総務省、文部科学省など関連する府省が、それぞれ個別に検討を進めているが、第4次産業革命・Society 5.0の実現を国家戦略として位置づけ、未来投資会議を中核に府省の壁を超えて一体的に推進する体制を構築すべきである。経済界としても、これに呼応して、産学官連携やベンチャー企業とのオープンイノベーションを拡大するなど、最先端技術の社会実装に向けた取組みの強化を図っていく。

他方、健康立国、農業・観光振興、個人消費喚起などからなる、その他のプロジェクトについては、まだ構想段階にあり、具体化のプロセスに至っていない。構造改革徹底推進会合を通じて、プロジェクトの早期具体化を図るとともに、必要な施策の検討を行ってほしい。

また、国土交通省で進められているi-Constructionをはじめとする生産性革命プロジェクトについて、人材不足を解消し、老朽化するインフラの維持・更新や高度化を図るためには、IoT、ビックデータ、AI、ロボットなどをフルに活用する必要がある。そのためには、インフラに関するデータ・フォーマットの標準化、オープン化をはじめ、データ利活用のための制度・環境の整備が必要となる。政府一体となって力強く推進してもらいたい。

【企業の内部留保】

今年度の内部留保(利益剰余金)は377兆円で前年度から23兆円増加している。内部留保という名称から、企業が内部に現金をため込んでいるという印象を持たれるが、内部留保とは税金を支払ったあとの利益の剰余金であり、設備投資、研究開発投資、M&Aなどへの活用にも充てられ、すべてが現金の形で残っているわけではない。現金は当面の運転資金として1カ月半から2カ月程度の適正な範囲内に収まっており、決して過剰に積み上げられているわけではないことを理解してほしい。

【日中関係】

経団連は日中関係ならびに日韓関係を民間経済外交戦略における重要課題に位置づけている。再来週、日中経協合同訪中代表団に参加するが、国家指導者との会談に際しては、日中の経済関係を強化することは両国の共通利益であること、低調な日中間の貿易、投資を活発化するためには、政治外交関係の改善が大前提であることを引き続き主張していきたい。首脳クラスなど様々なレベルでの交流を活発化し、良好な政治外交関係を構築することが日中経済関係の強化、両国の国益の拡大のためには不可欠である。

以上

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