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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2017年10月10日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【衆議院議員選挙】

今度の衆議院議員選挙は様々な点で重要である。この5年間の安倍政権の実績、具体的には経済政策、外交政策、安全保障政策などを巡り、選挙戦を通じて、国民の前で議論がなされ、有権者の審判を仰ぐことになる。経済界としては、安倍政権は経済、外交、安全保障などの分野における重要課題について、成果を挙げてきたと高く評価している。政治の安定こそが経済成長の前提条件であり、与党が安定多数の議席を確保し、政治の安定が続くことを経済界は望んでいる。投票日まで経済や安全保障、社会保障について、各党が具体的な政策を明示し、活発な政策論議がなされることを期待している。自民、公明の与党、希望の党と日本維新の会、立憲民主党と共産党といった三極に分かれたことで、有権者にとっては分かり易い状況になった。各党の公約も出揃ったので、有権者には政策を見極めて投票してもらいたい。

小池都知事・希望の党代表が衆院選に出馬しないということは、都知事の職務は極めて重く、当然の判断であると受け止めている。政党の代表と東京都知事という二足のわらじを履くことになるが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会の準備に全力を尽くしていただきたい。加えて、築地市場の移転をはじめ都政が抱える課題の解決を進めてもらいたい。首班指名については、選挙後に適切に対応されるものと理解している。

【内部留保】

消費増税を凍結するだけでは、責任ある政策とは言えず、代替財源を示す必要がある。そうした中、希望の党は内部留保への課税を掲げており、注視している。しかし、法人税支払い後の利益に課税するのは二重課税である。国際的に見ても、一部の例外を除き、内部留保への課税はない。希望の党は大企業の内部留保300兆円に2%の税率で課税することを考えているようだが、300兆円という数字はあくまで貸借対照表上の数値であり、これをすべて現金で保有しているわけではない。現金ではなく、M&Aや設備投資など、様々な形の投資へと姿を変えている。仮にこうした投資に対して課税するとなれば、デフレ脱却・経済再生のために不可欠な積極投資にマイナスの影響を与えることになる。こうした点からも内部留保への課税は問題であり、経済界として受け入れられるものではない。

そもそも、406兆円の内部留保の内、現預金は約210兆円であり、売上げの1.74カ月分相当である。これは企業の運転資金としては極めて適正な水準であり、過剰でも過小でもない。企業が過剰な現金をため込んでいるという指摘はまったく当たらない。とりわけ中小企業は、リーマンショックを教訓に、手元に一定の現金を保有するようになっているようだが、経営判断として理解できる。

来年度の経労委報告に向けて議論している中、経済の好循環に向けて、収益をどう従業員に還元していくかは重要な課題であると認識している。とりわけ、消費拡大といった観点からは、消費性向の高い30代、40代の従業員に賃上げの恩恵がなかなか回っていないことは問題である。経済の好循環に向けた企業の役割は大きい。賃金引上げや諸手当など、どのような形で従業員へ還元するのが良いのか、来年度の経労委報告の中で経済界の考え方を示していきたい。いずれにせよ、内部留保、現預金が理由で従業員に報いるという考えはない。

【TPP11】

TPP11に関して、経済四団体による共同提言を取りまとめているところであり、しかるべき時期に政府に対して、早期実現に向けた要請を行う。米国も含めた12カ国でのTPPの推進を期待していたが、米国が離脱した。ただ、TPPはアジア太平洋地域において自由で開かれた国際経済秩序を構築するという観点から極めて重要な枠組みである。また、この地域でサプライチェーンを展開する日本企業にとって、重要な制度インフラとなる。将来の米国の復帰も期待しながら、まずは高度で包括的な内容を維持しつつ、早期に11カ国でのTPPを実現してほしい。

来週、第二回日米経済対話では、日米FTAも議題の一つになるのかもしれないが、経済界としては、多国間の枠組みを優先する方向で議論が進むことを期待している。

【日米関係】

10月末からの訪米ミッションでは、日米関係は政治、経済、外交などあらゆる面において、最も重要な二国間関係であることを経済界の立場から発信したい。また、日本企業が米国に積極的に直接投資を行い、地域社会に根ざした事業活動を展開している点もしっかり訴えていく。日本企業は累計で約50兆円の直接投資を行っており、これは英国に匹敵する水準である。雇用についても、直接雇用として86万人、間接雇用も含めれば160万人を雇用している。さらには、米国の日系企業はどの国の企業よりも米国の輸出拡大に貢献している。こうした米国経済への貢献の実態を具体的に訴えていく。日米関係は、経済摩擦の時代を経て、今や相互の信頼関係に基づくWIN-WINの良好な関係を構築している。

【企業行動憲章の改定】

企業行動憲章は時代とともに時々の重要課題を反映しながら、見直してきた。元々、反社会的勢力への対応として策定されたが、CSRの重要性が求められるようになった時は、それを反映した見直しを行った。今回、Society 5.0の実現を通じてSDGsを達成することを主眼に企業行動憲章を改定する。修正案には、企業活動はグローバルな規模で社会的課題を解決するためにあるとの観点から、Society 5.0の実現、SDGsの達成に向け行動することを行動指針に盛り込んでいる。

【政策評価】

今年の政策評価では、例年同様、与党については、経団連の事業方針に照らして、どう取り組み、どのような実績を上げたのかを評価するとともに、残された課題を示している。総じて、自民、公明の連立与党は、経団連と重要政策について課題認識を共有しており、実績面からも経済、外交をはじめ着実に政策を遂行しており、高く評価できる。例年通り10月中に公表する。

【企業不祥事】

神戸製鋼、日産自動車ともに日本を代表する製造業であり、こうした企業で不正が起きたことは誠に残念である。日本のものづくりへの国際的な信認の高さの背景には、圧倒的な品質の高さがある。それだけにわが国製造業への信頼に影響を及ぼしかねない由々しき事態である。事態の正確な把握、不正の原因究明、再発防止の対策に徹底して取り組んでもらいたい。

以上

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