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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 中国地方経済懇談会後の共同記者会見における榊原会長発言要旨

2018年3月8日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【日本経済】

日本経済全体はアベノミクスの下、この5年間緩やかながらも着実に成長を遂げてきた。60カ月連続で景気が拡大し、GDPが8四半期連続でプラス成長を記録するなど数字的にも裏付けられている。企業業績についても、上場企業の業績は2年連続で過去最高益を更新し、雇用についても、すべての県で有効求人倍率が1を越えている。日本経済はこの5年間、間違いなく成長しており、そのファンダメンタルズは強いと見ている。

他方、反グローバリズムや保護主義的な動き、北朝鮮や中東情勢における地政学的なリスク要因もある。国内においても、来年に予定されている消費税率引き上げを乗り越えるためには、前回の引き上げの際に経験した消費の急激な落ち込みを最小化できるよう、経済の地力をつけなければならない。

【地方経済】

毎年、各地域の経済団体との間で経済懇談会を開催しているが、年々、中国地方はじめ地方経済が活性化していると実感している。特にインバウンドをはじめとする観光産業の振興が地域経済の原動力となっている。中国経済連合会もインバウンドの拡大に力を入れて取り組んでおり、引き続き広域連携やDMO (Destination Management Organization) を核とした戦略の策定、観光人材の育成などを推進していくことが重要である。中国地方には魅力的な観光資源が多く、ポテンシャルが大きい。観光産業の振興に向け、引き続き多様な取り組みを進めてもらいたい。

【働き方改革と春季労使交渉】

経団連としては、働き方改革関連法案に盛り込まれた裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度、同一労働同一賃金、残業時間の上限規制のすべての成立を要望している。いずれも働き方の多様化、過重労働の防止、生産性向上につながるものである。この観点から、裁量労働制の対象拡大が働き方改革関連法案から切り離されたことは残念である。残る3つの課題については、今国会で法案を成立させ、是非実現してもらいたい。

裁量労働制の対象拡大は労働者に多様な働き方を提供するとともに、生産性向上にも資するものである。働く人にとっても、企業にとっても重要な法案だと考える。ただ、裁量労働制の対象拡大の先送りが、今年の春季労使交渉に直ちに影響することはないだろう。その影響は限定的と見ている。上場企業の企業収益も2年連続で最高益を更新している。経労委報告で示しているように、3%の賃上げといった社会的な期待・要請を意識しながら、自社の収益に見合った範囲で最大限の努力をしてほしい。

【人手不足】

アベノミクスの5年間で雇用状況が劇的に改善され、有効求人倍率が1.5を超える地域も多く、深刻な求人難とも言える状況にある。後継者不足により、企業の黒字倒産が起きるといった事態は経済成長にも影響しかねない。こうしたことが全国規模で発生しており、人手不足は日本経済の重要課題である。

事業承継税制の改善など制度面での支援に加えて、女性や高齢者、外国人材の活用が必要である。外国人材については、期限を定めた形ででも増やしていかなければ、当面の人手不足には対応できない。さらに、ITやロボットの活用も必要である。様々な手を講じることで、人手不足を乗り切っていかなければならない。そうした機運も盛り上がっていると感じている。

中小企業だけでなく、大企業においても人手不足は深刻である。設備の増設をしようにも人が集まらず、やむを得ずに国内ではなく海外の拠点を拡大するといった事象も出てきている。人手不足は日本経済にとって極めて大きな問題である。

【TPP11】

明日、TPP11の署名式を迎えるが、経済界は心から歓迎する。米国が離脱し11カ国での協定となるが、日本政府のリーダーシップもあって、短期間で締結、署名にまでこぎつけることができた。関係者の尽力に改めて敬意を表したい。TPP11の発効は、ルールに基づく国際経済秩序の維持・発展にとって極めて重要であり、アジア太平洋地域の安定と繁栄に寄与するものである。さらには、経済的にも高度なバリューチェーンを支える経済的基盤となる。

【鉄鋼とアルミに対する米国の輸入制限】

トランプ大統領がこれまでの発言通りに、鉄鋼、アルミに高い関税を課す内容の輸入制限措置を決定するのであれば、経済界としては大きな懸念を抱かざるを得ない。米国が鉄鋼、アルミの輸入を制限すれば、各国が対抗措置を採ることが予見される。鉄鋼、アルミに限らず、他の製品にも波及する負の連鎖となれば、かつての貿易戦争のような事態になりかねず、憂慮している。実際にどのような措置が採られるのか、しっかり見極めていきたい。

【スポーツ振興と経済活性化】

スポーツの振興は官民戦略プロジェクト10のなかにも盛り込まれており、官民ともに成長戦略と位置付けている。ご当地の広島カープが好例であるが、野球に限らずスポーツが各地の地域経済の活性化に大きな役割を果たしている。スポーツはグッズをはじめとする消費喚起など、直接的・間接的な需要創出につながる成長戦略である。経団連でもオリンピック・パラリンピック等推進委員会が中心となって、スポーツ振興を進めている。大きな需要創出につながる成長戦略の一つとして、官民一体となって取り組んでいくことが重要である。

【森友学園を巡る問題】

国民の理解を得るため、行政にはきちんとした対応が求められる。国民が疑念を抱くことがあれば、国会の場でしっかり説明し、国民の理解を得るようにしてほしい。

他方、予算審議をはじめ重要政策課題が審議されないままとなっており、重要課題について予算委員会の場できちんと議論してもらいたい。森友学園の問題も重要であるが、それだけに審議が集中し、重要課題が置き去りにされることを懸念している。国会での政策論議が着実に進むことを期待したい。

以上

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